酒井順子『女子と鉄道』雑感


 少し前に買ったと書いた、酒井順子『女子と鉄道』(光文社)を読了したので簡単に一筆。

 軽妙な文章ですぐ読める、極めて読みやすい一冊でした。それは多分とても素晴らしいことだと思います。
 ・・・うーん、それ以上書くことがないな。
 というのも、それは勿論小生程度の鉄道趣味者であっても、この本に色々と突っ込むことはできますし(例:p.193の「パシフィック」の意味)、また以前にもマニア論をいろいろと書いたことがありますが、そこで書いたような視点から酒井氏の鉄道に対する態度について批判的に物することも可能です。しかしそんなような「鉄道マニア」の反応は、酒井氏は当然織り込んだ上で書いており、今更そんなことを指摘しても別に面白いことはないからです。
 だからといって、「これをきっかけに、女性の方も大勢、鉄道趣味の魅力に目覚めてこの世界に入ってきていただけると嬉しいです」なんて書くほど、小生はお人よしではありません。

 思いつくまま書けば、酒井氏は鉄道が好きな理由を
(前略)なぜ私は鉄道が好きなのか、を一言であらわすならば、
「どこかに連れていってもらえるから」
 ということになる。
 私はとても依存欲求の強い性格で、「やってもらう」とか「連れていってもらう」のが大好き。(中略)全てにおいて自分で責任を取らなければならなくなった今、私はほとんど胎内回帰気分で、鉄道に乗っているのだと思う。
 鉄道ファンに男性が多いのは、鉄道が母性的な乗り物であるが故、でしょう。
 しかし女性の男性化が進む今、女性も母性を求めたいのです。(後略)(同書pp.35-37)
 と書いておられますが、そう簡単に割り切られるのもどうかと思ってしまうわけで。胎内回帰も結構ですが、もっと外の世界に繋がっていくような意味合いも持っているのではないか、だから鉄道について「知りたい」という欲求をかきたてられる場合もあるのではないかと思います。
 酒井氏は本書において故・宮脇俊三への敬意を明確に記しておられます。鉄道が好き、というと内田百閒→阿川弘之→宮脇俊三という流れが最も人口に膾炙しているわけで、勿論それは重要だと思うのですが、それよりも世間の人に知られていない流れもあって(以前例を書きました)、でもその流れの蓄積が鉄道の趣味を支えてきている面もあるのではないか、そんな風に思うわけです。

 まあ、真面目な話はここら辺にして、「茶道、華道、鉄道!」と帯に大書している本書に対抗した画像を一枚張ってお茶を濁しておきます。
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出典:久米田康治『かってに改蔵 7』p.35


 さて、本書では、宮脇俊三の他、昨年批評記事を書きかけて3ヶ月ほったらかしの原武史氏も登場します。ちょうど鉄道と女性、という話題も関連するので、次回はこの続きを書いてみようと思います。
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by bokukoui | 2007-02-15 23:59 | 鉄道(その他)