男と女を巡る何冊かの本を読む

 2月8日に買ったと書いた『電波男』を読んでいます。同じ日に読んでしまっていた『嫌オタク流』があっさり短時間で読みきってしまえたので、これもすぐだろうと高を括っていたら見当違いでした。どうにもひっかかってしょうがない。いや、端々に「これはネタですよ」と言いたいのであろう記号がちりばめられているので、まあそうなんだろうと思って読み流したいのですが。

 で、時々中休みして、フェミニズム方面の積み本を片付けています。先日は落合恵美子『近代家族とフェミニズム』を読み、大変面白く勉強になりました。
 今日は速水由紀子『もうあなたは幻想の女しか抱けない』(アマゾンの書評はちょっと・・・なので、別な書評を紹介)を読了。なるほど、細かいところに関して突っ込みたいところはいろいろあります。事例は興味深いけれども、そこから結論に飛躍が見られるような、分析がちょっと乱暴でない? という箇所もあります。例えば「ロリコン」を巡る言説とかは。でも全編を通読した時、そこに通底する作者の主張には引き込まれてしまいます。あてがいぶちの幻想に寄りかかって生きるのではなく、己の実存を見つめ直せと。そりゃ、言うは易く行なうは具体的には難しいこと、「本当の自分」とか安易に言うべきではない、綺麗事に過ぎない、と言ってしまえばそれまでですが、でもそう言って片付けてしまえないだけの読後感がありました。

 『もうあなたは幻想の女しか抱けない』で言う「幻想」というのは、端的に言ってしまえば中産階級的近代家族をあるべき理想像として受け入れ、それ以外の自分の生き方を見出せなかった、その枠をはみ出るようなものを芟除してきた、そのような生活を支えた心性を指しているといえます。そして、近代家族というものが曲がり角に来ている時代に、それを認められずしがみつくのが悲喜劇を巻き起こしているが、その幻から自由になればよいのである、そのように纏められましょう。
 最近の世相を見ていると、「道徳教育で家族の崩壊を防ぐ」と主張し、幻想をより強化する方向で対応していこうとする人々がいるようですが、それは結局問題を先送りし余計傷を深くするにしかならないのではないかと思うのです。そして、道徳云々以外の幻想を強化する別ルートが「萌え」のようにも考えられます。そうすれば、近年のオタクと保守思想の親和性を整合的に説明できますね。

 もうちょっと続けます。
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by bokukoui | 2006-02-22 23:50 | 歴史雑談 | Trackback(1) | Comments(2)

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Tracked from 障害報告@webry at 2006-02-24 16:46
タイトル : ここは酷い今の日本のルーツのうちの一つの静かな死ですね
筆不精者の雑彙 : 男と女を巡る何冊かの本を読む http://bokukoui.exblog.jp/912226/ 筆不精者の雑彙 : 近代家族幻想と電鉄会社との日本的関係性 http://bokukoui.exblog.jp/915027/ 戦後日本のルーツは二つある 一つは満州で実施されつつあった終身雇用制や革新官僚による傾斜配分みたいな話 もう一つは、阪急阪神に代表される阪神間モダニズムですな 阪神間モダニズム - Wikipedia http://ja.wikip...... more
Commented by 労働収容所 at 2006-02-23 02:46 x
中学の頃から「いつか米帝と戦うんだ」と妄想して近所に塹壕構築し続けて来た私には耳の痛い話です。

緒方教義書には押し売りに対処する方法として「家長が居ませんのでと言え」と書こうと思います。コーランの中に書いてある生活規範みたいな感じで。教義で家長制の崩壊を防ぐのです。

本の内容は兎角…、その評者に対しては疑念を抱いてしまいました。「物事が分かっている自分達」と「無知なあいつら」に分けているような気がしてならないからです。そしてこういう事だけは言わないで欲しいと私が常々戦史研で説教っぽく言う事です。結局他人の書評なんか当てにせずに自分で読んでみないと何とも言えませんね。

読んでもいないのにこういう事を言うのも何ですが「今、ここ、自己」で立派な事が分かるならもっと禅宗は流行ってるはずなんですけどねえ。この本に禅宗のお坊さんへのインタビューありますかね。

最後にボーヴォワールで思いついた妄想を。「かしまし」はどうせなら「はずむ君」が性転換するときに「女に生まれるのではない、女になるのだ」と言ってくれたら名作認定したのに。
Commented by bokukoui at 2006-02-25 21:17
>「かしまし」はどうせなら「はずむ君」が性転換するときに
>「女に生まれるのではない、女になるのだ」と言ってくれたら
>名作認定したのに。

この言葉がツボにはまりすぎて、腹が痛くなったので返信が遅れました。済みません。

禅宗でもなんでもいいのですが、流行る条件を備えているものがきちんと流行るにはプロデューサーの存在が必要です。禅業界にはそのような人材がいなかったのでしょう。

まあ、この本は緒方氏に必要な本では無いだろうと思います。小生にとっても実は後段を導き出すきっかけになったことがもっとも重要であったわけですが。

「家長制」と「家父長制」はどう違うんだろうか。
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