アニメ『たまこまーけっと』にみる日本の帝国主義について~台湾から来た王子様

 今日はそういえば昭和の日(どうもまだ馴染めません)、先帝陛下のお誕生日なので、それに関連したようなそうでもないようなお話をメモ代わりに一つ。

 今年の1月から3月までの1クール、深夜アニメで『たまこまーけっと』というアニメをやっておりました。


 このアニメは、もち屋の娘・たまこを主人公に、彼女の家に居候する人の言葉を話す不思議な鳥や、級友や商店街の人々との交流を描いた、たいへんほのぼのとしたアニメです。小生は近年、時間的にも精神的にも余裕がなく、こういったコンテンツとからすっかり遠ざかっておりましたが、たまたま縁があって、このアニメを見る機会がありました。舞台が商店街、というのも関心を惹いたポイントであります。小生が少ない中でも最近読んでいるマンガが、『それでも町は廻っている』とか『うのはな三姉妹』とか、商店街が舞台のものがけっこうあった(鈴城芹作品もこの範疇に入るかな?)ということもありまして。



 で、なんだかんだで全篇見て、小生はのんびり鑑賞できるいい作品と思いましたし(たまこを好きなのに告白できないもち蔵が『それ町』の真田君にかぶります)、通算獲得タイトル5期の棋士・高橋道雄九段(53)もディスクを購入されるほどお気に入りだったほか、


と、NHKのニュースで舞台になった京都の商店街への「聖地巡礼」が取り上げられたりもしたようですが、一方でまとめサイトにはその不人気ぶりを揶揄するような記事が出たり(これとかこれとか)、グーグルで「たまこまーけっと」を検索すると、
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「関連する検索キーワード」に「たまこまーけっと 爆死」と出てしまったり、必ずしも大きな話題となって成功を収めた作品とは言い難いようです。

 さてさて、この「たまこまーけっと」という作品、ヒロインのたまこが、何故か人の言葉を話す不思議な鳥のデラ・モチマッズィと出会うところから始まりますが、まあネタバレ云々するようなタイプのアニメでもないから書いてしまうと、鳥のデラは南の国の王子様に仕える鳥で、王子様の嫁候補を探すべく日本にやってきたのでした。ところが、たまこのところへ居着いたデラがちっとも本国へ連絡をよこさないので、ストーリー後半では同じく王子様に仕える、デラを使って占いをする鳥占い師の少女チョイ・モチマッズィがやってきます。で、チョイちゃんは終盤になって、たまここそ王子様のお妃候補ではないかと言い出すのですが・・・。
 で、南の国からやってきた筈のデラもチョイちゃんも、そして王子様ことメチャ・モチマッズィも、みんな日本語を喋ります。ま、それだけなら不自然と突っ込むのも野暮な話であることは百も承知なのですが、最後まで見終わってからふと、小生は重大なことに気がつきました。

 主人公の名前は、「北白川たまこ」というのです。

 え? だからなんだって? 京都っぽい感じ(北白川という地名がある)だけどうさぎ山商店街のモデルは京都の出町枡形商店街だし、アニメ作った会社は京都アニメーションだし、とな?
 いえいえ、ヒロインの苗字が「北白川」というのが穏やかなりません。なんとなれば、北白川宮能久親王とはその昔、日清戦争で日本が台湾を獲得した際、近衛師団長として台湾征服のため出征し、そのまま陣没した皇族のお名前でございます。その後、日本は台湾に植民地支配を確立すると、台湾にいくつも神社を建設しましたが、北白川宮はその多くで祭神に祀られたといいます。
 北白川宮能久親王、といわれても多くの方はピンと来ないでしょうが、幕末当時は「輪王寺宮」であったと聞けば、思い出される方も増えるのではないでしょうか。幕末に上野の寛永寺の貫首となり、彰義隊に担がれて新政府と対立、その後東北に落ち延びて抗戦するも帰順し、のち許されて新政府陸軍の軍人となるという、波瀾万丈の人生を送った人ですね。

 いやはや、こうも明らかなネタを仕込んでくるとは。となりますと、デラやチョイちゃんや王子様が日本語を話せるのも、皇民化教育の賜物と考えずばなりますまい。当然、彼らがやってきた南の国とは台湾であり、モチマッズィ一門が治めているのもやはり、台湾の先住民族であると推測されるのは必然であります。はじめ「生蕃」、のち高砂族と台湾統治時代の日本当局が呼んだ人々なのですね。
 ということに小生は気づいたのですが、とはいえ気づいた時点で放映は終わっていましたし、とっくにネット上で大きな話題となっているだろうと思ってせっせと検索してみました。ネット上にいつも変わらず跋扈している「ネット右翼」が吹き上がったり、日本帝国主義を正当化するアニメと大陸方面からクレームが付けられたり、そんな反応を期待しつつ。・・・ですが、何にも引っかかりません。そりゃもうなぁぁぁんにも。
 そこでまた小生はフンガイせざるを得なかったのですが、どう評価するかはさておき、これだけの仕込みネタを誰も気づかないとは、日本のアニメオタクの見識のなんたる低さ、或いはまた、「天皇陛下」や「台湾」に普段は無闇と反応する連中の無関心ぶりに愕然とするより他にありませんでした。
 ・・・まあ、ちょっと探ってみた範囲ですが、大陸・台湾を問わずそちら方面のアニオタの方々も、何も気づいた気配はありませんでしたが・・・。

 全く余談ですが、簡体字の字幕では「もち」のことを「糕」と訳していましたが、繁体字の方では「麻糬」になっていました。今ざっと、以前もネタ本にした(これとかこれとか)青木正児『華国風味』なんぞ斜め読むと、「糕」とは元々米などを蒸して固めたものだったそうなので、意訳のようです。ただ「搗く」という限定はないようで、今では粉を蒸した甘い点心が多く、また日本の羊羹も「糕」の系譜を引くものなんだそうです。一方の「麻糬」というのは、台湾で作られた「もち」の音訳だそうで、こちらの方が正確と言えば正確です。
 台湾で訳が作られたのは日本の統治があったためのようで、とは中国や台湾では搗いて作る「餅」が存在していないようです(「餅」の漢字も中国語だと小麦粉加工食品の意味になっていますし)。昔はあったのでしょうが、また広い中国のことですからどこかにローカルに残っているのかも知れませんが、日本人は中国人と比べずいぶんもっちりした食べ物が好きだったということでしょうか。米の質を考えてみても、そうかも知れませんな。
 民俗学では、日本でのもちの役割の重要性(鏡餅と雑煮のことを思えば誰でも容易に諒解できるでしょう)についていろいろ研究されているようで、それを思えば「もち屋」が登場したということも深読みしたくなってきますね。まあ、去年のアニメ『さくら荘のぺっとな彼女』におけるサムゲタン騒動を思い出せば、大路吾平が「糯米で作るばかりが餅じゃねえ!」と粳米でトックを作り出して変な騒動にならなかったのは、幸いというべきかも知れません。

 というわけで、『たまこまーけっと』のこの思い切ったネタ仕込みについて、斯界でももっと積極的な議論が展開されるよう祈念する・・・訳でもないですが、誰も何も言っていないようなのは寂しいと思って一言しておきました。
 さらにこの設定について妄想を逞しくすれば、北白川宮能久親王は十人以上の子女を多くの女性に生ませた艶福家でもあらせられますので、もしかすると「北白川」の苗字を名乗る家は、親王のご落胤ではないかとの夢も湧いて参ります。そしてモチマッズィ一門にも実は、台湾でひそかに親王の寵を受けた女性への落とし種が入っていて、とかいう設定をこしらえれば、をを、たまこちゃんが南の国のプリンセスとなる必然性が出てきたような!?
 と小生は一瞬思いましたが、ここで重大な問題に気づき愕然となりました。北白川宮家を継いだのは、能久親王の三男・永久王でして、長男は生まれの関係からか後継者にはなれなかったのですが、代わりに新たな宮家を創設しました。それが竹田宮恒久王でございます。普通、こういった立場の皇族は、臣籍降下して伯爵家くらいになるのだと思いますが、竹田宮の場合は長男ではあったためか、この辺の事情は良く存じませんが、とにかく宮家となられたのです。
 で、恒久王の後を継いだのが竹田宮恒徳王でしたが、この方が当主の時代に日本は敗戦し、宮家も皇族の身分を離脱したため竹田恒徳氏となられました。で、その孫に当たるのが・・・
 ネット上(といっても小生の見ているごく狭い範囲ではありますが)で「竹田とかいう平民」「市民竹田」だとか「平民竹田」という愛称で親しまれている(例:これとかこれとかこれとかこれとかこれとかこれとか・・・)、竹田恒泰氏であります。アパグループの「真の近現代史観」とやらで田母神俊雄氏の次の年度に受賞した、「保守」の「論客」な人ですね。
 ・・・あんな可愛くて性格のいいたまこちゃんが、そしてあんこちゃんに豆大さんに福さんが、平民竹田の関係者なわけないじゃないですかっ!! ということで、この案は却下することとしました。

 あとはモチマッズィ一門の治める地域に、霧社事件のようなことが起こらないよう祈るのみであります。子供の頃、この事件を描いた西村望『もう日は暮れた』という本が何故か家にあって読んだのですが、小学生にはトラウマ物の本でした。なので内容をはっきり覚えてはいませんが、前半は日本人が、後半はタイヤル族がバタバタと死んでいくというものでした。敗北したタイヤル族の人々が、降伏するよりはと次々と自殺し、同じ木の枝で何人も首を吊ったので、重みで木の枝が折れて死体が地面に折り重なる、という描写は今でも覚えています。

 アニメを褒めてるんだか何だか書いている当人も分からなくなってきましたが、まあとにかく、小生は『たまこまーけっと』はいい作品だったと思います。惜しむらくは12話では今ひとつ盛り込み過ぎだったことでしょうか。そのため、小生イチ押しの牧野かんな嬢がいまいち活躍しきれず(他の女の子と違って、彼女が中心となった回がない)、あとたまこちゃんの眼鏡シーンが少なすぎた辺りが、ブレイクしきれなかった要因でしょうかね~(テキトーです)。
 せっかくの「北白川」ネタを誰も取り上げないのももったいないと思って記事をでっち上げましたが、もしアニメスタッフが何も気づかず、天然でこの名前を選んだとしたならば、小生としてはもはや御稜威の懼れ多さに万歳二唱くらいするより他にありません。

・おまけ動画「たまこまーけっとのOPをキン肉マンの曲にしてみた」


 びっくりするくらい合ってます。
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by bokukoui | 2013-04-29 23:59 | 漫画 | Trackback | Comments(2)

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Commented by k_guncontrol at 2013-06-15 23:41 x
はじめまして、通りすがりの者です。
堀口悠紀子さんのお父さんは八幡市(京都市と大阪の間の市)の市長さんだそうです。
http://otanew.blog59.fc2.com/blog-entry-610.html
これも仕込まれたネタのひとつでしょうか。
Commented by bokukoui at 2013-06-19 20:45
コメントありがとうございます。
「ぴゅあ☆ぴゅあ1949」は白洲次郎関係などで以前から拝見しておりました。
大変なボリュームにいつも圧倒されております。そんなサイトの方にコメントいただけるとは望外の喜びでございます。

恥ずかしながら堀口悠紀子さんのお名前は始めて知りましたが、なるほど岩清水八幡宮を擁するだけに宮様と縁が? いや、八幡市は陝西省宝鶏市と友好都市なので鳥が出てくるのは・・・!?
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