外国人参政権・夫婦別姓反対デモに出くわす その他沈鬱な近況

 心身ともにくたびれた感じがぬぐえませんが、といって休んでいる暇もなく、今日も今日とて国会図書館に出かけました。17時の閉館ぎりぎりまで粘って、最後に雑誌カウンターに返却に行きましたら、隣に並んでいたお姉さんが膨大な雑誌の山をカウンターに返却していました。かさばった雑誌の大きさから少女漫画かな? と思って見れば、その表題は『Dear+』・・・やおい雑誌でした。国会図書館は、エロ漫画の収集率は概して低いのですが(例外が旧『ホットミルク』というあたりが面白い)、やおいはそうではないのでしょうか。

 そんな次第でくたびれた体を引きずって、永田町の駅めざして坂を上っておりましたら、なにやらデモをやっています。ずいぶん遅い時間だなあ、もう暗いのにと思いつつ見ていると、どうも近頃話題の? ネット右翼系のデモじゃないかと気がつきました。矢鱈と掲げる日の丸、主張は「外国人参政権反対」がメインのようです。
 以下に写真を、といってもデジカメを持っていなくて携帯電話のそれなので、辺りも暗かったし、画質はお話になりません。まあ気分だけ。



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 結構な人数がいたように思います。百数十人はいようかという梯団が二つありました。
 ビラを配っている人がいたので一枚もらいましたが、内容は民主党を非難し、外国人参政権と夫婦別姓に反対するものでした。露骨なマスコミへや中国・韓国への敵意(外国人参政権がらみで中韓の話をするならまだ分かりますが、何でも夫婦別姓は中国や韓国と同じに日本をする陰謀らしいです)が、彼らをただの右翼でも、ましてや保守でもなく、「ネット右翼」と断定した所以です。ご覧のように日の丸を矢鱈と掲げるのみならず、Z旗を掲げる者もおり、こんなところで使って欲しくないと素朴に思いました。
 このデモはたぶん「在特会」関係であろうと思います。上の写真に、ちょっと惚けてますが、「チャンネル桜」が取材している様子が写ってますが、それも一証左と思います。
 既に日は落ちて辺りは暗くなりつつあった上、永田町界隈は業務地区で商店が少ないので更に暗く、おまけに土曜日ともなれば人通りも少なく、デモとしては効果はあまり高くなさそうです。小生は以前、「革命的非モテ同盟」の渋谷夜間デモの記事を書き、夜のデモは案外いいのかもと思いましたが、やはり人通りが多くネオンサインも明るい繁華街でないと効果は発揮できないようです。

 小生は外国人参政権問題についてあまり知識はありませんが、地方自治体の参政権についてはさしたる問題はなかろうと思います。デモ中、「外国人参政権は憲法違反」とプラカードを掲げた人がいましたが、小生が以前法律に詳しい方に聞いた話では、
・地方の外国人参政権は、与えたとしても憲法違反ではない。(国政は問題あり)
・しかし、与えていないことも憲法違反というわけではない。
 という判例だったかと思います。
 ところで、このデモの参加者のような方々にとっては、日本国憲法はどのような位置づけになるのでしょうか、そんなことがふと気になりました。

 デモ隊は男の方が多かったのですが、ブーツにショートパンツでグラサン茶髪のおねいさんだとか、ベビーカーを押してる主婦っぽい人とかも散見されたのは少々驚きました。年のいった、伝統的「右翼」になりそうな人と、若いネトウヨっぽい(つまりオタクっぽい、秋葉原でよくありそう、くらいの偏見・・・あ、つまり自分と同じってことか?)人とが、二大主力集団を形成していたのは、まあ順当ではありました。
 彼らのシュプレヒコールは「日本の誇りを守れ!」というのが多かったように思います。「民主(党)、解体!」とかも連呼してましたが、その前に「シュプレヒコール!」とかけ声をかけていた調子が、ちょっと左翼っぽくて少しおかしくもありました。

 ところで、「日本の誇り」とは何なのでしょうか。そも、「日本」とは、「誇り」とは。
 小生は、少なくとも、他国を非難することが「誇り」ではないと信じます。
 
 で、外国人参政権については上の如く小生はあまり語る知識を持ちません。ですが、夫婦別姓についてはいささか思うところがあります。小生は個人的事情から夫婦別姓が容認されることを期待しておりますが、そこから社会に及ぼす影響を考えても、デモの人の主張のように家族制度に致命的影響を与えるとは想定しづらいと思うのです。別姓の問題が、「伝統」や「歴史」に照らしてどうなのか、以下に卑見を述べます。「日本」とは何なのか、その一端に触れてみましょう。

 小生が知る限りでは、日本の家の特徴は「家業」にあるといいます。家とは、家業を行うための共同体であり、血縁による共同体をベースにしていますが、同時に奉公人などの非血縁者もその共同体内に含んでいました。そして家共同体の継続とは、家業の継続に他なりませんで、そのためには血縁原理は二の次になります。ですので、昔の日本は養子がそれはそれは多かったわけで。家業を継がせるのに息子ではなく、有望な若者を婿養子にするというのもその一種です。また、「のれん分け」というシステムは、非血縁の奉公人を疑似血縁の分家にしていると考えられます。これらの風習は、社会の各層で各層なりに、家業の継続戦略を採っていたことを意味します。
 このような家業中心の家の中では、家業の一端を担えば女性の地位はそれなりに評価されるでしょう。

 またこのような家族の構成員は、かならずしも生活の総ての局面が、家業の指揮者である家長の支配に服していたというわけでもないといえます。家の若者は同時に若衆組やのような、地域の同年代の集団に属しています。女性もまた、家族の一員であると同時に地域の女性同士の共同体の一員という性格を持っています。
 こういった共同体の力は家長であっても無視できるものではなく、無視すれば夜中に若衆組が家に石でも投げに来るでしょう(笑) 女性の地位を無視できないのは、そういった共同体の存在があった面もあるだろうと思います。
 夜這いの話も、家と別個の繋がりが同時に存在していたから成立したわけでしょう。

 小生は中世以前の歴史はとんと疎いので、近世を想定して上の文章を書きました。で、このような日本の家族の有り様は、明治維新後も急には変わりませんでした。明治になっても養子は多く、若衆組は青年団・娘組は処女会と看板を変えて存続します。つまり政府も、家制度を定める一方で、家と別の共同体も利用しようと保護育成に努めているわけです。
 ところが、近代になると家業によって生活を支える日本人が減少し、永続的出稼ぎ状態の給与所得者が増加します。そうなると、もはやこの日本の伝統的家制度は機能しません。根幹が抜けているのだから。明治維新でも、第2次大戦でも、傾きつつも続いていた日本の家制度と共同体が、昭和30年代=高度経済成長期に滅んだといわれるのは、産業構造の転換により日本の家制度が機能停止し、共同体も解体したことを意味します。

 そんじゃ、日本の家はどうすりゃいいのでしょうか。家の共同体としての成立理由に家業という生産共同体であることは使えません。外で稼いで、生産が共同じゃないから。
 そこで出てくるのが近代家族概念です。愛情(夫婦)と血縁(子供)によって結ばれた生活共同体です。ここでは原則として非血縁者は排除されていきます(住み込み女中の消滅など)。このような家の形は明治以降、まず中流以上の給与所得者から広まってきたと考えられます。その伝播と浸透については、当ブログで阪急を論じた際にかつて書いたことがあるので、そちら(「近代家族幻想と電鉄会社との日本的関係性」)をご参照ください。このような家では、消費活動の共有が家を維持するイベントとなり、一方家の外での地域の人同士の繋がりは希薄化します。

 当ブログの悪癖でつい文章が長くなったのでまとめる方向で。
 デモの人々は「日本の誇りを守る」とシュプレヒコールをあげており、夫婦別姓は「女系社会」で女性の地位高い日本の伝統に反する、中韓の方法と主張していました。しかしそもそも姓なんて日本人の八割以上は明治以前に持っていませんで、屋号(まさに生産共同体的ですね)によって区別していました。その家の伝統も、明治以降の近代化でまかれた種が、高度経済成長で一気に花開いて、解体していきました(高度成長期の日本の内需を支えた「三種の神器」「3C」こそ、消費を中心とした生活共同体の幸福の象徴です)。かくの如き歴史を踏まえると、デモの人たちの「日本」だの「誇り」だの「家庭」だの「社会」だのって、一体何なのでしょうか。
 この「守る」ということについてはもうちょっと考えてみたい、というかデモを見たあとの帰りの電車の車内で既に小生の頭の中で考えは一区切り付いていて、所謂秋葉原系の「オタク」とネット右翼の相性の良さが何となく繋がった気がしたのですが、既に長いのでそれは別稿として次の機会に。

追記:別稿はこちら
追記ここまで

 そして、ますます気分的にへたばって帰宅したところ、出くわしたのが以下のニュース。

<加藤和彦さん自殺>軽井沢のホテルで首つる 部屋に遺書

 音楽に関しては若年寄な小生としては、誠に衝撃的でありました。
 そして先刻見たものを想い出し、気分はますます沈み、そしてしみじみ「イムジン河」を聞くのでした。
 合掌。

 以下追記(2009.10.18.)
 このデモは、おそらくコメント欄で某後輩氏がご指摘くださった、「10・17 日本解体阻止!! 守るぞ日本!国民総決起集会」であろうと思われます。砂防会館から下ってくると場所としても合うし。そういえば「草莽」云々という幟を掲げた人もいましたっけ。
 改めて産経の記事(他はニュースにしてないか・・・)にリンクを張っておきます。

 「日本解体を阻止せよ」保守派議員が総決起集会 政権への批判続出

 あと、取材してた「チャンネル桜」も。

 【草莽崛起】 10.17 日本解体阻止!! 守るぞ日本! 国民総決起集会&デモ
             - 1,500名もの草莽が参集!盛況のうちに終了いたしました!

 デモの参加者はどう多く見積もっても400~500人くらいと思いますが、集会参加者はもっと多かったのでしょうか。
 検索ついでに参加者のブログも引っかかったのでリンク。写真が当ブログより遙かに優れています。

・サラリーマンやってる猫の一匹集会所さん・正しい歴史認識、国益重視の外交、核武装の実現さん・花うさぎの「世界は腹黒い」さん「日本を守れ!と1500人が集会とデモ」
・なっちょ?さん「日本解体阻止!守るぞ日本!国民総決起集会・デモ」

 しかし、国会議員も参加していたとは・・・自民党の中でもなるほどという面々ではあります。しかし、先日の選挙の結果に鑑みれば、このような中韓への敵対心を露わにして民主党へネガティヴ・キャンペーンをやっても何の役にも立たなかった、ネット上の大勢力に見えて実態はそれほどではなかった層を自民党が相手にした結果、旧来の支持層を失ってしまったために大敗を喫したと考えられます。
 それでも3割ぐらいは自民党も票を集めていたと思いますし、選挙後のアンケートでも、自民党をさらに将来の政権交代の担い手として期待する声はかなり多かったと記憶しています。そのような層、かつて投票してくれていた層を取り戻すことが自民党の今後に大事なことであり、ますます声のでかい少数派に凝り固まっては、保守版共産党しか出来上がりません。だいたい自民党は保守政党というより国民政党だったわけで。

 ところで、自民党大敗のA級戦犯・安倍元首相はこの集会にビデオでコメントを寄せたそうですね。夫婦別姓にはまあ反対しそうな人ですが。
 で、デモ隊が配っていたビラの反対理由の一つに、兄弟で姓が違うのはおかしい、子供に責任を持つなら名字は一つ、とというのがあったんですけど、他の人はともかく、安部氏におかれてはこの論拠は否定されるべきではないかと思います。
 上でも書きましたけど、前世紀初め・・・いや、戦前ぐらいまでは養子はまだまだ多く、兄弟があっちの家とこっちの家とをばらばらに継いで名字が違う、なんて例はざらにありました。そして日本近代史上、そのような「兄弟別姓」という環境で育ちながらも、兄弟とも偉大な名を歴史に残した例は、皆さんもすぐ思い浮かべることができるでしょう。




岸信介と佐藤栄作です。



 更に追記
 国会図書館に通ってたら、彼らにまた出会ってしまいました。
「またも「外国人参政権・夫婦別姓反対デモ」的な何かに出くわす」
永田町でみたび「外国人参政権反対」な「草莽」に出くわす
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by bokukoui | 2009-10-17 22:53 | 出来事