答えの出ない問題

 世界史と地理の授業を連続でするとえらく疲労します。
 そんな授業の合間に、女子高生が世界史の質問があるとの由。彼女が解いてみた問題の答えが納得いかない様子。正誤判定の選択問題で、正解となっている選択肢の内容に疑問を感じたようです。
 それはこんな選択肢でした。

「三十年戦争において、スウェーデン王グスタフ=アドルフはヴァレンシュタイン率いる皇帝軍との戦いに勝利したが、戦死した」

 ああ、リュッツェンの戦い(1632)のことか、と一読して分かりますが、彼女は王様が戦死したのに勝利というのが納得いかない様子です。そこでこの戦いについて簡単に解説し、「王様が戦死したけど、一応戦場に最後まで残っていたのがスウェーデン軍で、ヴァレンシュタイン軍の方が撤退したから、スウェーデン軍の勝利ということになっている」と説明しておきました。
 それで納得はしてくれたようですが、しかしまあ疑問を抱くのも無理はないのであって、これは悪問ということになるのかもしれません。「勝利」の定義次第では、戦略的にはスウェーデンにとって取り返しのつかない痛手だったわけだし(そんなことを言い出せば三十年戦争の「勝利者」はフランスしかいなくなりそうですが)。おまけにそんな細かいところは――戦術的状況に関しても、戦略的状況に関しても――世界史の授業で出てくる範囲をとっくに超えているので、どっちにせよ答えが分からなくても仕方ない、というか、これに疑問を抱いた彼女の感覚の方がまっとうであるとも言えそうです。問題作成者にも、もうちょっと歴史的事件の文脈に沿った出題をして欲しいところではあります(自分で作ったわけじゃないので勝手なこと言ってる)。
 しかし、女子高生に戦況図描いて説明しようとしかけた小生も、この出題者とは別な意味で阿呆でしょうな。「ヴァレンシュタインはテルシオを菱形に配置して、ここが要衝の風車の高地で、スウェーデン軍の騎兵隊には小銃部隊が護衛でついていて・・・」とか説明しなかっただけだいぶ抑えたつもりだったのですが。

 今日はドイツ三十年戦争がちょうど授業範囲で(彼女の質問が重なったのは偶然)、つい余計なことまで話が及びそうになるのをぐっとこらえるのに必死でした(笑)。それでも生徒は「三十年戦争って深いんですね」とか感想書いてくるし。
 しかし基本的な構図を説明しようとすると、補足的な事実をいろいろと並べないと理解してもらえないんじゃないかとつい考えてしまうのでした。

 ところで、Wikipedia日本語版の「リュッツェンの戦い」の項目の参考文献の筆頭には、我が東大戦史研究会OB、というか生涯現役(笑)のサークルなので城郭班最高顧問と申し上げるべき、久保田正志氏執筆の『ハプスブルク家かく戦えり』が挙げられております。読むべき人には読まれて価値も認められているようで、何よりであります。

追記。先日来(加筆予定)で放っておいた8月25日付「続々々地歴教育雑感」を漸く完成させました。これでやっとガンダム系話題の締めくくりに取り掛かれます(苦笑)
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by bokukoui | 2006-08-28 23:58 | 歴史雑談 | Trackback | Comments(2)

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Commented by 任意労働収容所 at 2006-08-29 00:17 x
彼女はきっと指揮官ユニットのVPを計算に入れるとスウェーデン軍敗北だと主張しているのだと妄想しました。
グスタフ=アドルフだけで100VPとかですか。
Commented by bokukoui at 2006-08-31 19:33
部室にある三十年戦争の4個入りゲーム(SPIのだったか、メーカー失念)にリュッツェンの戦いのゲームがありました。そのゲームでは、グスタフ=アドルフが戦死した場合、サイコロを振ってスウェーデン軍の士気が奮い立つか沮喪するか判定するルールがありましたが、多分彼女は士気チェックに失敗したものと思われます。
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