永山薫『エロマンガ・スタディーズ』の索引を作る

 このブログは結構様々な分野に渡って適当なことを書き散らしていますが、しかし冷静に考えるに、小生がそれなりに「きちんと」語れる分野は精々鉄道だけであって、どうもその他のことに関してはいまいち物事を知らないなあと思うことがあります。よく「オタク」な人は「普通の人」と合わせられる話題がなくて苦労する、とかいう話がありますが、小生の周りの「オタク」な人々は「オタク」的なそれ以外にもスポーツ鑑賞だとか音楽だとか「一般的」な趣味を皆さん持っているようなので、ますますそう思います。
 物事を知っている、というのは、この場合その分野について「体系立てて」知識を持っている、ということです。小生はなるほど漫画などいささか読んでいますが、それはまことに行き当たりばったりで、漫画について系統立てて知ることはできていないなあ、と思うのです。
 以上のような前置きをおいて、今日のお題にするのは、以前漫画について書いたときにちょこっと触れましたが、この本です。

永山薫『エロマンガ・スタディーズ
「快楽装置」としての漫画入門』


 なにせ小生はナヲコ先生の本を求めてイベントに乗り込んだくらいですから、その手の漫画に興味も関心もありますし、多少は読んできました。しかしそういった漫画について知っていることは、まことに断片的なそれに過ぎなかったのでした。
 そんな小生にとって、この本は頗る面白く、かつありがたく読むことができました。

 本書は大きく二部構成になっていて、第一部が歴史的経緯といういわば縦軸の話、第二部がエロマンガの取り上げてきた様々な方向の欲望という横の話になっていて、エロマンガの世界を文字通り縦横に描き出しています。多くのエロマンガ作品が登場するのは勿論ですが、本書は様々なミーム(文化的遺伝子)が他の世界からどのようにエロマンガへと流入し、そして流出していったかということの叙述に力を入れているので、少女漫画はじめエロマンガ以外の、漫画にも限らない種々の文化が登場し、広い視野でエロマンガの世界の流れを理解することができます。
 小生のような、多少は読んでいるけれどそれほど知識がなかった人間にとっては、本書はまたとない優れたブックガイドで、実際永山氏もあとがきで「一人でも多くの人が本書を手がかりに気になる作家と作品を実際に手に取ってくれればと願う」と述べておられます。かつまた同時に、永山氏が示してくれた系譜をもとに今現在自分が好きな作品を並べてみると、自分自身の欲望がどのようなミームの流れに沿っているのか(あるいは外れているのか)が仄見えてきて、それもまた面白く感じました。

 本書はなるべく網羅的に書こうとしたためか、こういうのもある、こんなのもある、と多くの作品を挙げ(それでも255ページに収めたのだからだいぶ圧縮したのでしょうね)、もちろん立派な評論ではありますが、必ずしも「エロマンガとはこうである」と明確に結論付けているわけではないように感じます。最近とかく話題の竹内一郎氏ならば「『エッセイ的』だから研究ではない」とか言い出すのかもしれません(苦笑)。
 しかし、いささか深読みに過ぎるかもしれませんが、エロマンガが他のジャンルに受容されなかったものを「なんでもあり」と受け入れて発展してきたということを伝えるためには、「エロマンガとはこうである」などともっともらしい理論を打ち立てるよりも、本書のような書き方が相応しいのではないかと思います。「なんでもあり」の魅力を伝えるのに、矢鱈と境界線をつけるのは矛盾していますからね。そして「なんでもあり」の様相を描く永山氏の筆からは、その魅力がひしひしと伝わってきます。

 とまあ褒めてきたのですが、いささか不満な点も数点あります。
 一つには、本書がブックガイドとしての性格を持ち、永山氏自身も自覚しておられるようであるにもかかわらず、本書には索引がないということです。永山氏のブログには本書の章立てが載っていますが、ここに見るとおり索引はありません。
 同じ様な不満をもたれた方もおられるようで、こちらの「たまとわ」さんでは、「大部分が知らない作家で、読みたいと思った作品も幾つかあったので、ガイドブックとしても有用かも。こういう本こそ索引が欲しい」と指摘しておられます。
 小生も同じことを感じました。

 ので、ないなら自分で作ればいい、と思い立ち、作りました。人名題名の索引だけで、事項索引は流石に作りませんでしたが。
 MaIDERiA出版局のサイトに置いてありますので、そちらへどうぞ。
 作った感想とかはまたそのうち。間違いを見つけてくださった方は是非お知らせ下さい。速やかに訂正します。

 で、もう一つの不満は、索引を作っているときに気がついたのですが、結構この本誤植が多いですよね・・・漫画家さんの名前を間違えるのは資料的価値上ちょっとまずいかも(「ひんでんブルク」と「ひんでんブルグ」、どっちが正しいのか・・・)。まあ本書は重版がかかったそうなので、おいおい直ることでしょう。

 最後に、本書を友人たちに紹介したおり、小生にとって漫画趣味の指南者の一人である武田徹夜氏が本書に対し発したツッコミを紹介させていただきます。
 「で、三峯徹は出てきたの?」
 本書には夏目房之介・小谷真理・東浩紀三氏の推薦の言葉がついた帯が巻かれていますが、ここは特別版として「三峯徹氏、感激!」という帯も作って欲しいところです(笑)
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by bokukoui | 2006-12-17 23:59 | 漫画