表題通り、雑多な思い付きを適当にかき集める(筈だが筆不精なのでそうなるかは不明)という趣旨です。
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J.C.バーナム『悪い習慣』雑感
 このところ今の研究に関連してアメリカの近代史(あ、アメリカには近代史しかないのか)について興味を持ったりしておりますもので、ちょこっとそれにまつわる本を読んだりしていましたが、今日のお題もその1冊。

J.C.バーナム(森田幸夫訳)
   『悪い習慣』玉川大学出版部

 古本屋で何気なく手に取った一冊ですが、アメリカにおける「悪い習慣」すなわち飲酒・喫煙・薬物・賭博・性的非行・罵り(この章は訳されていない)の広がりと、これらの悪習がどのように関連しあっているのかという様相を述べた本です。
 最初目に留まったとき、性的な問題を扱った章があるので、何がしか表現の自由などに関る問題もあるのかなと思って買い込んで積んでおいたのですが、先月「同人誌と表現を考えるシンポジウム」を見に行ったのをきっかけに読んでみました。実際には性的な表現の問題はこの本の中で比較的傍流の話題に過ぎないようで、やはり飲酒・喫煙などを中心とした悪習の展開に重きを置いているような感じです。
 で、まあ今の日本について考える上でも参考にならないことはない・・・とは読んで思えるのですが、どうも正直なところ大変読みにくい本で、本書の内容を読み取れたという自信が小生にはありませんし、その内容に基づいて議論を発展させることも出来そうにありません。それでも何とか本書の述べている主な内容と思われることを以下に箇条書きで示すと、

・アメリカでは、19世紀以降の資本主義社会の発展に伴って「悪い習慣」が広まった。
・「悪い習慣」は下層社会や知識人(共に反体制的な傾向を持つ)が擁護した。
・企業の宣伝とマスコミの報道が「悪い習慣」の普及を強く後押しした。
・「悪い習慣」は莫大な利潤をもたらすため、多くの事業者が普及に努めた。
・様々な「悪い習慣」は(飲酒を中心に)相互に密接に関りあっている。
・こうして19世紀の個人的な悪習は、20世紀にはアメリカ文化の重要な要素となった。

 こんな感じでしょうか。
 それなりに面白い論点が色々導けそうな感じはするのですが、正直文章が極めて読みにくく、どうもまとまった印象がつかめなかったのは残念です。要するに翻訳が問題だと思います。これが小生が自らの読解力の無さを糊塗せんとするものではないことの傍証として、同様の指摘をされているサイト(小生が検索で見つけた限り、『悪い習慣』の感想は日本語ではこちらしか見つかりませんでした)をリンクしておきます。

 そんな読み方しかできなかったくせに何か意見を述べようというのもおこがましい考えで、おまけに小生が思ったことは本書の中心となる論点から明後日の方向に飛んでいる可能性が高いのですが、それでも一つだけ卑見を述べさせていただきます。
 本書では大きく6つの「悪い習慣」を取り上げているのですが、バーナム氏はこれらの「悪い習慣」は密接に絡まりあって、相互に浸透を促進しあうような状況が、「悪い習慣」に関る企業やマスコミによって作られていたと指摘しているようです。『プレイボーイ』などの雑誌が主に例として取り上げられていますが、例えば飲酒をかっこいいものとして描くそのような雑誌では、喫煙についても広告がいっぱい載せられていたり、或いは麻薬の合法化が誌面で議論されたり、といったことがあった(今もある)のだそうです。もっともそれは日本近代を考えても、確かにそういうことはありそうだと思われますね。
 で、小生がそのように読み取って思ったことは、オタクって「悪い習慣」になるのかな?(笑)ということでした。なるほど世間一般から胡散臭く思われていますが、しかしその胡散臭く思われ方は「呑む・打つ・買う」とはかなりベクトルが違っていそうな気がして。その昔、ビートルズの音楽を聴くと「不良になる」といい、手塚治虫の漫画を焚書にした頃のメンタリティなら同一視していたのかもしれませんけど。

 本書を読んでいて感じた違和感に、「悪い習慣」は企業やマスコミが利潤のために強く宣伝をしたこと(陰謀論的解釈?)、反体制的知識人が強く擁護したこと、下層階級に支持されており、それが社会の広いそうにも受け入れられていったこと、が延々と述べられているのですが、これだけ読んでいると「悪い習慣」の普及は強力で一方なもののように思われてしまいます。「悪い習慣」を「悪い」を糾弾するような、つまり禁酒法を定めたような対抗勢力について充分叙述されていないような印象があって、どうもそれが「そんなに皆が受け入れたのなら、もう『悪い』もへったくれもないじゃん」と思いたくもなるのです。
 で、勝手に小生が思いをめぐらすに、「悪い習慣」への対抗勢力って、家族を大事にする中流階級的価値観なんじゃないかと思ったりするわけで。あ、いつもいつも同じオチで済みません。ここんとこ何でも近代家族論で説明する癖がついてしまっておりますし、まして先日アメリカの郊外住宅地(中流階級の牙城=マイホーム)を見てきたこともありますんで、どうしてもこういう発想になってしまいます。
 そもそも物の本によれば、アメリカで19世紀末(1893年シカゴ万博がきっかけとか)に郊外住宅の発想が広がり始めるのは、新移民の増加によって「アメリカが変わってしまう」という懸念が背景にあったそうで、当然その担い手は当然アングロサクソンの中産階級というわけです。

 ということでバーナム氏の「悪い習慣」の、善悪の構図を勝手に切り分けると、「悪い習慣」を悪いと決め付けているのは中産階級の道徳観念で、一方「悪い習慣」を支持しているのは下層階級とか反体制的な知識人とか、中産階級的価値観と異なる文化的ハビトゥスをもつ人たちです、ということになるんでしょうかね。一応綺麗に分かれますが、綺麗なだけに怪しい気も書いた当人しています。まあ目安ということで。
 で、「オタク」はどっちなんざんしょ、と考えるに、中産階級的価値観に迎え入れられているとは今日尚言いがたく、かといって「悪い習慣」=「呑む・打つ・買う」的な世界との相性はもっともっと悪そうです。どっちかといえば「悪い習慣」とは距離を置き、前者に容認されるような方向に持って行きたがる傾向があるんじゃないかと小生は長年の経験(笑)から感じております。
 まあ、何でそう考えるかというと、ことに最近の「オタク」な人々について(とりわけ「非モテ」関連の話題の周辺をうろつくに)、どうも「オタク」って保守的な(近代家族的な道徳観念を尊重している)な面があるんじゃないかと思わずにはいられないからです。そんなわけなので、今週末の「6・30アキハバラ解放デモ」についてどうかなあ、と思うのは、「オタク」「萌え」は(特に現状では)ちっとも「革命的」ではないんじゃないかと疑問を抱いているからなのです。

 そんじゃオタクはどうすればいいのか、ということに関して、歌に託して私見を述べますと、
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ(若山牧水)
 どっちにもならなきゃいいと思います。どっちにも染まらないことを「哀し」と思う人は、違った手法をとられる方が宜しいのではないかと。

 話がバーナム氏をほったらかしてどこぞへ迷走してしまいました。
 しかし、こうなったのもひとえに訳文が読みにくかったせいだと言い訳します。そして小生が、この本の訳文はまずいんじゃないかと思った直接のきっかけ、本書の口絵とそのキャプションを以下に引用させていただきます。
バーナム『悪い習慣』p.144とp.145の間の口絵より

 小生のような英語力皆無の人間がこのようなことを書くのはまことに身の程知らずだということは充分に承知しておるつもりではありますが、しかしこのマンガに描かれている自販機の警告文は、「警告 コイン投入口に手の届く者のみ、この自販機を操作できる」(なのに投入口がえらく低いので、子供でも買えてしまう)とでも訳さないと、諷刺の意味がないような気がするのですが・・・。どうでしょうか。

by bokukoui | 2007-06-24 23:59 | 書物 | Trackback | Comments(0)
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