鉄道と「マニア」(極私的オタク論その4補論)

 この記事に寄せられた某後輩氏のコメントに関して。

 まず最初に論点のズレを弁解しておきたいのですが、この議論のもともと始まりはこの記事における「鉄道趣味者や軍事マニアは「オタク」に包含されるのかされないのか」という文句から始まったのでして、「オタク」以外の呼称ならば「趣味者」でも「マニア」でも、或いはTa283氏の言われたような「~キチ」でも、とりあえず何でも良かったわけです。要するにある趣味に没頭する人を指すのに「オタク」という言葉を使うことの意味を問いたかったのであって、「『マニア=趣味者』『オタク=『萌え』概念と結びついた層』」という某後輩氏の提示した二項対立構造を想定したわけではありませんし、後者はともかく「マニア=趣味者」という規定は特段した積もりはありません。かつて「マニア」と呼ばれ、今「オタク」と呼ばれる人々を総称して「趣味者」と呼んでいる、そのようなつもりでした。
 確かに、「極私的オタク論その4・「鉄オタ」「軍オタ」という表現について」では、「オタク」という表現にばかり注目し、「マニア」という言葉を一般名詞的に使ってしまっており、小生の意図を伝えられていない点は問題でした。しかし、「極私的オタク論その4続き」では、「マニア」もまたある時代の文脈を持った用語であるということを意識して、カギカッコつきで使っています。

 「趣味者」という表現はあまり日本語に馴染んだものとは思えません。小生が敢えて自称として「鉄道趣味者」を使い、「マニア」を避けているのは、鉄道趣味業界における過去の言説を勘案した結果です。
 実は、「マニア」という言葉の負の側面を原語に遡って捉えこの用語を排斥するという意見は、かつての鉄道趣味界でも見られたものなのです。確か『鉄道ジャーナル』誌の投書欄(昔、ここは荒れることがままありました)でそのような議論が展開されたように記憶しています(書架を漁ったのですが小生の所有している号には見出せませんでした)。一般的に無難な表現としては「鉄道ファン」という言い方がなされますが、同名の鉄道雑誌がある関係からか(笑)「レールファン」という言い方をする人もいるようです。
 自動車の世界では「エンシュージアスト」という言葉は定着しているようで、これは割と好意的な評価にも使われているようですね。しかし商売敵の自動車業界の言葉のせいか?鉄道趣味方面では全くといっていいほど使われません。

 そして、これは小生の思い入れですが、「Railway Mania」は固有の意味を持つ歴史用語である、という事実を指摘しておかねばなりません。
 鉄道史において Railway Mania とは「鉄道建設ブーム」「鉄道敷設熱」のことを指します。鉄道事業が儲かると考えた人々が、次々と会社を設立し株を買った、そんな時代のことです。本家本元・英国では、1840年代末を指します。これまた湯沢先生の本か、もっと一般向けでは小池滋先生の『英国鉄道物語』を参照してください。日本史では1890年代の「企業勃興」であるとか、1910年代の軽便鉄道ブーム、1920年代の電鉄ブームなどが「鉄道マニア」と呼ばれます。鉄道史の本の中には、「鉄道敷設熱」の振り仮名に「レイルウェイ・マニア」とカタカナで入れているものもあります。

 というわけで、「鉄道マニア」と自称する気にはなれず、よい総称がないかと考えた結果、鉄道趣味界最古参の雑誌『鉄道模型趣味』に敬意を表して「鉄道趣味者」と称することにしました。戦前には『鉄道趣味』というまんまな雑誌もあったそうです。
 まあ、最初に思いついた時は、「共産趣味者」がヒントになったわけですが(笑)

 なんだか記事分類を「鉄道」にした方がいいような気もしてきましたが、言いたかったことは、「オタク」と「マニア」の違いは性格というより歴史的経緯に着目しているということ、「マニア」の原義に由来する(躁病の意もありましたね)問題点は一応認識しているつもりであるということです。
 某後輩氏のコメントでは、nerd という言葉についてのご説明から新たな論点が開けるように思います。が、夜も更けたのでその話はまた今度に。
[PR]

by bokukoui | 2006-02-11 02:39 | 思い付き