「感動」はどこへ行ったのか~レックスグループMBO雑考

 昨日書こうと思って寝てしまったので(笑)今日書きます。鮮度が落ちてしまった感もあるのですが。

 数日前にちょいと示唆した話題ですが、焼肉チェーン「牛角」などの外食事業や、コンビニ「ampm」、高級スーパー「成城石井」などを経営するレックス・ホールディングスがMBO(経営陣による株式買収)を宣言しました。以下のニュース参照。

「牛角」親会社が経営再建へ
レックスHDがMBO、株式非公開化で経営立て直し

 この件に関しては、同社の株が一時期60万近くまで行っていただけに、23万という値段でのMBOを宣言された個人投資家から怨嗟の声が上がっているようです。特に株主優待が廃止されるため、株があんまり値上がりしなくても焼肉食えれば・・・なんて感じで買ってしまった個人投資家は、今後牛角に足を運ぶことはないでしょう。以下の記事参照。

レックスHDのMBO、個人投資家につけが?

 また、本件に関しこちらのブログは各方面へのリンクが充実しておられます。

「牛角」REX HDのMBOと株主優待の行方。

 さて、本件に関し小生が一体今更何を付け加えるのかと申しますと、どういうわけだか「社外秘」のはずのREXの資料が流出して現在小生の手元に転がっているので、これを手がかりに経営者・西山知義氏の姿勢に一筆啓上申し上げよう、という次第であります。
f0030574_0585817.jpg その資料とは、残念ながら社内極秘資料の如きものではなく、左のような小冊子です。B5版の幅を少し削ったくらいの大きさで、120ページほどのものです。奥付によると編集は「レックスグループ スピリッツマニュアルプロジェクト」、発行は「株式会社レックスホールディングス社長室」、2006年4月第1刷発行となっていますが、小生が保有しているのは同年5月発行の第2刷です。一応社外秘だそうで、正社員にしか配布されず、アルバイト(レックスグループでは「パートナー」とかいうらしい)や契約社員には配布されていないらしいです。
 この小冊子の大部分は、レックスグループの――というか創業した経営者の西山知義氏の経営に関する理念を述べた章からなっています。先日ワタミ経営者に関していささかの批評を行いましたが、西山氏に関しても多少同様の感を抱かないでもありませんが、氏の経営理念について云々するのは今回の本稿の狙いではありませんから詳説は避けます。要するに、「感動創造」ということが西山氏の経営理念の基本概念であり、そのために社員は努力すべきである、ということらしく(この冊子は社員向け教育用らしいので)、それさえ分かっていればとりあえず大丈夫だと思います。お客を感動させることで従業員(レックスグループでは「主業員」というらしい。「従う」だけではないからだとか。変な日本語を作らないで欲しい)も成長するのである、そんなことが書かれています。
 社外秘なのはこの辺の理念が経営の秘訣だからなのでしょうか。もっとも一読した範囲ではほとんど心構え、精神論なので、むしろ宣伝した方がいいような気もしますが。牛角などの経営の現場で試行錯誤しながら摑んだ具体的ノウハウ、とかなら同業他社に教えてやるもんか~となるのは分かりますけど。

 さて、この小冊子の末尾にはレックスグループの歩みが簡単に記されており、一応経営史のようなことをやっている身としては社史っぽいものにはつい反応してしまいます。そこに株式上場の際の経緯が記されているので、ちと引用してみます。
『株式上場』
上場とは、資本はなくとも素晴らしいビジネスモデル、アイデア、ノウハウ、人財(引用注:原文ママ。レックスグループでは人材は経営の重要な財産ということでこんな字を使うらしい。変な日本語を作ら・・・以下略)のある企業に対し、株主様が投資をすることによって、市場全体で企業を応援し育てるものです。
「株式上場は経済を活性化し、多くの方々の社会生活を豊かにする。レインズインターナショナル(引用注:レックスホールディングスの旧名。現在は牛角など外食部門を統括する子会社の社名)を上場させることで、私達には今以上に感動を創造するチャンスが生まれるはずだ」
西山は、株式上場を常に意識し、活動していました。それはやがてレインズインターナショナル全体の大きな目標に変わっていきます。「レインズにできるはずがない」と口にする関係者や「こんなに忙しい中で上場なんて無理だ」と考える社員もいましたが、高い目標に向かって活動していく中で皆の意識は一つになり、株式上場はいつしか社員全員の日付のついた目標となっていきました。
2000年12月18日、JASDAQ上場。
目標にしていた日付よりも早くその目標は現実のものとなりました。その日、証券取引所の掲示板に200万という初値がついた時、西山はそれまでの苦労を思い返し、大内(現・レインズインターナショナル代表取締役社長/当時・同社常務取締役 引用注:現在は社長ではないようです)と共に涙を流しました。役員も社員も一同が喜びを分かち合えた日でした。(pp.104-105)
 なるほど株式上場も「感動創造」の一環に位置づけられていたんですね。
 ところで、上場した当時の社名はレインズインターナショナルでしたが、その後 ampm や成城石井の経営権を握ったりしたので昨年五月に持株会社のレックスホールディングスに社名を変え、レインズの名は外食部門の子会社名になりました。ので、この時上場した株が今回MBOで上場廃止になるわけですね。上場しても「感動創造」のチャンスは増えなかったんでしょうか。
 なお、MBO価格は一株23万だそうですが、「ええっ? 初値200万の株が23万でMBO!」と勘違いされた方のために注釈を付しますと、同社は四度に渡り株式分割を行って、累計すると32倍になっておりますので、上場当初から見れば充分元は取れているはずです。同社のサイトをご参照下さい。株式分割で同社は市場の注目を集め、資金を調達することが出来たそうです。
 ・・・って、これはホリエモンがやりまくって顰蹙を買った手法ではないか・・・まあ2倍と4倍の分割しかしてないけど・・・。

 とまあ「感動創造」を旗印に拡張を続け、上場にまで漕ぎ着けたレックスでしたが、同社は今回大きな方針転換を余儀なくされたようです。最近は決算の修正を繰り返すなどどうも経営体質自体に問題があるようで、BSE云々は原因としては副次的なものに過ぎないでしょうね。この結果、今回株主に逆の意味の「感動」を与えてしまったわけですが。
 しかし株式会社なら、お客と従業員以外もステイクホルダーとして株主は重視されるべき存在のはずです。西山氏流に言えば株主の「感動創造」はどうなっているのでしょうか。一応件の小冊子に記載はあります。お客の「感動」を得ることで、理念に基づいた営利である「理益」(レックスでは理念に基づいたものだからと利益をこう表記するらしい。変な日本語・・・以下略)を拡大する、それが次の「感動創造」につながる、そのようなことを説明した箇所から引用してみましょう。
・業務量・ビジネスチャンスの増加
  ⇒取引先様に感動を提供できる。
・出店・ビジネスチャンスの増加
  ⇒加盟店に感動を提供できる。
・高い成長力に対する期待、株価の上昇
  ⇒株主様に感動を提供できる。
・様々な資金調達や労働環境の改善、給与アップ、夢実現
  ⇒主業員(引用注:原文ママ)に感動を提供できる。
・感動のステージの増加(店舗の拡大・改善)
  ⇒もっともっと多くのお客様に感動を提供できる。(p.17)
 成る程、一応入ってはいますね。しかし、今回のMBOが株主に「感動を提供」したとは全く思えません。怒りと恨みはだいぶ提供したようですが。

 以下推測を交えつつですが、何故こんなことが起こったかを書きたいと思います。しかし充分長くなったので、続きはまた明日
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by bokukoui | 2006-11-14 23:58 | 時事漫言 | Trackback | Comments(0)

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