カテゴリ:鉄道(歴史方面)( 67 )

谷内正往『戦前大阪の鉄道とデパート 都市交通による沿線培養の研究』略感

 ぼちぼち復活してきた当ブログですが、現在博論執筆酣でなかなか記事を新規に起こす余裕がありません。書きたいことは色々あるのですが。
 というわけで、小生はしばらく前にとある学会誌に書評を掲載してもらいましたので、それの省略版をブログ記事に転用しようかと。内容をもとの書評より減らしてあるので、学会にご迷惑となることはないでしょうし、また一方で今回取り上げる本についてネット上での書評はないようなので、多少の意義はあろうかと思います。

 そんな前置きで今回ご紹介するのは、

谷内正往
『戦前大阪の鉄道とデパート  都市交通による沿線培養の研究
 です。
 電鉄会社のやっている副業といえば、バスや不動産と並んでデパートが挙がります。現在、日本の大手私鉄のほとんどは系列に百貨店を持っていますし、南海電鉄のように持っていない会社でもターミナルビルがデパートだったりしています。ことほどさように関係の深い電車とデパートですが、その関係を最初に作ったのは、これも周知のように小林一三の経営する阪急が梅田に設けたデパート(1929年)でした。
 本書は、戦前の大阪を主な舞台に、阪急はじめ関西の有力電鉄=阪神、京阪、大軌(現在の近鉄)、南海、さらには大阪市営地下鉄とデパートの関係を縦横に論じ、いわゆる「電鉄系デパート」の誕生と戦前の展開を述べた研究です。

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by bokukoui | 2015-12-01 23:28 | 鉄道(歴史方面)

『ライフスタイルを形成した鉄道事業 シリーズ情熱の日本経営史8』略感


  今月は鉄道記念日もありますし、1日は東海道新幹線開業50周年の日であったりしますので、当ブログでも本旨に戻って?鉄道関係の話題をいくつかまとめてみたいと思います。
 というわけで手始めに、先月とある学会に行ったときに買った本の感想など書いてみようと思います。

老川慶喜・渡邊恵一
『ライフスタイルを形成した鉄道事業 シリーズ情熱の日本経営史8
芙蓉書房出版

 今年8月に出たばかりの本で、ハードカバーですがお値段2800円(税抜)とお手頃です。経営史の入門者や、一般の読者層向けにまとめられたものと思われ、文章も敬体で読みやすさに気を配っていると見受けられます。
 恥ずかしながら、小生はこんなシリーズが出ているとは存じませんでした。それに芙蓉書房といえば、旧日本軍を中心とした軍事史関係の本を出しているところ、というイメージがありまして、ちょっと驚いたのも正直なところです。というわけで、学会で同社が出展していたブースで本書を見つけた小生は、寒い懐でも買えるお値段に気をよくして早速買い込んだ次第でした。
 本書は日本の鉄道業の中でも、表題のとおり現代のライフスタイルを形成する「郊外」の形成に関わった、大手私鉄の経営者を取り上げた列伝です。本書で取り上げられている経営者は、

 小林一三(阪急電鉄) / 堤康次郎(西武鉄道) / 五島慶太(東急電鉄) / 根津嘉一郎(東武鉄道)

 の4人です(掲載順)。

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by bokukoui | 2014-10-11 23:59 | 鉄道(歴史方面)

鉄道と戦争の交錯~京成電車と戦車第二連隊の衝突事件 そして横浜線と89式軽戦車

 先日の当ブログの記事で、現在放映中の『RAIL WARS!』というアニメがいかにダメであるかということを縷々説明しましたが、それに対抗して鉄道と戦争の関係についての史実について・・・というわけでは別にありませんが、たまたま先日読んだ地方史に面白い挿話が載っていましたので、ご紹介します。

 小生が読んでいたのは、千葉県習志野市が編集した『習志野市史』です。これがなかなか力作で、通史編1冊・史料編3冊・別編1冊もあり、各巻千ページ前後もあります。小生は近代史しか読んでいませんが、習志野の近代といえば日本陸軍の一大根拠地であり、軍事に関する記述も充実しています。史料編でも陸軍関係の章が立てられており、その解説が軍事史のベテラン研究者で防衛大学校の教授も務めた田中宏巳先生でした。
 また、小生が習志野の歴史を調べようと思ったのは、この地域に京成電車が通ったことで開発が進み、軍隊がなくなった戦後は東京のベッドタウンになる、その元となった状況を知ろうと思ったためでした。で、これまた史料編に京成関係の一章があったり、通史でも項目を立てて述べられていて、充実していました。バブルごろに編纂がはじまったようなので、お金があったのかなあ・・・。

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by bokukoui | 2014-09-03 21:11 | 鉄道(歴史方面)

『鉄道史人物事典』が発行されました

 今月は暖かくなってきたから調子も良くなるかと思いきや、急に暖かくなったせいかそれはそれで日中は懈くて動けず、下血も再発している今日この頃ですが、せっかくの春なのに景気の悪い話をしても何なので、明るい話題を一つ。

f0030574_23361247.jpg というわけで、新刊紹介を簡単に。新刊といっても、既に先月末には店頭に出回っていたようで、小生も半月ぐらい前に送っていただいたものですが。

 鉄道史学会編『鉄道史人物事典』
 表題の通り、日本の鉄道の歴史上重要な役割を果たした人物について、その略伝をまとめた事典です。リンク先の日本経済評論社のサイトから引用すると、
創立20周年を記念して鉄道史学会が総力を挙げ編纂。国鉄のみならず私鉄や地方鉄道に関わった人物など580名を近年の研究動向も踏まえながら採録する。
 という一冊です。

 この説明にもある通り、編纂に当たったのは鉄道史学会で、そもそも同学会の20周年記念事業として始められた事業でしたが、諸事情あって完成には時間がかかり、発売が学会結成30周年になってしまったという、なかなかに難産な一冊であります。その辺の経緯については、本事典作業の中心を担われた鈴木勇一郎さんが、「『鉄道史人物事典』の編集と刊行」と題して一筆ものされています。

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by bokukoui | 2013-03-19 23:59 | 鉄道(歴史方面)

阪急電鉄の戦時下乗客増加作戦 歌劇も野球も駄目なら航空錬成すればいいじゃないの

 今日は時間もないので、人様の記事で面白かったのの備忘を兼ねたようなのをば。
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『朝日新聞』1943年12月20日付朝刊
「若人を呼ぶ神鷲の像 同期生が感激の鑿 航空錬成道場に建立」の記事に添えられた写真
関西国民航空錬成道場(西宮航空園)に設置される加藤建夫像


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by bokukoui | 2013-02-18 23:13 | 鉄道(歴史方面)

平山昇『鉄道が変えた社寺参詣 初詣は鉄道とともに生まれ育った』感想

 一月も半ばを過ぎてしまいまして、首都圏の今冬はどうも寒い上に雪まで降り、小生は半ば凍りついたように不活性のまま時を過ごしております。そんなわけで諸事思うに任せず、ブログも年明け以降大した話題を書かないままですが、昨年以来構想したまま、このままいくと次の年度まで時機を逸してしまいそうなお題がありますので、何とか季節はずれの謗りを受けないようにアップしておきたいと思います。

 という前置きで今回取り上げるのは、

 平山昇『鉄道が変えた社寺参詣
 です。
 平山さんは「初詣」を中心に、近代の社寺参詣のあり方について研究を積み重ねられてきており、当ブログでも以前から何度か平山さんの議論は紹介してきました(「電鉄資本と近代家族的ライフスタイルについて」「JITTERIN'JINNの歌を聴いて思ったこと」)が、昨年10月にめでたく一書にまとまりました。大変喜ばしいことで、内容も新書としてはたいへん重厚でありながら、昔の新聞広告の画像などがふんだんに盛り込まれて面白く、歴史や鉄道に詳しい人もそうでない人も、初詣を知っている人なら誰でも興味深く読める本と、広くお勧めします。


 本書の主張を端的にまとめれば、「現在ではすっかり「正月の伝統行事」のように思われている「初詣」は、実は都市から郊外へ延びる鉄道ができたことによって誕生した、まことに「近代的」な参詣行事だったのである」(48頁)ということになります。

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by bokukoui | 2013-01-20 23:59 | 鉄道(歴史方面)

「電鉄業の多角経営の過去と未来」まとめました 附:「京王帝都電鉄」の名残

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 先日、ツイッター上で電鉄業の多角化経営について、なぜ持株会社を戦前の電鉄業は採用しなかったのか、多角経営を直営で行うことにはどんなメリットがあったのか、会計上の制度との関係は、といったことについて思いつきをツイートしました。すると、@sakura_ariake さん、@semakixxx さんからコメントをいただき、いろいろ話も盛り上がりましたので、そのまま流れてしまうのも惜しいため、久々にまとめておきました。
 以下のリンク先をご参照下さい。

  ・電鉄業の多角経営の過去と未来(togetter)

 当ブログの過去の内容とも関連がありますので、鉄道史にご関心のある方は是非どうぞ。またこのまとめ中で紹介しております、中村尚史先生の論文「電鉄経営と不動産業 : 箕面有馬電気軌道を中心として」は、阪急(箕面有馬電軌)の不動産事業がなぜうまくいったのか、また同電鉄開業直前に専務の小林一三が贈賄で捕まったのはどういう理由だったのか、という阪急の経営史上案外語られてこなかったことを究明した論文ですので、まとめは読まなくてもこちらは是非。
 ツイッターはだいたいしょうもないと思われることの多いメディアですが、こういったブレーンストーミングや意見交換を行えるという点では、メリットもあるかもしれませんね。

 という宣伝だけなのも何なので、最近見つけた鉄道関係の情景をご紹介したのが、上の写真です。

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by bokukoui | 2012-12-01 23:48 | 鉄道(歴史方面)

秩父鉄道三峰口延伸に関する一仮説~奥秩父・中津峡の開発構想と水力発電

 昨日は当ブログらしからぬ甚だ品位に欠ける(え、いつもそうだって?)話題でしたので敢えてここでリンクは張りませんが、本来は以下に書くような話題をする枕のはずだったわけで。
 小生は先月、とある史料を見ることができたことに関連して、秩父のセメント事業の創業経緯につい泥縄的に調べていたのですが、それに関連して秩父鉄道についてもちょっと資料を読んでいて、ふと疑問に思ったことがありましたので、以下備忘までに書いておきます。
f0030574_174335.jpg
今回の記事の主な舞台となる、三峯神社附近の荒川上流部の地図
発電所も鉄道もまだない、1915年測量の陸地測量部5万分の1地形図「三峰」の一部
「白川村」の役場の辺りに現在の秩父鉄道三峰口駅がある
(この画像はクリックすると拡大表示します)


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by bokukoui | 2012-05-19 21:50 | 鉄道(歴史方面)

「たばこのむな」 鉄道の表示今昔

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山手線・京浜東北線の高架橋に今も残る「たばこのむな」の表示
(神田~秋葉原間)

 春めいてきたと思ったら嵐になったりまた急に冷えたり、いまひとつぴりっとしない気候の今日この頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか。
 小生は、気候と歩調を合わせているわけでもないですが、前よりは活動的になったような気もするものの、それはあくまで午後になってからの話で、別段夜更かしもしなくても午前中は何もする気力がなく、また大学や図書館に出かけられた際も、電車で座るとたちまち寝てしまう、そんなぼんやりとした日々を送っています。そんなわけで、用事が片付いていないわけではないのですが、これも今ひとつ思ったようには捗らないような状態ではありますが、全く停頓していた年初よりはマシになっていると前向きに捉えようとは思います。

 そんな次第なので、ブログの方も手をつけたままの記事が残っていて心苦しいのですが、なかなかまとまって更新できる心身の余裕がありません。ですので、ちょこっと写真を張ってお茶を濁しておきます。

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by bokukoui | 2012-04-07 23:59 | 鉄道(歴史方面)

分冊百科『歴史でめぐる鉄道全路線』シリーズ全100巻完結

 2年ばかり前、当ブログで、朝日新聞社の出版部門から週刊百科の形式で『歴史でめぐる鉄道全路線 国鉄・JR』が創刊されるということを紹介しました。その後同シリーズは順調に刊行を続け、国鉄・JR編全50巻が完結した後には大手私鉄編全20巻が引き続き刊行され、さらには公営鉄道・私鉄編全30巻も刊行されて、日本の鉄道全路線を、切りもよく100巻で網羅するに至りました。その最終巻『歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 30号』が今週発売されました。

 朝日新聞社の出版部門は最近、昔鉄道ジャーナル社が出していて廃刊になった雑誌『旅と鉄道』を復刊させており、鉄道ものに力を入れているようです。本シリーズの刊行もその一環でしょうし、またそれが100巻まで続いたことと合わせ考えると、鉄道の歴史に興味のある人がそれなりにいたということで、まずは結構なことと思います。

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by bokukoui | 2011-10-07 21:08 | 鉄道(歴史方面)