2012年 12月 21日 ( 1 )

追悼 星晃さん

 このところ、寒さで縮こまってばかりいますが、そんな冷えた心へ更に寒風を吹き込むようなニュースが飛び込んで参りました。

 元国鉄副技師長の星晃さん死去 0系新幹線設計に携わる
 星晃氏が死去 元川崎重工業常務

 8日に亡くなられていたそうで、93歳の大往生でした。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 星晃さんは、旧国鉄の黄金時代の車両設計に携わった技術者で、多くの業績を残されたほか、鉄道趣味界へも多くの写真や資料を提供され(昭和30年代の国鉄の写真で、よく鉄道雑誌に載っているものの中には、星さん提供のがかなりあります)、幅広くその名を知られていた方と思います。
 小生も星さんの書かれた記事などはいくつも読み、さらには生前に、何度かお会いする機会もありました。その際に見聞した話については、当ブログでも何度か書いたことがあります。

 ・鉄道の話題
 ・鉄道と衛生の話・補足
 ・大塚英志・杉浦守『オクタゴニアン』

 星さんの業績は、毎度お馴染み Wikipedia ですと、国鉄の軽量車体の導入が主に挙げられています。まずはもっともな評価と思いますが、上掲「鉄道の話題」でも触れたように、小生がお会いした際に星さんがもっとも熱を入れてご自身の業績について語られたのは、車輌への水洗トイレの導入でした。
 その昔は列車のトイレと言えば垂れ流しだったのですが、これは不衛生であるというので、国鉄に新性能電車が登場した頃、タンク式にすることが提案されました。といって、単にタンクに流すだけではあっという間に汚水が溜まってしまうので、水を循環式にすという工夫がされました。今では当たり前となってしまっていて、何しろ目立ちにくい所でもあって、話題にはなりにくいですが、これがなければ新幹線も実現できなかった(東京~大阪ならタンクで溜めるだけでも何とかごまかせたかも知れませんが、それ以上の遠距離となるとパンク必至でしょう)かもしれない、大事な技術なのです。
 さらには、これは輸送機関としての面に注目されがちな鉄道技術史上に於いて、生活水準の向上や習慣の変化などの文化との密接な関係を示すのみならず、タンク式トイレ導入に際して汚水処理をする車両基地を設ける際の地元との調整が大変だったという地域との関係でもまた、いろいろ考える材料を提供してくれ、視野の広い話につながります。
 ちなみにトイレに関しては、以前当ブログでも前田裕子『水洗トイレの産業史 20世紀日本の見えざるイノベーション』(名古屋大学出版会)という本を紹介しましたが、これは非常に面白い本で、つくづくトイレ話の奥の深さを感じさせられます。

 偉大な業績を残された方を追悼するにはやや下世話に過ぎた感を抱かれる方もおられるかも知れませんが、しかし光の当たるデザイン面だけでなく、こういったところまで行き届いた配慮をしたからこそ、星さんは偉大な技術者だったのだと思います。
 改めて追悼の意を表します。
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by bokukoui | 2012-12-21 23:59 | 鉄道(時事関係)