オタクと公務員 カマヤン氏のご意見に関連して&書記長向け新デモ案

 咳が止まらないわ頭は痛いわそれでも締切は来るわと、小生がじたばたと日々を送っております間、世間ではいろいろなことが話題に上っていたようであります。

 さて、論文とお仕事を一区切りして昨日今日と見ていたネットの記事で、大変興味深いものがありましたので以下にそれについて一筆。
 それは、マンガ家にして運動家のご存じカマヤン先生のブログの、ちょっと遡りますが19日付の記事です。

 「我々に足りないものは・・・」

 この記事は、いわゆる「児童ポルノ法」の改訂が、本来の趣旨である児童の人権保護から、関係の乏しいマンガなど実写でないものの表現規制へ逸脱することへの反対運動について、カマヤン先生がそのご経験について振り返ったもので、全部で12項目の箇条書きからなっています。
 そのうち前半の7までは、運動の経験について語られていますが、8以降はそれらの経験に徴して「オタクを官僚として官庁に送り込むべき」という主張をされています。幾つかの項目を引用します。強調は原文の通り。
8;官庁に入省入庁できる能力のあるオタクも一定数いる。だがオタクは、とくに有能優秀なオタクは自滅願望がたいがい強く、入省入庁の能力を持っていてもわざわざ権威のないライターなどになりたがる傾向がある。だから我々はここから先、「運動」を継続発展させるために、入省入庁能力のあるオタクをそそのかし、省庁へオタクを送り込むべきである。省庁内にオタク同志が一定数増えなくてはここから先のマンガ規制反対活動・表現規制反対活動は展開が難しい。たとえば文化庁、経済産業省などに同志を送り込みたいところだ。

9;有能優秀なオタクは自滅願望が強く、自滅願望が強いがゆえにオタクである。よって、我々は有能優秀なオタクを、「省庁に入省入庁し、オタク業界全体のために犠牲になってほしい」と、彼のマゾヒズムを最大限に煽るべきである。たとえば東大生であるオタクは一定数実在する。有名大学の法学部のオタクは一定数存在する。彼らに入省入庁を「オタク界全体の捨石となってくれ」と薦めるべきである。「内部から変えると言って成功した例はない、単に自分ひとりの生活の安定と栄誉のためにオタクを裏切りやがったんだ」という陰口悪口を彼らは必ず言われる、だがオタク界全体のためにそこをどうにか耐えてほしい、と、彼らのマゾヒズムを煽るべきである。また実際に我々の敵並びやっかみ以外の何もできないバカ野郎がそう誹謗するだろうが、誹謗した時には我らのために身を挺して入省入庁した同志を程よく擁護するべきである。同志のナルシシズムを刺激するために。

10;官庁においてオタクの数は少ない。よって入省入庁が無事できれば、オタク関係の行政はそのオタク同志がほぼ一手に扱うことができる。このオタク同志はオタク同志としてのアイデンティティが強く、「官僚なんかよりもライターに本当はなりたかった」という自滅願望を抱えている限り、官僚的出世よりもオタク界全体のための行政に身を粉にして奮闘してくださるはずである。ついでに言うと、日本においては、日本以外でもそうなのだが、官僚が同時にライターをなしている例は多く、歴史に名を残している文筆家の多くは官僚を兼業している。官僚であることはライターであることにプラスこそあれ、実は何の妨げにもならない。また文筆家として大成したいことがその願望の最たるところである場合、いつでも官僚を辞職し、文筆一本で立つこともできる。あからさまに言われることはほとんどないが、日本においては、官僚出身である文筆家と、非官僚出身文筆家との間には、出版業界ならびに社会からの扱いにおいて、物凄い開きがある。文筆家として後世名を残すために官僚となることは実はたいへんに有効有益だ。
 なるほど、なるほど。
 さて、このようなお題であれば当然発言を期待されるであろう、そしてカマヤン先生も期待していたであろうネット上の著名人といえば東大アニ研出身のオタク評論家・イラストレーターの有村悠氏に他ならないでしょうが、有村氏はご多忙なのかご関心があまりないのか、カマヤン先生の呼びかけに「はてなブックマーク」で短く答えられたのみですので、呼ばれてもいないのに小生が勝手に一筆。

 「オタク」の勢力を増したい時には数に算入され、そうでないときは無視される鉄道趣味者の世界では、鉄道が大好きで、運輸省に入って、文筆家としても名をなした、といえば私鉄史研究の大御所である和久田康雄氏のお名前が浮かぶわけで、「先例」がないわけではありません。しかし、官僚とは組織で仕事をすることが他の仕事に較べても重要ですから、官僚個人が政策に大きな影響を及ぼせるわけではないでしょう。
 和久田氏の場合でも、九州赴任時に西鉄の福岡市内線廃止と地下鉄建設が都市交通審議会で答申され、欧州のように折角の路面電車を改良して生かす方法(最近話題のLRTの先駆的手法)を取ればいいのに、と個人では思いつつも、市民集会で答申の内容を弁護することになってしまって「あまり楽しいことではなかった」(『私鉄史探訪60年』マイロネBOOKS p.178)ということもあったそうです。

 途中まで書いて数年間ほったらかしの「東京大学オタク物語」に記した如く、官僚を輩出するような学校は元々オタクが比較的多いところと思います。ですから既に、それなりの人数のオタクが各官庁に浸透しているものと思われます。今も活動されているのか存じませんが、90年代にはNHK狂育というサークルが『霞ヶ関グルグル』なんて官僚内幕同人誌なんぞ作っていたことがあったくらいで。※追記:検索したところ、今でも活動されているようです。
 小生の知っている範囲でも、官舎で「ふにふに抱き枕」の類と同衾している国家一種官僚が複数いましたし、またお役所からいただいたボーナスを、コミケで『マリみて』同人誌に大部分突っ込んでいた人とかも知っていますが、既にブックマークでも指摘されている通り、別段それが政策に結びつくわけではないですし、趣味をおおっぴらにしているよりも、仕事と趣味の区別はうまくつけているのだろうと思います。何より官僚組織とはチームプレイで仕事をするところでしょうし。

 「有能優秀なオタク」に自滅願望が強いのかどうかは小生には判断しかねますが、そうなのであればカマヤン先生の仰るような展開もある程度望めるかも知れません。しかし、むしろ逆に、オタクとして自分は抑圧されてきたという意識が強すぎる場合、反動として出世願望というか権威主義というか、そういうのに取り付かれて役所という権威を目指すという事例もあります。そのような場合は、有村氏の指摘されるが如く「ネット右翼」的というか、少なくとも表現規制反対といった考えとは距離のありそうな、そのような役人になってしまうかも知れません。
 急いで付言しておけば、お役所もさすがに、そのような抑圧の反動としての権威主義に取り付かれたような人物は、大概面接でふるいにかけているようです。小生の高校の同窓生で官僚になられた方々を思い浮かべても、やはり優秀な方が多いと思います。そりゃ中には、同窓生が集まると「あいつはまだ汚職で捕まってないのか」といわれる人もいますが。

 ですので、役所に人材を送り込んでも、直接的な効果を過大に見積もることは出来ません。しかし組織で仕事をする役所ですから、組織の一系統に浸透するほど、上から下までオタク文化に理解のある人が一通り配置されれば、組織として理解ある方向に動きうるかも知れません。
 そして、実はこれまで着実に、オタク的素養を持つ人材は送り込まれてきているのです。ですからいつかその日が・・・? でもそうなったらなったで、省庁間の縄張り争いになったりして。
 とまれ、そうなるとますます日本のオタクの未来は、官僚とオタクの揺籃の地としての灘と開成のアニ研・漫研などが握っていることになりそうな・・・大学は大きすぎて、同じ大学を同じ年に出た程度ではなかなか人的ネットワークになりづらいところがありますので(慶應は違うのか?)。

 さて、そんなカマヤン先生のブログの22日付の記事「「人権」対「表現の自由」という偽の図式」では、「革命的非モテ同盟」古澤克大書記長に対し以下のような呼びかけがされています。
古澤克大書記長にはそのスキルを恃み、「国会前コスプレなんちゃってデモ」開催を期待したいところであります。「オタク=犯罪者」という宣伝戦が規制派から議員に対し繰り返し行われています。この宣伝戦を腰砕けにするための示威活動はあってしかるべきだと私は考えます。議事堂前・議員会館前の歩道は、慣例的に政治主張する場として黙認されています。そこにおいて、20人程度の、もっと多くても当然かまいませんが、「笑える」「ユーモアを非オタクにも感じさせる」コスプレ集団が「表現規制反対」「アニメーターの生活向上を」と、数日、アニソンなどを歌いつつ(つまり存在として無害であることを暗に示しつつ)議員関係者の目に触れることは政治的にたいへん有意義であります。ぜひ検討を願いたいところであります。公安やらが発狂すること請け合いですが、これは意義があります。
 この呼びかけについて「月よお前が悪いから」のartane氏が同日付「一年早かったのかもしれない」「(無題)」「d:id:furukatsu氏への公開の呼びかけ」の一連の記事で共同の用意がある旨を発言しておられます。

 カマヤン先生に認められるとは、書記長も出世したなあと羨ましく思うことしきりですが、これらの呼びかけに対する書記長の返答はあまり明確ではありません。22日付「我々は断固として表現を守り抜く」は、時系列的には呼びかけへの直接の返答ではないでしょうが、具体性に欠けるといわざるを得ませんし、23日付「id:artane氏へ」の内容も共同に前向きとは思われません。もちろん、当ブログでも詳細に報じた「アキハバラ解放デモ」関係(「革非同・古澤克大(フルカツ=furukatsu)書記長観察記」のタグをクリックされたし)の事後処理問題は尚意味あることですが、それだけに簡単にはできないことかも知れませんが。
 ですが、コスプレ大好きなはずの古澤書記長(コスプレキャバクラに通い詰めて借金作ったほど)が、カマヤン先生の呼びかけに対し反応が鈍い最大の要因は、うまうまと地方公務員になりおおせた書記長自身の本質的に有する「小役人」根性だろうと思います。

 とはいえ、カマヤン先生のご提案された「国会前コスプレなんちゃってデモ」ですが、面白そうとは思いましたが、どんな形であれアニメやマンガのコスプレであった場合、公安や多くの議員の方にとっては理解不能な、訳が分からず気持ちの悪いものとしてスルーされてしまう懸念もまた大きいと思われます。うまくやれば一般人に「無害」をアピールすることは出来そうですが。
 で、ここで小生がハタと思いついた一案は、少なくとも公安や「お堅い」保守的な人に対して一定の効果が期待できそうな、そして書記長の人脈が生かせそうな、そんなコスプレ? 的なデモの方法です。

 それは、自衛官を集めてデモをするというものです。

 現職の場合は法的な問題が懸念されますが、元自衛官・予備自衛官であれば問題はないものと思われます。予備自とデモに関しては、「アキハバラ解放デモ」後に元自衛官である書記長がクリスマス粉砕デモを打った際、「予備自衛官がそんなことをするとはけしからん、自衛隊内の然るべき筋に通告する」と主張した、これは現職の自衛官の方がいたというような話があり、その際に書記長周辺が調べた範囲では法的な問題はないはずという結論になっていました。小生も今、法律の専門家に電話して聞いてみましたが、よほどのことがない限り問題にならないと思われる旨でした。ちなみにその現職自衛官の方々は書記長デモを監視に来たそうで、その監視姿を怪しんだ公安に職質されたとか何とか。
 公的セクターの中で、自衛隊はオタクの浸透率の高さでは恐らく最高ではないかと思います。元自衛官のさる方に聞いた話では、自衛隊員は体育会系・オタク・その他に分類されるくらい、オタクが目に付くです。このブログでも以前、隊内で美少女ゲームが流行した結果「うぐぅ小隊」なる渾名が付いた部隊があったという話を書きましたし、別な筋から聞いた話では、砲兵隊の演習時に観測将校が、弾着が大幅にずれている旨を砲兵に電話で連絡したら(註:用語が旧軍ですが、自衛隊用語はよく知らんので、そのようなものと解釈して下さい)、電話口の返事が

 「え~、ぶっちゃけありえな~い!」

 だったとか。これだけプリティでキュアキュアな自衛隊の関係者であれば、デモの趣旨に賛同してくれる人もいるでしょう。現職の場合は確かに政治的行動は困難ですが、元ならば問題はないでしょうし、うまいことに自衛隊は組織の性格上、年齢の若い「元」が大勢いるわけです。
 で、作業服を着て分列行進でもやればいいのではないでしょうか。「保守的」な人に対して、より大きな効果を上げるものと思われます。そして次の日には、全然違う格好で現れると、公安もますます混乱することでしょう。左寄りの人たちは困惑するかも知れませんが。

 ちなみに、日本の政治的街頭行動の歴史を振り返りますと、大正年間の確か川崎造船所の労働争議だったかと思いますが、鎮圧に憲兵隊が出動したところ、それに憤慨した労働者たちが軍服を着用し(戦前ですから徴兵経験者が大勢います)、憲兵隊に対し自分たちも国家の一員なのだと主張して立ち向かったという話があります。これは確か、竹村民郎『大正文化帝国のユートピア』に書いてあったと思いますが、現物を図書館に返却してしまったので細かいデータを確認できていません。
 とまれ、市民の運動を考える上では、案外この方法はオーソドックスともいえるのであります。

 読み返すと、我ながら例によってまとまりのない文ではありますが、一応まとめてみるとこんな感じでしょうか。
・カマヤン先生ご提案の、オタクの官僚化はある程度進んでおり、将来オタクへのシンパシーが生まれる可能性はあるが、過大な期待はすべきでない。
・現在の公的機関中、構成員に占めるオタクの比率が最も高いのは恐らく自衛隊であり、手っ取り早くアクションするなら「元」の人は誘えるかも知れない。

※追記(2009.6.25.):一つ書き忘れていましたが、もし(元)自衛隊員表現規制反対デモをするならば、そのスローガンとしては以下のようなものが考えられます。
「自衛隊は災害救助に際し、思想信条で区別などしないし、してはならない。万一の有事の際も同様である。脳内の思想嗜好がどうあれ、差別をしないことが我々の死守すべき原則である。それに反するような法制度には賛同しがたい」
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by bokukoui | 2009-06-24 23:15 | 思い付き