百合アンソロジー『つぼみ vol.10』 略感

 折角の三連休なのに雪がしんしんと降り積もっておりますが、皆様お変わりはないでしょうか。小生は寒さに縮こまっておりますが、流石にいろいろと引き籠もってばかりもおられませんで、いろいろやっていこうと思います。

  さて、この週末は、ナヲコ先生のファンにとっては単行本『なずなのねいろ 3巻』と連載の載っているアンソロジー『つぼみ vol.10』とが同日付で発売、という有り難い日です。雪でもお出かけする必要がない、家で熟読玩味せよという天の配剤でしょうか。

 そんなわけで、ひとまず『つぼみ』の方をざっと読んだので、簡単に感想をば。『なずな』の方は諸事情あってまだ手に入れてませんので・・・。
 『つぼみ』の感想は当ブログでも過去に vol.6 / vol.7 / vol.8 と書いておりましたが、vol.8 で隔月化された後の vol.9 は、全般的な不調というのもあり感想を書けませんでした(ナヲコ先生の「プライベートレッスン」が休載だったのも士気低下の理由ですが)。今回はリハビリがてら、軽く一筆感想を物してみようと思います。

 まずは掲載作品と作者の一覧を。



大槍葦人 カバーイラスト
本庄雷太 カラーイラスト

玄鉄絢「星川銀座四丁目」Part.A, Part.B(2話構成)
森永みるく「ひみつのレシピ」8ページ目
鈴菌カリオ「花と星」3話
鈴木有布子「キャンディ」第4話
由多ちゆ「くらいもり、しろいみち」第一話
藤が丘ユミチ「エンドレスルーム」vol.5
袴田めら 「最後の制服 とくべつへん」
たいしょう田中「あずきとくるみ」
縞野やえ「あなたのもの」
コダマナオコ「レンアイマンガ」第5話
大朋めがね「Green.」episode:5
やとさきはる「センチ・28cm」
縞野やえ「ガールは待ったなし」
ナヲコ「プライベートレッスン」#5.5
吉富昭仁「しまいずむ」その15

 ページ数や作品の数は前号などと変わっていないようですが、袴田めら 「最後の制服」は宣伝を兼ねた短い作品なので、その分他の作品の一つあたりページ数は少し多いのかも知れません(ちゃんと数えてませんが)。また、今回は読み切り(第○話のような表記がないもの)が5篇あり、vol.9 は一つしかなかったのと比べ、最近すっかり連載志向になっていた傾向に歯止めがかかっています。個人的には、これははどっちかというと好ましい傾向と思います。もっとも vol.9 で「第1話」とか「その1」とか書かれていた作品が2篇ありましたが、今回それがどっちも載っていないのはどういうことか。
 一方これまでお馴染みだった、そして小生が『つぼみ』を購読する強いインセンティヴになっていた、水谷フーカ・きぎたつみ・関谷あさみといった諸氏の作品が掲載されていないので、その辺は読み終わった後少々寂しい印象を受けたことは否めませんでした。隔月刊行になった結果、作品の掲載ペースが上がるというより、一回おきの連載が増加したというのでは、何だか本末転倒のような気がしますが、次回以降はどうなるのでしょうか。

 それでは個別作品の感想を、なるべく簡単に述べていきましょう。

・ナヲコ「プライベートレッスン」
 先号は休載でしたがめでたく6話目・・・・と思ったら「#5.5」と、今回は番外篇。ですがページ数は今までと同じです。お馴染みのたまごちゃんととりこ姉さんにはねさん、ではなくて、何回か登場していた籠原ゆきみちゃんのお話。
 籠原さんはお隣さんの未来(みき)ちゃんと仲良し、というかべったりなのですが、実は他の人とは話せない、そのことをみきちゃんは・・・という結構ずっしりめなお話。ナヲコ先生の作品の、『voiceful』でも『なずなのねいろ』でも、音楽は世界とつながる手立てとなっていきますが、籠原さんのピアノはどうなるのでしょう。たまごは孵りはねは羽ばたきとりは飛んでも、やっぱり籠はかごのままなのか。続きが気になりますが、思い出してみればたまごちゃん周囲もややこしいところで前回終わっているので、気になり方が倍増です。
 ところで本話では、籠原さんと未来ちゃんが添い寝しているシーンが、これは決して贔屓目ではないと信じるのですが、今回の『つぼみ』の中でも最も――「エロい」などと俗っぽく言いたくはないのですが、なんというか畏友の表現を拝借すれば、生々しい体温を感じます。これは・・・!!

・鈴木有布子「キャンディ」
 今回常連陣(と小生が思っている)方々にお休みが多めでしたが、そんな中気を吐いていたのが本作と思いました。本作は上掲畏友・たんび氏がイチ押ししてましたが、確かに今回はなかなか。
 「百合」な中に登場する男のキャラクターの扱いは、なかなか微妙なものがあるのでしょう。蕎麦屋のラーメンみたいな!? 小生はよく分かりませんが、そんなもの要らないという強硬派の方もおられるようです。しかし一方、これは私見ですが、女の子ばかり登場していても、その作品世界が両性で構成されているであろうと自然に納得できることはそれなりに意味のあることで、読んでいて「この世界は女性しかいないのではないか」とふと思うと、そういう世界を積極的に創作する意味を説明してくれないと、何となく落ち着かないのです(小生がカサハラテツロー「タンデムLOVER」にいまいち乗り切れないのはその辺もあります)。
 が、このお話は男キャラクター・佐渡のお陰で面白くていい感じ。これまで数話でめでたくお付き合い関係になった可南と一条さん、日曜日にいざデートと出かけてみたら、二人の好みが微妙にすれ違って気まずい感じ。そこに登場した佐渡が・・・という展開。ちなみに佐渡、オチが酷すぎw(褒めてます)
 佐渡氏の台詞を一つ引用。可南に向かって佐渡「勘弁してくれよなあ あんな美少女がよ~~~~~ お前だって見てくれ悪くねーのに 男はあぶれる一方だぜ」可南「知らないよそんなの」

・コダマナオコ「レンアイマンガ」
 性格は根暗だけど格好いいマンガを書く黒井先生と、その黒井先生のマンガにあこがれて編集者になった担当編集羽田さんのお話もいよいよ佳境、でしょうか。黒井先生の役に立ちたくて一生懸命な羽田さんと、その羽田さんに甘えすぎてはいけないと思った黒井先生とがすれ違ってすったもんだ、な展開でしたが、「読者のため」の一念ですれ違いがまたかみ合うさまはしみじみします。
 ところで「百合の男キャラ」話つながりで言えば、この「レンアイマンガ」の2話前、4ヶ月前の vol.8 で羽田さんとお見合いしていた男がおりましたが、vol.8 では一コマのみの出番でまともに顔も描いてもらえなかったのに、今回堂々6頁にわたって登場。最初誰だっけこれ、と思ったのはここだけの秘密ですが、最後の締めに彼がなにがしか大事な役割を果たすのでしょうか(個人的にはそっちの方が面白そうな気がします)。続きに期待。

・縞野やえ「ガールは待ったなし」
 今まで主に単発の作品を幾つも(前後篇のはあったけど)を『つぼみ』に書かれていた縞野氏ですが、今回は絶好調なのか何なのか一挙2篇、別々のお話を掲載。「あなたのもの」の方はあこがれの女の子に近づきたいと化粧品など身の回りのものを真似してしまう女の子のお話で、まずは「百合」として自然な展開ですが、一方こちらは本巻一の、否、これまでの『つぼみ』の中でも屈指の問題作
 どう問題作なのかははっきり説明しないといけないので、ネタバレがいやで本誌を読む予定のある方はここで引き返して下さい。







 そんじゃあらすじを説明します。




 西園寺財閥の一人娘・紗代子さんと、バスケ部のエース・千佳さんは誰もが認めるカップル、というか紗代子のお供の黒服の方々が、いつも紗代子と千佳の関係を気遣う有様。なぜならば、紗代子は腹の立つことがあると、

巨大化してしまう

のでした!!
 んで巨大化すると怪獣映画状態になって街を踏み潰す(復興費用は西園寺財閥持ち)ので、黒服どもが紗代子と千佳が喧嘩しないよう気を遣っていたのでした。
 小生は、女の子=巨大化というと駕籠真太郎先生の作品を思い出してしまいますが、それにしたって「百合」では珍しいコメディものと思います。インパクトは絶大。巨大化したお嬢様から退避を促す放送も「パンツが見えると喜んでいるうちに 踏み殺されてしまいます」って・・・。
 んで後半は巨大化したお嬢様を怪獣映画よろしく戦闘機で攻撃(麻酔銃)し、千佳がそこにスカイバイクで参戦するのですが、そこはやはり百合マンガだけにバトルしながらの二人のやりとりがメインであって、戦闘自体はコメディ的に描かれています。具体的には、登場する戦闘機の絵がすっごいチープ、わかりやすくいえば遊園地のアトラクションみたいな、いやいや、デパートの屋上で100円玉入れると動く幼稚園児向け遊具みたいな、そんな風に描かれているあたりが、作風と相俟っていい感じです。・・・縞野先生、まさか真面目に描いてあの戦闘機ってことはないですよね!? 
 まあとにかく、最近「女の子が空飛んで戦闘する」マンガやアニメはいい加減願い下げにしてほしいと、痛切に、本当に痛切に感じていた小生ですが、こういう切り口もありなのかと感じ入った次第でした。
 
 とまあ、問題作に意表を突かれすぎて書くのに疲れましたので、ここで一旦切ります。もしかしたら続きに個別の感想を加筆するかも知れません。
 何冊も読み続けて多少マンネリの感もないではないかな、と思わなかった訳でもないですが、しかし今回は続き物でない作品も増えたので、また意表を突かれる作品にも出会えそうです。

※追記:続巻の感想はこちら→ vol.11 / vol.12
[PR]

by bokukoui | 2011-02-11 23:59 | 漫画