2012年 12月 11日 ( 1 )

佐高信『電力と国家』を巡って考える 綜合編

 当ブログでは以前より、日本の電気事業史についていくつかの記事を書いてきました。電気事業はその重要性の割に、あまり注目されてこなかったような印象が小生にはありますが、昨年の大震災と原発事故という大変不幸なきっかけではありますが、ある程度は電気事業の様相についての関心が高まったように思われました。小生としても多少ともそういった関心を持たれた方へのご参考になればと、そして電気事業史研究に手を染めている自分自身の問題意識を確認することにもなろうと、記事を執筆してきた次第です。
 ただ、震災から二年近くを経ても、あまり議論は深まっていない、世界の電気事業の中でも相当に波乱に富んだといえる日本の電気事業の歴史的経験が電気について論ずる人々の間でも共有されていない、そんな印象を小生は持っています。自分の微力を恥ずるばかりではありますが、腐らずに研究と発信を続けていくつもりではあります。

 という前置きで今回書評を試みるのは、

佐高信『電力と国家』(集英社新書)

です。佐高氏の名は夙に有名ですから説明の必要はないでしょうが、その氏が震災と原発事故を受けて、日本電力業の歴史に学ぶべく昨年10月に上梓されたのが本書のようです。小生がしばらく前に手に入れたものの奥付には、昨年11月発行の二刷とあり、また著者名とタイトルで検索してみてもかなりの件数の感想がネット上に見出されるなど、それなりに読まれている本のようです。
 小生は佐高氏の著作にはあまり馴染んでおりませんでしたが、時折目にする氏の企業社会批判には肯うところもありました。また、歴史に着目して電気事業を論じているということは、震災後の、発送電分離と自然エネルギーを無批判に礼賛するばかりで来し方に学ぼうとしない多くの言説に残念な思いを抱かされることの多かった中では、期待を抱かせるものでした。
 本書の帯にはこうあります。
 現在は官僚にも電力会社のトップにも、
 公(パブリック)の精神は失われている。
 凄まじい葛藤の歴史をたどり直すことによって、
 是非とも、その精神を獲得してほしい。
 それを願って、私は本書を発表する――。
 なるほど、なるほど。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2012-12-11 22:04 | 書物 | Trackback(1) | Comments(0)