交通博物館跡の再開発・旧万世橋駅ホームの喫茶店など~附・アニメ『RAILWARS!』雑感

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旧万世橋駅のホームを利用した喫茶店から、行き交う中央線快速電車を眺める
(2013年11月撮影)

 当ブログでは、かつての交通博物館の閉館から建物の解体までを定点観測した「[特設]さよなら交通博物館」という一連の記事を掲載しました。このシリーズは昨年2月の「交通博物館跡地の再開発ビル(JR神田万世橋ビル)が竣工」という記事で一応打ち止めのつもりでしたが、同記事の末尾で「グランドオープンしたら、一度くらいは見に行こうかなとは思います」と書いたように、その後レンガの高架線下を利用した店舗などの様子を見に行ってはいました。しかしブログ更新の意欲が低下し、結局お蔵入りになってしまいました。
 なんですが、ふと思い立って今回、賑やかしまでに、去年の写真を引っ張り出して二三載せてみようかと思います。



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すっかり商業施設化されたレンガの高架下(2013年11月撮影)

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高架下の店舗の様子(2013年11月撮影)

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(再掲)工事中の高架下(2013年2月撮影)

 高架下がすっかり様相を変えて、明るい店舗になっています。そもそもこの高架下を利用したのが、旧交通博物館の前身である(旧)鉄道博物館でした。交通博物館でも、収蔵庫などとして高架下は利用されていましたが、何せ川沿いの高架下なもので湿気が酷く、年中除湿機をかけていた(その電気は中央線から引っ張ってきてた)といいます。さらに、古いレンガ作りなもので雨漏りも酷く、交通博物館関係者いわく「晴れていても雨漏りした」そうです。
 で、レンガアーチに分厚いコンクリートの内張りを加え、地震対策(元来、関東大震災ではびくともしませんでしたが・・・)や雨漏りもバッチリ! かと思ったら、聞いた話では何でも、やはり今でも雨漏り対策はなかなか大変らしいとか。もちろん、普通にお店に入った客には、目に付くような問題は別段ありませんでしたが。

 高架下だけではなく、記事冒頭に掲げたように、かつての万世橋ホームが再整備されてガラス張りの展望デッキのようになっており、一部が喫茶店になっています。そのあたりを見てみると、まず入口はこんな感じです。
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旧万世橋駅ホームへ上がる階段の入り口(2013年11月撮影)

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(再掲)工事中の階段付近(2013年2月撮影)

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再整備されてディスプレイや手すりなどが設置された旧万世橋駅の階段(2013年11月撮影)

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(再掲)工事中の階段附近(2013年2月撮影)

 階段には後補と思われる手すりが付いていましたが、「歴史的遺構の階段なので、支障ある場合は別のエレベーターを使ってくれ」旨の注意書きがありました。今ならこの規模の商業施設は、バリアフリーが原則なのでしょうね。
 そして階段を登った先が、本記事冒頭の写真のように、かつてのホーム上を利用した喫茶店と、ガラスで囲われた展望デッキになっています。写真の喫茶店の一角はオープンエア(線路沿いはガラスの壁が設けられていますが)になっています。列車を横目に茶を一服、というのもいいですが、ただ電車のバリエーションは路線の性格上あんまりないですね。

 なお、かつては窓があるだけだった高架橋の神田川サイドにも、歩廊が設けられています。
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神田川沿いの歩廊(2013年11月撮影)

 この歩廊は中央通りの万世橋たもとまでつながっています。商業施設としてはルートが増えて便利ですし、まずますオシャレなしつらえと思いますが、「歴史的遺構」と一応明記しているからには、どんなものなのかなあとも思わなくもありません。

 とまあ、ひとまず「歴史的遺構の現代的活用」という、もっともらしげな形をまとめたレンガの高架橋に対して、交通博物館の正面にあった、近代東京のささやかな文化財が失われてしまっていました。
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旧交通博物館の入り口前に立っていた、銅板葺きのしもた屋
(2013年2月撮影・この写真はクリックすると拡大表示します)

 屋根の勾配が折れ曲がった、日本にはわりと少なく、アメリカの農家なんかに多そうなマンサード屋根(でも左右非対称・・・)でありながら、緑青が味わいある色味の銅板をまとい、よく見ると雨戸は江戸小紋みたいな凝った模様という、和洋ごった混ぜの不思議な風情ある建物でした。関東大震災後に商家として建てられた、築約90年の建物だったそうです。銅板で家の正面を覆うのは、簡易な防火建築として当時流行ったそうです。
 それが、この一角の再開発で、こうなっていました。
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かつて、通りの左手に交通博物館、右手のマンサード屋根の銅板建築があった通り(2013年11月撮影)

 せめて、ファサードだけでも、さらにせめては、檜垣模様(網代模様)の雨戸の戸袋だけでも、保存できなかったのでしょうか・・・。
 なんというか、大資本の都合に良いような「活用」という形でのみ、現在の日本では都市景観の保存ということは実現し得ないのだなあ、という索漠たる感を抱かざるを得ませんでした。別段JRを批判するつもりではなくて、社会全体の構造の問題(この構造下ではJRはこうするのが当然理に適っている)ということですね。

 さて、何で今更こんな写真と記事を掲載したかというと、現在深夜アニメで『RAILWARS!』というライトノベル原作のアニメをやってまして、これがタイトルの通り鉄道モノということで、小生も一応チェックしているのですが、その先週放送の回(8月7日深夜=8日未明)の舞台が交通博物館だったからです。この『RAILWARS!』なるライトノベルは、「国鉄が分割民営化されなかった世界」という架空の世界を舞台にしているので、交通博物館もそのままという想定なのでしょう。
 で、まあここまで続けて見ているのですが、なんというか酷い出来栄えのアニメです。何が悪いかといえばもう圧倒的に脚本で、それが原作由来なのかアニメ化の改変が酷すぎたのかは小生は存じませんが、そりゃもう全編説得力皆無な展開で、そのためキャラクターにも全く魅力を感じず、そもそも世界設定自体にも疑念を抱くようになってくるほどのスゴさです。
 先週放送の回で交通博物館が登場するのも、主人公と美少女キャラクターとが勘違いから暗殺者に狙われていると思いこんで街を逃げ回った挙句、なぜか閉館中の交通博物館にもぐりこみ、その間美少女キャラの服がだんだん脱げていき(本当にそうなんだって!)、更になぜか交通博物館の中で覆面の悪漢に出くわし、更に更になぜか美少女は全裸になるという、「交通博物館で露出プレイ」としかまとめようのない、頭の悪い脚本なのです。あ、悪漢が何者で、どういう理由で博物館にもぐりこんでいたのか、ということは一切説明されません!
 小生は見ていて呆れたあまり、交通博物館の学芸員だった故・岸由一郎さんがかかる愚作の存在を知らずして逝かれたことは、幸せなことだったのではないかとすら思ってしまったほどでした。

 『RAILWARS!』は、鉄道員志望の高校生がOJT(これはインターンの方が正確じゃないかと思いますが)で鉄道の職場に配属されたら、それが鉄道公安官だった、というところから始まるのですが、むやみと広い行動と仕事の範囲は『西部警察』ばりです。脚本の強引さも似ているといえば似ていますが、西部警察的大爆発のような見せ場がないので、見ている方には不満しか残りません。鉄道考証や設定でマニアを唸らせる・・・かといえばこっちも駄目。毎週マニアから突っ込みの集中砲火を浴びていますが、そもそもの設定からしてそうなることは目に見えているのだから、きちんと考証担当者をつければよかったのです。
 鉄道マニアで、鉄道のことを書きながら、普通の読者にも鉄道マニアにも受け入れられた存在として宮脇俊三を挙げることができます。宮脇は執筆中、鉄道の事実関係について疑問があると、例えば歴史関係なら『日本国有鉄道百年史』編纂の中心的存在だった原田勝正に電話をかけて聞いていたそうです。質問が私鉄関係だったりすると、原田先生はもっと適任者がいる、と青木栄一先生にお鉢が回ってきたこともあった、とこれはご本人から伺いました。こういう次第で、宮脇はマニアも読んで納得の鉄道本を書いていたのですが、考えてみれば、宮脇は中央公論社の敏腕編集者だったのですから、校正にヘマをするような真似はしなかったのですね。
 その点『RAILWARS!』は、原作にしてからアマゾンのレビューなど瞥見すると、考証以前に校正がてんでダメ、という指摘がかなりありました(考証もダメ、という指摘もあります。小生もアニメであれ?と思った点が、原作のままというご指摘をいただきました)。で、このラノベの出版元は創芸社というのですが、あまり名前を聞いたことのない出版社です。ラノベを難点も出しているようですが、「人文」を見るとこんな本を出しております→
 ・・・。どうも統一協会系の出版社のようです。それが何でライトノベルなのでしょうか。そもそも、ライトノベルのレーベルを創刊してから3年にもならないのにアニメ作品を出すのは異例、という指摘もあります。そういえば『RAILWARS!』はアニメ化にとどまらずゲーム化までするそうで、そもそもそんなに人気あったのか? という疑問も湧いてきます。小生の狭い交友範囲とはいえ、相当に濃厚な鉄道趣味者とオタク方面の兼業者が何人もいるのですが、誰も本作を話題にしていませんでした。

 といって、統一協会がオタク業界への進出?を図るというのも解せません。だいたい、統一協会は秋葉原で「児童ポルノの規制を強化しよう」「有害情報から青少年を守ろう」などと掲げてデモ行進を行ったことがあるくらいです。デモを目撃した小生はデモ隊に突撃取材を行い、秋葉原でデモした理由について「秋葉原という街は、性的に問題ある表現が多いから」と聞き出しました。なるほど、オタク文化だの「萌え」だのと性的な表現に親和性があり、そういったものも一翼に抱え込んでいることが、オタク的表現隆盛のかくれもない一因ではあります。なので、統一協会がオタク文化を敵視することは理解しやすいですが、一方でそんな統一協会関係の出版社がライトノベルを出版するのは、いささか理解しづらいことではあります。

 つらつらと『RAIL WARS!』各巻の表紙を眺めていると、この表紙イラストの美少女キャラクターのおみ足とか胸とかは、統一協会的にはどうなのかとか疑問が湧いてきます。なお、「創芸社クリア文庫」の表紙を一覧で眺めると、『RAILWARS!』の表紙はこの中ではむしろ、「品がいい」方だとは思います。・・・まあ、創芸社という会社がまるで仕事を選ばない、というのが一番ありそうなことですが。もし、文鮮明の本を出すことと引き換えに統一協会からカネ引っ張って、ラノベ出版だアニメ化だと好き放題やっているのなら、それはそれで面白いと思います。
 もっとも、ラノベの表紙こそ「品がいい」ものの、アニメの方はもうその、鉄道描写よりもおっぱい揺らし動画の方が力入ってんじゃない? という内容です。なんかこう、妙に巨乳キャラが多くて(あ、交博で裸になったキャラも巨乳です)、毎回本筋と無関係としか思われないラッキースケベなカットが入ります。毎回のエンドカードに至っては、18禁二次創作同人誌の表紙にしか見えません。でも、本筋が根本で抜けているので、よけい索漠たる印象を残すのみです。キャラクターに入れ込めないから、おっぱい揺れようと「萌え」もへったくれもないのですな。

 まじめに脚本の(あるいは原作まで及ぶのかもしれませんが)問題点を考えると、鉄道公安官という着眼点がいいようでまずかったのではないかと思います。現在の日本の鉄道のイメージとは、日常を安全に支える存在、でしょう。ですから、むしろ「日常系」の方が今の鉄道を舞台にした作品には向いているように思います。事件ものにしても、銃を撃ちまくったり派手派手しい爆弾テロだったりより、「人情もの」的な路線の方が向いてたんじゃないでしょうか。
 これが国鉄発足当初なら話は別で、総裁は怪死し、汽車は横転し、電車は暴走するのですから、いっそ占領下の時代でも舞台にすればよかったのでは、なんて思います。スパイ組織や暴力団が銃撃戦を展開し、対する警察側も占領軍MPやら国家警察やら自治体警察やら、制服も装備もヒャッカリョーランでしょうし、何があったっておかしくないですね。
 ・・・ところで大塚英志先生、『オクタゴニアン』の続きはいつ出ますか? かれこれ9年ぐらい待ってるんですが・・・。

 まあ、アニメの出来云々にしても、小生は「国鉄万歳」的というか、「国鉄中心史観」に反発を覚えるので、いわゆる「国鉄型」的な世界を出しておけば鉄オタが喜んで買うだろう、という発想には強い違和感を感じてしまいます。国鉄のあった国は世界に結構いっぱいあるけれど、「コングロマリット化した大手私鉄」なんてのは他にないよ。
 最近はアイドルを題材にしたアニメもいろいろあり、『RAILWARS!』でもアイドルキャラが(強引に)登場しているので、ここはひとつ、鉄道会社のお茶汲みOLに採用されたと思ったら「キミ、美人だね。こんど会社の副業で少女歌劇団というのを作るから、そっちの舞台に上がってくれないか?」なんてのも、私鉄ならありです。ちなみにこれは、今から百年前の箕面有馬電気軌道(のちの阪急)で実際にあったことといいます(出典:阪田寛夫『わが小林一三 清く正しく美しく』河出書房新社)。
 とまあ、鉄道は時代と場所でいろいろなスタイルがあるので、こういう女の子いっぱいに派手な絵作りをできるアニメの題材にするのなら、19世紀アメリカの大陸横断鉄道を舞台にすればいいんじゃないか、なんて思います(前にツイートしました)。銃撃戦なんていくらでも有りそうだし、女性陣も駅レストランのウェイトレス(以前に紹介したハーヴェイ・ガールズ)や女性電信士(これも以前紹介の松田裕之『ドレスを着た電信士 マ・カイリー』)といろいろ出せるし。アメリカ鉄道史に関心のあるのは、日本の鉄道趣味者の中でも1%以下でしょうけど、西部劇とかガンアクション好きな層は取り込めそうです。
 ちなみに、『RAILWARS!』の舞台を19世紀アメリカにする、というのは、19世紀ロンドンを舞台にする『Wake Up, Girls!』というアイディアのパクリにインスパイアされました。「社交界の壁の花佳乃」に爆笑。

 あとまあ、まじめに国鉄が続く世界を考えると、労働問題をいかに対処するのか、というのは重大な問題ですが、これはアニメに全く反映されておらず、原作でも同様だそうです。国鉄は労使紛争している間に顧客の支持を失っていった(さらに労組間の紛争もはげしく、問題のややこしさに輪をかけた)という面は否定できません。その象徴が、国労の順法闘争で運行が混乱した際、普段から通勤時の輸送力が不足していて利用者の不満が溜まっていたのに火が付いて、暴動と化してしまった上尾事件といえましょう。


 このアニメで、主人公の高山くんは「お客様のために」という言葉をしばしば口にしますが、まあそれが国鉄らしくない(苦笑)といえばそれまでですが、実のところ「お客様」にもいろいろあるのであります。鉄道当局(=お客様)vs. 爆弾テロリストという一面的構図だけではなく、こういうのも取り入れることで作品世界により深みが出ることでしょう。
 というわけで、国鉄への不満が爆発して暴徒と化した乗客に取り囲まれた警四の一同。「暴徒は客じゃない! 撃ち殺す!」と拳銃を乱射しかねない桜井あおいをなだめ、群集の中に割って入る高山くん。暴徒の罵声や投石にもめげず、真摯に乗客と国鉄を思っての声涙ともに下る演説で、ついに暴徒を沈静化させた高山くんの雄姿に、あおいは暴力による解決の限界と己の未熟さを悟るのであった…。最終回のシナリオにいかがでしょうか。導入では上尾事件をモチーフにしたな、と思わせておいて、ラストで本当の題材は庄内事件だったと分かる展開は、鉄道趣味者にも感銘を与えると思うのですが。
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『歴史で分かる鉄道全路線 大手私鉄11 阪急電鉄1』より引用
この写真で電車の貫通扉に立っているのが、乗客を説得した阪急の小林米三専務(一三の息子)

 そういえばこの分冊百科の阪急、年表と脚注の下原稿は小生がバイトで作ったなあ。庄内事件の項目が妙に長いのは、作成者の趣味によるものでした。

 鉄道の話の割に脱線しまくっているのは当ブログの通例ですが、ともあれ鉄道は通りいっぺん以上の面白みを探ることができるし、それでこそ趣味として意味があると思う次第です。アニメはとりあえず最終話まで見るつもりですが。
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by bokukoui | 2014-08-15 01:58 | 鉄道(その他) | Trackback | Comments(2)

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Commented by めかちゅーん at 2014-08-27 22:20 x
ご教示頂きたいことがございます。銅板葺きのしもた屋の件ですが、私の持っている書籍では件の物件は「池田屋」と記載されていました。その書籍には東京都千代田区とまでしかありませんでしたが、建物の形状や周辺ビルの様子からこの建物で間違い無さそうなのですが、書籍の著者または編者の勘違いなのでしょうか?

※RAIL WARSはまだ未見のため、視聴後に感想でも、と思います。
Commented by bokukoui at 2014-08-30 22:26
小生もご質問をいただいてから検索しなおした程度ですが、

http://blog.goo.ne.jp/t-log707/e/b3575fd8554cd6bdf93556d9e0237d7b

などの記事によれば、住んでいたのは「柏木」さんでしたが、やっていた店が「池田屋」なので、その書籍の内容は正しいと思います。通りかかる者にとっては、住民の名前よりは屋号のほうが分かりやすいですから、そのように書くのは妥当ですね。

『RAIL WARS!』は・・・無事、見終わりましたら、呑み会でもしながら一つ感想線(鉄道だけに)をば。一人で見ているとむなしくなるので(苦笑)
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