霊柩車の衰退

 急に勢い込んで、万事積極政策にしようとしたものの、やはり無理が祟ったのか数日ダウン。しかしまたこれで引き籠もっては元も子もないところであります。
 気を取り直してまた出かけるようにしましょう。

 前回の記事で自動車の話を書きましたが、自動車といえば、しばらく前に祖父が死去した際に感じたことを思い出しました。
 諸般の事情により、葬儀屋さんとの折衝に小生も同席せねばならず、いろいろ話を聞いたのですが、その際に霊柩車をどうするかという話がありました。

 で、霊柩車は葬儀の価格に応じて「格が上がる」のですが、一番安いものだとクラウンがベースで、高くなるとリンカーン、キャデラックとなっていったように思います(リンカーンとキャデラックのどっちが上だったかは失念)。昔は高級車としてアメ車の人気は高かったそうですが、今の日本では高級と言えばまず真っ先にドイツ車が浮かんできます。が、霊柩車業界ではアメリカ車が健在のようで。ちょこっと検索してみると、洋式霊柩車にはメルセデスのEクラスのステーションワゴンベースもあるそうですが、いわゆる霊柩車らしい霊柩車、宮型霊柩車のベースはアメ車中心のようです。
 どうしてアメ車が斯界で人気があるのかと葬儀屋に問うたのですが、残念ながら回答は得られませんでした。素人考えですが、霊柩車、殊に宮型霊柩車は、ベースとなる車のボディを一部切断し、そこにやたらと工作物を搭載するわけで、車体(シャーシ)の強度が求められそうです。その点で頑丈であるとか、足回りの許容重量が大きい(そのため改造していっぱい装飾をつけることができる)とか、そういう点で有利なのかな、と思います。スピードは出さないし長距離も走らないから、走行性能や燃費はあんまり問題ではなさそうだし。

 霊柩車と言えば井上章一『霊柩車の誕生』という有名な本がありますが、小生も葬儀屋との折衝後思わず読み返してしまいました。この本はとても面白いですが、あくまで葬送と意匠、民衆のキッチュの文化のお話なので、ベースの自動車についてはほとんど論じていません。もちろんテーマから言って必要ないんですが、しかし日本独自の葬送文化たる霊柩車を技術的に支えるには、アメリカ車のタフさが必要だったとするならば、なんだかちょっと面白い「日本独自の伝統」ってもんだな、と思います。
 で、小生は宮型霊柩車を使ってはどうかと提案したのですが、一言の下に却下されました。結局洋式のそれにしたのですが、葬儀屋曰く現在では9割方洋式なんだとか。全国的な傾向かどうかはよく分かりませんが、上掲井上著では葬儀に使われる霊柩車は宮型が中心であると述べていたことからすると、20年ばかりで結構大きく世の中変わったということになります。
 井上著の主張からすれば、民衆が作り上げたキッチュのデザインというところに霊柩車の面白さがあるというわけですが、とすれば、それが学術研究の対象になったという時点で、キッチュの力が衰えてはじめてしまったのかも知れませんね。
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by bokukoui | 2008-04-04 19:16 | 思い付き | Comments(8)

Commented by 東雲 at 2008-04-04 21:50 x
シャシーの強度というより、モノコック車体だと車体を業者がいじくりにくいので、剛性はなく、重量も不利にして大雑把なベリメタフレームのFRフルサイズが適しているというだけの話です。合理的な設計を尊んだ欧州だと、そんな床下の独立フレーム付きの車は1970年代には姿を消してしまった(ロールスロイスまで早い段階で、注文生産のファントム以外はモノコック車体に移行してしまった)ので、アメリカのフォードとGMのフルサイズFRしか改造ベースの選択肢がなかったということです。
クラウンも、1995年のモデルチェンジまでは、本筋のロイヤル系はフレーム付きでしたが、これ以降はモノコックになってしまっています。
あと、アメリカのフルサイズセダン・ワゴンはオーバーハングも大きく、実用的には無駄なスペースだらけなのですが、その無駄が霊柩車の架装には役だったのです。宮作りの外枠を堂々と乗せても、宮の中に棺を詰めるだけの巨大の車体の車はアメリカにしかないのです。
Commented by 檸檬児 at 2008-04-06 01:36 x
 幼い頃、金ピカ豪華な霊柩車を見て「ボク、あれに乗りたい」と無邪気に口走ったと、ことあるごとに母がからかっていたものですが(本人、記憶無し)、どうせいつか乗ることになるだろうと思っていました。
 21世紀になってしまった今、もう黄金御殿の霊柩車で旅立つことはダメなのですか・・・いや、別にガックリくることではないのですが。

 個人的にはバイクにロープで引っ張って野山を駆け回ってもらって散骨してもらいたいところなのです。(もっとダメ)
Commented by 無名 at 2008-04-06 10:32 x
モノコックだと・・・。
先を越されましたね(笑)。
ディムラーのDSを使っている葬儀屋(結婚式場では一時期流行ました。従って、シザーにいけば極上車が腐るほど売っているはずです。)が中京のほうにあるようです。
改造はしやすかったでしょう。
霊柩車は、白木だと維持がとてつもなく大変です。
定期的にカンナがけをしますが、割に合うものではないでしょう。
ちなみに、今でもリンカーンタウンカーの系統(マーキュリーやクラウンビクトリアなど。)はパンサーフレーム(ペリメタ)を用いています。
クラウンビクトリアは2007年にフェードするはずでしたが、カナダ生産に切り替えて継続するようです。
恐らく、逃走車両にぶつける時に丈夫なのと、防弾パッケージの組み易さが理由でしょう。
ランクルベースだと霊柩車を作りやすいでしょう。
輸出できるかもしれません(笑)。
Commented by bokukoui at 2008-04-07 20:35
>東雲氏
詳細なご教示ありがとうございます。
技術的に霊柩車とアメ車は相性が良いということですが、キッチュな大衆文化という点もアメリカと相性がいいのかも(笑)

>檸檬児さま
何も知らないと、とても葬儀用品とは思えないですよね。
オートバイでサイドカーに棺桶を積む、というものは、もしかするとあるかもしれません?

>無名さま
これも詳細に、ありがとうございます。
ディムラーで霊柩車とは、何か勿体ないような気もしてきます。ランドクルーザーの霊柩車は中東あたりで実際ありそうですね。ジハードの殉教者を乗せて、とか・・・
Commented by 無名 at 2008-04-08 13:43 x
ランクルは高級なので霊柩車。
ハイラックスは安いので特攻機。

確かダイアナ元妃の葬儀の際にDSの霊柩車(寝台車)を用いていた気がします。(DSだとシトロエンが一般的なのでいい略し方はないですかね?。)
Commented by bokukoui at 2008-04-11 18:31
>無名さま
イギリス王室だと霊柩車もロールスロイス、と安直に連想しますが、ディムラーだったんですか。
DSでは・・・まあゲーム機と思われるのがオチですね、今では。
Commented by 間違った葬儀屋はいらない at 2008-08-24 10:34 x
そもそも霊柩車に勝手に料金ランクを付けたり、最近はほとんど洋型が選ばれている等とお客様に勧めてみてり、全ては金儲け第一の葬儀屋の交渉のさじ加減で行われてしまっている現実があります。また斎場建設を強行する手段として、近隣同意を得る手段に宮型霊柩車を禁止にしてみたりしているだけのことです。日本人として葬儀の本来の意味が全く忘れ去られているのです。
Commented by bokukoui at 2008-08-26 00:00
>間違った葬儀屋はいらない様
コメントありがとうございます。
近隣住民対策はあるかもしれませんね。ちなみにこの時拙宅の葬儀を行った斎場は、横浜市が周辺開発前にいち早く、しかも地形を利用して周囲から見えにくいように、巨大な施設を建てたものでした。利用してみていろいろ納得です。

「葬儀の本来の意味」とは、考えてみれば大変難しいことです。
葬儀は畢竟、生きている人間が行うものですから、生きてる人間の都合に実は大きく左右されるのは、案外本質的なところでの「葬儀の意味」に適うことなのかもしれませんね。