サントリー学芸賞の鉄道本略論 第2章 原武史氏講演録摘要(下)

 昨日の記事に引き続き、原武史氏の国立公文書館講演の内容のメモをアップします。

 <原武史氏講演要録>
3.
・JR東日本では、NREが駅での食事提供事業に関してのさばりすぎており、味の画一化が進んでいる。JR東日本との密接な関係からNREは駅の好位置を独占しているが、これも権力関係を反映している。
・駅そばや駅弁というのは、江戸時代の地方分権の名残り。
・竹内好と鶴見俊輔が駅弁論争。竹内は横川の峠の釜飯(1958発売)、鶴見は高崎のだるま弁当(1960発売)を支持。峠の釜飯は発売当時から好評で、だるま弁当はそれに対抗して発売されたもの。しかしこの論争も窓の開く古き良き時代の鈍行の話。
・デパートで開かれる駅弁大会の客は女性が多い。
・常磐軒は新幹線品川駅に入れず、JR東海パッセンジャーサービスがのさばっている。これも一種の「伝統の創造」。

4.
・丸山真男(1914年生)は戦争体験を思想に結実させた。宮脇俊三(1926生)は戦前からの乗車体験を生かし、昭和史の生き証人として継承している。
・宮脇氏は自分はいい時代に生まれた、という。実際、宮脇氏の生きた時代は、鉄道の黄金時代であった。このように時代に生み出された人は、もう出て来ない。

・現在の鉄道趣味界は、かつてのスターに続く世代が乏しい。
・「オタク化」が進んでいる。1970年代の鉄道ジャーナル誌上での東西私鉄論争には多くのマニアが議論に参入できた。しかし今はそうではない。趣味の細分化が進み、同じ鉄道の共通語で会話できる幅が狭まっている。
・女性の鉄道趣味界への参入。酒井順子(注:『負け犬の遠吠え』の作者)の『週刊宝石』連載記事。鉄道は女性にとって安心して任せられる存在?

 講演の内容は以上で、以降質疑応答となりましたが、時間が押していたのでごく短時間に終わりました。

質問1:関西私鉄は最近JRとの競争で不利な立場となっており、経営が悪化している。今後関西私鉄の文化はどうなるか?(注:当時は村上ファンド阪神株買占めもJR西日本尼崎事故もまだ)
回答:バリアフリーなどソフト面での対応で私鉄の文化は生かせるのではないか。

質問2:新幹線は今後どこまで作るべきか、整備新幹線についてどうお考えか?
回答:誘致に地域によって温度差がある。東北が熱心で、歴史的には明治天皇の東北巡幸にあるのではないか。九州新幹線は必ずしも地元の人は喜んでいるわけではない。東北は鉄道にこだわるが、九州はこだわらない。それだけに九州新幹線が出来たことは興味深い。

 以上です。
 このたび2年ぶりに引っ張り出して書き写してみて、今更ながらツッコミどころの多さに我ながら驚いていますが、現在小生はビールを大瓶換算5本くらい飲んだ直後で、冷静な評価が恐らく困難だと思われますので、今日のところは内容紹介にとどめ、ツッコミは『「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄』の内容にも触れつつ、またの機会とさせていただきます。
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by bokukoui | 2006-11-26 23:57 | 鉄道(その他) | Comments(0)