半世紀前の新築駅舎の平面図~『秋田鉄道管理局史』より

 前回の記事「半世紀前の国鉄官舎(宿舎)の間取図~『秋田鉄道管理局史』より」に入れるはずだったのが、分量が多くなりすぎる等の事情で先送りにしたものの補足です。1959年7月に建てられた新庄駅と、同年9月に建てられた大曲駅の駅舎の図面です。




 まず、半世紀前の当局が駅舎建築についてどう考えていたのか、本文を引用してみましょう。
 駅本屋の建築は、現在に至るまでほとんどが木造平屋建で、その大半は、日本建築風の古風なもので、現在の進展している市町の玄関口としては、およそ不似合なものとなつてしまつている。
 また機能的にも、保健衛生の観点からも、旧態依然のそしりを免れない現状である。これらの近代化のため、従来の木造建築物、衛生的にも、機能的にもあるいは又、保守的にも最も理想的な建築物である鉄筋コンクリート、あるいはコンクリートブロック造りに代わりつつある・・・
(p.371)
 というわけで、最近もてはやされそうな「歴史的」駅舎は「旧態依然」と退けられ、それを「近代的」に建て替えつつある時代だったのです。

 それでは早速図を見てみましょう。まずは新庄駅。
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新庄駅駅舎(1959年7月)平面図
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新庄駅駅舎(1959年7月)断面図・診療所(1960年3月)平面図
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新庄駅の写真

 ついで大曲駅の駅舎を。
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大曲駅駅舎(1959年9月)平面図
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大曲駅駅舎(1959年9月)断面図

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大曲駅の写真

 以上どちらの駅も、建てられた時期が近く類似した構造になっています。駅舎の平面構成について、『秋田鉄道管理局史』はこう述べています。
 近代化の姿を平面的な角度からみれば、在来見られたような雑然とした配列と、無駄な室内形態をなくして、最少の面積で、しかも機能的な平面に変わりつつある。(p.371)
 ということで、コンパクトにまとめるということが眼目になっています。また、室内の具体的なしつらえについては、
 ここで第1に考えられることは、便所の改良である。すなわち、在来の汲取式は非常に不衛生であるばかりでなく、又非文化的であるので、これを極力、水洗式に改良しようとするものである。
 次は職員の休養室であるが、在来の畳敷きを廃止して、ベッド式とし、「ベッドルーム」と他の室を分離して、十分休養がとれるようにしている。又在来の湯沸ところ、すなわち駅員休憩室は、造付ロッカーを整備したり、木製長椅子をソファに代える等職員の厚生に努力している。
 また旅客の接遇の面から、中駅以上の駅では旅客の流れを考え、又防寒的な見地からも、待合室とコンコースの分離が大きく取り上げられている。・・・
(同上)
 もっとも、掲げられた大曲駅の平面図をよく見ると、二つある「寝室」のうち図の下側の方は、四畳半の畳敷きのように見えますが。また大曲は、寝室を通らないと休憩室に行けないようにも見えますが・・・ホーム側から行けるのかな。また、どちらも駅長室がかなり広く休憩室や寝室とあまり変わらないくらいに見えますが、これは応接室のような役割も兼ねていたのでしょう。そして広い小荷物室の存在が、宅急便のなかった時代を感じさせます。
 なお建物の構造は、どちらも鉄筋コンクリートに屋根が防水モルタルだそうです。

 小生は両駅の駅舎が現在どうなっているのかよく知りませんが(新庄は山形新幹線延伸で改築したと思われますが)、こんな感じの駅はまだ時折見かけます。しかし半世紀経っているものの、戦前の駅舎ほど「レトロ」(小生はこの言葉が好きではありませんが)な雰囲気があるでもなく、今ひとつ保存しようとか価値を評価しようという動きは聞いた覚えがありません。もしかするとそれは、これらの駅舎がなお十分「近代化」された
センスを保っていることの表れなのかも知れません。
 駅舎の見た目については、こんな記述があります。
 構造あるいは美観の面に、時代的感覚を十分に取り入れた、明るい本屋というのが、立面的に考えた近代化の姿であつて、しかもその美の表現は整然とした簡素な立体美であるといいうる。(同上)
 敢えて目立とうとしない、「整然とした簡素な立体美」というその理念故に、あるいはいまだ注目が集まっていないのかも知れません。今はむしろ、ある程度以上の駅であれば町の名物的に意匠を凝らす方が多いようでもあり、それはそれで結構と小生も思いますが、このような統一的な理念で各地の駅が作られていた時代についても、その意味を歴史的に捉えるべき時期になりつつあるのかも知れませんね。
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by bokukoui | 2011-05-10 23:59 | 鉄道(歴史方面)