「秋葉原協定」の内容と啓蒙浸透活動、巡回パトロールの状況

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「秋葉原協定」のビラをメイドさんに渡す防犯パトロールのボランティア

 2008年の通り魔事件以来、歩行者天国が中止されている秋葉原ですが、最近歩行者天国復活への動きがぼつぼつ伝えられています。以前から地元による防犯パトロールは折々行われてましたし、当ブログでも昨年12月の大規模な「安全・安心パレード」について報じました。また、秋葉原では今年に入って防犯カメラが設置されましたし、先月末には「秋葉原協定」というものが官民合同の検討会によって結ばれまして、これはルールを定めて街の安全・安心を作っていこう、というものだそうです。これも歩行者天国の復活に向けた活動の一環と言えるようです。あのような理由で歩行者天国がなくなったことは、事件に巻き込まれた者としても腹立たしいことでしたので、復活は大変望ましいことと思います。
 で、その秋葉原協定に関する資料を、たまたま小生手に入れまして、またこれもたまたまですが、本日行われた秋葉原の防犯パトロール(これは秋葉原協定の周知も兼ねていたそうです)の様子もある程度判明しましたので、以下にお伝えします。今「秋葉原協定」で検索してみましたところ、既に策定から半月を閲するにも関わらず、その内容の具体的紹介がネット上で見つかりませんでした(千代田区万世橋署のサイトにも見あたらず)し、また関係者からネット上での広報を歓迎する旨聞き及んでおりますので、以下に紹介させていただきます。



 以下に掲げるのは、秋葉原の防犯活動などを行っている地域連携部会・アキバ21が作成し、秋葉原の諸店舗へ、また防犯パトロールの際などに配布されているビラです。これはクリックすると拡大表示します。スキャナが使えないのでデジカメ撮影によっており、お見苦しい点はご寛恕ください。
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アキバ21作成の「秋葉原協定」のビラ
(この写真はクリックすると拡大表示します)

 以下にその内容を書き起こしておきます。
秋葉原協定

 秋葉原は、世界に誇る電気のまち、先端技術やビジネスが集積するまち、アニメやフィギュア、ゲームなどのサブカルチャーのまちとして、新たな機能や文化を受け入れ、共存してきた文化創造都市です。
 私たちは、この秋葉原の「いつも新たなものに出会えるまち、発見できるまち」としての魅力を守り、そして未来に引き継ぐため、誰もが安全で安心してまち歩きができ、買物ができるまちとしていきます。
 この秋葉原協定は、その実現に向け、地域の人々や来街者が守るルールです。
 このルールを行政機関等の協力のもと、地域関係者が一体となって推進していきます。

みんなで協力、安全・安心、元気なアキバ

◇路上喫煙はできません。
・生活環境条例で、路上でのたばこの喫煙は禁止です。決められた場所でマナーを守り喫煙します。

◇道路は正しく使います。
・青少年に悪影響を与える活動や広告物の掲出、無許可のチラシを等の配布はしません。
・置き看板やのぼり旗等は、道路上に設置しません。
・違法な路上での販売はしません。
・違法な駐車・駐輪はしません。
・自転車の無謀走行はしません。
・違法なパフォーマンスはしません。


◇犯罪防止に努めます。
・まちの防犯パトロールを積極的に実施します。
・迷惑行為等のマナー違反については、見逃さずに注意します。
・犯罪行為を目撃したら、ただちに警察に連絡します。


◇まちの美観推進に努めます。
・まちの美観推進のための清掃活動には、積極的に参加します。
・自分の家や店舗等の前は、日常的に清掃するよう、心がけます。
・ごみ出しは指定曜日・場所、定められた時間帯に出します。


◇近隣に配慮した営業を行います。
・店舗の外まで行列が発生する場合は、歩行者の通行の妨げとならないよう、配慮します。
・店舗の営業にあたっては、騒音(スピーカー等による)や悪臭を発生させないようにします。
・貸しビル業等を営む者は、風俗営業や悪質な営業行為を行うテナントを呼び込まないようにします。
・深夜営業を行う店舗は、近隣に迷惑をかねぬよう、従業員を指導するとともに、細心の注意を払います。


アキバ21(万世橋地区町会連合会・秋葉原電気街振興会・秋葉原中央通商店街振興組合・秋葉原商店街振興組合・秋葉原駅前商店街振興組合)
後援:千代田区・万世橋警察署

 ビラの裏面は、この協定に関連のある法令の抜粋(条文そのままではない)が列挙されております。一応写真を掲げておきますが、書き起こすほどでもないので、クリックして拡大表示の上お読み下さい。
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「秋葉原協定」のビラ(裏面)
(この写真はクリックすると拡大表示します)

 以上の秋葉原協定の内容については、基本的には、建前として一般的なものであろうとは言えようかと思います。「違法なパフォーマンス」を禁止するということをわざわざ書いていたりするのは、秋葉原らしいといえばそうかもしれません。もっとも「違法」なのが問題であって、「ちゃんとした」パフォーマンスなら禁止されてるわけではない、とも解釈できます(禁止といっても、この「協定」に法的拘束力はないとは思われます。だから無視して良いわけでないのは勿論ですが)。
 さて、問題は、この協定をどのように運用するかです。おおむね一般的な建前の内容とはいえ、あまりに杓子定規に厳密に守らせようとしますと、それは却って息苦しく、街の魅力を損ないかねません。といって、誰もその内容も、ことによったら存在すら知らなければ、これは意味がありません。どのように実践に移すのか、ということが、歩行者天国復活をめざす現在の問題でしょう。
 そこで、この日に行われた、アキバ21関係者と警察による「防犯パトロール」がどのような状況であったかを見ることにより、運用についてはどういった方向が目指されているのかを考えてみたいと思います。
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防犯パトロールのために集まった地域のボランティア(の一部)と
警察関係者・取材のテレビ局など

 上の写真では一部の人しか写っておらず、この日に集まったのは町会の方などを中心としたボランティアの方々などが30~40名くらい、警察が十人足らずくらいだったそうです。このパトロールが数手に分かれて、主に中央通りとそれから西側の地域を一通り巡回しました。その様子を以下に掲げます。
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店舗関係者(だと思う)に「秋葉原協定」のビラを渡す防犯パトロール

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道路にはみ出した商品を店舗関係者(はっぴの人)に注意する
警官と防犯パトロール

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秋葉原の人混みを進む防犯パトロール

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「秋葉原協定」のビラをメイドさんに渡す防犯パトロール

 以上のパトロールの様子を概していえば、防犯パトロール側も、「秋葉原協定」を如何に周知させるかということ自体未だ手探りだということのようで、パトロールの際にどのようにビラを配るのか、店舗への働きかけを行うのか、その手順などもまだ検討の緒に就いたばかりのように見受けられます。将来的には、電気街に秋葉原協定を明記した看板を立てる予定があるそうです。
 また協定の運用に関しても、例えば文言を機械的に解釈すれば道路に商品を置いては全くいけないようにもとれますが、秋葉原の諸商店が店舗の前に商品を並べること全てを禁止することでは現実的ではないですから、この日の巡回でも交通の邪魔になりそうな目に余るもの(具体的には、看板で交通標識を隠してしまったりしているようなもの)は取り締まるということで、なるべく柔軟に判断するようにしているようでした。これは駐車・駐輪に関しても同様のようで、機械的に切符を切るようなことは、警察もしていませんでした。運用についても、やはり具体的な方向はこれから形作っていくもののようです。

 店舗への秋葉原協定の周知徹底ということについては、上掲のビラだけではなく、もう少し詳しい資料を添付して、商店会経由もしくは直接訪問などで、伝達の徹底を図りたいということだそうです。その資料もたまたま小生の手に入りましたので、内容を勘案して一部ご紹介しようと思います。
 この資料では、巻頭に秋葉原協定策定についての概説があり、協定本文(上に掲げたビラ)の他、これまで行われた防犯パトロールの状況(当ブログが以前報じた昨年12月の「安全・安心パレード」については特に紙面を割いています)や、防犯カメラの設置状況などが収められています。この中で大事なのは巻頭言と思いますので、それを以下に書き写しておきます。
平成22年5月吉日
各位
秋葉原協定について

 新緑の候、皆様方には益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。
 秋葉原地域におきましては、一昨年に発生した無差別殺傷事件により、「まちの魅力向上に向けた道路等の公共空間活用検討会」(構成員:町会・電気街・商店街等の地域団体と警察・消防・行政)が設置され、秋葉原の安全・安心を確保し、まちの魅力や価値を高めるために総合的な検討を行っております。
 また、具体的な取り組みを行うために「地域連携部会 アキバ21」(構成員:町会・電気街・商店街)を設置し、今以上に、安全・安心なまちを目指し、防犯パトロールや防犯カメラの設置を行ってまいりました。
 このたび、誰もが安心してまち歩きができ、買い物ができるまちとしていくために、秋葉原地域の自主ルールとして「秋葉原協定」を策定し、千代田区・万世橋警察署はじめとする各行政機関に協力要請も行ってまいりました。
 この「秋葉原協定」を各行政機関の協力のもと、地域関係者が一体となって推進してまいりますので、皆様のご理解とご協力を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

地域連携部会「アキバ21」     

万世橋地区町会連合会
秋葉原電気街振興会
秋葉原中央通商店街振興組合
秋葉原商店街振興組合
秋葉原駅前商店街振興組合

 小生が秋葉原協定関係で収集し得た情報は、概ね以上です。

 さて、繰り返しますが、「秋葉原協定」の文言自体は、違法パフォーマンス関連くらいしか「秋葉原」固有のものを感じさせない、一般的なものです。道路に看板とか置かないようにしようとか、違法駐車・駐輪は止めようとか、掃除しようとか、別にどこでだって、その方がまあいいんじゃない? という内容です。となればむしろ注目すべきは、秋葉原協定の前文や、商店向け説明資料の挨拶文などではないかと小生は考えます。
 で、小生が思うに、この協定で大事なことは、その文言自体以上に、これが誰に向けられて発されたものなのか、ということではないでしょうか。
 秋葉原協定前文にはこうあります。「地域の人々や来街者が守るルール」と。これが指し示す内容は、まず住民と商店の関係者(経営者・従業員)のことでしょう。実際、この協定を作った中心は、町会連合会(=住民)と商店街の振興組合ですし、協定の内容も暮らす人や営業者を対象にしたと思われる条項が多く含まれています。
 しかし、それだけではないこともまた明らかです。「違法パフォーマンス」が営業者のみ対象でないことは明白ですし、「来街者」(あまり耳慣れない言葉ですが)という言葉の用例から考えてみても、これは秋葉原に用事や遊びに来る、買い物に来る人々を含んでいると考えるべきでしょう。そして前文で秋葉原の街を、「世界に誇る電気のまち、先端技術やビジネスが集積するまち、アニメやフィギュア、ゲームなどのサブカルチャーのまち」と規定しているからには、これは所謂「アキバ系」の「オタク」をも包含することを意図していることになります。人数的にはサブカル>電気>先端技術じゃないかって気もするので、三つの性格の並べる順番に関係者の微妙な心理が反映されている気もしますが・・・。

 そう考えますと、この秋葉原協定については、数的に多数である「オタク」な来街者との繋がりが乏しい、繋がるような回路がないという所に、問題があるのではないかと考えられます。策定過程に来街者代表はいないわけですし、商店を介して汲み上げられているかも難しいところです(商店街振興組合が完全に全店舗をフォローしている訳でもないようですし、また地域ごとに細分化されたり、電気街振興会との棲み分けが曖昧だったりするような問題もあるようです)。まあ策定過程に来街者代表を加えることは、単純に方法論として難しいから出来なくてもやむを得ないと言えますが、策定したからには周知されるべきという段階でも、全然来街者に周知の成果が上がっていないという問題があります。
 例えば、秋葉原協定の成立自体は一般のマスコミでも報じられましたが、秋葉原の来街者の好みそうなメディアであるネットでは、全くといって良いほど本協定に関する情報は提供されていません。小生はアキバ21関係者から資料をいただいた際に、「ウェブとかホームページとかで宣伝してね」といわれましたが、ノウハウとかがあまりないのかも知れません(ブログとかツィッターとかSNSって言わないところが・・・)。勿論今後看板などを立てていくそうですが。

 ですが小生思うに、これは情報発信側の問題だけではなく、対象とされている側の問題でもありましょう。
 今「秋葉原協定」で検索すると、もっとも目立つのは、アキバ系情報の有名どころ・アキバ総研の記事「秋葉原駅前でまさかの爆音路上ライブ! 『秋葉原協定』策定直後の暴挙」でした。しかし、このサイトではタイトルの「秋葉原協定」については、マスコミの記事にリンクを張るのみで、この後も取り上げた形跡はありません。マスコミではフォローしきれない地域の話題を追うのは、ミニコミやネットの出番だと思うのですが。なお興味深いのは、秋葉原で「おそうじ志隊」などの活動を企画された千代田区議・小林たかや議員のブログを見ても、協定に関する記述は見られないことです(5月15日時点)。ここでも回路は繋がっていないようです。
 この秋葉原協定への関心が乏しいのは、結局秋葉原の地域の問題意識に対し、来街者の多くが「あれは悪いやつが勝手にやったことで自分とは関係のない」という意識があるからでしょう。これを如実に物語る例として、2ちゃんにおける秋葉原協定への反響を挙げておきます。このスレッドのタイトル自体、「秋葉原、ホコ天再開でパフォーマンス禁止協定」とミスリーディングしています(「違法な」パフォーマンスが禁止なのです)が、それ自体、秋葉原の問題はパフォーマーのような「わるいやつら」のせいで自分は関係ない、むしろ被害者だ、くらいの意識を反映しているのかも知れません。
 このような状況については、当ブログでも過去に保坂展人議員の秋葉原での演説や、昨年12月の「安全・安心パレード」について報じた際に、各々の記事の末尾で論じましたので繰り返しませんが、このような断絶を「オタク」な人達が招いてしまっていることは反省すべきと考えます(断絶を招く背景については、昨年政治的話題に関連して一言述べ、また先日考察を試みましたが、全然纏まってません)。

 一つ考えられるのは、「どうせ『地元』の連中なんて、オタク文化が分かるわけない」という思いがオタクの側にあることです。それ自体は事実として当てはまるところはあるでしょう。この日の防犯パトロール参加者の平均年齢はどう見てもアラウンド還暦状態でしたし、そのような方々は18禁と全年齢版の違いどころか、二次元と三次元の区別すらどこまで把握しているのか疑問無しとしません。しかし、それをあげつらうより、協定の前文でサブカルチャーを秋葉原の構成要素と認めているわけですし、また上に述べたようにパトロールの実際に当たっては柔軟な対応を取る方向であることを、今後に生かすようにすべきと思います。
 歩行者天国が仮に復活するとしても、なお数ヶ月の時間を要することでしょう。その間に、秋葉原協定にもとづく運用の原則が形作られるものと思います。どうか秋葉原に足を運ばれるオタク諸氏に於かれましては、無視や敵視ではなく、それが互いにとって良い結果になるような、来街者と地域との回路を開かれるよう、少なくともそれを妨げぬよう、お願いする次第です。

 なお、「そんな偉そうなことを書くなら墨東公安委員会当人はどうなんだ」というご指摘に関しましては、以上のような秋葉原に関する情報を受け取るだけの回路は、小生は(無論一人の力ではありませんが)繋いでいるということを申し述べさせていただきます。
 率直に言って、秋葉原に関して通暁すると称する多くの「アキバ系」サイトがこのような地域の動きに何も触れず、ただ街の上を通過していくコンテンツのみに拘泥するのは、なるほど「オタク」的でありまた現代社会のある特徴を反映しているとしても、偏頗に過ぎることです。そのようなことが、所謂狭義の「オタク」ではなく、ただ交通博物館の残骸を見に秋葉原に足を運んでいた鉄道趣味者によって報じられたとは、畢竟コンテンツへの拘泥は時として地に足が着かない事態をもたらすものであろうかと、いささか残念に思います。
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by bokukoui | 2010-05-15 23:59 | 時事漫言