秋葉原通り魔事件 現場に居合わせた者の主観的記録

 既にマスコミ・ネットなどで広く報知されていることですが、本日秋葉原で通り魔事件がありました。今聞いたところでは、7名の方が亡くなられたとのこと。亡くなった方のご冥福と負傷された方のご快復を心よりお祈り申し上げます。

 さて、何の因果か小生、この現場に居合わせておりました。思うに死んだ人に対し生きている人が出来ることというのは、死んだ人のことを記憶にとどめ忘れない(そして後世に伝える)ことだけであろうと思います。そこでその場に居合わせた者として、そこで自分が見聞きして記憶に残っていることを以下に整理し、事件の記憶をとどめる一助としたく思います。なお、どうしてもこのようなものはマスコミによる報道が「印象」を(その場にいた者にさえ)刻み込んでしまうものですので、小生はまだマスコミ報道に敢えて目を通さず、自分と同行の友人諸氏とが経験したことに基づいて、記録をまとめようと思います。ですので報道と矛盾する部分があるかもしれませんが、ご諒承ください。

 本日正午過ぎ、小生は「革命的非モテ同盟」古澤書記長、めかちゅーん氏、ヨブ氏と秋葉原を散策しておりました。コンピュータの新調のため、とりあえずモノを見に来るついでに友人諸氏と歓談するつもりでした。4人で連れ立って、中央通りの歩行者天国をぶらぶらしておりました。
 以下に手書きの拙いものですが、現場と状況を図にまとめてみました。
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第1図

 現場の見取り図です。12時半ごろ、我々は中央通りを南の方へ向いて歩いていました。
 と、背後で「ドカン」と大きな音がしました。反射的に振り返ると、箱型の荷台の、ニッポンレンタカーのロゴをつけたトラックが猛スピードで西から東へと交差点を走り去っていきました。
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第2図

 第2図中(A)のあたりに、二人の人が倒れているのが見えました。(B)の辺り一帯に、傘や何か自動車のバンパーの破片? らしきものが散乱しており、交通事故だと思いました。「轢逃げだ」という声も上がったように思います。交差点の中には、南から東へ向けて濃紺のワゴン車が右折しようと止まっており(古澤書記長いわく、歩行者天国の範囲内に元々いたのが、ホコ天開始前に出損ねて、この時になってあわてて出ようとしていた様子だったとか)、最初はこのワゴンとトラックが事故を起こしたのかと思いましたが、ワゴンは関係なかったようです。トラックはその先の(C)のあたりに止まったようでした。

 我々は第2図中あたりの位置におりましたが、事故の発生に向きを変えて北側の交差点を見ました。元々人通りの多い場所だけにすぐ人垣が出来ましたが、事故現場は歩行者天国の範囲外の道路部分だったので、人垣はそこにははみ出さず、東西の道路に沿ってできました。負傷者にはそばにいた人が駆けつけ、歩行者天国の警備に当たっていたのでしょう、警察官もすぐ姿を現しました。
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第3図

 どのくらいこの状況が続いたのか、小生の記憶ははっきりしません。ヨブ氏は2分程度だと思う、と言ってましたが、そんな程度だったでしょうか。人垣越しなので状況も余りよく見えなかったのですが、人と人の間から、第3図(D)地点附近で警官がころり、と転倒するのが見えました。事故で倒れた人の姿勢を再現しているような感じでした。
 後で考えれば、その時犯人がトラックから降りてここまでやってきて、警官を刺したということだったのですが、犯人の姿を見た覚えは小生はありません。人垣越しでよく視野に入っていなかったのか、想像も出来ないことだったので認識できなかったのか。

 ここで叫び声があがったように思います。ここの経緯は4人の記憶が一致しないのですが、小生は誰かが「発砲だ!」と叫んで、皆が走って逃げ出したように思います。書記長は「キャー!」と叫び声が上がって逃げ出した、といいます。めかちゅーん氏は特に何か悲鳴や声を聞いた覚えは無く、群集が崩れて逃げ出したのを見て自分も走ったそうです。ヨブ氏は女性が「キャー!」と叫んだので交差点を注目したら、警官が倒れるところだった、といいます。ヨブ氏は警官が刺されるところを見た、と言っておられました。

 とまれ、ここで人垣が崩れて、第3図中赤矢印で示したように群集が一斉に逃げ出しました。人垣は左右に割れて、中央通りの真ん中を走った人は余り多くなかった気がしますが、小生も一緒になって走っていたので良く分かりません。なお我々の脱出経路は第3図中の黒点線の矢印の通りで、書記長とヨブ氏は中央通りをひたすら南に、めかちゅーんさんは途中で第1図中の免税店の中に(「店の中へ逃げろ」という声を聞かれたとか)、小生もその店の角を曲がりました。
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第4図

 曲がったところ(第4図附近)で小生は背後を振り返りましたが、その時第4図中(E)の路地で、警棒を構えた警官がじりじりと何かに向かって矢印方向に進んでいくのが見えました。

 同じく店内から振り返っためかちゅーん氏も、路地の入り口のサトームセン(閉店)側にいた男と、路地の入り口の反対側(南側)の警官が対峙しているのを見たそうです。男は後ずさりしながら路地の奥へ入っていったそうです。

 書記長はもっと南まで走ってから、追ってこない様子なので振り返ったところ、やはり(E)の路地入り口で警官と犯人がナイフと警棒で格闘しつつ、犯人は路地の西方へ移動していったとのことです。こわごわと、群集について書記長もその路地を覗いたところ、2人の方が刺されていたらしい、とのことでした。

 ヨブ氏のご記憶はちょっと異なります。やはり南へと中央通りを走ったヨブ氏、さらに前方の第4図(F)の辺り(ラムタラやアソビットの附近)でも刺されたのか倒れている方がいたので、こっちに犯人がいるのかと危険に思って元の方へ引き返したところ、声がしたのでやはり(E)の路地の方を見たそうです。すると、警官が路地から飛び出してきて「こっち来るな!」と言い、その警官は血が飛び散ったナイフ(ヨブ氏曰く、サバイバルナイフのような感じで、M9バヨネット〔銃剣〕に似た感じだったとのこと)を持っていたそうです。
 時系列と場所からすると、他の3人の記憶と矛盾するようにも思われますが、氏の証言のまま書いておきます。

 小生以外の3人の方は、凶器のナイフを持った「犯人」を目撃されたそうで、その服装はベージュ系の色だったそうです。小生はどうも、そのような人間を見た覚えがありません。事件の意味が分かっていないので、「犯人」と認識できなかったせいなのでしょうか。認識できないものは、たとえ網膜に映っていても、「見る」ことができないのかもしれません。
 ただ、(E)の路地で、警官が警棒を構えつつじりじり前進していく、その背中を確かに見たのですが、その先に、笑いながら手を叩いていた人間を見た気がしてなりません。場所と状況から言えば、これは犯人としか思えませんが、しかし服装は白っぽかった気がします。
 人の記憶とは、必ずしもあてにならないものです。

 犯人らしき人間が路地の奥へと去り、そして「捕まった」という情報が口伝に流れて、気が抜けた空気があたりに流れました。
 この間、およそ10分程だったかと思います。

 パトカーが次々とやってきて、警官が立入禁止のテープを張って中央通りの車道から人々を歩道へと誘導します。ややあって救急車やレスキューもやってきました。我々も無事に再合流を果たし、中央通りの西側の歩道(交差点から少し南)から呆然と状況を眺めていました。救急隊が駆け回り、警察や救急の増援がやってきて、そして報道陣も大勢やってきました。
 我々はそういった状況を見、そして遅れてきた友人たちと合流して起こったことを話したりしていました。それは大して長い時間には感じませんでしたが、気がついたら2時間ほど経っていました。時間の流れは、主観的には決して一様ではないようです。

 考えてみれば、逃げる時の路地が東西逆だったら死傷の可能性もあったわけですが、今思い返してみても特に「怖い」と実感したとか、そのようなことはありません。事態の全容がその近くに居過ぎてかえって分からず、変に生々しい断片を見ていると、ただひたすら「わけが分からない」ような、不条理な感覚がするばかりです。
 その不条理感を克服する為に、この記録を綴ったというわけでもあるのですが。

 現場では、さすが秋葉原というべきか少なからぬ人がカメラを持っていて、カメラが無くても今時カメラつき携帯電話くらい皆持っていて、大勢の人が写真を撮っていました。小生は今日はたまたまカメラを持ち合わせませんでしたし、また写真を撮るというのもあまり適切な行為とも思われず(不謹慎云々という小生らしからぬ殊勝な思いもありますが、そもそも下手に写真を撮っても何がどう起こったのかうまく伝えるのは難しそうで、かえって画像に印象を制約されてしまいそうで)、そこで何が起きたのか振り返ってまとめようと思いました。
 上の4枚の図は、この時現場で書記長・めかちゅーん氏・ヨブ氏の話を聞きつつ自分の見たことをまとめたものを、清書したものです。
 図を描いていたところ、入れ替わり立ち代り話を聞きにきたマスコミの方々が関心を示して(話をする側としても便利ですが)、中には図の写真を撮っていった方も居ました。小生の字は元々ド下手な上に、現場でのメモですから、他の人には読めなくて役に立たなかったでしょうけど・・・。

 うまくまとめられるような話ではありませんが、記録としてはひとまずこれで一区切りとします。
 何かあとで思ったことがあれば新記事を起こすかもしれません。思うことはそれなり以上にありそうですので。

追記(9日未明):今ちょっとネットを巡回したところ、マスコミ関係者が本事件取材中オタクバッシング的な言辞をしていた、という怒りの声が2ちゃん方面で上がっていたようです。小生は多くのテレビ局、幾つかの新聞、若干の雑誌の取材を受けましたが、また一緒に居た3人も取材を受けていましたが(特に古澤書記長とヨブ氏)、その範囲内では特段そういった偏向のある取材を受けた覚えはありません。
 この場に居た人々が、犯人逮捕などの画像をやり取りしていたことへも批判の声が上がっており、確かにその指摘ももっともなところがあるとは思いますが、マスコミの取材の方もひとしきり話を聞くとほぼ全員、「何か画像をお持ちではないですか?」と聞いてきました。しかしそれもまた考えるに、マスコミも視聴者・読者の要望に応える必要性があるゆえのことでしょう。
 有体に言って、必死になって逃げている時に振り向いて写真を撮る命知らずは、居るはずが無かったろうとは思います。

更に追記(20日夕刻):思ったことなど新記事を書きました。まとまっていませんが。
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by bokukoui | 2008-06-08 21:07 | 出来事