お気楽アメリカ紀行(10)~フーヴァーダムを経てラスヴェガスへ

 もう随分と長くなっていますが、アメリカ旅行記の続きです。旅行記の他の記事は以下を参照。

 (1)オレンジエンパイア鉄道博物館への道
 (2)オレンジエンパイア鉄道博物館・その1
 (3)オレンジエンパイア鉄道博物館・その2
 (4)パームスプリングスのロープウェイ
 (5)パットン将軍記念博物館
 (6)フェニックスからセドナを経て
 (7)フラッグスタッフからグランドキャニオンへ
 (8)プレーンズ・オブ・フェイム(アリゾナ分館)I
 (9)プレーンズ・オブ・フェイム(アリゾナ分館)II
 (10)フーヴァーダムを経てラスヴェガスへ(この記事です)
 (11)デス・ヴァレー国立公園
 (12)ヴェニス これが本当のネオ・ヴェネツィア

 プレーンズ・オブ・フェイムを出た我々は(確か運転をここで小生が代わったような気が)、一路州道64号線を南下し、ウィリアムズからは州際高速道路40号線を西へ進みます。キングマン Kingman で高速道路を降りて国道93号線を北西へ進み、フーヴァーダムを経由してネヴァダ州に入り、今日の目的地ラスヴェガスに達するという予定です。ここらへんの地理はこちらの地図をご参照下さい。
 朝フラッグスタッフを出発する時に給油はしたのですが、既にだいぶ長距離を走って燃料が減ってきているし、また明日はデス・ヴァレーを訪れる予定ですが、同地は酷暑で知られるだけに水などを買い整えておきたい、ということでどこかで給油と買物に立ち寄ろうということになりました。しかしこの附近のインターステートハイウェイ40号沿いの集落はガソリンスタンドと若干の民家がある程度の小規模なところしかなく、結局キングマンの街まで行くこととなりました。
 キングマンはそこそこの規模の街でした。高速道路を降りて旧ルート66号に当たる地道に入り、横手にサンタフェ鉄道の線路を眺めつつガソリンスタンドを探します。給油を済ませて(確か運転をK氏に代わって)、この程度の街なら何か買物をするところぐらいあるだろうと、街中をうろうろします。と、お誂え向きに、アメリカに来たのならできれば行ってみたいと思っていたスポットが見つかりました。
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 かの世界最大の小売業者・ウォルマートでございます。ウォルマートといえば "EveryDay LowPrice"(従業員の給料も)のディスカウントで有名ですが、店の正面にも "Always Low Price" と大書されていました。
 広大な駐車場に車を停めて店内に入ります。最近は日本にもこのようなロードサイド大型スーパーが増えましたが、本場のそれは(この程度の地方都市でも)流石に大きく、なかなか面白い見ものでした。広い店内を身障者や老人でも廻りやすいように電動カートが備え付けられており、これで駐車場から行き来できるようになっています。これはなかなかバリアフリーで結構。

 目的の水を探しに飲料売場と思しきあたりをうろうろします。でかいのは何も店ばかりではなく、商品も皆でかく、我々は色々検討した結果2.5ガロン(約9.5リットル)入りの水をふたパック購入しました。万が一の車のラジエーター用も考えたためです。
 それにしても、アメリカは日本と基準が違うのか、飲料売場のはずなのに絵の具売場かと思わせる色とりどりの清涼飲料水の巨大なペットボトルが並んでおり、なんだかなあと思わざるを得ませんでした。さらに、恐ろしく太って身動きも億劫なのか電動カートに乗ったおばちゃんが、のっそりとその前で品定めをしている光景は、まさに「病めるアメリカ」という言葉が即座に脳裏に浮かび、写真を撮ってピュリッツァー賞に挑んでみようかなどとやくたいもないことを考えてしまいました。嗚呼肥満大国亜米利加。
 その他に菓子やアルコール飲料の類も買い込みます。小生は本場のジャンクなスナック菓子を試食せんとポテトチップスを一袋誂えます。一番小さい袋を探したつもりですが、日本のスーパーで普通置いている一番でかいサイズよりもさらにでかいものしかありませんでした。また、体調の思わしくないH氏は、夕食に出かけることができないかもしれないと考えて、長いパンにハムや野菜の類を挟んだサンドイッチを買い求めていました。一番小さい一人前のを氏が求めたのですが、パンの大きさが日本でいえばバゲットぐらいありました。ましてファミリーサイズとなると・・・。こういうサブウェイで売っているみたいなサンドイッチのことを、確かサブマリンサンドといったかと思いますが、日本のとアメリカのとでは甲標的と戦略原潜くらいの迫力の違いがありました。

 食品売り場のほか、雑貨類も数多く扱っており、またアメリカらしくタイヤなど自動車用品も広く扱っていて、スーパーとホームセンターが一体になったようなところが日本との違いでしょうか。玩具類で日本の友人の眼鏡にかなうものはないかと探してみましたが良く分からず。ボードゲームが棚の一角を占めてかなり売られていたのにはちょっと驚きましたが、やはり家庭向けのものばかりで小生の食指が動くものはありません。ただ、その巨大さゆえの独占的性格がしばしば批判されるウォルマートの玩具売場に『モノポリー』が山積みになっていたのは、ちょっと皮肉で面白い気もしました。
 他にも、家庭用組立式プールで一番でかいのが直径10メートル以上深さ1メートル以上あって、日本なら保育園の施設になりそうだと感心したり、色々と印象に残ったウォルマートのひと時でした。

 寄り道が長くなりました。車は国道93号線をひた走り、フーヴァーダムへと向かいます。
 この国道93号線、地図をご覧いただければお分かりになるかと思いますが、なんと約50キロにわたって全くの一直線なのです。ただし全くの平原ではなく、ゆるやかに上下にうねって道は伸びています。あまりの素晴らしい条件に、K氏のアクセルを踏む足にも力が・・・と思ったら、反対車線でパトカーがネズミ捕りをやっているのを発見。傾斜の陰に隠れて見えないところで待ち伏せしていたのです。これは危ないと注意するように。
 敵から見えない斜面の陰で待ち伏せする、というのは陸軍戦術の一つですが、警察もその辺抜かりないようです。

 そんな道もフーヴァーダムのあるコロラド川の谷に差し掛かって次第に険しくなり、カーブや勾配の多い道になります。沿道は荒涼として植物も少なく、ただ送電線が目に付きます。その送電線も丸太を2本立てて横木を渡し、電線を3本下げているだけの簡単なものです。電気工学科卒のK氏にお伺いしたところ、日本ではもう木の電柱は作っておらず、また古いものも17年で取り替える定めなので姿を消しつつある、という話でした。一方アメリカでは結構木の電柱を見かけたのですが、これは乾燥した気候なので木でも充分長持ちするからなのでしょうか。
 いよいよ道が狭くなり、カーヴも勾配もきつくなり、さらに検問所みたいなのがあって大型車の通行を規制しています。どうも現在フーヴァーダムを大型車が通るのを禁止しているようで、代わりにダム周辺の急勾配と急カーヴの区間をすべてバイパスして高架橋で超える新道を作っています。その工事現場を横目に峠を越え、ヘアピンカーヴで急勾配を降ると、そこがフーヴァーダムでした。国道93号線はダムの堤体の上を走ってネヴァダ州に至ります。
 見学用に駐車場が何箇所にも作られています。車を停めてちょいと撮影。時刻は夕暮れごろでした。以下の写真はクリックすると拡大します。
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フーヴァーダムをアリゾナ州側から望む 湖に4つ立つのは取水塔

 フーヴァーダムは1931年着工1936年完成、これ一つで日本のダムを全部あわせたよりも多い貯水量を誇りますが、そんなダムを5年で完成させた当時のアメリカの技術力は驚嘆に値します。以前読んだコンクリートの本にフーヴァーダムの話が載っていましたが、当時の最新の技術が投入され高度な品質で作られていたそうで、完成から70年、補修はしているのでしょうが、コンクリート建築物はとても綺麗で70年も経っているとは信じがたいほどです。
 時刻は18時ごろだったかと思いますが、ダムのネヴァダ側にある見学者用施設は既に閉まっていました。まあ時間的余裕から開いていても寄るのは難しかったと思いますが、少しでも見て廻ろうと体調不良のH氏が車内で休憩している間にK氏と小生は慌しくダムを見て廻ります。
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フーヴァーダムの洪水吐き

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洪水吐きの排水口とその上を越える国道93号線のコンクリートアーチ橋

 洪水吐きとは万が一ダムが溢れた時に水を下流に逃がす設備です。ぽっかりと底知れぬ真っ暗な口をあけている排水口が印象的でした。
 で、そこからコンクリートアーチ橋を渡って、高さ200メートルを超えるダム堤体に行ったのですが、既にここまでグランドキャニオンやプレーンズ・オブ・フェイムで酷使を重ねてきたデジカメの電池が遂に消耗し尽くしてしまいました。ダムの絶景と、さらにダムに付随した水力発電所、そこから伸びるほとんど芸術的な送電線、といったものは残念ながら撮影できませんでした。しかし幸い同行のK氏が撮影されてましたので、氏のご好意を得て写真を頂戴しております。以下、K氏撮影のお写真をご紹介させていただきます。
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ダム堤体から下流を望む(K氏撮影)

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アリゾナ州側の送電線群 左手の白い部分がダム堤体(K氏撮影)

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ネヴァダ州側の風景(K氏撮影)
手前の建物はダムの見学施設、後景のコンクリート柱は建設中のバイパスのもの

 ダムのはるか下を覗き込むと、水力発電所の設備がアリゾナ側とネヴァダ側に同数ずつ並んでいるのが見えます。取水口で取水され、ダムの高さ分落ちてきた水はそこで発電しますが、こうしてダムの底で発電した電気を送電線で真上に立上げ(三相交流なので、発電ユニットごとに3本一組で上へ上がってくる)、それを受け止めるために川へ向かって斜めに突き出した鉄塔が設置されているようです。
 傾斜鉄塔が受け止めた送電線は、両岸の崖の上に設けられた開閉所につながり、更に各地へと送られているようです。両岸で発送電設備が同じような構造になっているのは水利権の関係ではないかというのがK氏の見立てでした。両岸にはこのように様々な鉄塔が立ち並び、またダムの底の発電施設に貨物を下すため? の索道(上の3枚の写真で、両岸を水平に近く結んでいる太いケーブル。ネヴァダ側は鉄塔で、アリゾナ側は崖に掘られた穴の中に繋がっている)、トロッコらしきものもあって、鉄塔マニアやインフラ好きはアメリカまで見に来る価値があります。
 電気に詳しいK氏と同道したお蔭で、設備の意味をよく理解することが出来、時間は短いながらも充実した見学だったと思います。感謝。出来ればまた時間をかけて見学したいものです。その時は河川土木工学に詳しい人と一緒に来るとまた勉強になりそう。

 あまりH氏を待たせるのも悪いので手短に見学して車に戻り、ラスヴェガスに向かいます。国道93号線は道なりに走ると高速道路につながり、いよいよラスヴェガスの町が見えてきました。ちょうど日没頃だったので、けばけばしいカジノホテルのネオンサインが点燈しているのが見え、しかしまだ日があるので巨大なホテルのスカイラインもはっきり見て取ることが出来ました。砂漠の真ん中に巨大な街が出現したのも先程のフーヴァーダムの賜物です。しかし第一印象は何となく、日本のパチンコ屋とラブホテルをくっつけて百倍派手にしたみたいだなあ、という感じでした。まあカジノはいうに及ばず、ラスヴェガスは結婚や離婚も簡単な街らしいので、それほど見当違いな見立てでもないか・・・。
 高速道路を走って市街地に入り、日も暮れた頃に今日の宿泊地 Hilton Grand Vacations Club に到着。ヒルトンといいつつ普通のヒルトンホテルではなく、本来は滞在型リゾートみたいなもので、空いている部屋はホテルみたいに貸してくれるというもののようです。なので部屋もかなり立派な台所(コンロや流し、でかい冷蔵庫などが完備)や、バスと別に独立したシャワールームがあるなどかなり広いものでした。

 H氏の体調もほぼ回復したようなので、夕食を食べに出かけます。凱旋門やエッフェル塔などパリの建築物を模したテーマホテル Hotel Paris に行ってみます。フランス料理のビュッフェレストランがあるというので。ガイドブックには15ドルとあったけど、実際に行ってみると確か24ドルかなんかになっていて、ラスヴェガスがカジノ中心から総合的観光地(だからカジノの上がりでレストランの経費を賄わないで独立採算的になる)に移行しつつあるのだなあという感を抱きました。料理はなかなか旨かったように感じましたが、ここ数日の食生活があれだった反動なのかもしれません。思い返せばがぶがぶアイスティーを飲んでいた記憶があるので、味付けはかなり濃かったんじゃないかと思います。
 バクチはしませんでしたが、カジノの中を通ってちょこっと周辺観光。カジノで飲み物を運ぶお姉さんの衣裳がバニーガール的露出度でした。イタリアや古典古代をテーマにしたという周辺のホテルをちょこっと覗き、噴水のショーを(タダなので)見ます。フーヴァーダムの水と電気はこんな風に使われているのだなあと感慨些か。あとどっかのカジノに日本料理店が併設されていましたが、その店名が「しんたろう」だったのでラスヴェガスまで来てこれかよ、となんとなくぐったりしましたが、これはしんたろうはしんたろうでも勝新の方じゃないかとはH氏の言。
 しかしまあなんですね、ラスヴェガスでこういった「〇〇風」のアミューズメントを大金を投じてやっているその規模はやはり目を見張るもので、日本の「メイド喫茶」も誰か物好きな資産家がマナーハウス一軒秋葉原におったてるくらいのことをして欲しいですね。もっとも小生が100億ドルくらいカネの余っている資産家だったら、ラスヴェガスに「北朝鮮」を題材にしたテーマホテルを建てます。つまり史上最大の廃墟と化した柳京ホテルをそのまんま実現させてやろうというわけで。 Hotel Paris の凱旋門のごとく金日成の銅像や主体思想塔も完全再現。名物は喜び組ショー。
 ・・・流石にだいぶ草臥れていたのか、ラスヴェガスまで来てやくたいも無いことしか思いつきません。夜の10時を廻っても、大通りは人でごった返しています。遅いのでホテルに戻ろうとしますが、ストリップと呼ばれるラスヴェガスの目抜き通りはこの時間でも大渋滞で埒があきません。そこで高速道路を迂回していったところ、すぐにホテルに戻ることが出来ました。無料の高速道路はこういう時に便利ですね。

 以下、デス・ヴァレー篇に続く。
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by bokukoui | 2007-06-17 23:53 | 出来事