追悼 星晃さん

 このところ、寒さで縮こまってばかりいますが、そんな冷えた心へ更に寒風を吹き込むようなニュースが飛び込んで参りました。

 元国鉄副技師長の星晃さん死去 0系新幹線設計に携わる
 星晃氏が死去 元川崎重工業常務

 8日に亡くなられていたそうで、93歳の大往生でした。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 星晃さんは、旧国鉄の黄金時代の車両設計に携わった技術者で、多くの業績を残されたほか、鉄道趣味界へも多くの写真や資料を提供され(昭和30年代の国鉄の写真で、よく鉄道雑誌に載っているものの中には、星さん提供のがかなりあります)、幅広くその名を知られていた方と思います。
 小生も星さんの書かれた記事などはいくつも読み、さらには生前に、何度かお会いする機会もありました。その際に見聞した話については、当ブログでも何度か書いたことがあります。

 ・鉄道の話題
 ・鉄道と衛生の話・補足
 ・大塚英志・杉浦守『オクタゴニアン』

 星さんの業績は、毎度お馴染み Wikipedia ですと、国鉄の軽量車体の導入が主に挙げられています。まずはもっともな評価と思いますが、上掲「鉄道の話題」でも触れたように、小生がお会いした際に星さんがもっとも熱を入れてご自身の業績について語られたのは、車輌への水洗トイレの導入でした。
 その昔は列車のトイレと言えば垂れ流しだったのですが、これは不衛生であるというので、国鉄に新性能電車が登場した頃、タンク式にすることが提案されました。といって、単にタンクに流すだけではあっという間に汚水が溜まってしまうので、水を循環式にすという工夫がされました。今では当たり前となってしまっていて、何しろ目立ちにくい所でもあって、話題にはなりにくいですが、これがなければ新幹線も実現できなかった(東京~大阪ならタンクで溜めるだけでも何とかごまかせたかも知れませんが、それ以上の遠距離となるとパンク必至でしょう)かもしれない、大事な技術なのです。
 さらには、これは輸送機関としての面に注目されがちな鉄道技術史上に於いて、生活水準の向上や習慣の変化などの文化との密接な関係を示すのみならず、タンク式トイレ導入に際して汚水処理をする車両基地を設ける際の地元との調整が大変だったという地域との関係でもまた、いろいろ考える材料を提供してくれ、視野の広い話につながります。
 ちなみにトイレに関しては、以前当ブログでも前田裕子『水洗トイレの産業史 20世紀日本の見えざるイノベーション』(名古屋大学出版会)という本を紹介しましたが、これは非常に面白い本で、つくづくトイレ話の奥の深さを感じさせられます。

 偉大な業績を残された方を追悼するにはやや下世話に過ぎた感を抱かれる方もおられるかも知れませんが、しかし光の当たるデザイン面だけでなく、こういったところまで行き届いた配慮をしたからこそ、星さんは偉大な技術者だったのだと思います。
 改めて追悼の意を表します。
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by bokukoui | 2012-12-21 23:59 | 鉄道(時事関係) | Trackback | Comments(2)

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Commented by めかちゅーん at 2012-12-22 10:25 x
トイレの水洗化は地味ながらも大きな前進でしたね。

私の世代だと、停車時はトイレ使用禁止、というルールを身をもって体験した最後の世代ではないでしょうか?

汚水処理施設の建設で地元ともめるのも、実際の行政において下水処理場や火葬場、清掃工場などその手の処理施設では必ず反対運動が起こるので、調整には苦労されたかと思います。

必要でありながら、自分のところには来て欲しくないという、ある種のエゴが原因なのでしょうね。(仕方ないですが)

氏のご冥福をお祈りするとともに、衣鉢を継いだ技術者諸氏のさらなる活躍を祈念したいと思います。
Commented by bokukoui at 2012-12-23 23:59
コメントありがとうございます。
トイレの前面改良は、世界の鉄道でも先端的な事業といえ、星さんが誇られたのももっともと思います。

小生は、幼児に国電区間の電車以外にはあまり載っていなかったこともあり、「使用中は停車しないで下さい」の元ネタは記憶にないですね。この微妙な年齢差が、境界となっているのでしょうか。

日本の鉄道も、特に戦後はそういった問題に苦しんできましたし、その度合いも世界の他の国の高速鉄道と比べても深刻だったと思います。そのようなところまで配慮できてこそ、一級の技術者なのだとつくづく思います。

星さんが残された資料などを、後世にどう伝えていくのかも、これから考えねばならないと思います。
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