『鉄道史人物事典』が発行されました

 今月は暖かくなってきたから調子も良くなるかと思いきや、急に暖かくなったせいかそれはそれで日中は懈くて動けず、下血も再発している今日この頃ですが、せっかくの春なのに景気の悪い話をしても何なので、明るい話題を一つ。

f0030574_23361247.jpg というわけで、新刊紹介を簡単に。新刊といっても、既に先月末には店頭に出回っていたようで、小生も半月ぐらい前に送っていただいたものですが。

 鉄道史学会編『鉄道史人物事典』
 表題の通り、日本の鉄道の歴史上重要な役割を果たした人物について、その略伝をまとめた事典です。リンク先の日本経済評論社のサイトから引用すると、
創立20周年を記念して鉄道史学会が総力を挙げ編纂。国鉄のみならず私鉄や地方鉄道に関わった人物など580名を近年の研究動向も踏まえながら採録する。
 という一冊です。

 この説明にもある通り、編纂に当たったのは鉄道史学会で、そもそも同学会の20周年記念事業として始められた事業でしたが、諸事情あって完成には時間がかかり、発売が学会結成30周年になってしまったという、なかなかに難産な一冊であります。その辺の経緯については、本事典作業の中心を担われた鈴木勇一郎さんが、「『鉄道史人物事典』の編集と刊行」と題して一筆ものされています。



 鈴木さんも書かれている通り、このような日本鉄道史関係の人物事典としては、1972年(日本の鉄道開業百周年)に『鉄道先人録』という本が出ています。これはこれでなかなか重宝する本で、小生も持っていて使っていますが、国鉄関係中心で人物の取捨選択にやや?なところもあるほか、「先人を顕彰する」傾向が強いので評価が紋切り型に褒めるものになりやすいなど、多少の問題もあります。もっとも、可能な限りの人物の肖像写真を集めて掲載していたところはなかなか大したものですが。

 というわけで、この『鉄道史人物事典』は、国鉄のみならず私鉄や地方で貢献した人々もなるべく載せるようにし、新たな研究で判明した事実を取り込むのはもちろん、出典となる資料も明示してより深めたい人の手がかりにもなるように編まれました。 この種の出版物としてはやむを得ないことですが、少々お値段は張るものの、全部で600人に近い人物を載せている情報量に鑑みて、ご関心のある向きは一つ宜しくお願い申し上げます。・・・まあ、このような本は個人で買うよりは図書館などに収められて活用されるようなものではあるでしょうが。ですのでもし今後どなたか、日本の鉄道史上の人物について調べたいと思われましたら、ネットで検索するよりも、まず本書を見るようにして下さい。
 もちろん、事典という性格から、一つ一つの項目には分量的な限りがありますし、関係する資料も網羅的に掲載されているわけでもありません。ですが、現時点で通説的にその人物がどのように把握されているのか、という基準を明確にしたことには、研究史上大きな意義があろうかと思います。
 事典ですから通読するようなものでもないでしょうが、ページを繰っていると例えば、地方の鉄道建設をした名望家のような、こんな人もいたんだという発見もあり、そのような楽しみはやはり、コンピュータのデータベースとは違った紙の事典ならではのものですね。

 さて、個人的なことで恐縮ですが、小生も縁あって本事典の項目を何人か執筆しております(なので一冊貰いました)。本事典編纂の企画が持ち上がった頃は、小生は学部生で学会にも入っていませんでしたから、そんな若輩に話が回ってこようはずもなかったのですが、既に述べたように本事典の編纂に時間がかかり、またなかなか執筆者が決まらない項目も残されていたようで、小生にもお鉢が回ってきた次第です。微力ながら、限られた紙数になるべく必要なことを盛り込むよう努力したつもりですが、かえってくだくだしくなったようにも思え、今にして後悔の念がないではありません。
 とはいえ、鉄道史の学術書に関して多大な実績のある、日本経済評論社から出た本の執筆者の中に、自分の名前が載っているのは、やはり正直嬉しいものです。なお本書は全部で60名の執筆者がおり、中には原田勝正先生のように、本書の発行を見ることなく亡くなられた大御所の方もおられます。「墨公委の書いた事典なんか信用できるか」と思われる向きもあるでしょうが、その辺はちゃんと校正・編集の手も入っておりますので、ご安心下さい。
 ちなみに、この事典の項目執筆の際に見つけたことで、事典に盛り込むには細かすぎる話の中には、当ブログでネタに使ったものもあったりします。なので小生が書いた項目がどれか分かる方もおられるでしょうが、その辺はそっとしておいていただければ幸いです(笑)。

 ともあれ、この事典が広く活用されることを、強く祈念しております。鉄道史にご関心のある方は、どこかで見かけた際、お手にとっていただければ幸いです。
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by bokukoui | 2013-03-19 23:59 | 鉄道(歴史方面)