三十三年の孤独~革非同花見に「希望は戦争」赤木智弘氏来駕

 日曜日のお花見の話など。
 これが革命的非モテ同盟古澤書記長主催のお花見なのでした。今回のお花見にはビッグな(?)ゲストが。
 『若者を見殺しにする国』「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。」で話題を集めた赤木智弘氏であります。そして、漫画家・山本夜羽音先生も来られていました。

 週明けから急に天気が悪くなりましたが、日曜日は好天で花も充分残っており、絶好のお花見日和になりました。お花見の情景を記念に撮影したので以下に一枚。
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 上の写真で、顔が出ているのがおなじみ古澤書記長、赤で目伏せしたのが赤木氏、黄色が夜羽音先生です。十数名が集まり、フランス人や女性の参加者もあるなど、なかなか盛況でした。書記長もビールをサーバーごと持ち込む気合いの入れようでしたが、流石に多すぎて始末に困っていたようです。小生も未だ体調本復せぬ故に、始末に協力できなかったのは残念でなりませんでした。

 さて、赤木氏が来られるということを聞いたので、小生は『若者を見殺しにする国』を持参してサインしていただきました。またサイン本コレクションが増えました。
 が、それは本題ではなく、折角の機会なので同書の内容について幾つか感じた疑問点を伺ってみました。同書の核心をなすのは、雑誌『論座』に掲載された「『丸山眞男』をひっぱたきたい」という文章ですが、内容はリンク先にそのままあるので読んでいただければよいので、ご関心のある方はご参照ください。バブル崩壊後の不況で、特に厳しい経済的困難に追いやられた団塊ジュニア世代、氷河期世代の主張を訴えたものです。企業が氷河期世代の若者を切り捨てたばかりでなく、既存の「弱者」保護政策(労働組合とか)も既得権益を持った層を保護するばかりで、またそれを正当化するために「近頃の若者はダメだ」という「俗流若者論」(これについては後藤和智氏のサイトをご参照ください)が流布するのだとしています。そして、ここから氷河期世代の若者が脱却するには戦争が起こることで皆が貧しくなればよい、とさえ思いたくもなるのだ、としています。
 小生は最初、これはわざと過激なことを主張して社会批判を行う、例えばスウィフトの「アイルランドの(中略)穏健なる提案」みたいなのかと思ったのですが、本を読んでみるとどうもそういう積もりでもないような感もあり、とすると鋭い着眼点からはじまっているのに、そして部分部分ではなるほどと思ったところがあるのに、議論が途中からやや迷走しているような印象を受けました。

 幾つか感じた疑問点の中で最大のものは、この本の中で赤木氏が既得権益を固守して若者を犠牲に追いやっているという層に対して厳しく批判を述べる一方、ご自身をはじめとする、肝腎の団塊ジュニアの就職氷河期世代についての記述が少ないということです。何より、赤木氏ご自身が「この本は、社会批判の書であると同時に、私の人生を世間にさらけ出す暴露本という側面を持っています(p.15)」と述べられているのに、実はほとんどそうではないのです。赤木氏自身の経験による氷河期世代の状況がほとんど述べられていないため、その人々の苦境を訴える力を損なってしまっているように思われます。その分、既得権益と非難される正社員などへの批難、「希望は戦争」という過激な言辞ばかりが目に付いてしまうのです。
 これは結局、赤木氏のような立場にある人への支援をするという方向へ世を動かす、という戦略的効果を損なうことになります。あんまり他人事でもないので、そういった戦略的方向自体は小生も首肯するところなのですが、それだけに読後の戸惑いもありました。

 この点について、赤木氏に直接お話を伺ってみました。氏はだいぶ飲んでいるので、と断りつつ、慎重に言葉を選びつつお答えしてくださいました。ありがとうございます。
 で、やはり小生が考える程度のことは既に指摘している方もおられたのか、赤木氏としては自分についての話は次回作で書く予定だ、とのことでした。
 ではなぜこの本で書かなかったのか、ということを伺ったのですが、小生の聞き方が悪かったのか、ちょっと話がかみ合わなかった覚えがあります。
 更に幾つかお伺いしてみたところでは、このまとめはあくまでも小生の印象に基づくものですが、赤木氏はご自分について語ること自体に積極的ではない印象を受けました。そもそも他人とそういったことについて語り合うというか、情報交換をするような機会が余りなかったようです。

 『若者を見殺しにする国』では、「俗流若者論」の一例として、オタクへの不当なバッシングについて取り上げています。その論旨自体は小生もまったく同意するところですが、ただ本書全体の中での位置づけが良く分からないという感想も持ちました。これもおそらく、赤木氏自身の状況の記述が少ないため、オタクであることと団塊ジュニアの生き辛さとの関係が良く分からなかったのでしょう。
 で、赤木氏はゲームやアニメが好きだと書かれていますが、こういった趣味的な話題についても、周囲の人と話したりすることが、どうも決して多くは無かったようです。

 この辺の印象から話をまとめるのは些か乱暴であるとは思いますが、小生が感じた印象を率直に述べれば、赤木氏の(様な人の)苦しみそして欲求の多くは、「自分のような人間の言うことには誰も耳を傾けてくれない」という思いに起因するのではないか、ということです。簡単に言えばコミュニケーションの問題ですね。
 団塊ジュニアといってもみんながみんなフリーターになったわけではない、ではどういう人が貧乏くじを引かされたのかと考えれば、社会の不利な状況を補いうるであろう人的なネットワーク(血縁、地域、友人、などなど)との結びつきが弱い人ほどなりやすいんじゃないかと。もちろん小生は、「俗流若者論」的な、最近の若い者は“人間力”が低いからだ、とかそんな話をしたいわけじゃないですよ。昔ならば「自己責任」で済ませても大した問題じゃなかったかもしれませんが、現在の(赤木氏の世代以降の)場合はそうはいかないでしょう。人的なネットワークの形が変化しているからです。
 更にコミュニケーションの問題は、承認欲求の問題にも直結しているでしょう。人とのコミュニケーションなくして承認もないからです。だから逆に、何かの拍子でこれが失敗すると、コミュニケーションできない→自己承認できない→もっとコミュニケーションできない・・・という悪循環に陥り、脱却が難しくなってしまうのではないかと思います。で、その「何かの拍子」というのが、特に最近は当人ではどうしようもない状況で強いられた物であることが多いのではないかと考えられます。

 こう纏めてみると、赤木氏が「非モテ」の花見に来る必然性は大いにあると納得できます。「非モテ」もまたコミュニケーションと承認欲求の問題に他ならないわけで。また赤木氏の言論が話題を一定呼んだとしても、間々ディスコミュニケーションに陥ったり、攻撃性の強さゆえに反感を招いてしまうことも説明できそうです。
 赤木氏は、自分の求めているのは衣食住の保障という「生理的欲求」「安全の欲求」であって、他者との係わり合いから得られる「親和の欲求」「自我の欲求」ほど高次なものではないと述べておられますが(第6章)、それでは戦争になって名誉の戦死の方がマシ、という言葉は出てこないでしょう。実際、それに続いて「本当なら、生きたまま十分な自尊心を得られる生活を送りたい(p.211)」と書かれていますし。或いは、酒を酌み交わしジンギスカンを突きながらの山本夜羽音先生との談話中で、夜羽音先生が「今ある行政サービスは使い倒すべきだ」と発言したのに対し、赤木氏は「プライドが・・・」云々と仰っていました。
 さすがに「生理的欲求」第一というのは難民レベルの、とりあえず救済みたいな話であって、日本のこの問題では、一定以上の生活の安定と精神的な安定とは、かなり密接に関わっているのではないかと思うのです。小生はマズローという心理学者の説について何も知らないので、ちょっと頓珍漢なことを書いているかもしれませんが。

 以上の拙文で、小生は赤木氏の所説の瑕疵をあげつらって一時の快を貪ろうとするものでは決してありません。むしろ、例えば氷河期世代に対し何らかの職業訓練的なものを施す際に、彼らを抑圧的に「教育」する(例:海兵隊のハートマン軍曹)という、巷間ありがちな発想の問題点を認識できますし、また彼らの悩みを社会全体の問題として受け入れる上でも何がしかの知見を導けそうだと考えます。論点はまだいくらでも広がりそうですが、これ以上は小生よりも適任な方々が大勢おられるので、話はこの辺にしておきます。
 ただ小生が残念に思うのは、赤木氏の書物からここに達するまで、えらく回り道する必要があったということであります。

 というわけで、「希望は、戦争」という言葉から、満州国→大陸浪人なんかを思い浮かべてしまっていたのですが、だいぶ違っていたなあ、という話でした。
 で、赤木氏の「戦争」については、とても重要な話がまだあるので、次の機会に。
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by bokukoui | 2008-04-10 23:45 | 出来事 | Trackback | Comments(9)

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Commented by MarkWater at 2008-04-11 00:50 x
つくづく俺もアイルランド人の血を引いていると思うわ^^;
Commented by 東雲 at 2008-04-11 03:40 x
赤木氏がスウィフトだというのは、興味深い指摘ですね。
まあスウィフトじゃ現代日本から浮世離れしすぎているので、極端な言説という点で、私は西部邁を想起しましたね。
(まあ社会批判のために意図的に極端なことを言う傾向は福沢諭吉にも多々あり、その論理を使って小泉信三や丸山真男は脱亜論などに対する福沢批判に反駁していますね)
Commented by 無名 at 2008-04-11 10:27 x
人的ネットワークについてですが、以前ある職業訓練に通っていましたが、(個人的にはホワイトカラーを形成する人とは反りが合わないということを痛感しました。)そのときの講義で、「大学や会社の人脈はほとんど就職の役に立たない。役に立つのは義務教育時代からの付き合いや高校だ。」ということを教えていました。
そのことに関する真偽は分かりませんが、興味深い話です。
Commented by 労働収容所組合 at 2008-04-11 18:13 x
貧しさを分かち合う社会主義ですね、わかります。
Commented by 某後輩 at 2008-04-11 19:22 x
>ではどういう人が貧乏くじを引かされたのかと考えれば、社会の不利な状況を補いうるであろう人的なネットワーク(血縁、地域、友人、などなど)との結びつきが弱い人ほどなりやすいんじゃないかと。

この辺は、最近ヨーロッパで注目されている「社会的排除/包摂」の概念を思い起こさせますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/社会的排除
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%D2%B2%F1%C5%AA%C7%D3%BD%FC?kid=73525
Commented by 異界洋香奈 at 2008-04-14 12:05 x
満洲国→大陸浪人…はわたしはあこがれた図式です。
しかし、それができるほど強い人間では無かったので(満洲国なんて存在してないし…)、自衛隊→海外派兵→恋人からの手紙を懐に歩哨…なんてのを夢想したのですが、現実的では無かったですね(苦笑)。
赤木氏がどの程度の人的ネットワークを持っているのか不明ですが、知的・技術的資産(学歴・資格)、地域、親族等わたし以下の人間にほとんど会ったことはありません。ただし友人には恵まれていると思いますが。
なまじ社会制度に則って生きてきた人の方が貧乏くじを引く可能性が高いような気がします(早々にドロップアウトしてしまうと、社会のせいなのか自身のせいなのかはっきりいってどうでもいい感があります)。
自身の独自性を唱えながらも「社会」の部分(歯車・ピース)になりたいという矛盾したような欲求が貧乏くじを引いた人たちの内面に見受けられます。
要は「社会」に「愛されたい」わけであって、その「愛のカタチ」が就職なのか家庭や地域なのか戦争なのか…。とりあえずそんな印象を受けました。
Commented by 無名 at 2008-04-15 12:23 x
自衛隊→フランス外人部隊→フランス人のアニメ大好き美少女と結婚というのはどうでしょうか?。
Commented by bokukoui at 2008-04-15 14:03
いろいろ忙しく、しかしどうにも眠く、機械は不調で、返信が遅くなりましてすみません。続きも近日中に。

>MarkWater 様
ご無沙汰しております。
娘さんはお元気でしょうか。きっとアイリッシュの血を受け継がれることと思います。

>東雲氏
スウィフトになり切れていない(無論スウィフトの境地に達するのは大変ですが、方向性として)のがむしろ問題じゃないかと思います。

>無名さま
なるほど。
しかしそうなると、コミュニケーション能力の低い人にとっては、より事態は困難だということにもなってしまいそうですね。
渡仏作戦については…二番目から三番目に移行できる人ならほかの方法も最初からありそうで、また外人部隊で得られるものの方向性は違ってそうな。
Commented by bokukoui at 2008-04-15 14:48
>ラーゲリ氏
分かち合いでも社会主義でもなさそうな・・・

>某後輩氏
意識はしていませんでしたが、言われてみれば社会的排除・包摂の概念に影響されていたかもしれません。

>異界洋香奈さま
示唆に富むコメントありがとうございます。
色々思うところありますが、一つ挙げれば知的・技術的資産とは必ずしも学歴や資格のように顕在なものばかりではないと思います。

もう一つ、
>なまじ社会制度に則って生きてきた人の方が貧乏くじを引く可能性が高いような気がします・・・
>自身の独自性を唱えながらも「社会」の部分(歯車・ピース)になりたいという矛盾したような欲求が貧乏くじを引いた人たちの内面に見受けられます。

社会に則ってきた積もりだからこそ、社会に当然受容されるべきだ、という関係があるのかもしれません。
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