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筆不精者の雑彙

bokukoui.exblog.jp

「ぼくは なたにやせんせいが たんにんでなくて ほっとしました」

 たまたま見つけたネットの記事に、個人的に興味深いものがあったので、全くもって個人的な感想などをふと記したくなりました。

 まず、発端になった記事がこちら。

 イザ!「組合と学力に関連性はあるか? 低学力地域は日教組票多く」

 最近話題になった、中山前国交相の発言についてですね。「日教組が強いところは学力が低い」と発言したものの根拠を示さず、そこでマスコミ(確か朝日新聞)が日教組組織率と学力テストの関係を調べたらどうも関係はあまりななそう、と報じられました。そこで産経がかかる記事を作ったようです。
 で、この記事、いくら何でもこれは酷い、ということを批判されたのがこちらの記事。

 黙然日記「産経の記者があまりにも。」

 上の産経系ニュースの記事が、先に結論ありきで無茶な数字の扱い方をしていることについては、黙然日記さんが的確に指摘されているので、付け加えることはそれほどありません。母集団の大きさを全く無視して数で比較している時点でおかしく、しかもその怪しい数字ですら「例外」が複数見いだされるのに説明はうやむや。更に得票率と比較して相関係数を取られた方がおられました(ストーンヘンジの夢「検証! 産経新聞「組合と学力に関連性はあるか?」(平成20年10月8日))が、相関係数-0.17というのは、普通は「相関が見られない」という評価でしょうね。それにしても、このブログの筆者の方のおっしゃるとおり、今時エクセルをいじくれば計算できる程度のこともしないのは手抜き、というか、先に結論があったんでしょうね。(※追記:相関係数-0.17は得票「率」ではなく得票「数」によるものです。得票率による相関係数は-0.038でした。お詫びして訂正します)
 ある問題について目につく「悪役」にすべての責任を押しつけてしまうのは、前回このブログで書いたような、「単純、明快」に世界が割り切れるはずだという誤謬に繋がっていると考えられます。さてこそ、これまでの成田空港を巡る様々な反対運動と、それへの対応の歴史を無視して、空港反対派のせいで(しかも反対した理由は公共心がないから!)空港完成が遅れたといった発言に繋がっているのでしょう(しかし「中国がうらやましい」とは・・・)。「単一民族」にしてもそうです。「日本人」に複雑な要因を持ち込む連中が許せないということでしょう。

 というわけなのですが、黙然日記さんでこの産経の記事でやり玉に挙げられたらしい民主党の日教組系参議院議員のお名前を見て、大変懐かしい思いに打たれました。ので、以下に至極個人的な思い出をつらつらと述べさせていただきます。個人情報だだ漏れの危険性がある記事ですな。

 その議員とは、那谷屋正義議員です。
 那谷屋先生、十数年前、小生が小学生だった頃、隣のクラスの担任でした(小生は3組で、那谷屋先生は2組だった)。名前が変だった(笑)ので覚えております。サイトで現在のお顔を拝見すると、当時の面影が確かにありますが、髪の毛はもっと多かったような。
 しかし、小学生の場合、隣のクラスの担任というのはあまり関係がないんで、いまいちイメージが湧かないんですよね。ただ、何となく「熱心」な先生だ、というイメージはありました(母親ネットワーク経由のイメージか?)。
 で、一度何かのイベントで、クラス間の交流を深めるというのか、給食の時間にクラスをばらばらにして混ざって食べる、というのがありまして、その時小生は2組に行きました。そして、壁に貼られていた、クラスの目標、スローガンを書いている模造紙を一読して、ぎくりとなりました。

 「目標 給食残量ゼロ」

 一般論として、小生は食べ物を残すことに強い抵抗があります。飲み会を友人とやっているような時、隣の卓の連中がごっそりと残して席を立とうものなら、はなはだ悲しい気持ちになります。それはもったいない精神とか、お米には一粒一粒神様が~、とかいうのではなくて、生活の運営上に於いて容易に避けられるはずの不合理が生じたことが悲しいのです。
 ですがまた、嫌いなものというのは人間どうしてもあるものですし、味の違いが分からないというのはいささか残念なことです。よほど栄養状態に悪化を及ぼすのでもない限り、好き嫌いの矯正はそんなに無理せんでも・・・と思ってしまいます。
 そうなると給食というのはなかなかに苦しい局面で、空腹は我慢するから食わずに済ますという選択肢は難しいし、かといって残すのが禁じられるとまことに進退窮まります。そして今にして思うのですが、大人になってしまうと嫌いなものでもそれなりに誤魔化して多少は食べられるようになりますが、子供の頃の「嫌い」「食べられない」という思いこみは宗教的禁忌に近いものがあり、自分を誤魔化すことがまず出来ないのです。
 更に事態をややこしくするのが、予算の関係上当時の横浜の給食は、近隣の川崎や町田に比べて「まずい」ということでした(もっとも、学校別の調理だったのは不幸中の幸いでしたが)。そして個人的なさらなる困難として、小生は当時大変に鈍くさい(今でもだけど)餓鬼だったので、そもそも食べるのに時間がかかるのです。

 小学生だった当時の小生は、この問題に苦慮したあげく、「中学校も給食」と聞いて遂に「給食のない学校に行きたい」と一念発起して、中学受験をすることにしました(ついでに体格が小さかった小生は女子に「可愛がられ」ておりましたので、「男子校に行きたい」というのも動機)。
 それでまあ今日に至ると。
 ・・・今検索したら、なんだってー!!! 欺されていたのか?

 話がいつもながらとっちらかりましたね。
 クラス間交流給食の日はたまたま献立が何とかなる内容だったので事なきを得ましたが、その張り紙を見た際の小生の心情が本日記事の表題なのでした。幸い小生のクラスの担任の先生は、その辺あまりやかましくなかったので、余計そう思ったんですね。
 ところで、小学校のその頃、小生は既に聯合艦隊の主力艦の艦名は全部言えるくらいの軍国少年でしたが、特段授業で何か「日教組の圧迫」的なことを感じたことはありませんでしたね。まあ、鈍くさい餓鬼だから気がつかなかっただけかもしれませんが。

 那谷屋先生は21年間横浜市で小学校の先生をされていたそうで、しかも田園都市線沿線と横浜駅周辺との学校ばかりだったようです。だとすれば、その間に担任した児童で有権者になった者、およびその父兄、その他学校関係で名前(特徴ある名前だから忘れにくい)を覚えた小生のごとき者、数千人は横浜市に今なおいることでしょう。
 もともと横浜などは民主党がそれなりに票を集めやすい地域ですから、この地域の有権者が参議院選挙でまあ民主に入れるか、という時、選挙公報を見て知った名前があれば、「へー、あの先生出るんだ。じゃあ折角だから名前書いてあげよう」というケースもそれなりにあったんじゃないかと思います。産経の記事には神奈川県は出ていませんけど、日教組系の候補だからその票がすべて組織票、というのも短絡的な話ですよね。日教組でも入れない人もいるだろうし。
 え? 小生ですか? 投票の秘密は守られるべきものです。でもこの長々しい記事を読まれた方には、もう分かると思いますが。
Commented by 憑かれた大学隠棲 at 2008-10-09 21:09 x
堺屋先生が文部省と日教組の抗争を、二大官僚組織の教育現場を巡る対立と見るべきだとおっしゃってましたが、どっちも子供は無視って点では同罪だったのかもしれません。
官僚的な先生も大変ですし、ファナティックな先生に当たるのも災難名分けなのですが
そういえば小学校時代の塾の先生が市議会議員で偉そうにしてます。教え子の親の票だけでトップ当選。無防備地域宣言への反論で有名な人ですがw
Commented by 鈴木光太郎 at 2008-10-09 21:23 x
今の校長先生が若かった頃は日教組の組織率がグンと高かったはずなので、新卒赴任の頃カツドーしてた可能性が強いです。
現在の若い先生より指導者である校長先生の方が、カツドー年数は長いんじゃないでしょうか。
Commented by オタンチー at 2008-10-09 22:44 x
トラバありがとうございます。
念のため訂正しておきますと「-0.17」は得票「数」との相関係数です。得票「率」との相関係数だと「-0.038」ともっと小さいです(笑) まあいずれにしろ結論は同じですけどね。
給食を無理やり食べさせるのってほんとくだらないですよね。私ももったいないとは感じてしまうものの、食べてもの残しても、別にアフリカあたりの飢えた人々に影響があるわけじゃないわけですし。
Commented by 某後輩 at 2008-10-10 00:22 x
得票数と得票率の違いなんて、政治報道に関わる人間なら常識以前の知識だと思いますが、まあ結論ありきの人間に何を言っても無駄でしょうね。

相関係数を検証したリンク先の記事、どうせなら統計的有意性の有無も調べて欲しかったなぁと思います。仮に相関係数が1に近い結果になっても、その相関係数の値自体がまぐれで得られたものなら実際には相関関係は存在しないことになってしまいますから。

リンク先のPDFファイルから自分でExcelを使って計算してみましたが、学力テストの合計点と日教組候補の合計得票数の相関係数-0.17が偶然得られる確率は24.3%で、一般的な有意水準とされる5%を大幅に上回ってます。つまり、上の相関係数は統計的に有意でなく、そもそも両者の間に相関関係は認められません。(もっとも、有意であっても-0.17じゃ元の説にとって何の裏付けにならないのはご指摘の通りです。)

まあこれ以上書くと労働収容所組合氏に色々と言われそうなので控えますが(苦笑)、件の産経記者氏に限らず日本の論者にはもっと実証的な議論の進め方を覚えて欲しいところです。
Commented by 労働収容所組合 at 2008-10-10 04:18 x
>某氏
色々言っておきますと、私はモデルが提示されない状況で値や有意性を云々したりはしませんよ。
それに、教育は要因が複雑に絡みやすい分野ですから、漫然とした全体的な統計から何か言えるとは到底思えません。

私は、日本の論者(含む某氏)には、建設的な議論の進め方を考えて頂きたく存じます。統計を正誤や勝敗を決する道具に堕落させることのないように。
Commented by 某後輩 at 2008-10-10 17:18 x
ラーゲリ氏>

ここで言い訳するのも如何なものかと思うので、続きはwarで^^
Commented by 某後輩 at 2008-10-10 18:34 x
ラーゲリ氏から本遣り取りに関して
http://ameblo.jp/war/entry-10132404568.html
の警告文を参照せよとの忠告を得たのでここに記して自分への戒めとしたいと思います。
Commented by 労働収容所組合 at 2008-10-10 18:35 x
晒された^^
Commented by bokukoui at 2008-10-11 23:48
>憑かれた大学隠棲氏
塾講師で地元に浸透して、それを手がかりに地方議会進出というのは、なかなか合理的な作戦かもしれません。学校の先生でもある程度同じかもしれませんが、公立の場合一カ所に長いこととどまれませんね。

>鈴木光太郎さま
「学力低下」が近年起こっているとするならば、日教組の組織率は最近低下しているので、日教組が強う方が学力低下しない!? なんて突っ込みは各地でされていますね。日教組自体近年は穏健化していますし、今更批難の声を高めたところで・・・とも思われます。
Commented by bokukoui at 2008-10-11 23:52
>オタンチー様
こちらこそ、興味深いデータありがとうございます。ご指摘の箇所は修正しておきますので、何卒ご寛恕下さい。

食べ物を残すことを道徳的に責めるより、その不合理性を根拠に説得できるようになればいいのかなと思います。そして、不合理性を克服するためには、舌を磨き調理の腕を鍛えて、結局無駄なくうまく食えばいいんじゃないか、そう持って行ければ理想です。かつて魯山人が言っていたことも、畢竟そういうことではないかと・・・もっとも残すことが合理的な体系が出来てしまう懸念もありますが。
Commented by bokukoui at 2008-10-11 23:56
>某後輩氏、ラーゲリ氏
二人だけで話が進んでるのでどこに返したらよいのやら(苦笑)

数字の扱いを学ぶことももちろん大事です。今回は産経の記者が驚天動地に阿呆だったために一目でみんなおかしさが分かりましたが、統計で嘘をつく方法なんて、より高度なものがいくらもあるので。
そこで大事な心構えは、まさにラーゲリ氏ご指摘の「教育は要因が複雑に絡みやすい分野ですから、漫然とした全体的な統計から何か言えるとは到底思えません」という言葉が、いちばん土台となるべき地点と思います。
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by bokukoui | 2008-10-09 19:43 | 食物 | Comments(11)