富岡製糸場見学記(2)
製糸場の正門から入ると、真正面に大きな煉瓦造りの建物があって、左右に長く伸びています。これと同じような規模の建物がコの字型に三つ並んでおり、これがもっとも目立つ産業遺産となっています。このうち門からすぐ見える建物と、それと敷地を挟んで向かい合っているのがかつての繭倉庫で、倉庫と直角方向にあるのが糸を繰る作業場です。これらの建物はみな木材を柱に、煉瓦で壁を作っています。倉庫には扉がつけられ、作業場には採光のため大きく窓が開けられています。倉庫の写真を以下に示します(手前の木造の建物は後年作られた変電所)。
以下に壁の拡大写真を示します。
この建物を見学に来た法隆寺(だったか、とにかく有名な古刹)の管長は、建築以来百年経っているのに木が曲がっていない、これはよく乾燥した木を使ったのですね、と感想を述べたそうです。ところが史料を調べると、どうも切り出してそんなに時間も経たずに建設工事に使ったようなのです。木は十分に乾燥させてから使わないと後で曲がってくると言われていますが、では何故富岡の木は曲がっていなかったのでしょうか。それは、柱にコの字型の断面の溝を彫って、そこに煉瓦の壁を食い込ませているため、煉瓦の壁の重みで木の曲がりを抑えているのだそうです。実に行き届いた作事ですね。
なお、後に建物の用途が変わって、煉瓦の壁を一部撤去した場合は、溝が残るとかえって不便だったり邪魔だったりするのか、上から板をあてて溝をふさいでいます。そういった箇所は、叩くとポコポコ音がするので分かります。
さて、倉庫そのものには現在立ち入れないようで、まず見学させていただいたのは倉庫の脇に立つ二棟の煉瓦の建物(2号館と3号館という由)です。これは技術指導に来たフランス人一行の宿泊のため当初立てられ、後には食堂などに転用されたそうで、いろいろ手が加えられていますが、木骨煉瓦の原形の雰囲気もよくとどめています。
正門脇に立つ3号館はこちら。
2号館の2階の廊下はこんな感じでした(写真がピンボケで済みません)。
ついで作業場の建物の方を見学したのですが、長くなるのでまた続きは明日。