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筆不精者の雑彙

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横浜開港資料館の命名権問題

 数日前の新聞で表題の件に関する記事(地域面)を読み、流石に驚き呆れたので、ここでも簡単にご紹介する次第。
 ネット上でも全く同じ記事が読めます。
※追記:記事が消えたのでこちらの魚拓をご参照下さい。

 命名権売却 市が検討(朝日新聞) 
 ペリー上陸図など横浜関連の資料約25万点を収蔵する横浜市中区の横浜開港資料館について、市が命名権(ネーミングライツ)の売却を検討していることが分かった。全国的にスポーツ施設やホールに導入する例は多いが、寄贈資料が多い公立博物館の命名権売却は珍しいという。寄贈者からは「一企業の宣伝のために提供したわけではない。資料の引き揚げも考えたい」と批判の声が上がっている。
 一つ補足しておくと、上掲新聞記事中にコメントを寄せておられる日本女子大の井川先生は、かつて開港資料館に勤めておられた方です。日本女子大の教授陣では、吉良芳恵先生も開港資料館におられた方でした。

 さて、三ツ沢の競技場は命名権を売ったそうで、そういった施設については他にも多くの例がありますから別にどうということはありませんが、そもそも商業的な成果を挙げるということを前提にしていない開港資料館のような施設に対しても同じ政策を採るということは、理解に苦しみます。リンク先の記事からすると、史料を寄託している方々からの反発が強いにもかかわらず、市の側が態度を変えようとしないのも解せません。
 横浜開港資料館は、近代に関する資料館として(まあ、横浜の前近代に特別見るべきものは余りないでしょうから・・・)かなり名の知れた施設であると思います。新聞類はじめ所蔵されている史料は数多く、小生も過去何度か利用しました。で、これは渋谷公会堂の命名権売却の際にも感じたことなのですが、「開港資料館」というのは、その筋では既に相当の知名度があり、つまりいわば「ブランド」になっているわけです。それだけの実績があるということですし、それを活用することこそがむしろ有意義で効率的であるとさえ思うのです。
 しかし、横浜市大に関して仄聞するところもそうですが、現中田市長はそういった「文化的資本」の価値には全く無頓着であるといわざるを得ません。横浜では「開港150周年」というキャンペーンをぼちぼち始めていますが(1859年開港)、その矢先に歴史文化事業へのこんな姿勢では、この150周年キャンペーンもまた結局はハコモノ的再開発(実際県立ホールをこれに合わせて作ろうとし、ゼネコンが談合で公共事業の受注自粛をしたので間に合わなくなったことがあったとか)に過ぎないのではないかと思いたくなります。現中田市長は、かつての横浜のそういった公共事業を批判することで市長になったはずなのですが・・・。

※追記:ちょこっと追加情報はこちら
※更に追記:中田市政の歴史への姿勢は、最後にこんな展開を示しました。
Commented by 労働収容所組合 at 2007-11-12 21:23 x
いよいよ神奈川港の時代。
Commented by 無名 at 2007-11-13 17:35 x
21世紀の「革新」とは古いもの(近代の習慣など)を駆逐する事が目的なのかもしれませんね。
Commented by らくた at 2007-11-14 01:57 x
市大のみならず、開港資料館までですか…。中田市長、文化には金を払うつもりがないらしいですな。もちろん経済効率は大事でしょうが、文化に金を払えない先進国の大都市って、なにやらさもしいものを感じるんですがね…。

しかし、開港資料館の命名権を、例えば東京ガスが買ったら「東京ガス資料館」…何の資料があるやらさっぱり分からなくなりますな。ちなみにうちの近所に「ガス資料館」は既に存在しますが(笑)。
Commented by bokukoui at 2007-11-16 12:45
>ラーゲリ氏
東京港が出来た時点で横浜港の時代はかなり終わったかも。

>無名さま
「革新」と「復古」が良く結びついていた時代もありましたね。まあそもそも、中田市長が「革新」ではないでしょうが。

>らくた様
ご無沙汰しております。
仰るとおりと思うのですが、その「さもしさ」をさもしさと感じないような傾向が、最近はあるのかもしれません。

企業の博物館にも結構優れたのがあったりするわけで、以前行った日本ガイシの碍子博物館(実際には一部屋ですが)は結構楽く見学しました。その時に、この博物館はどう使っているのかと聞いたところ、海外から来たお客などに見せているとのことでした。
つまり、ちゃんとした博物館や資料館なら、対外宣伝ということでちゃんと元が取れると営利企業ですら認識しているのではないかと思うのです(製造業の場合は対内的志気向上という意味もありそうですが)。開港資料館だってそれだけの仕事はしている筈。
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by bokukoui | 2007-11-12 15:51 | 歴史雑談 | Comments(4)