続・出版労連主催「東京都青少年条例の改悪に反対」集会見学記

 「出版労連主催『表現の自由への規制を許すな! 東京都青少年条例の改悪に反対』見学記」の記事が長すぎてひとつの記事に入りきれなかったので、やむなく一部をこちらに移します。メモを取った時にはそこまで長くなるとは思わなかったのですが、割とメモの取りやすい発言の多い集会だったので、圧縮する余計な部分が少なかった=それだけ密度が濃かった、ということかもしれません。



(承前)

 藤本・田島・長岡諸氏の発言が一通り終わり、時間も押し迫ってきたことから、パネリスト以外の方々からのコメントをもらうこととなります。
 まずは、今回の都条例問題はじめ表現規制反対運動に活躍している、コンテンツ文化研究会の杉野氏より、情勢報告が行われました。あくまで自分(杉野氏)の私見とことわりつつも、都議会各派の現況は

・自民・公明:反対の大きさに混乱しているが、都の案に従うだろう。
・民主:条例案に異論を唱えている人が多い。今回は比較的反対派に理解がある。
・ネット:当初は規制賛成派寄りだったが、運動の結果もあり現在は慎重になってくれている(この日の集会のレジュメに、ネットの都議2名が条例の問題を指摘する声を寄せていた)。
・共産:きっぱり反対。

 と見られるそうです。ただし都議会は諸勢力が拮抗しているため、先行きはわからず、都議への運動は重要とのことでした。

 ついで発言したのは、出版流通協議会の青山氏でした。その発言の要旨は

・昨年6月の児ポ法廃案でホッとしていたが、今回の条例案は最初趣旨が分かりにくく困った。
・しかし検討してみると、単純所持規制は冤罪や別件逮捕などに使われる危険性があまりに大きい。
・また創作物にどんな犯罪性があるのか。
・署名運動に協力していく。

 とのことでした。

 さらに、先日のイベントでも登場された、全国同人誌即売会連絡会の中村公彦氏にも発言が振られます。中村氏は、アマチュアレベルの同人誌の場合、萎縮効果が特に大きいことを指摘されました。

 そして、この集会に出席された都議の方々より挨拶が。
 まずは、これまた先週の集会にも出席されていた吉田康一郎都議(民主党)から。

・今回の条例案は無茶。条文からは読み取れないほどおとなしい「質問回答集」が出されたが、安心してはいけない。この条例案の背後には、実現を図る大きなモメントがあり、それが消えたわけではない。
・条例案は元の案から接木をしすぎてわけが分からなくなっている。条例案を作る前提となる答申の、さらに元の素案と比べると、矮小化されているために分かりにくいが、そこここに地雷が埋められている。これが児ポ法と組み合わされると、強大な効果がある、と考えている。
・しかし都議の多くは額面どおり条例案を受け取ってしまって、昨年12月ごろには「大したことはない」と考えている人が多かった。そこからこの現状は、奇跡的に持ち直してきたといえる。
・だがこのまま条例案を潰しても、リバウンドがあり得る。自公が優勢になったら、より厳しい案が一気に通されるかもしれない。だから修正案によって自公も受け入れさせ、今後何かあっても「この案に賛成したでしょう」と反撃できるようにしたい。これによってモメントを殺したい。

 続いて、5月から新たに総務委員会(青少年条例を扱う)に入った、吉田信夫都議(共産党)から。

・皆さんが先駆的に、表現の自由のために活躍されたことへ、心から敬意を表する。安心してはいけないが、皆さんの先駆的な活動のおかげで、条例は継続審議となった。私は4期都議をやっているが、こんなことは初めて。
・奇妙奇天烈な「質問回答集」を都が出したが、これで反対が収まるどころか余計「何じゃこりゃ」という批判の気が高まった。ペンクラブや日弁連も声明を出すなど、反対の声が広がっている。

・反対の広がりだけでなく、条例案のダメさも浮き彫りになった。先週の参考人質疑で、規制推進派として有名な前田雅英首都大教授に、条例案の「みだりに」や「肯定的」などというのはあいまいで問題だ、と質問したところ、前田氏は法的にははっきり定義されていると居直った。それではその定義を教えてほしいと追及したが、前田氏は説明しなかった。
・参考人質疑では、田中弁護士の出版の自由なくして表現の自由は存在しない、という指摘が重要だと考える。
・また、条例案の18条では、家庭に権力が介入することを認めている。これも大問題。
・このように問題の根が深いこの条例案は、とても部分的修正では済まない。廃案にすべきである。

 そして、これも先日の豊島公会堂の集会に参加された西沢けいた都議(民主党)が発言され、やはり今回もパブリックコメント(PC)の問題について説明されました。繰り返しの部分もありますが以下に概要を。

・条例案審議のため、都の担当者にPCの現物を見せてほしいと要請したが断られ、一般の市民と同様の情報公開請求をしてくれといわれた。そこで2月末に請求したが、公開請求の期限いっぱいの60日くらいまでかかって、ようやく4月末に出された。
・PCのほとんどは条例案に反対意見だった。
・公開されたPCには多くの黒塗りがあり、それもすでに公開されている議事録を引用した箇所(首都大前田教授の発言とか)など、変なところが黒塗りになっている。この黒塗りに不服申し立てをする予定だが、その申し立てを審査する委員会にも当の前田教授が加わっている。
・PCについては、明日コンテンツ文化研究会の方々に手伝ってもらい、一層精査する予定。

 以上で、都議の方からの発言が終わり、集会も締めに入ります。
 パネリストとコーディネーターの各氏から挨拶。

・藤本氏:署名活動へのご協力をお願いする。
・田島氏:社会の中で議論していくことが重要。メディア批判もすべき、現場ではがんばっている人もいるが。
・長岡氏:この集会は「東京都青少年条例の改悪に反対」とあるが、自分は廃止すべきと考えている。

 最後に、出版労連の前田能成副委員長が閉会の挨拶をしましたが、自己紹介で「向こうの前田ではなくこっちの前田です」と挨拶、会場沸きます。いやはや。
 前田副委員長は改めて署名の際の注意点を繰り返し、今後とも出版労連はこのような発信を続けていく旨を述べて、集会は終わりました。

 感想としては、今回の集会はパネリストが少なかった分、一人一人の発言を聞けたわけで、結構なことでした。
 また、このような地味な平日の集会にもかなりの数の参加者があったことが成果と思います。さらに今回の集会は、出版労連という主催者を反映して、これまでのこの種の集会と比べると年齢層が高い参加者がかなり多く、運動の幅がひろがったとすれば喜ばしいことです。
 幅といえば、今回も都議の参加があり、しかも先週のように民主党ばかりではなく、共産党からも出席者があったことは、これも幅の広がりとして嘉すべきことと思います。また、議員の方も政策についてかなり詳しく(本来「ご挨拶と決意表明をお願いします」と司会者が言ったにもかかわらず、そして時間が迫っていたにもかかわらず、各議員さんとも詳しくお話をしてくださったと思います)話を聞けたのも成果でした。また、議員の方々からこういった運動が一定の影響力を持っていることを伺えたことも、有意義でした。共産党の吉田都議が「先駆的な運動」と評されていましたが、共産党ならそこは「前衛的」と言って欲しかったという戯言はさておき、その程度には認識されてきているわけですね。

 政治的過程については小生は分かりませんけれど、民主党の吉田都議の言うように、自公も巻き込めればそれに越したことはないでしょうが、この問題では道徳的なことがからんでいるだけに、落としどころがなかなか見えません。廃案にしてやり直せ、という共産党の吉田都議の方が筋は真っ直ぐですが、もちろん政治的な解決は筋が真っ直ぐなことだけで通るわけではないことは承知しているつもりです。とはいえ、民主吉田議員の指摘するような大きなモメントがあるのなら、リバウンドを懸念して妥協による押さえ込みを図るだけでなく、そのモメントの拠って立つ基盤をどうするかも、中長期的に考える必要があろうかとは思います。

 さて、これだけ聞けば、さすがに鈍い小生にも、この問題のポイントはいくつか分かってきたように思います。
 規制反対運動に際し、「表現の自由」を大看板として掲げることはもちろん大事ですが、もっとも広くこの条例案の問題点を受け入れてもらう論点は、おそらく「家庭の中まで条例で縛ることはおかしい」ということになるのではないかと思います。家庭の尊重は左右問わず掲げていることであり、どう尊重するかは異なっていますが、少なくとも官憲が口出しすることは避けるべきという点では、どことも賛同できようかと思います。
 そしてまた、これまでの「有害図書規制」が効果を挙げており、そのことを都も認めているということも、論点になりましょう。問題がある→何か対策、ではなく、問題なくやってます→ではもっと規制、では筋が通りませんし、「規制の拡大解釈なんて心配しすぎじゃない?」という意見に対して、規制すればするほどもっと規制されてしまうという問題点を指摘できます。
 もちろん、PCの扱いに見られるような、怪しげな意思決定過程や、恣意的な運用による弊害を指摘することなども、引き続き重要なカードとなるでしょう。いくつもの問題点を有機的に組み合わせて、説得的な議論を構築する手がかりに、当ブログも裨益できれば幸甚です。

 最後に、会場で耳にした情報(裏取ってません)を備忘まで附記。詳しい方のご指摘がいただければ幸いです。

・この都条例の本命はむしろ携帯電話規制にあり、反対の激しい「非実在青少年」は妥協しても、携帯規制の方を通そうとするのではないか。
・小説は関係ないという声があがっている模様。決して無関係ではないので、注意してほしい。
・「文学フリマ」でも、会場から区分陳列を要求され、「文学の即売会ですが」と抗議しても「でも同人誌でしょ?」といわれたとか。
[PR]

by bokukoui | 2010-05-25 23:59 | 漫画 | Trackback | Comments(2)

トラックバックURL : http://bokukoui.exblog.jp/tb/13812431
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by kuma at 2010-12-11 18:50 x
池上「いい所に気がつきましたねぇ。図を用意しました」

日教組

ジェンダーフリー

男女共同参画 ← 政官民癒着

都青少年健全育成条例


Wikipedia「男女共同参画社会」より引用
「メディアにおける男女共同参画の推進」として、
児童を対象とする性・暴力表現の根絶や、
インターネットのフィルタリングを一層普及させるよう促進している。


男女共同参画局の利権がからんでくるから、
予算獲得のためにドギツイ事してくるよ。
利権のためには何でもする民度の低い人種だから。
Commented by bokukoui at 2010-12-14 18:06
コメントありがとうございます。
然し、分かりやすい悪役を設定してしまうことは、究極的には自分の首を絞めてしまうことになると思いますので、そのあたりは慎重に考えるべきことと思います。
名前
URL
削除用パスワード