猫よりもマラソンよりも大事なこと

 ロンドンオリンピックも中盤となり、陸上競技が始まったそうですが、テレビを見る余裕もない日々が続いております(まあ元から見る気もないですが)。
 で、ロンドンオリンピックの陸上競技に関連して? 思い出したことがあったので一つ。

 もう結構前なのですが、小生が大学の図書館で論文執筆に苦吟しておりました某日、ふと、隣の席の人がいろいろと机に広げてこっちにもはみ出しかかっていた、資料らしきコピーの一枚が目に留まりました。
 その人は白人男性で、おそらく留学生なのでしょうが、そのコピーも英字新聞の一ページをコピーしたもののように見て取れました。目に留まったのは、その新聞の記事の見出しに、「CSX」との文字があったからでした。CSX といえば、アメリカ東部でノーフォーク・サザン鉄道と勢力を二分する大鉄道会社です。さらに見出しを見ると、「Shares ・・・ Trading ・・・」なんて文字も見えます。さては、以前もあったCSXの株を巡る騒動がまた再燃したのでしょうか?

 と、一瞬思ったのですが、さらによく見ると事情が違っているようです。その新聞のタイトルは「The Cambodia Weekly」とあって、カンボジアの英字週刊誌? だったようです。そしてこの記事にあった「CSX」とは、Cambodian Securities EXchange のことだったのでした。つまり「カンボジア証券取引所」というわけです。
 で、帰宅後ぐぐってみたら、日本語でもこのような記事が見つかりました。

 ・熱いカンボジアを象徴する胡錦濤と証券市場 初のIPOに投資家が殺到、一時は大混乱も
 ・カンボジア証券取引所開設、殺到する投資家 市場に参加した日本人の成績はいかに・・・
 ・熱いぜカンボジア! 4月18日に株式市場がスタート
 ・“歴史的”なカンボジアのIPO第1号を体験してきた

 というわけで、カンボジアに証券取引所ができ、今年初上場企業が登場した、ということでした。
 内戦終結からざっと20年、カンボジアの経済は漸くここまで来たのだなあと思いましたが、それにしても今年日本でカンボジアが話題となったのは、日本人芸人がオリンピックのマラソンのカンボジア代表になろうとして却下された件くらいのようで、まあ世の中そんなもんだとも思えますが、もうちょっと前向きな話題で注目されても良かったのではないかという気もします。

 ところで、日本に株式取引所が開設されたのは1878年のことでしたから、戊辰戦争から10年余のことになります。戊辰戦争は内戦としてはさっさと片付いた方で、インフラへの重大な被害もあまりなく、もともと経済的な蓄積も一定あったわけで、もちろん最近のカンボジアと比較はできませんが、かなり早い段階で市場が設立されたようには思われます。
 実際、明治の開設当時には、「時期尚早」という反対の声も大きく、また株式の概念も十分には普及していなかったため、「公営の賭場を設けるのか」という批判もあったそうです。そのような声を押し切って株式取引所を設けたのは、主に渋沢栄一の働きによるといわれ、渋沢は日本の経済発展のために株式市場が必要だと強く主張して、自ら東京株式取引所の理事も務め、その定着にも貢献しました。
 もっとも、時期尚早という声も根拠がなかったわけではなく、当時はそもそも上場する企業自体がろくすっぽなく、国債・公債の類以外の株式といえば、東京株式取引所自体の株が圧倒的に多かった、というなんだか微妙な、やっぱり「公営の賭場」じゃないかという気もしてくる状況ではありました。まあ、一秒の何百分の一とかの間に売買を行う現在の株式市場も、賭場めいてる感もありますが・・・。
 ちなみに現在の日本で株式の指標といえば、東証株価指数や日経平均がありますが、昔は当然そんなものがなかったので、何が株式市場の指標になっていたかといえば、東京株式取引所(東株)の株価でした。確かに、最古参の株として相場の対象でしたから、これがもっとも妥当だったのでしょう。

 ロンドンオリンピックとあまり関係のない話でしたが、とにかく、経済発展のために先取りして株式市場というインフラをこしらえた渋沢栄一は偉大だった(でも少なからぬ連中は相場にふけった)、というわけで、カンボジアも今後順調な経済発展を遂げることを期待します。
 ところでその、記念すべきカンボジア証券取引所上場第1号は、国営の水道会社というインフラ企業で、今後の上場予定の大物企業も、やはり港湾や電話などのインフラ系企業だそうです。となるとここはやはり、鉄道も民営化して株式上場、と期待したいのですが、でも鉄道雑誌で時折読むカンボジアの鉄道の状況からすると、かなり難しそうで・・・相当資金を投入して整備しないと自動車に対抗できなさそうですが、それが費用対効果に見合うのか、上場しても誰が株を買うのか。
 19世紀の資本主義発展の牽引車、株式市場の花形は、イギリスでもアメリカでも日本でも鉄道株でしたが、21世紀はなかなかそうはいかなさそうですね。
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by bokukoui | 2012-08-04 22:30 | 時事漫言 | Trackback(1) | Comments(0)

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