百合アンソロジー『つぼみ vol.8』 感想(祝隔月刊化)


 当ブログは昨晩(というか本日未明)に交通博物館解体工事や跡地に見る万世橋駅跡の写真記事をアップしたばかりですが、これまで vol.6vol.7 と感想を書いてきた百合アンソロジー『つぼみ』の vol.8 が発売になり、今回から隔月刊行になったことを記念して、発売日に買って読んでみました(これまでは発売日の前日に店頭に出回っていたのですが、今回は三連休明けが発売日だったせいか、前日の店頭では見かけませんでした)。
 それではなるべく簡潔に(これは毎回の課題ですがうまくいきませんね)、以下に感想を述べてみます。






 収録作品は以下の通り。
私屋カヲル カバーイラスト
加茂 カラーイラスト

玄鉄絢「星川銀座四丁目」(話数表示なし)
森永みるく「ひみつのレシピ」6ページ目
きぎたつみ「ロンサム・エコー」下編
大朋めがね「Green.」episode:3
鈴菌カリオ「花と星」1話
かずといずみ「めとらば」後編
コダマナオコ「レンアイマンガ」第3話
由多ちゆ「神様とあめふらし」
小川ひだり「ふとめちっくらぶ」
宮内由香「夏の思い出」
カサハラテツロー「タンデムLOVER」#4
藤が丘ユミチ「エンドレスルーム」vol.3
縞野やえ「ゆめよりすてきな」
ナヲコ「プライベートレッスン」#5
吉富昭仁「しまいずむ」その13
 先に全体の感想を述べておきます。
 まず、隔月刊化に対応して続き物が増えて(前号あたりからその傾向はありましたが)、「読み切りいっぱい」と謳っていた頃とはだいぶ変わっていますが、そのお陰か個々の作品の読後感としては「重量感が増えたなあ」という感を受けます。話数を重ねてストーリーやキャラクターが描けるメリットですね。特にきぎたつみ「ロンサム・エコー」やコダマナオコ「レンアイマンガ」などにその印象を受けました。

 ところがこれと相反するようなのですが、本巻一冊を読み通した際はむしろ物足りなさを感じるのです。小生個人としてのその直接の原因は、毎回楽しみにしていた水谷フーカ氏の作品が今回載っていないというのが大きいと思われますが、まあこれは今号と同時に水谷氏の単行本が二冊も出ていますので、そっちで補充するとして(もちろん『つぼみ』と同時に買いましたが、感想は今後ということで)、単純に作品の本数を数えてみた場合、今まで18本の作品が掲載されていたのが、今回15本しか掲載されていません。ページ数は同じなので、一本あたりのページ数が増えて、それが如上の個別作品の重量感に繋がっているともいえますが。

※水谷フーカの新刊
右上:『つぼみ』掲載作収録の『この靴しりませんか?』
左:4コマの『うのはな3姉妹 1巻』


 とまれ、刊行ペースアップと単行本化作品の登場で、多少傾向も変わりつつあるのかもしれませんが、単行本で二度楽しめる読み応えある続き物と、いろんな「百合」がいっぱいで楽しい読み切りものと、両方のバランスのとれた誌面作りになるよう、『つぼみ』の発展を願ってやみません。少なくとも、「プライベートレッスン」の単行本が出るまでは(笑)


 それでは、個別の作品の感想を、いくつか印象に残ったものを選んで述べたいと思います。記載順に特に意味はありません。

・きぎたつみ「ロンサム・エコー」
 いよいよ物語も完結で、ある意味今号の一番の期待だった作品。前2回分に引き込まれるところ多く、続きを期待しつつもこのペースでちゃんと終わるのか多少懸念もしていました。
 で、新任女性音楽教師の律子姉さんと、その宛がわれた準備室に居候していた謎の少女・ヨーコとのお話も最終回。前回浮かび上がった律子さんの謎が明かされ、そしてヨーコによって律子さんはその謎の正体に立ち向かうのですが、巻末あとがきで作者が「最後は駆け足気味になってしまいました」と書かれているように、一気呵成な展開でした。しかし、くだくだとその「謎」の詳細を説明するよりも、それは思い切ってはしょってヨーコが律子を引っ張る様に専心して描いたことで、結末への流れがスピード感あるものになり、良かったと思います。大団円。
 12月には単行本も出るそうで、是非それも手に入れたいですね。今後も描いてくださると嬉しいのですが、次回予告には名前が・・・

・コダマナオコ「レンアイマンガ」
 この作品も3回目ですが、お話は佳境に入ったところで、まだ続きます。
 で、お洒落なマンガを描くけれど本人の性格は真逆な黒井先生と、そのお洒落なマンガにあこがれて人生を前向きに変えた編集者ハルカのお話・・・と思っていたら、伊藤編集長(既婚女性)が結構重要な存在に。病気で寝込んだ黒井先生(余談ですが今話のタイトルバックの、パジャマ姿の黒井先生の胸元がふくよか)の世話女房を甲斐甲斐しく務めるハルカですが、過去のネーム打ち合わせ資料を見て(伏線回収)、黒井先生と当時黒井先生の担当だった編集長との深いつながりを知ります。根暗な黒井先生がお洒落な漫画を描けた秘密は、編集者にあったのでした。で、その辺いろいろ(ハルカのお見合いだとか)あって、二人の関係はまた微妙になっていきます。
 というわけで、背景キャラかと思った編集長がクロースアップされたと感じられた今回でしたが、こんな風に話が積み重なっていくのは続き物のいいところですね。女の子同志の恋愛を「百合」と定義するならこのマンガは「百合」ではないのかもしれませんが、何かを作るとともに人間関係も深まっていくような話は、小生は好きです。
 ところで全くどうでもいいんですが、最後のコマで描かれている『月刊スイーツ』の表紙の中に、どうも「新連載! ときめいて自己破産」と書いてあるように読めますが・・・ちょっと読んでみたい気も(少女マンガ版『ナニワ金融道』みたいなんでしょうか)。

・鈴菌カリオ「花と星」
 今回本誌初登場の作家さんです。小生はこの方の作品を今まで読んだことがありませんでした。
 で、中学まで卓球に打ち込んでいた花井さん、どうしても勝てない相手の存在に、結局卓球を諦めて高校進学しますが、入学式で出会ったのがその勝てない相手・星野さんでした。嫌いつつも自分と似たところも持つ星野さんに心乱される花井さん。
 星野さんの表情、というか特に目の描き方がすっごく怖い(笑)のですが、その怖さがあるからこそ、時たま見せる星野さんの笑顔や困った表情が、強く印象に残ります。で、小生は最初読み切りだと思っていたのですが、よく見ると「1話」と書いてありました。一読した感では、これで見事なエンディングになっていて、冗長な説明よりも星野さんの表情一コマで終わりにしたからこそ読んで胸を突かれるように思われ(だからこそ星野さんの普段が「怖い」描かれ方の効果が生きるかと)、続きが楽しみなような怖いような。

 あ、気がついたら悪い癖で無駄に長くなっていた・・・簡潔に、簡潔に。それにしても、説明をはしょることでかえって読者への説得力を上げている作家さん方には、いつもいつも感心します。小生は説明過多と説明不足の両極端に陥りがちなので(このブログ読めば分かりますね)。その理由はいろいろ思い当たりますが、それは別の機会に。

・玄鉄絢「星川銀座四丁目」
 単行本も出て新たな展開、というか回想篇になったようです。不登校の小学生・乙女ちゃん(しっかり者)と、彼女を引き取った湊先生(だめ人間)の関係を描いてきた本作、二人の出会い時代に遡っています。これはこれで意外な展開ですが、実は小生第1話の載った『つぼみ』は読んでないもので、これはやはり単行本買うべきかな。
 今回では、ニーソックスをはいた乙女ちゃんの脚の描写、特にソックスの上に微妙にのっかった太ももの感じが印象に残っております(小生は「脚フェチ」じゃないですが)。

・森永みるく「ひみつのレシピ」
 会員数も出席率もいまいちな料理部を盛り立てんと奮闘する部長と、その部長さんに恋した若槻さんとのお話。毎回ドタバタで、今回は部長が尊敬する前部長が登場しましたが、ちょっと途中は中だるみな気がしなくもありませんでした。・・・が、オチがちゃんとついたので、まあ「百合」を狭く解釈した場合はどうかというオチかもしれませんが、なかなかありそうな話だし、つい笑ってしまいました。

・宮内由香「夏の思い出」
 久しぶりですね。祝再登場。
 同性の相手に伝えられない想いを抱える主人公、というのは「百合」の中ではよくある形なのかもしれませんが(『つぼみ』では比較的少ない?)、今作はページ数の関係もあってかややあっさりしすぎの感を受けました。宮内作品では前にも同様のお話を描いていて、それと比べてしまったからかもしれません。テンプレなお話でも、料理の仕方では印象に残るのですが、その点があっさりだったかなあと。

・小川ひだり「ふとめちっくらぶ」
 こちらも久しぶりの登場ですね。
 ふとましいむつみちゃんと彼女のことが好きなかえでちゃん(ちっちゃくてつるぺた)の二人のお話ですが、あれだ、今回の『つぼみ』のエロ担当(笑)なんでしょうか。以前の vol.2 のお話が結構好きだったのですが、お話以上にその絵が可愛くて好きだったので、今回のこれもいいかなあと。

 ところで概して、女性が望む理想の体型と、男性が好む女性の体型って、後者が前者より一回り太い(太いことに許容的)のように思われますが、だとすれば太い女の子を肯定的に書いている作品を載せている『つぼみ』って、男性読者が多いんですかね。これは、以前『つぼみ』を貸したところレビューを書いてくれた(vol.6 のレビュー及び vol.3・vol.5 のレビュー)友人の「たんび」氏が、『ひらり、』などと比べて『つぼみ』は男性読者が多い筈、きっと過半はそうだと主張されていたのですが。どうなんでしょうか。

・ナヲコ「プライベートレッスン」
 女子高生のたまこちゃんの、従姉でピアノの先生のとりこ姉さんへの想いを描いた本作も5話目になりました。・・・んが、今回は事実上とり姉さんは登場しません。その代わり、ではないけど籠原さんが再登場してます。とり姉にとって自分はどんな存在なんだろうと悩むたまごちゃんが、とり姉が慕うはね先輩に再び会って・・・。それにしても、誰かに対する「特別な」想いは、同時に誰かにとって自分も「特別な」存在になりたいという願望にもなるものですが、この「特別な」想い=恋愛としてしまわないで、様々な想いに普遍的に通じる話に毎度ながらなっているのは、全く以て素晴らしいこととは思いつつも、うっかりそのことについてあれやこれやと考えを巡らした日には、結構精神的に自爆しそうな気がするので、とりあえずこの辺でお茶を濁して、いろんな「特別な」想いが描けるのは続き物のいいところで、隔月刊になって良かったですねと締めくくろうと思ったら、次回予告にはナヲコ先生の名前がなかったりして、やはり世の中想いのままにはならぬのであります。

 ところで、前回の vol.7 で、「写植間違いがある」とツイッター上でつぶやかれていたナヲコ先生でしたが、今回はもっと重大な事態が発生しております。
つぼみ、ネームで名前まちがえたよヽ(゜▽、゜)ノってとりあえずツイートしときます…
2010年10月12日 17:32:26 ついっぷる/twippleから
 えーとこれは、313ページのはね先輩の台詞ですね。「とりちゃん」になるべきところが・・・。これは読んでいる時に「ん?」と思いましたが、やっぱり間違いだったようで。前回のこともあるし、ナヲコ先生いろいろ大変なのかと心配にもなります。ここはやはり、ハルカさんのような編集者とか、小桃ちゃんみたいなお手伝いさんがいれば・・・

※追記:名前間違いの件についてナヲコ先生のブログで説明がありました。・・・誤植の結果とり・はねペアのイラストが一枚多く見られたと思えばお得かも?

 例によってまとまってませんが、とりあえずこんなところで。

※更に追記:友人のたんび氏が本書の感想をものされましたので、是非ご一読下さい。

※更に更に追記:続巻の感想はこちら→vol.10 / vol.11 / vol.12
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by bokukoui | 2010-10-12 19:15 | 漫画