拳銃と日本刀~『BLACK LAGOON』を読んでふと思う

 時には「オタク」に因縁つけるばかりでなく、その筋にどっぷりはまった話題を提供してみようかと。

 最近は5巻が出て(リンク先のレヴューでネタバレ書いてる者あり)、この四月からアニメ化もされた広江礼威『BLACK LAGOON』という漫画があります。ご存知の方も少なくないと思いますが、ガンアクションのかっこよさで多くの人を惹きつけている注目の作品です。この作品も、昨日の話題を引っ張るようですが、全体のストーリーよりは(主人公?ロックの成長は一応あると思うが)一齣一齣のアクションや台詞回しを鑑賞する作品なのかなと思います。
 こういった類の作品をものされる多くの執筆者の方の例に漏れず、広江礼威氏もまた銃砲には多大な知識とこだわりをお持ちのようです。実際、5巻の巻末にはこの作品で登場した銃の紹介が巻末付録として掲載されています。

 先程小生は「一齣一齣のアクションや台詞回しを鑑賞する作品」と本作を評しましたが、このような見方をすると、本作4巻~5巻の日本篇は、なんと言っても日本刀を織り込んだアクションを描くために物語が作られたのだ、そのように思われてきます。そして、日本刀で拳銃の弾を止めてしまうなど、随所に日本刀を駆使した見せ場があり、この2冊の読みどころの一つであろうと思います。
 さて、その日本刀を振り回すキャラクター・銀次に対し、若頭の坂東は次のような台詞を言います(4巻p.66 原文傍点は太字で強調)。
――己に、もう一度、白鞘を持ってほしいンや。
 つまり、この2冊のストーリー中で銀次が使っている日本刀は「白鞘」なんだそうです。

 ここで書架から名和弓雄『間違いだらけの時代劇』を引っ張り出してみると、こんなことが書いてあります。(pp.110-111)
 白鞘は刀の寝間着
 時代物の首斬り場面や、現代物のなぐり込みの場面に、よく白鞘の刀が登場する。だれが流行させたかは知らないが、これまた、間違いである。
 生き物はもちろん、巻藁でも、青竹でも、白鞘の柄のまま斬りつければどうなるか? 柄木(つかぎ)は二つに割れて、はみ出した中心(なかご)で手のひらに打撲傷を受けてしまう。白鞘の柄のまま使用するときは、割れないように、籐蔓を巻いて補強しておかなければならない。白鞘というのは“休め鞘”とよばれ、刀身がいたまないように保管するときに使われたもの。
 白鞘の鞘や柄は内部がよごれた場合、二つに割って、掃除をし、あとは米粒を練ったのりで貼るから、もともと割れやすいようになっているのだ。
 なにしろ、柄には、目釘穴の開けてないものさえある。これは大名の家などから出てくるが、これを見ても白鞘が休め鞘であることが証明されるはず。しかし、これとて、ものを知らない人たちによって、「あ、未完成品で、まだ目釘穴が開けてない」と、錐でごりごり穴を開けられてしまう。
 というわけで、白鞘は本来刀の収納ケースであって、実戦に使うものではありません。何でも刀が錆びてしまうと、鞘の内側にも錆が移るので、刀の錆を取っても同じ鞘に入れたらまた錆がついてしまうそうです。そこで白鞘なら二つに割って鞘も綺麗にクリーニングできる、というわけ。また、漆塗りの普通の鞘よりも、白鞘に刀を納めた方が木の通気性のお蔭で傷みにくいんだとか。
 ガンマニアの描いた漫画の刀剣描写にいちゃもんをつける、というのはちと外道な気もしますが、まあこれも間接アプローチという奴ですよ? 結局因縁付けみたいな内容は同じだけど。

 ちなみに、これは全く小生個人の勝手な推測ですが、白鞘の刀がやくざ映画なんかでよく出てきているのは、仕込杖と混同したのではないかと思われます。やくざ映画の時代は廃刀令以後(当たり前だ)なので、実際やくざが仕込杖を使った場合は多かったのかもしれませんが、そのイメージが段々混同されていったのかなあとも思います。
 刀の鍔は手元を守る意味もありますが、何より刀の重量バランスを保つのに重要だそうで、鍔をつけた普通の刀の方が仕込杖よりも扱いやすそうなんですが。

 今日は所用で出かけて帰宅が遅くなりそうなので、早まわしにこれで更新。
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by bokukoui | 2006-04-16 03:48 | 漫画