情理の比率

 一応昨日の続きらしきことを書いてみようと思うのですが、鉄道趣味の系譜論をやってもしょうがないので、一般論ぽいことを一筆。

 昨日の記事では、取り上げた本について、鉄道趣味へのアプローチ方法に欠けたものがあることへの違和感を提示しました。この違和感を漫画やらアニメやらゲームやら狭義の「オタク」業界をはじめ、各種趣味の世界に通用しそうな形に抽象化してみようと思うのですが、ここでは話を分かりやすくするため「情」と「理」の二元論で説明してみようと思います(二元論は往々にして不毛な結果を招きやすいものですが、分かりやすいという利点は認めないわけにはいきません)。

 趣味とは結局のところ自己満足が目的なわけですが、それに至るアプローチ方法には「情」と「理」の大きく二つがありそうです。
 「情」というのは、個人的感興に身を委ねることを中心とするアプローチ方法、と考えます。昨日取り上げた本の「テツ」のように、乗っていることを「楽しむ」とか、何かモノを「集める」とか、そういった個人的な楽しみを求めることです。
 「理」というには、普遍的・一般的な情報を追い求めるアプローチ方法です(古典的な「マニア」のイメージを論者が引きずっているのは明らかですね)。鉄道趣味者には(同様のことは軍事趣味者についてより一層強く言えますが)ひたすら情報を求め、そのために書物を紐解き、見学に赴き、モノを収集する人々がいます。個人的な感情より、正確で普遍的な知識を探求したがる人々です。昨日紹介した本は、「旅」という言葉が「情」の方面に力点を置き、鉄道のテクノロジーを研究したり、そのシステムとしての発達について考えたりすることはほとんど扱っていません。
 「モノを集める」ということを「情」「理」両方で挙げていますが、「情」の場合は集めること自体を楽しみとするのに対し、「理」の場合は何がしかの目的達成の手段として位置付け、集めたものを分析することに重きが置かれるという違いがあります。境界が厳密に引けるものではないのは当然ですが・・・。

 ここまでの説明を読まれて、読者の皆様は小生が「情」に流れる傾向を批判し、「理」の面を擁護する、そのような論陣を張ると予測されたのではないかと思います。しかし小生はそのような手前味噌な論はやはり公正さを欠くものと考えます。先に結論を書いておけば、「情」「理」それぞれの特質が趣味の業界全体の発展に必要であろう、ということを述べるつもりです。決して「情」路線を批判したりはしません。多分しないと思う。しないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ・・・
 と、さだまさしのように口ごもってしまいましたが、以下にそれぞれのパターンの特質を考えてみましょう。

 が、えらく長くなりそうなので続きは明日
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by bokukoui | 2006-05-17 23:57 | 思い付き | Comments(4)

Commented by te at 2006-05-18 12:37 x
趣味というと、情につながる面は一般的に理解してもらいやすいですが、理の面はどうなんでしょうね。
研究心・探究心みたいなものって、みんな持っているのでしょうか。
Commented by 憑かれた大学隠棲 at 2006-05-18 21:16 x
事故の鉄道史とかよかったですけどね<理
あるいは2chの信号装置スレなんかは中の人の大変さに感動できたりするわけで
あるいは関西の電鉄会社の経営のごたごたからは鉄道経営史への興味が引かれるわけでして・・・・
Commented by bokukoui at 2006-05-19 11:39
>teさん
これから書こうと思っていたことをズバリ指摘されて冷や汗が出ました(笑)
詳しくは次項に書き、また次々項でも書くつもりですが、まず「一般的に理解してもらいやすい」ことは大切だけれどそれだけでは不足なのだということです。そして「研究心・探究心みたいなもの」とはみんな持っているとは限らないかもしれないしまた持つことを強制されるものではない、しかしそのような心なくしては、そのような心を汲み上げられなくては、大局的に見て趣味の発展はないだろう、そう思います。

>憑かれた大学隠棲氏
「理」=理系ってわけではもちろんないですね。そもそも理系文系に学校ではっきり分けすぎるのが問題と某先生もいつも仰ってますし。
『事故の鉄道史』は素晴らしい本ですし、他に挙げるとすれば、鉄道史の泰斗にして政治史学者である原田勝正氏が著された『日本鉄道史―技術と人間―』がお勧めです。特に第7章は、原田先生が信号と配線が好きだということを幼時の思い出から語り起こし、そして鉄道システムにおける信号の重要性を解説してゆくもので、本書随一の読みどころです。
つうか持ってなかったら買え>憑かれた大学隠棲氏
Commented by 憑かれた大学隠棲 at 2006-05-20 02:38 x
りょーかい