人気ブログランキング | 話題のタグを見る

筆不精者の雑彙

bokukoui.exblog.jp

羊串狗肉 東京で犬を食う話・続き~楽々屋@池袋、故郷味@御徒町

 例によって、天候のせいか鬱々と引き籠もっておりましたが、そんな話をしてもしょうがないので、むしろ精のつきそうな話題を。
羊串狗肉 東京で犬を食う話・続き~楽々屋@池袋、故郷味@御徒町_f0030574_23332238.jpg
犬肉のスープ・写真にはないがご飯付き(狗肉湯飯)
故郷味@御徒町にて

 というわけで当ブログでは既にお馴染み? の犬を食べに行った話を2軒分です。それも池袋にとどまらず、新規のお店を探訪してきました。といっても結構前のことですが。なお当ブログの過去の犬食話は、こちらこちらをご参照下さい。



 まず一軒目は、これは以前同様に池袋で訪れた店で、楽々屋といいます。
羊串狗肉 東京で犬を食う話・続き~楽々屋@池袋、故郷味@御徒町_f0030574_23441214.jpg
皮付き犬肉炒め
楽々屋(1号店)@池袋にて

 ここでは3人で訪れたので、犬料理はこれ一品しか頼みませんでしたが、他にも鍋や和え物があるようです。詳しくは同店のサイトのメニューの、「特色狗肉料理」のコーナーをご参照下さい。なんせ「特色」と銘打っているくらいですから、結構売りにしているのでしょうね。注文する人がどれだけいるかは分かりませんが・・・。
 食したのは随分以前のことでうろ覚えですが、炒め物の狗肉は大変柔らかく、犬特有の香りもそれなりにありましたが、玉ねぎの甘みもあって至極食べやすかった記憶があります。

 このお店はさすがに池袋らしく、白酒の品揃えもなかなか豊富で、値段もそう高くはありませんでした。まあ有名な茅台酒や五糧液なんかはさすがに高いのですが、五糧醇や金六福が2000円台で、老龍口もありました。もっとも在庫がどれだけあるかはこれまた分かりませんが。
 お店の見た目やサイトは、何だか最近よくありがちな安い中華屋のようで、一見「知音食堂」のようなディープさはありませんが、なかなかに実質は濃いお店でした。もう少し人数を集めて再訪したいと思っております。
 この店は池袋に複数店舗あるようですが、我々が訪問した1号店の場所を以下に掲げておきます。

 ところで、大変余談なのですが、このお店のあるビルの数件隣(駅に近い側)に、ペットショップがあるんですね。そして子犬や仔猫が売られているのですが、一歩引いて通りを見渡した時、このような異文化が併存しているわが国の社会状況は、決して悪いものじゃないと思う次第です。
 とはいえこの時、結構呑んでいた勢いで、犬を食したその足でペットショップに突入した某氏は、いかがなものかと思わなくもありません。

 引き続いてもう一軒、今度は池袋を離れ、これまた中華屋が結構ある上野界隈を訪れました。訪れたお店は故郷味といいます(お店のサイトはほったらかしのようなので、食べログにもリンクしておきます)。
 ここでは、訪れた時の人数が諸般の事情により多かったことから、犬料理も冒頭に掲げたスープに加え、皮付きの炒め物も注文しました。
羊串狗肉 東京で犬を食う話・続き~楽々屋@池袋、故郷味@御徒町_f0030574_027437.jpg
狗肉と青唐辛子の炒め物(炒帯皮狗肉)
故郷味@御徒町にて

 狗肉のスープは、以前に池袋で食べたものと似た感じでしたが、こちらのは豆腐などは入っておらず、池袋よりも辛めの真っ赤なスープに、骨付きの狗肉が幾つも入っています。これはこれでなかなか旨かったのですが、このメニューにはご飯がセットでついてきて、このスープをご飯にかけて雑炊風にして食べてみたら、これは更に一層うまく(品はないけど)、ご飯を追加で注文したくなるくらいです。
 皮付きの炒め物も、皮のコラーゲン?がぷるぷる、肉自体も柔らか、そこに青唐辛子の辛みが入って、なかなかに乙なものでした。青唐辛子は結構辛いですが、それを食すもまたよし。この日初めて犬を食された方の感想では、肉の食感がバサバサしているように感じられたそうです。言われてみれば狗肉の特徴として、そのようにも思えます。
 このお店も他に、狗肉の料理としては、火鍋や拼盤(和え物)があるようです。もっとも人数がいたとはいえ、他にもいろいろ注文していたし、暑かったし、ということで、この二品は注文しませんでした。
 お店の場所をこちらも掲げておきます。


 余談ですが、この故郷味を知ったのは、ひょんなことから見つけた「アワレみ隊OnTheWeb」というサイトの、辛い店巡り企画でこのお店が紹介されていたからです。膨大なコンテンツ量を誇るおもしろサイトですので、飲み食いや旅行の好きな方はどうぞ。量が多いので全部読んだ訳じゃありませんが、個人的には、1週間で東北地方の106箇所(当時)の道の駅を回りきれるか? という企画がとりわけ面白うございました。
 で、このサイトで故郷味にて狗肉を食した際は、拼盤を注文してややハズレっぽい展開になっていまして、それが拼盤を注文しなかった理由の一端ではあるのですが、しかしスープと炒め物は複数店舗で食しましたからには、いつか火鍋共々挑戦してみたいと思います。大体この4種類で、この種の中華料理店にある狗料理は尽きているようですし。

 さて、今回ご紹介した2軒のお店は、どちらもこういった料理が好きな方にはお気にいるでしょうし、狗以外のメニューも豊富で結構なものがいろいろあります。敢えて比較した場合、値段が安い点では(特に酒の)池袋のお店に軍配が上がります。一方御徒町は、これはあくまで小生の主観ですが、犬の風味が池袋よりあっさりめ(池袋の方が犬の香りが強い)のように思われます。また、犬の炒め物で比較した場合、皮のぷるぷる感もまさっているように思われるので、こちらの方がより多くの方に受け入れやすいのではないかと思います。あと、モツ系料理がとても充実しているのも魅力です。
 一方、この2軒のお店には、犬を出す以外にもかなり共通した点があります。それは店の売りが串焼にあり、しかし日本の焼鳥と違って、串の主役が羊だということです。クミンをたっぷりかけて焼いた羊は、日本人では抵抗のある人が少なくないかも知れませんが、好みが合う者にとってはビールのお供にたまりませんし、焼酎や白酒にも良く合います。
羊串狗肉 東京で犬を食う話・続き~楽々屋@池袋、故郷味@御徒町_f0030574_2285853.jpg
手前から鳥の頭の串焼、おに筋(?)の串焼、羊の串焼
故郷味@御徒町にて

 というわけで串焼も頼んでみたのが上掲の写真です。ちなみに他に二つも他ではあまり見ないもので、鳥の頭は骨が多くてちょっと食べにくいですが、しかし骨の周りの肉は旨いと相場が決まっていますし、実際肉は柔らかでなかなかのものでした。鳥頭だけに西原りえぞうファンの方は一ついかがでしょうか。

 この羊の串と関係があるのか、どちらのお店とも「延辺料理」という看板を掲げています。延辺、というより、日本近代史専攻としては間島(かんとう)と呼んだ方がピンと来ますが、中国の東北地方(旧満州)でも朝鮮半島に接した地域のことで、そのため朝鮮半島から移民してきた朝鮮族の住民が多く、現在の中華人民共和国でも「延辺朝鮮族自治州」というのが置かれています。池袋にたくさんある中華料理店は、横浜中華街のような華南の華僑によって形成されたものではなく、近年の主として中国東北地方からの移民によるものが多いといいますが、もともとその地域は朝鮮系の人が多いわけですね。
 というわけで、楽々屋のメニューには「韓国風」と銘打った項目がありますし、故郷味でも壁にマッコリの張り紙がでかでかと貼られていました。

 以前に当ブログで、石毛直道『鉄の胃袋中国漫遊』をネタ本に、中国に於ける犬猫食の話を書いたことがありました。こういう本を読んでいると、犬食はやはり中国が本場で、しかも「四本脚で食べないのはテーブルと椅子だけ」と言われるほど様々な動物を食する広東が、よく犬を食うという地方というイメージがあります。上掲記事でも紹介しましたが、30年前の広東では牛豚よりも狗肉が安かったそうで、庶民の味だったようです。今は分かりませんが、どうなんでしょうね。雑食で放し飼いにできるのが犬の安さの理由だったのでしょうか。
 少し前に、中国の浙江省で野良犬を若者が捕まえて、食うために捌いた一部始終をネットに流して、国境を越えて問題になったという事件があったそうですが(さらにそれについてデマがツイッターなどで流布されて、それはそれで別な騒ぎになったそうです)、この件については中国でも批判があったようです。ただそれが、犬を食べること自体への批判なのか、ネット上に捌く画像を流すことが問題視されたのか、野良犬を勝手に捕まえるなという話なのか、そのへんは分かりません。
 話を戻して、とまあ小生のイメージとしては犬食の本場は中国のような気がしていたのですが、日本の世間的には朝鮮というイメージの方が強いのかも知れません。『鉄の胃袋中国漫遊』などによると、昔は中国で広く狗肉が食べられており、さてこそ今でも四字熟語で使われている「羊頭狗肉」という言葉も生まれた(この言葉は宋代の禅書が出典だそうです)のでしょうが、それが犬を食わない遊牧民の征服王朝である元の影響などで廃れたのではないかということのようでした。もしかすると、中国の中原で廃れても、東北地方や南の方などでは残ったのかも知れません。
 これまで紹介してきた東京の犬食は、上に挙げたように羊の串を売りにするお店が同時に置いているようですが、羊の串焼きはやはり華南よりは蒙古に近い中国北方の料理でしょうから、広東の犬食とは別系統のものなのかも知れませんね(もっとも朝鮮料理で羊がどれくらい使われるかは疑問ですが)。

 というわけで今回の記事は「羊頭狗肉」をもじって「羊串狗肉」と題してみたわけですが、羊頭狗肉という言葉があるということは、中国でも昔から羊=高級、狗=安物、という通念があったんでしょうね。今の日本では、安いというよりゲテモノとして羊より犬が低く見られているので、意味合いは微妙に異なるようにも思われます。
 もっとも肉としては、羊も日本ではポピュラーとは言い難い気もします。今はジンギスカンやら何やらで羊の肉もかなり「普通」になりましたが、独特の匂いを苦手とする人も少なくないかと思います。ちなみに狗肉も、香りの点では羊以上に特徴があり、中国語では「香肉」という呼ばれ方もするそうです。小生は羊も好きですが、個人的な印象では、匂いの点では羊よりも犬の方がまだ食べやすいような気もするのですが、さすがにこの見解は同意してくれる人が少なそうには思われます。

※本記事は書き手の諸事情(やる気がない)によって完成が大幅に遅れてしまいましたが、途中で放って置いた段階で、当ブログでもしばしばコメントを下さった「とび」さんが、本記事に関連して犬食について考えさせられるトピック(在日朝鮮人と犬食)を書いておられましたので、ご関心のある方は是非ご参照下さい。
Commented by 無名 at 2012-06-30 02:47 x
先日鍋を食しましたが、美味しかったです。
専用の牧場で飼育している犬(チャウチャウですかね?)とのことなので品質が良いのでしょう。
Commented by bokukoui at 2012-07-22 18:26
「故郷味」の犬メニューには犬の品質について、仰る通りの記述がありましたね。やはり中国も所得水準が上がったことにより、犬も雑食なので安く飼えるから食うのではなく、品質が求められるようになったのでしょうか。
名前
URL
削除用パスワード
by bokukoui | 2012-06-20 23:59 | 食物 | Comments(2)