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「螺子の囁き」に蒸機が出たので『COMICリュウ』3月号雑感


 19日には4月号発売だというのに今頃3月号の感想を書くわけですが、そもそも今まで『リュウ』を買っていた書店がいよいよ置くのを止めたらしく入手が遅れたことに加え、所用に追われて買っても読む暇が全然なかったもので、つい先週になってようやく読むことが出来ました。
 で、多忙なので感想はスルーせざるを得ないかと思っておりましたが、表題のように速水螺旋人先生の連載イラストコラム「螺子の囁き」が、1月号に引き続き鉄道ネタが出たので取り上げておきます。

 で、前回記事を書いた2010年1月号の「螺子の囁き」は、アメリカの流線型蒸気機関車を取り上げていましたが、今回はヨーロッパ編といったところです。
 主役はドイツの流線形蒸機・05型。ナチスが威信をかけて1935年製造させ、蒸気機関車として初めて時速200キロの壁を破った車輌です。空力性能を追求して足元まですっぽりカバーした流線形が特徴。・・・なんだけど、やっぱ「いもむし」のように見えてしまいます(笑)。速水先生も書かれていることですが、ドイツ人が技術的に理詰めで作ったものより、アメリカ人がコマーシャリズムばりばりで作ったものの方が一見してキャッチーではあります。もっとも、蒸気機関車のマニア筋に言わせれば、当時のドイツ国鉄の蒸機設計は保守的で、英米のものほど面白みはないといいます。これはいつぞや巡洋戦艦「金剛」の講演会でもお話をされていた、髙木宏之さんのご意見の受け売りですが。髙木さんは口癖のように仰ってました、「ドイツの蒸機はイモ蒸機」と。
 「イモ」繋がりというわけでもないですが、「いもむし」といえば、いつぞや紹介した本にあるようにこの時代は流線形時代なんていいまして、05のように時速200キロの高速性能のために流線形が必要、というほどの高速でなくても、矢鱈と流線形が流行ったもので、日本の名鉄にも「いもむし」の愛称を奉られた電車がありました。比較的近年まで活躍していたのでご存じの方も多いと思いますが。で、電車の場合は窓があるので、「いもむし」的鈍重さを和らげて軽快さを生み出すことが出来るのですが、蒸気機関車のボイラーを覆った場合は・・・スマートにしようとすればする程、のっぺりしてしまう面はあります。

 イモイモ繰り返すのも何なのでこの辺で止めておきますが、蒸気機関車の流線形というのは畢竟キッチュなところに魅力があるのだろうと思います。そこら辺が速水先生の興を誘ったのかも知れません。流線形蒸機は直後の第2次大戦で手が回らず、ほとんど流線形のカバーを剥がされてしまうのですが、蒸機マニアの中には(小生もそうですが)、外されたあとの、いかにも蒸機らしいフォルムの方が「美しい」と思う人も少なくないのです。
 電車にしても日本の場合、流線形で有名な「流電」モハ52系という国電が戦前にありましたが、使いにくいというので増備車輌は前面に貫通扉をつけて普通の電車らしい顔になりました。多少は流線形の名残で洗練されたところがあり、電車マニアは「半流線形」を略して「半流形」などと愛称をつけていましたが、実のところマニアからは流電より半流の方が人気があったかも知れません。
 余談ですが、世間が「韓流」ブームに沸いていた時、小生の知人のさる鉄道マニアの方は、「なんで今頃“半流”がブームなんだろう?」と本気で思ったそうです(笑)
 閑話休題、キッチュとなればソ連に流線形蒸機があればさぞかし味わい深いものになると思いますので、もしそんなのがあったのなら、速水先生には是非今後「螺子の囁き」に登場させていただきたいと思います。

 その他のマンガについても思いつくまま簡単に(と書いて簡単に済んだ試しがあまりありませんが)。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-02-18 23:59 | 漫画

たまには『COMICリュウ』1月号雑感 「螺子の囁き」蒸機ネタなど

 ふとここ一年の当ブログの記事を振り返り、鉄道・歴史ネタに偏っている傾向をはしなくも感じ、そこでちょっと傾向の違う話題を・・・と思ったけど、結局鉄道になりそうな。

 というわけで、以前は毎月書いていたのが、今年に入って諸事多忙などの理由により中断気味のこのコーナーですが、久々に一筆してみようかと。
 今号は、いつも本誌を小生が買っている書店に何故か置いておらず入手が遅れ、その後も諸事に追われて読んだのは最近のことでした。以前にも売り切れていたらしきことがあり、今回も同様と思いたいのですが・・・。 

 ところで以前、単行本化希望と当ブログで書いた吉川良太郎 / 黒釜ナオ「解剖医ハンター」ですが、先月無事単行本が出ていました。これは早速購入して読みましたが、単行本になった方がより多くの読者に受け入れられやすい作品と思います。『ジキルとハイド』『ドリトル先生』のモデルとなったという、18世紀英国に実在した医師・・・というか生命の秘密の探求者・ハンターを主人公にしたストーリーですが、同時に時代柄「七年戦争」「キャプテン・クック」なんてあたりに惹かれるような方も是非にどうぞ。



 話を『リュウ』本誌に戻します。

(続きを読む)
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by bokukoui | 2009-12-16 18:32 | 漫画

「三峯徹20周年トークライブ」が開かれていたそうな

 この週末、当ブログへのアクセス数が比較的多く、はて久しぶりに更新したから見に来て下さった方が多かったのかと思いきや、前回の記事を更新するより前からアクセス数が増えているようで、何事やあらんと少々調べてみました。
 するとどうも、「三峯徹」画伯のお名前で検索をかけてきた人が多かったのではないか、という結論に達しました。それで、例によって当ブログの旧稿「エロマンガ界に激震走る~遂にあの論争に終止符」にアクセスされた方が多かった模様です。大した記事じゃないんだけど(苦笑)、それなりに認識されているのは有り難いことです。あ、三峯画伯が何者かご存じない方は、↑のリンク先の記事をご覧下さい。エロ漫画業界の座敷童というか、アウトサイダーアーティストというか、とにかく、余人を以て決して代え得ない異人なのです。
 ではなぜ三峯画伯のお名前で検索する人がこの週末多かったのだろう? 小生は当然の疑問を抱いて自分も検索を試みたところ、表題の如く、この週末に「三峯徹20周年トークライブ」というとんでもないイベントが開かれていたのでした。
 なるほど、だから検索した人が多かったのか。

 このイベントの発起人は、エロ漫画家の浦嶋嶺至氏でした。なるほど、小生も昨年、浦嶋嶺至(礼仁) 先生の画業20周年記念トークイベント「全身エロ漫画家宣言!!」に、ゲストに三峯画伯が出演されると聞いて出かけ、レポを当ブログにアップしました。その際に三峯画伯と浦嶋氏の間で
浦嶋氏「ところで、投稿歴は?」
三峯画伯「19年。来年で20年になる」
浦嶋氏「では来年イベントを(笑)」
てなやりとりがありましたが、本当に開かれたんですね。
 浦嶋氏のブログのイベント紹介記事にリンク。小生が参加したイベントでもそうでしたが、おみやげをわざわざ制作するとは、浦嶋先生はまったくいつもサービス精神旺盛だと感心させられます。

 浦嶋嶺至のAREA41「11/8 三峯徹20周年トークライブ」

 今更知っても手遅れですが、どっちにせよ日曜日は小生、「軍事史研究の新潮流」という某学会のシンポジウムに行っておりましたので、見には行けなかったわけですが。なおそのシンポジウムは非常に密度の濃い報告ばかりでしたが、濃いために手元にレジュメもメモもありますが、とてもじゃないけど起こしてブログに載せるわけにはいきません。多分丸一日かけても終わらなさそう。

 とはいえ多少残念でなくもないので、このイベントに行かれた方のレポがないかちょっと探してみたところ、一つ発見したのでご紹介。

 ぜろじげん開発者ブログ「三峯徹20周年トークライブに行きました」

 これは面白い。一部引用させていただきます。
途中のトークで印象に残ったことをいくつか

・当初は女の子以外の男キャラなども描かれていたこと
・今の三峯風のスタイルになるまで、数多くの試行錯誤があったこと
・途中金髪が連続した時代があったこと
・ショタやBL雑誌などにも数多く出していたこと
・引っ越しを数多くしていたせいで、PNの住所がバラバラだったこと
・投稿する雑誌の中にはアンチがいて、ハガキが一切載らなかったこと
 あと、ここでもWikipediaの「三峯徹」の項目が削除されたことを問題視する声が上がっていたそうですが、削除されたWikipedia「三峯徹」の項目のコピーは、小生の書いた昨年のイベントレポの頁に張ってありますので、ご興味のある方はどうぞ(笑)

※追記:三峯画伯がなんと「タモリ倶楽部」に登場。その番組を見た感想などはこちらへ



 さて、以下は上の記事を書くために検索をしていて気がついた小ネタ。分類としては「身辺些事」ですが、まあ記事を立てるほどでもないのでついでに。

 なんと、当ブログが2ちゃんねらーによって、「在日認定」されておりました(笑)

 ・ニートな2ちゃんねら~日記
「筆不精者の雑彙←在日鉄オタブログ」

 ほとんど(T/O)みたいな記事です。よく分かんないけど、2ちゃんに書き込んだ記事の集成みたいなブログなんでしょうか? このブログの筆者が注目する書き手の書き込みを集めた、みたいな。
 多分日付からいって「外国人参政権・夫婦別姓反対デモに出くわす その他沈鬱な近況」のためだろうと思いますが、当ブログが「鉄オタ」と判断できるくらいは目を通してもらえたのなら幸いです。どうも該記事に寄せられたデモ側の方のコメントを読む限りでは、該記事の全体を把握した上で寄せられたとは考えにくい面があっただけに。

 ところでずいぶん前のことですが、亡くなった小生の祖母が、小生の母と国際結婚について話をしていて、母が息子(つまり小生)が国際結婚しても構わない的なことを言ったら、大正9年生まれの祖母は難色を示したそうで、最後にこう言ったとか。

 「朝鮮人だけは嫌」

 さて、このような大正生まれの関西人の対朝鮮人感情と、現在のねらーなどの「嫌韓」とは、なにがしか連続性があるのか、はたまた断絶があるのでしょうか。
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by bokukoui | 2009-11-10 23:59 | 漫画

ナヲコ『なずなのねいろ』各巻のウェブ上感想リスト

 今月発売のナヲコ先生の『なずなのねいろ 2』の紹介記事を先日当ブログでも書きましたが、あんまり自分でもいい出来とも思えないので、そこで自分で書いてダメなら人のを読めばいい(?)ということで、ネットでの同書の感想をいろいろ集めてみました。まあこれまでも、何かの折に触れ検索して見つけたのをブックマークしたりしていたので、その成果の放出ということで。
 あるお題について、検索して発見したものを網羅的にリストを作って片端から読んでいくという作業は個人的には嫌いではないし、日常的にやっていることでもあるのですが、最近革新官僚のことをにわか勉強していて、奥村喜和男の著作リストなぞこしらえて片端から読んでいくと、さすがに脳みそが多少くらくらしてきた感もありまして(苦笑)、心安らぐリストでも見たい気になったかなと。

 徳間のサイトに出たのでリンクしときます。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2009-10-24 23:59 | 漫画

ナヲコ『なずなのねいろ 2』(リュウコミックス)発売

 多忙でくたばっているうちに、めでたかるべきこの発売日も、鉄道記念日も過ぎ去ってしまっておりました。
 というわけで、やや出遅れましたが、ナヲコ先生の新刊を手に入れました。

ナヲコ『なずなのねいろ 2』
 前巻が出てから一年と三ヶ月、めでたく2巻が出ました。
 今回は特に特典などの情報がありませんでしたので、大学の近所の某書店で購入。いかにも「街の本屋さん」な規模の店なのに、『なずなのねいろ』2巻を平積みにしていて感心。1巻も並べてあるし。少しでも多くの人に手にとってもらえればと思います。

 ところでふと冷静になって思うに、小生は『なずなのねいろ』1巻の感想をこのブログでちゃんと書いていません。それどころか『からだのきもち』も、いやいや遡れば『voiceful』だって書いたかどうか。『なずなのねいろ』1巻&『からだのきもち』発売の時は、記事が変な方に逸れていったし(それが当ブログの仕様といえばそれまでですが)、『voiceful』の時もあんまり大したことは書いてませんね。あ、最近も『つぼみ vol.3』掲載の「プライベートレッスン」の事を書いてませんな。
 言い訳になりますが、自分の好きなもの、それも特にこのような、自分の心の奥深くにしみこんでくるような作品について語ることは、とても難しいことです。下手に分かったように分析してしまうと、自分の受けた感興を自ら制約してしまうことにもなりますし。むしろ自分でも分からないことにこそ価値があるのかも知れません。
 ですが言い訳ばかりなのも何なので、内容紹介がてら簡単に。

 1巻でギター少年・伊賀君が、三味線少女のなずなに出会ってその音に惹かれ、三味線部を作ろうと伊賀君が言い出します。それをきっかけにふたりの周りの人々が動き出して・・・てなところで2巻に入り、なずなの過去が語られ、それを知った伊賀君やなずな本人とその周りの人々が・・・と書いてみると、つまり「お話」としては1巻からそれほど「進んで」いるわけではないんですね。まだ正式に三味線部発足してないし。
 ですがこの巻では、伊賀君によって「文化祭に出る」という、学園ものらしいといえばらしいような目標が掲げられました(もっとも、『voiceful』の最終話が、公開録画に出て始めて人前で歌うことだったのと同じなのかも知れません)。で、思うにこれは、この作品自体にとっても「進むべき目標」として設定された様なものだなあ、などと思います。本巻では動き始めた人々の心を丁寧に描写していて、それはとても丁寧なのですが、そのためお話としてはなかなか先に進んではいきません。それはおそらく、ナヲコ先生がこの作品をどう進めていくか試行錯誤しておられるのだろうと思うのです。で、最初「文化祭」なんてありきたりの学園ものみたいだな~と一瞬でも思わなかったと言えば嘘になりますが(苦笑)、考え直せば目標を定めるということにはそれなり以上に意味があるのだろうな、と思うに至りました。だからますます、続きが気になるのですが。

 とはいえ、作品(のキャラクター)と作者を重ねて見てしまうというのは、感想としてはどうなのかな、と我ながら思わないではいられません。長年追いかけている作家さんだけに小生自身がそう思うことはやむを得ないとしても、感想としての普遍性には欠けてますね。そして、音楽という形の表現に悩むキャラクターに、漫画で表現する作家さんの仮託を読み取りたがると言うことは、畢竟その読者自身が作家さんに対して何かを表現することへの想いを仮託したがっているということに過ぎず、自分に跳ね返ってきてしまうことに苦笑するのでした。
 まあ、つまり、小生はこの漫画を大学帰りに買ってその晩に感想を書いているわけですが、何しに大学に行ったかと言えば、編集者・・・もとい指導教官に論文のダメだしされてたからだったのでした。

 結局『voiceful』の時と同じような落ちになってしまいましたね。芸がない。
 まあ、芸なしではありますが、せっかく今月はナヲコ先生の単行本も出たし雑誌連載も再開のようだし、来月はまた『つぼみ』が出るようで次回予告にもお名前があったし、ということで、今月から来月半ばまで勝手に「ナヲコ作品販促月間」とでもして、積み残している感想などを書いていければと思います。

※追記:「販促月間」第2の記事はこちら→
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by bokukoui | 2009-10-15 23:59 | 漫画

『COMICリュウ』9月号雑感・伊藤伸平先生、中原淳一をパクる?

 時代の先端の女子高生は軽音楽じゃなくて三味線、軽音部なんか廃部にして三味線部にとっとと改組すべし、と昨今の世相を慨嘆しておられる同志は、多分全国に百人くらいはいるんじゃないかな・・・と思う今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。小生は相変わらず不調の極みで、暑さ負けの上に睡眠も乱調で活動効率が著しく低下しております。コンピュータの方も暑さのせいか無線LANに胡乱な振る舞いが多く、こちらも活動効率が低下しております。先日憑かれた大学隠棲氏のご尽力で廉価に新たなノートパソコンを導入し、図書館での資料打ち込みの効率の向上を狙いましたが、そんなこんなでまだその真価を発揮するに至っていないのは遺憾です。更に、いかに世間の相場から見て廉価とはいえ、諸般の事情によりここしばらく資金繰りも苦しく、何事も思うに任せません。
 そんな小生の身辺状況はどうでもいいのですが、何か書く気力も落ちているので、今日のところは小ネタを一つ。

 ここ半年以上中絶していたこのコーナーですが、止めていた理由は一つにはナヲコ先生の「なずなのねいろ」がしばしば休載していたことで、全般的な気力の減退もありますが、最大の理由は面倒だったの一言に尽き、雑誌自体は毎月読んでおりました。『月刊COMICリュウ』はマイナーもいいところの雑誌ですが、最近は連載作品の一つでライトノベル(神楽坂淳著)からコミカライズされている「大正野球娘。」がアニメ化されていまして、そんなわけで今月発売号の本誌の表紙も「大正野球娘。」が飾っています。
 で、小生も専門からして大正時代を扱った本作を結構注視しておりますが、今月号の表紙を見ていてふとあることに気がつきました。本誌の表紙は公式サイトから見られますが、クリックしていただくのも手間なので、肝心な部分を以下にアップしておきます。
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『月刊COMICリュウ』2009年9月号表紙
「大正野球娘。」キャラクター(左:鈴川小梅、中:小笠原晶子、右:川島乃枝)

 ここでは、お嬢こと小笠原晶子の衣装に注目しておいて下さい。
 で、以下に示しますのは、大正時代から昭和初期にかけての女学生の文化や風俗をグラフィカルにまとめた弥生美術館・内田静枝編『女學生手帖 大正・昭和 乙女らいふ』(河出書房新社)に掲載されている、中原淳一が雑誌『少女の友』に描いた洋服のファッションガイドです。
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中原淳一「『少女の友』ファッション・ブック」より「シクラメン」
(『女學生手帖 大正・昭和 乙女らいふ』p.29より引用)

 中原が亡くなってからまだ四半世紀くらいしか経っていませんので、著作権法上問題が厳密にはあるかも知れませんが、批評上必要な範囲の引用ということでご諒解の程。

 で、これはきっと、コミック版を描かれている伊藤伸平先生が、ネタ本に『女學生手帖』を使ったんだろうなあ、と思った次第。
 もちろんパクリを云々なんてつもりは小生には全然ありませんで、むしろ「大正」「女学生」というのでネタ本を探せば、最初に突き当たるのは間違いなく本書なので、大正時代に野球をする話の筈なのに何故か扉絵でソ連戦車T-34/85が疾走している(しかも見開き)ような、原作蹂躙上等な本コミカライズといえど伊藤先生はちゃんと調べるところは調べておられるのだと納得した次第です。もっとも今月号の本誌連載でも、何故か戦闘ヘリアパッチが乱舞して終わってましたけど・・・。
 ただ、『女学生手帖』の記事によると、中原淳一が「女学生服装帖」を雑誌『少女の友』に連載していたのは1937年から1940年にかけてのことだそうで、ここに挙げた衣装は1937年8月号の附録なのだそうです。つまり昭和12年ですね。一方「大正野球娘。」の年代設定は大正14年=1925年・・・さすがお嬢、流行を十年以上も先取りしてる!?

 「大正野球娘。」関係はまだ色々ありますが、それはまたの機会にして、ちょこっと今月号を始め最近の『リュウ』について書いておきます。

 ここ半年あまりの『リュウ』における最大の収穫は、何といっても吉川良太郎 / 黒釜ナオ「解剖医ハンター」です。近代医学前夜の18世紀英国を舞台とした作品で、やはりこの時代はもっと扱われて然るべき面白さがあると思います。設定を抜きにしても、絵と話とがうまく波長が合っている感じ。連載希望。単行本化更に希望。

 速水螺旋人「螺子の囁き」は毎回楽しみ。特にこの半年で一番衝撃的だったのは、無火機関車が登場したこと。機関車と産業機械のあいのこみたいなものですが、よくまあこんなのをと感心。
 最近の「鉄道ブーム」的風潮で、鉄道を題材にしたマンガが幾つも出ているようで、小生も幾つか集めましたが(そして最近一つ記事を書きましたが)、そういうのを読むにつけ、何度でも言いますが、『速水螺旋人の馬車馬大作戦』所収「頭上の装甲列車」は鉄道マンガ(厳密にはマンガじゃないけど)の極北というべき傑作だなあと痛感しています。

 ナヲコ「なずなのねいろ」、秋には単行本2巻が出るそうで一安心。最近はリカコさんの活躍ぶりが目立ちますが、そんなこんなでみんなが動き出した分、全体のお話の進み具合はやはりゆっくりです。なかなか三味線部が始動しないのは、何かを「始める」ことに至る心の動きが現在のところはテーマになっているためであって、いつまで経ってもまともに野球をしない同誌の某野球マンガと理由は異なってるだろうと思います。

 他にも、『ルー=ガルー』の連載終わったけど樋口先生は再登場しないのかな(是非希望)とか、『エマノン』ちゃんと載ってるなあとか、下らないと思っていた見ル野栄司『敏腕!インコさん』が何ヶ月も読んでいると面白く感じられるようになって困ったなあとか、いろいろなくもないですが、取り敢えず今日のところはここまでで。
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by bokukoui | 2009-07-30 20:45 | 漫画

永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント 私的感想

 もうすっかり肝心のイベントから時間が経ってしまい、その間に栗本薫氏が亡くなるという衝撃的な出来事まで起こってしまいましたが、本記事は「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・」のレポート記事、

・永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(1)
・永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(2)

 のまとめ、個人的感想です。

 レポとは速報性をもって価値とすべきなのに、今さらあんまり意味はない気もしますが、ただ今から感想を書くとすると一ついいことがあって、それは既に出た感想や意見を参照することが可能だということです。この記事では、このイベントに関する批判的な意見を手がかりに、このイベントから読み取れるであろうこと、昼間たかし氏の東大進学の展望などについて、雑駁ながら多少の感想を述べたいと思います。

 ではまず、このイベントに関するネット上の意見で、特に注目すべきと小生が考えたものを以下にご紹介します。

・マガジンひとり
 「イベント『マンガ論争勃発 - 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても…』」


 こちらはレポの方で既に紹介したもので、イベントに実際に来られた方のご意見です。

・Economics Lovers Live
 「近刊:『マンガ論争勃発2』とぬるさ」
 「いかなくてよかった」


 こちらは、『マンガ論争勃発2』でインタビューを受けた、田中秀臣氏(上武大学教授)のブログです。「近刊~」はイベントの前、本が出る時の記事で、「いかなくて~」はイベントについての指摘(来られたわけではない)です。このイベントに登場された塩山芳明氏が、『マンガ論争勃発2』を読んだ感想を「日刊漫画屋無駄話」の「其の2669」(2009.5.18.付)に書かれていますが、その中で「圧巻は田中秀臣(上武大学教授)。この人だけで30ページは読みたかった」と評していた、その田中氏です。

 これらの批判を要約すれば、このイベントが「ぬるく」て内輪向けで、議論を積極的に戦わせるようなものではなかった、田中氏はそれ以前に、『マンガ論争勃発2』自体
 なんか、ぬるいね。やはり論争本というよりも、事実上、論争の骨抜きというかどく抜きになってしまってないか? マンガ業界の縁辺のインサイダーだけでぬるくやりたいんなら論争本の体裁はいらないでしょう。簡単にいうと時間の無駄。昼間さんは勉強会の必要性をブログで書いてもいるけれどもそういう話題につながるようなものにも思えない。昼間さんのこの書き方もなんか「勉強会やる意義あるけどいろいろ問題もありましょうからごにょごにょ」と書いているように思える。
 と批判されております。

 確かにこのイベントは、前半は特におもしろ話的な内容であって論争ではないし、またその話自体もマンガ好き向けの「内部」向けであったといえるでしょう。小生としては、イベントの最後で永山氏の発言の趣旨、表現が面白くなくては何も始まらない、その指摘に鑑みれば「おもしろ」な時間を設けること自体はむしろ良いのではないかと思いますが、しかし昼間氏がそこまで考えてこのイベントのプログラムを定められたのかどうかは存じません。
 田中氏は、『マンガ論争勃発』とか表題に書いておきながら論争になってない、そこが「ぬるい」と感じておられるのではないかと推察します。実際『マンガ論争勃発』シリーズは(小生は『2』をまだちゃんと読んでいないんですが)、「いろんな人の意見を聞く」と謳っていても、聞いた意見やどのように聞くかについて、論争の軸をきちんと設定しているわけではないですね。
 小生思うに、「マンガ論争」といった場合、表現規制の問題(これはマンガ←→マンガの「外部」という対比が大きいでしょう)と、マンガという産業というか文化行為というか、それ自体の直面している問題(これはマンガの「インサイダー」のことが中心になるでしょう)と、二つの大きな軸があるのに、『マンガ論争勃発』ではその区分があまり意識されていないところがあるのではないでしょうか。もともとは表現規制問題(「児童ポルノ法」問題)という、「外部」へ対抗するために「インサイダー」みんなでどうしようか、というのが「マンガ論争」の発端だったという印象があります。扱うべき対象を広げていったのに、対象を扱う意識がそれに応じて広がってきてはいない、という問題があるのだろうと思います。

 もっとも、小生は更にそれ以前の問題があるのだろう、とも思います。上のブログの引用で、田中氏は『マンガ論争勃発2』のようなスタイルでは論争にならない、昼間氏も「勉強会やろう」と書いてはいるようだけど、なんだか「ごにょごにょ」だし、と指摘されています。
 で、ここで勝手に昼間氏の「ごにょごにょ」を忖度するに、『マンガ論争勃発2』の「転換期に来た児ポ法改定反対運動 2008年の運動を総括する」で昼間氏が書かれている、「規制反対運動は非常に敷居の高い趣味の一ジャンルに変貌している」というあたりにその理由があるのだろうと思います。もっと有り体にいえば、人生いろいろと悩んでいるような、自らの性格に悩んでいるような、そんな人が"生き甲斐"を求めて来てしまい、運動自体が自己目的化してしまって、勉強も議論も成立しない状況に陥る場合があり得るということです。これは社会問題全般にありがちなことではあると思いますが(規制推進派も同様でしょう)。

 実際、規制反対運動の中で運動が半ば自己目的化したような運動参加者の行動によって、本来話を聞いて力を貸してもらうはずの一般の"マンガ好き"の一部の人に大変な不快感をもたらすような事態が生じてしまい、その事態の発生そのものには何ら責任のなかった昼間氏が、事態解決のため運動の真意について説明する羽目になっている、そんな状況を小生は一度目の当たりにしたことがあります。
 その際の昼間氏の説明は見事なものだったと思いますが(一応は事態を収められたし)、しかしこのような事態がまま発生しているのであれば、これまでのやり方では「手詰まり感」が出るのも当然でしょう。
 昼間氏は「マンガ論争勃発」のブログで、
・・・オタク分野は1970年代の勃興期以来、これまでジャーナリズムが存在しないまま成長してきた。ゆえに、表現の自由に関する問題でも理論が構築されていないことは、否めない。
 やはり、もっと大勢の人が精力的に学習し知識を貯えていくことは必要だろう。

 で、ここからは宣伝なのだが、先日、私が通っている東京大学大学院情報学環教育部の懇談会で、先生が話していたのだが、もっと東大生以外、他大生や社会人にも入学してもらいたいらしい。
 少々の出費と、時間を融通する気がある人は、ぜひ入学を。たぶん、東京大学の名を冠した教育機関の中では、かなり入学し易いはず。
 と書かれています。
 結局、ちゃんとした議論になっていないと田中氏に突っ込まれるも道理、議論以前の段階にとどまっているのではないか、と思われます。
 小生は最初、『マンガ論争勃発2』という題を聞いて奇異な感を少し受けました。「勃発」というのは、「戦争が勃発した」というように、起こっていない状態から起こった状態への変化を表す言葉なので、「勃発」が継続するのは何だかなあ、前巻で「勃発」したんだから今回は「炎上」とか(「泥沼化」?)にしたらと咄嗟に思ったのです。しかし以上のように考えてみるに、そもそも「論争」の段階に至っているかどうかが先ず怪しく、「マンガ論争勃発」が継続しているということは、とりもなおさず現在もなお「マンガ論争」は夜明け前なのかも知れません。
 そして、議論の土台作りには、インサイダーにとどまらない、広く訴えかける言葉が大事でしょう。その点は、『マンガ論争勃発』に続きがあるなら、改善すべき余地は相当に大きいと思います。もちろんそれは言うは易く行うは難きことで、田中氏の著書にだって、「同じ経済学観や、あるいは面識のある論者間の内向きに書かれた印象」「潜在的な賛同者にしか通じない書き方」という声もあるように。

 以上を踏まえるに、昼間氏の東大進学というのも、上に引用したブログのコメントにあるように、その辺の問題点への対処法の開拓ということなのかな、と思います。『マンガ論争勃発』の続巻がどうなるかは存じませんが、進学によって知見とネットワークを広げ、手詰まりを打開する方法が見出されればと思います。
 昼間氏が「成り上がり者」的で、うまいこと名のある人に取り入ってここまで来たんだ、という趣旨のことを増田監督がイベント中の昼間氏黒歴史暴露大会にて指摘されていたかと思いますが、むしろかかる状況では、「東大」なんて権威も巧みに利用した者勝ちだろうと思います。昼間氏がこれによって、更なる飛躍を遂げることを願ってやみません。

 で、その成果を大ならしむるためにも、引用ブログ記事後段で昼間さんが語っているように、同じ道に進む人を増やすことにも意味があろうと思います。
 先年の『ドラゴン桜』の売れぶりから察するに、「東大」というのはブランド的な価値が一定あるようですので、昼間さんもこれをとことん活用するため、「昼間塾」を作って「わたくし昼間と勉強すれば東大に入れます」との売り文句で人材を集め、勢力拡大を図られるのも一案かと思います。
 昼間さんの指導によって東大に入れるのかどうか、怪しいんじゃね?と疑念を持たれる向きもあろうかと思いますが、きっと大丈夫でしょう。
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 と、那珂川湊先生も太鼓判を押していることですし(玄鉄絢「星川銀座四丁目」(『つぼみ Vol.2』芳文社所収)より)。

 ・・・強引な締めくくりですが、マンガの話なんだから、最後はこんなところで。


※追記:昼間たかし氏が、以上の拙文に関しブログで以下のような記事を書かれております。
「論争以前の問題が山積しているような気が」
「初学者にはなにを教えるべきか」
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by bokukoui | 2009-05-29 23:59 | 漫画

永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(2)

 諸般の事情により一週間も間が開きました。論文書いたり、寝込んだり、引き籠もったり(インフルエンザとは無関係です)していた関係上、続きを書く余力がありませんでした。で、今更感満載ですが、「永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(1)」に引き続き、以下のイベント


 のレポの後半です。

○増田監督のお話

 毎度お馴染み(?)増田俊樹監督の登場。昼間氏は増田監督の映画『おやすみアンモナイト  貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』の脚本を執筆され、その映画が夕張市の映画祭に招待されたとのこと。で、出演された大塚麻恵さんともども壇上に。
 ですが増田監督、「今日は永山さんの出版記念」ということで、昼間氏に対して文句付けモードに。まあそれも無理はないことで、前回のレポで紹介した『マンガ論争勃発2』の奥付の昼間氏の略歴、昼間氏の東大での所属以外にも妙な箇所があるのです。前回のレポに添えた、「マンガ論争勃発2」奥付の画像をよく見て下さい(青い印)。『おやすみアンモナイト  貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』が好評だったのか、『貧乏人一揆編』も製作されるようです(笑・今気がついたけど、「篇」と「編」も誤植ですね)。それだけ、遅れた日程を取り戻して発行すべく急いだ証でもあります。

 で、それから、増田監督が昼間氏と初めての出会い(昼間氏の左翼時代)に遡って、昼間氏の秘話・・・というか黒歴史の数々が暴露され、会場湧きます。昼間氏「この物語はフィクションです」
 壇上の大塚さん、「昼間さんは脚本を書いて下さったり、ジャーナリストの活動をされたり、"昼間先生"だと思ってたのに・・・イメージ崩れました」
 もっとも、大塚さんが以前の古澤克大書記長のイベントのような「汚いものを見るような」恐い目つきではなかったのが幸い。そこら辺から、話の内容の違いを察して下さい。

○市川孝一氏・武田“コックローチ”圭史氏・三崎尚人氏のお話

 ここで再び壇上のメンバーが入れ替わって、同人誌即売会に詳しい方々が登場されます『マンガ論争勃発2』の趣旨から行けば、これこそ真打ち的な内容とも言えます。しかしこのセクションも、実に話が濃密で、特に市川さんと三崎さんがマシンガントークを展開され、ミートチョッパーに撃たれている気分でありました。おまけに時刻が遅くなってきて途中で帰られる来場者の方もおられ、物販を担当している小生はそちらも対応せねばならず、メモが行き届かなかったことを予めお詫びしておきます。

昼間氏
「皆さんには、理念的なことは『マンガ論争勃発2』で語ってもらったので、ここではそれ以外の話を。同人誌即売会の問題について」

市川氏
「随分前に取材を受けたのに、なんでこんなに出版が遅れたの」

永山氏
「それは色々あって・・・」

 しばし言い訳と事情説明から、どういった人にこの本を読んでもらいたいのか、広く読んでもらうため、ひいては売れるための工夫で大変だったというような話に。

市川氏
「分かってくれる人だけこのような本を買ってくれてもしょうがない、それが問題」

永山氏
「なぜゲストが話を戻してくれるのか(笑)、興味を持っている人が買ってくれるのはある意味当たり前。99%の、『表現規制』と聞いても『ナンじゃそれ』という人に知られないと、そのためには売れないといけない」

昼間氏
「女性向けの同人について規制がどうなるか、関心を持っている人はいるのか。武田さんが書かれた『R18の隣』(註:同人誌の性的な表現と規制について解説した同人誌)は売れているのか」

武田氏
「2500ほど」

永山氏
「評論同人としては大したもの」

昼間氏
「やはり同人のやり方もマニュアルがいる時代ですか」

市川氏
「デジタル入稿の普及で、同人誌に関する情報が伝わりにくくなった。デジタルで描いて、印刷のための入稿法を知らない同人サークルが増えた。サークルと即売会、印刷所の関係が遠くなっている。その間をつなぐ方法を、ワープする方法を考えないといけない」

永山氏
「地道にじゃないんだ、ワープなんだ」

 以下ちょっとメモ不整。市川氏と三崎氏がこもごも猛烈な勢いで話されていて、その区別が付いていません。ので、まとめて書きます。市川氏が話された部分が多かったと思いますが・・・

 2年前に「同人誌と表現を考えるシンポジウム」をやったところ、800人集まった。あれで勉強になったという人が多かったが、今まで伝えて来なかったということの裏返し。またやりたいがなかなか暇がない。

 どうやってこのようなことを教えていくか、考えなければいけない。分かりやすくしないといけない、難しいことを言っても分からない。
 コミケでは「コミケットアピール」を出しているが、その書き方が以前と変わっている。以前は「米澤語」とよばれた、"もにょっとした"言葉で書かれていたが、これは行間を読まねばならない。でもそれでは分かってもらえない。そういう時代ではない。みんなに分かってもらえないと、50万人も来るイベントは、やっていけない。
 実際、今まであり得なかったことが起こっている。コミケカタログの、Dr.モローのマンガのネタに事欠かない。

昼間氏
「武田さんのイベントでは、女性参加者が多いが、トラブルはどうか」

武田氏
「時々はある。孫に頼まれて買いに来たようなお婆さんとか」

永山氏
「昔コミケに来ていた、片言のイラン人集団がいた。転売目的だったのか」

市川氏(?)
「体力とかを考えない参加者が昔より増えた。徹夜とかも体力を考えないでするから。この世界自体、全体として変わっている。コミケットは白黒つけない、グレーとしているが、白黒に二極化しているのかも知れない。

 コミケには、昔は先輩に連れられて初めて来たような人が多かったが、今はネットで見ていきなり来る。
 『げんしけん』とか『らき☆すた』とかが良くない。あれを見てコミケが面白いと思うらしい。普通の人が来ても楽しくないですよ。暑いか寒い中で何時間も人混みに並んで、本一冊買って帰るなんて。何か目的がないと楽しめない、辛い。
 イベントは体調を整えて来て。体調が万全じゃないと遊べない。『げんしけん』の斑目(註:コミケ会場で転倒して腕を折り、それを隠してイベントに参加し続けるも、ついにぶっ倒れて救急車で搬送されたキャラクター)は、一刻も早く病院に行ってくれ」

 同人誌即売会のトラブルについての話から、最近の大阪のイベントであった、主催者側の釣り銭が足りないので百円玉を持ってきて下さい、という告知を直前にした話に。混乱はなかったそうですが、なんでもそれは担当者が銀行に一桁間違えて釣り銭を注文したのを、誰も気がつかなかったのだとか。

三崎氏
「武田さんが『マンガ論争勃発2』の中で、かつての幕張メッセでの同人誌即売会中止事件を、『あれは反面教師』というのはどんなものか。自分たちがやったイベントについてそれはどうかと」

武田氏
「インタビューの時はそういう話ではなくて。前後に文脈があっただろ」

 ちょっと昔の話。幕張事件の経緯を知らない若年層もいたので。

三崎氏
「警察は『注意しただけだったのに』とか称していたが、それが新聞に出て中止に追いこまれた」

武田氏
「出しやがった(註:警察がマスコミにリークした、の意か)」

市川氏
「昨夏のコミケで爆破予告があって手荷物確認をした。会場や警察から中止したら、と何度も言われたが、ただ『しません』とだけ言った。いろいろ言うと突っ込まれる」

三崎氏
「コミケなら個人情報が流出しても中止しないでしょ(註:昨年、ある即売会でサークルの個人情報が流出し、中止になった)」

市川氏
「しないね」

昼間氏
「豚インフルエンザが流行ったら」

市川氏
「やります。場は開くから覚悟して来て、と」

永山氏
「それこそさっきの話の通り、体調万全にすればいい」

三崎氏
「mixiを見ていたら馬鹿なやりとりがあった。『インフルエンザが近所で流行っているので、私は即売会に行っていいでしょうか?』 これに答えを書いた奴はもっとひどくて、『主催者様に聞いてみてはいかがでしょうか』 主催者にそんなことまで尻を持ち込むな、自分で判断しろ」

市川氏
「同人も自分の生き方なんだから、自分で決めて欲しい。遊びに来るんだから、遊んで欲しい。そういうことを、いいことも悪いことも、最近は教わってきていないのか」

(ちょっと抜けてるかも)

永山氏
「正論を言いたがり、白黒つけたがる傾向があるのではないか」

市川氏
「錦の御旗が欲しいのだろう。だから『規制して下さい』とかいう。そんなの作ったら守らなきゃいけないじゃないか。そんなことできるのか」

昼間氏
「昨年は同人誌図書館も話題になったが」

市川氏
「コミック1ではあらかじめ同意を得て回収した見本誌を、明治大学に寄贈することにしている。9割は同意してくれている。
 コミケットでも図書館についてアンケートした。条件付きながら一応の賛成を75%から得たので、その条件をどうするか、現在考えている。
 同人誌図書館は閉架式を考えている。しかしコミケの見本誌は、会場のサークル配置の島ごとに、ゆうパックの段ボール2~3箱に入れられている状態なので、本を出すのが大変。いつのコミケのどの場所のサークル、という形でしか探せない。閉架式にした場合、閲覧者が多数いたら、本を出すのが間に合わなくなるかも知れない。
 当初、今年の今頃にはオープン予定だったが、以上のようにいろいろ考えているので、実現は先」

 以下もちょっとメモが不整。市川氏と三崎氏のマシンガントークが混在していると思います。

市川氏(?)
「マーケティングとしても、大手出版社がコミケを見ている。どうすればジャンルコードができるのか、と聞かれることもある。ジャンルコードができるということは、その作品を扱った同人サークルがまとまった数ある、つまり、その作品の確実な固い支持層があるということ。高い商品でも売れるといえる。
 いろいろな形でお互いがうまく行けばいい。一番恐いのは、不況なのに同人ばかり売れている、となって攻撃されること」

三崎氏(?)
「大日本印刷がブックオフの株を買収したが、コミケも買収するのか(笑)。あの買収には何か裏がありそうだが、そのように『大人』の商売人がこの世界に入ってくることが恐い。
 音楽系の同人も最近増えているが、これはマンガ以上に難しい。再販制が存在しなくて、同人サークルとインディーズの区別が曖昧。
 コスプレ写真集のDVDとかはもっと怪しい。同人の建前なのに『定価』が付いてたりする」

市川氏
「コミケは、コミケットアピールとカタログしか発表媒体がなかった。参加者にこちらの考えを伝えてこなかった。それが反省点。サイトの運営をどうするか検討中」

三崎氏
「何でもネットに書けばいいのではない。ネットに書いて喜ぶのはブロガーだけ。確かに伝えるにはナマで話す方がいい」

○「児童ポルノ法」についてなど

 ここでちょっと会場からの要望があったのだかどうだか、昼間氏が「児童ポルノ法」の現状などについて簡単な説明などを。

昼間氏
「まず『児童ポルノ法』については、現在国会が動いておらず、動きはない。しかしこれからは動くだろう。自民党と民主党が案を出している。民主案の方がマシだが、大きくは同じこと。規制にあくまで反対している政党は社民党だけで、力がなく、規制強化は避けられない。何より、皆ちゃんと選挙に行かないと。
 海外での動きがあり、フィリピンで"hentai cartoon"(この英語で検索すると情報が出て来る)、イギリスのゲーム『レイプレイ』批判など。日本にも影響。
 『レイプレイ』騒動について、問題のゲームを製作した会社・イリュージョンに取材を申し込んだが、ちょっとねえ、という反応。同社はその後路線変更しており、今はそのようなゲームを出していない。だから騒動で絶版にしても直接は困らなかった。
 日本のアニメDVDの海外市場は減少している。Cool Japan も終わり」

○鈴木邦男氏のお話

 22時20分頃、『マンガ論争勃発2』の中でもっとも評判の良いページ? の語り手・新右翼の鈴木邦男氏登場。鈴木氏は一水会(註:鈴木氏創設の新右翼団体)のフォーラムを途中で抜けてこちらに来られたにも関わらず、「22時頃お願いします」という予定の登場時間が過ぎても出番が来なかったため、まず登壇するやいなや昼間氏の首を絞めます。

昼間氏
「これが右翼の暴力です」

 で、本題の話に。

昼間氏
「鈴木さんのページは、『マンガ論争勃発2』の中でも評判がいい。実際、何度くらい殺されかけたりしたのか」

鈴木氏
「何度もあったよ」

 で、いろいろと危ない話に。
 また、週刊新潮の赤報隊誤報事件にも話が及び、「日本に一番疑り深そうな彼らを欺すとは、よほどうまく話したのだろうか」うまい作り話が、本当の証言より信用されることも。
 死体をどうしたというような話はここでは公開しかねますので、逆にほほえましい一幕をご紹介。

会場からの声
「先日月蝕歌劇団の公演に行ったら、鈴木さんがいらっしゃいましたが・・・」

鈴木氏
「月蝕歌劇団は、僕はもう旗揚げの頃からずっと見に行ってるよ」

昼間氏
「月蝕歌劇団の出し物といえば、よくみんなセーラー服着て踊ってますが、鈴木さんセーラー服好きなんですか?」

 鈴木氏、昼間氏に絡まれ、莞爾と微笑む。(右翼だけに)

 表現の問題についての鈴木氏のご意見は、『マンガ論争勃発2』本文や、「崩壊日記(出張所)」さんのレポをご参照下さい。メモが不整で・・・
 鈴木氏の最近の活動に話が及び、鈴木氏は和歌山の砒素入りカレー事件の林真須美被告の無罪説を唱えておられますが、その関連の話から裁判員制度について。裁判員制度そのものも報道の自由に関する重要な問題を孕んでしますが、そちらは『マンガ論争勃発2』で取り上げられています。

鈴木氏
「裁判員制度については、時には死刑を宣告するかどうか判断せねばならない、という重みが問題とされることが多いが、むしろ人を裁く喜び、人を死刑にする楽しみを覚えてしまったら、そちらの方が恐い。日本でも百何十年か前まで公開処刑をやっていた。そういうDNAがある」

 鈴木氏のご意見の前段については、小生も全く同意するところです。人を裁く喜び、死刑にする楽しみをもたらす心理は、ここまでの表現に関する議論で指摘された、「錦の御旗」を求め「白黒つけたがる」ものと通底しているでしょう。もっとも後段については、公開処刑は所謂先進国でも日本より廃止が遅かった例もあり(例:フランスは1939年廃止。お祭り騒ぎになったので政府が困って廃止した)、人間に普遍的な問題だろうと思います。
 閑話休題、その他血盟団のような直接行動の話とか、議会制へのロビイングは規制強化側の方が強くなりがちなので、そこでどうするかといった話もありましたが、メモが整っておりませんで申し訳ありません。

○質問のお時間

 最後に、会場からの声に応えるというひとときとなりました。この時間になりますと、ますますメモがいい加減になっているので、内容の至らない点をご寛恕下さい。

 最初は確か、当ブログでもロフトのイベントレポを書いた際にしばしばご登場の赤木智弘氏が飛び入り。その内容は最近話題を蒔いた、煙草が個人の趣味なら子育ても個人の趣味に過ぎない、という議論の件に関するものでしたので、各人適宜検索してご確認下さい。

 ついで声を上げたのは、これもお馴染み山本夜羽音先生

夜羽音氏
「昼間氏は東大に行って何がしたいのか」

昼間氏
「ただ単に『ジャーナリスト』というのでは箔がない、単なるライターでは先が見えない。名を挙げるため。東大の情報学環の研究生は、安価で期間も短いので入った」

夜羽音氏
「表現規制の活動については手詰まり感があるが」

永山氏
「署名活動やロビイングは、金があって有名人がいる方には勝てない。アグネス・チャンが出てきたら叶わない。同じことをやっても駄目。
 ではどうするか、昼間の言うように一人一人が有名になるか、夜羽音のようにマンガ家なら、自分で描け。あんたが自分で描いた政治のマンガはエンタテインメントになってない。面白くないといけない」

昼間氏
「だから自分は、『女性化連合赤軍ゲーム』を提案した(註:詳しくは『マンガ論争勃発2』の、鈴木邦男氏のページを参照)」

永山氏
「だからみんな商売を考えないと。日銭に困っている人には表現の自由の大切さを説いても伝わらない。相手に届くように、表現者が工夫していく必要がある」

 この永山氏が夜羽音氏を叱った言葉こそ、今日の核心となる言葉であったと小生は思います。

会場の声
「コミケのカタログの、Dr.モローのマンガが減ったのが残念。あれはコミケ参加者に、同人のことを『面白く伝える』役割があると思う」

市川氏
「減ったのはページの都合。元々余白に書いてもらうものなので、そのためにページを取るのは難しいが、これからもやっていきたい。今コミケカタログの注意書きは三十数ページもあるが、そんなに長いと誰も読まないので、工夫は必要と考えている」

会場の声
「携帯電話配信コンテンツのマンガは、規制が紙媒体と較べ非常に厳しい。しかしそのことがあまり知られていない」

昼間氏
「コンビニの雑誌の扱いのような、民間企業の自主規制のガイドラインは重要な問題だが、非公開。『マンガ論争勃発』で調べようと思ったが、見せてくれない。困る。
 アマゾンなどでは、売上が小さければ業績に響かないので規制してしまう。そういった規制をすり抜ける方法を考えても良いと思う」

会場の声
「そういった規制を作る場に、表現者も編集者もいないのが問題では」

会場の声(?)
「今の世の中はブログなどの表現者が増えている。表現の問題を自分の問題として考えられるようになれば」

壇上のどなたか(?)
「表現の自由を入り口に、社会のいろいろな問題が見えてくる」

 更に会場の声は幾つかあったのですが、もはや気力が尽きてメモがありません。申し訳ありません。
 ですが、多分最後の質問者の方が、ご自身のブログで経緯を語って下さってますので、そちらを紹介させていただきます。

・Gamer's Blog
「ちょっと真面目な表現規制のはなし」


 以上、概ね満員の盛況で、23時過ぎまで時間いっぱいに行われたイベントの概要でした。物販も結構好調で、『エロ漫画の黄金時代』の売上ぶりには塩山芳明氏も笑顔でした。小生ももちろん一冊購入し、サインをいただきました。実はこれが、この日最大の収穫だったかも。
 このイベントに関する小生の感想などは、別記事にて。

※追記:「別記事」はこちら
「永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント 私的感想」

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by bokukoui | 2009-05-27 23:50 | 漫画

永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(1)

 いろいろお世話になっている、というか小生としてはお願いしたい筋があるので逆らえない、昼間たかし氏から要請があったもので、こちらのイベントに行って物販のお手伝いをして参りました。

『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント

 タイトル長いですね。
 出演者は以下の通りです(上掲ブログより引用+一部加筆)。
市川孝一(コミックマーケット準備会共同代表)
金田淳子(社会学者)
塩山芳明(エロ漫画編集者・文筆家)
武田“コックローチ”圭史(赤ブーブー通信社)
中田雅喜(漫画家)
三崎尚人(同人誌研究家)

増田俊樹(映画監督)
大塚麻恵(女優)

鈴木邦男

永山薫(批評家)
昼間たかし
(ジャーナリスト/東京大学大学院情報学環教育部研究生)


 今回のイベントは、『マンガ論争勃発2』発売を機会に行われたものです。永山薫・昼間たかし両氏は、一昨年末『2007-2008 マンガ論争勃発』を出版されまして、ご存じの方も多いと思いますが、同書はマンガなどの表現の置かれた状況について、さまざまな立場の人の話をとにかく「聞く」ことによって、混沌としたこの状況の羅針盤を掴む手がかりを与える一冊でした(直接「答え」を与えるわけではないのがミソです)。それから一年(の筈が4ヵ月長くなりましたが)、マンガを巡る状況の厳しさは麻生首相になっても変わらず、不景気のためだけではなく更に厳しさを増今日、同書は更にパワーアップして帰ってきました。これは決して修辞ではなく、並べてみると分かりますが、『マンガ論争勃発2』は前巻より厚くなっています。それでいてお値段は据え置きというところが、本書発行への熱意の一端を感じさせます。

 本書の内容についてはリンク先の出版社サイトをご参照いただければと思いますが、著者の方々のブログに参考文献一覧が上がっていますので、リンクしておきます。取材した方々のお名前もネット上に載せればと思うのですが(前巻は載ってるのに)。
 さて、当ブログでは前巻出版時のイベント「マンガ論争勃発番外編-表現の自由と覚悟を問う」のレポを以前掲載しましたが、その因縁で関係者より今回もレポを書けという圧力をかけられております。しかし今回、小生は多事多端につき余裕がありませんので、ごく雑駁なものしか書く余裕がないことをご諒承下さい。くたびれている上に、忙しくて「マンガ論叢勃発2」自体買っていなかったので(この日、物販の仕事ついでに自分で買いました)、いわば予習不足であるため、メモの精度自体下がっています。
 ですので、今検索したところ以下のレポが既に公開されておりましたので、そちらもご参照下さい。

・マガジンひとり
 「イベント『マンガ論争勃発 - 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても…』」


・崩壊日記(出張所)
 「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・」


・ムキンポの忍者ブログ
「『マンガ論争勃発2』発売記念!! 昼間たかし東大入学お祝いイベント 永山薫vs昼間たかし これが現実だ!と、言われても・・・ 」
(写真中心)

※追記:その後発見したレポを以下に追加します。
・よた話
「『マンガ論争勃発2』発売記念イベント」


・Gamer's Blog
「ちょっと真面目な表現規制のはなし」
追記ここまで
 ではイベントの模様について。

 18時開場19時開始でしたが、開場と同時に10名程度の方が来場、18時半頃で50人程度に達し、19時には80人くらいになっていたのではないかと思います。聞いた話では事前予約が60人を超え、来場者は最終的に100人くらいになったのではないでしょうか。立ち見も出ていましたので。
 19時を少し廻ってイベント開始、まず永山氏登場、「今回のイベントは『漫画論争勃発2』発売記念と、あとなんか昼間が「東大入った」とかうわごとを言ってるので」
 昼間氏はこの四月から東大の研究生になられまして、その所属は「東京大学大学院情報学環境学部」なるところと『マンガ論争勃発2』巻末の著者紹介のところに書かれております。
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『マンガ論争勃発2』奥付より

 へー、情報学環が「情報学環境学部」の略称だったなんて初めて知ったなあ、と思って検索したら引っかかりません。やはり「東京大学大学院情報学環」が正式名称です。「情報学環境学部」なんてのは存在しません。
 ・・・昼間氏は学歴詐称? ニセ学生? 疑惑が深まるばかりです。

 ちなみに壇上には、昼間氏の東大入学を祝して花束が届けられていましたが、送り主は、首ちょんぱで兎角話題になったゲームの製作会社・オーバーフローのメイザーズぬまきち社長でした。

○塩山芳明氏のお話

 閑話休題、まず最初のゲスト・下請けエロマンガ編集者の塩山芳明氏の登場です。氏の最新刊『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』の編集者・奥山さんが、葬式のアナウンスそっくりの調子でナレーションを読み上げて、塩山氏登壇。
 で、メモが不整なので、以下の内容は話された内容のごく一部、とびとびです。

塩山氏
「昔は幾つもエロマンガ下請けの編集プロダクションがあったが、今はほとんどない。編集者も、55歳で現役なのは自分だけ。月刊誌はなくなり、隔月の雑誌をやっている。

 この十年はマンガが没落する十年だった。そんな中で、ティーアイネットは先日創業十周年記念パーティーをやった。今時十周年を祝える会社なんてない。
 ティーアイネットの高橋大編集長様は、週刊少年ジャンプ方式を採っている。連載した漫画家が単行本を出して、売れなかったら即刻切ってもう使わない。ハードボイルドな人。『BUSTER COMIC』のマンガを一部担当させてもらっているが、最初は7、8本やっていたのが今では2、3本に。
 でも十周年パーティーなんてやると駄目になる、潰れる。○周年パーティーやってすぐ潰れたのは多い」

昼間氏
「塩山さんの本(『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』)には、いろいろな人の生きざまが描かれていますが・・・」

塩山氏
「おメェ、『生きざま』って、よくそんな恥語が使えんな」

昼間氏
「・・・えー、その、塩山さんがどうやって娘さんを大学にやったのかとか」

永山氏
「エロマンガバブルの頃は儲かった?」

塩山氏
「儲かった。『体験的在日韓国人損得論』書いてる吉田のバアさんとプロダクションやってたが、毎月『こんなことが続くのかねえ』と言い合っていたのが、十年続いた。
 バブルで、それまで1万だった初版が2万とかになった。それが今では6000とか。印税はこの業界8%だが、6%なんてこともあるのでは。元々久保書店が印税率低かった代わりに単行本を出してくれたが、総久保書店化している。印税が消費税率と同じだとか、最近は改訂前の税率だなんて噂も。
 久保書店はストリッパーが流れ着く場末の小屋みたいなところ」

(メモ欠落)

塩山氏
「田母神さんの娘さんがウチでバイトしてた。最初エロマンガを持ち込んできて、再録本の『キャンディクラブ』に一度載せたが、その後マンガが進歩しないので、バイトの方をやらないかと言った。
 お父さんよりよっぽどしっかりした娘さんだった。
『お父さんと塩山さんは考えが違いますね』なんて言ってた」

※田母神氏の「論文」については、過去に当ブログでも取り上げましたので是非そちらもどうぞ(宣伝)
「アパグループ『謀略に!翻弄された近現代 誇れる国、日本。』瞥見」
「『諸君!』秦郁彦・西尾幹二「『田母神俊夫=真贋論争』を決着する」


永山氏
「最近、都の青少年健全の指定の方はどうか」

塩山氏
「最近はひどい。昔はあまり呼ばれなかったが、最近は規制が公共事業化している。役人が偉そうになった。昔は都の人は、『こんな恥ずかしい仕事やだなあ』という、伏し目がちな感じだった。
 この間都に呼ばれて行ったら、ニシムラというクソ野郎、体育教師の脳味噌筋肉みたいのが出てきた。名刺を見て、『キミ、(註:出版社の)社長じゃないの~』とか抜かす。『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』には間に合わなかったが、もし間に合う時期だったら必ず実名で書いてやった。
 一緒に行った一水社の野郎がペコペコしてた。都の規制はあくまで自主規制なのに、そこまでペコペコすることはない。

 警察は恐い。警察にはペコペコする。ペコペコしないのは末井昭だけだった」

永山氏
「塩山さんは暴力や権力に弱いですからね」

塩山氏
「学生時代デモに行って、殴られるのが恐いから集団の真ん中の方にいたら、一緒にいた女の子に『何隠れてんの! 外に行きなさいよ!』と怒られた。それで左翼やめた。

 都の話に戻ると、石原都政がもう三期目で、石原のような偉そうな規制ぶりが下にまで浸透してしまっている。(註:この辺メモ不整につき言葉が違っているかも)
 ニシムラに『あんた内務省の役人みたいだね、これは自主規制の問題だろ、審議会で決めることだろ』と言ったら、『イエ、審議会は参考にするだけです、
石原慎太郎が決めるんです!』と言った」

永山氏
「語るに落ちましたな」

塩山氏
「空手でもやってたら、こいつ殴りつけてやろうかと思った。
 警視庁は、最近は滅多なことでは呼ばない。今は天下りの利権にもならないのに余計な仕事をしない。80年代の警察はしょっちゅう呼び出していたが、利権もないのによく仕事をしていたと思う。ある意味感心する。

 コンビニは都庁のシマになってる。子供が行くから、と理屈をつけて規制をかけている。コンビニを支配することで出版の支配をしている。そのうちコンビニに都庁の役人が天下りするんだろう。

 聞いた話では、ニシムラという馬鹿は、レディース系雑誌のタイトルの『Secret』が読めなかったとか」

昼間氏
「規制以前に、マンガ自体売れなくなっているのでは」

塩山氏
「その話は松文館の貴志社長に聞いたら。何でも、ネット配信したのを本にしたら全く売れなかったらしい」

 その他、永山氏が「塩山さんは最近文化人ぶってる」と突っ込んだり、塩山氏が『出版奈落の断末魔 エロ漫画の黄金時代』の特大帯のイラストを描いた、いがらしみきお氏との交友を語ったりされ、また会場からの質問にも答えます。

質問
「劇画から美少女マンガへの流れはどうだったのか」

塩山氏
「これはすごかった。劇画が80年代末、いきなり売れなくなった。
 これまで7~8万部から10万部刷ってたのが売れなくなった。だからといって、ロリコンマンガにはツテがないし、勝手が分からないから台割も引けない。
 その頃、桜桃書房が朝日新聞に『編集者・マンガ家募集』の広告を出した。劇画の大手の桜桃でもロリコンマンガのやり方が分からなくて、広告で編集者やマンガ家を集めようとしていた。

 しかし自分は、桜桃のような広告費はなくても、ロリコンマンガを書くような連中は群れたがる、ということを知っていた。千葉の方の・・・(メモ不整)あたりで連中がたむろしているところがあって、一人見つけて後は芋づる。上総志摩とか、中総ももとか。
 ロリコンマンガ家は群れたがる。まったく日本人的な連中。劇画家はもっと孤高。ロリコンマンガ家は逃げる。劇画家は締切守らなくても約束は守る。

 ロリコン漫画誌で一番売れてたのは『ロリポップ』、ではよし、と『ロリタッチ』にした。こういう模倣コピーライトは遠山企画(註:塩山氏が当時いた編プロ)が最初かも」

 その他、いがらしみきお氏の作品についてや、「杉作J太郎はバイトとしては使えない」なんて話が出てました。

永山氏
「印象に残っているマンガ家は」

塩山氏
「最近、鹿とレースクィーンの獣姦漫画描かした、やまだのら・・・」

永山氏(?)
「鹿!?」

塩山氏
「あと阿宮美亜」

永山氏(会場に向かって)
「諷刺というもおこがましい、薄っぺらな国労や日教組の批判を漫画に描いてた人です。ですが塩山さんとは思想が違いますよね」

塩山氏
「右翼にしては芸がある。
 劇画からロリコン漫画に移行する頃は、ああいう中間的な絵の人はよく売れた。阿宮美亜には、麻原彰晃が空中浮遊する漫画があって、よく売れた。でも、日教組にいじめられた右翼の女教師が日の丸に脱糞するコマは、さすがに白くしてしまった」

永山氏
「麻原は刷ったんですか」

塩山氏
「全体に網かけたけどな。
 でも、エロマンガ弾圧の後、劇画は全く売れなくなった」

 塩山氏のお話は大体以上だったと思います。塩山氏、最後に昼間氏に
「おメェ、司会下手だな。おまけに『生きざま』だの『コラボレーション』だの恥語連発しやがって」
 と突っ込んだところに、永山氏が
「昼間はお客の入りが多いとあがるんですよ」
 と、フォローだか追い打ちだかを。

○中田雅喜・金田淳子両氏のお話

 次いで登場したのが、ベテランのマンガ家・中田雅喜氏と、BL評論で有名な金田淳子氏です。永山氏だったか昼間氏だったか、「既に楽屋で、おふたりBL話でものすごく盛り上がってらした」と言ってたかと思いますが、この第2部はお二人がものすごい勢いで喋りまくり、おまけに小生はBLに全く疎いので、メモが更に一層怪しくなっております。中田氏の台詞と金田氏の台詞を混同している恐れも大。いやもうすごいマシンガントークでした。タイフーンとヴィルベルヴィントが撃ちあってるみたいな。

昼間氏
「楽しいお客さんをお迎えしました。マンガ家の中田さんとBL研究者の金田さん。中田さんはロリコン漫画の元祖の『漫画ブリッコ』に描かれ、『ペンギンクラブ』にも創刊号から書かれていました。女性のエッセイコミックの先駆け、というかエッセイコミック自体の先駆け」
と、創刊号の『ペンギンクラブ』なんかを持参して会場に示す昼間氏。

永山氏
「今日はBLというものがどんなに危険で、エロマンガと一緒にしっかり弾圧して貰いましょう、という話を(笑)」

昼間氏
「BLについては、去年堺市の図書館で騒ぎがありました」

金田氏
「図書館から撤去したというBL本のリストが変だった。スニーカー文庫が入っていて変という声もあったが、スニーカーにはルビー文庫に近いものもあるのでこれは必ずしも変ではない。しかし逆に、古典的な大物が入っていない、栗本薫先生の『翼あるもの』とか。中学の頃、私はこれで60回ぐらい抜いたというのに」

昼間氏(?)
「撤去の基準は抜けるかどうかなのか・・・?」

中田氏
「『伊賀の影丸』の拷問シーンがエロい。ああいうので目覚めた。手塚もエロい。意識してエロをやっているのか分からないが、傍若無人」

金田氏
「『七色いんこ』なんて、あれこそ図書館に置いていいのか」

中田氏
「歳取ると、オナニーするとエクスタシーで足がつってしまいイケなくなる」

金田氏
「自分は中学の頃からつってた。運動不足で。でも足がつるのが恐くてオナニーできるか

金子氏(?)
「図書館問題でBL撤去派が、『BLなんて低俗なものが、私たちの敬愛する司馬遼太郎先生の隣にあるのはけしからん』と言っていて、もうおかしいといったら。新撰組が腐女子に人気なのは、司馬遼太郎の『燃えよ剣』のせいなのに(笑)。戦国ものでも、島左近と石田三成とか、『関ヶ原』の影響」

中田氏(?)
「司馬自身は“そういう”人だったのか」

金子氏(?)
「元軍人とかなら、海軍とかでは」

中田氏(?)
「海軍ならね。軍艦だし、海の上で女いないし」

 暴走とどまるところを知らぬお二人のトークに呆気にとられていた会場からやっと手が上がり、「司馬は陸軍ですよ。陸軍の戦車兵」
 それを聞いた中田氏と金子氏、「戦車か」「戦車もいいよね」「戦車でカーセックス」「で、イクと同時に大砲発射して」
 更に金子氏が鉄道擬人化BL同人誌を持ち出して力説されていたかと思いますが、小生も呆気にとられていたのかこの辺メモが欠けてます。もっとも擬人化の必要すら感じない鉄道趣味者の方が変質者なのかも知れません。個人的な話で恐縮ですが、小生はハダカの女の子の写真集や二次元美少女の画集など見ていてもすぐに飽きてしまいますが、電車や軍艦の写真集や図面集は何年経っても飽きることがなく、十数年来眺めて楽しんでいる蔵書も少なくありません。
 気を取り直して次の話題。

中田氏
「自分の若い頃の漫画には、BLというか男と女を変化するメタモルフォーズなのが多かった。
 自分は1954年生まれだが、その頃は女性がもっと抑圧されていた。だから女性が男性のヌイグルミの中に入って自由に恋愛する、というスタイルだったのではないか。そんなに即物的ではなく、シチュエーションにこだわった。即物的なものにドキドキするのは中高生頃。
 自分も即物的な描写(潮吹きとか)はほかの人が一生懸命描いていると、自分は別にいい、特異なところで描こうと思う」

 その後、フィルムセンターで現在やっている怪獣・SF映画特集の話に。これまで低級なものとして、東京国立近代美術館の一部であるフィルムセンターから無視されていたSFやC級時代劇も、やっと扱われるようになった。それは世代交代により、SFなどに詳しい学芸員が着任したから。

金子氏
「自分も大学でBLを研究する時、教授を説得するのが大変。エネルギーの8割は説得、2割で研究」

中田氏
「マンガ家と編集者みたい」

 ここでマンガ家と編集者の話から、中田氏のところに大塚英志がやってきて、ロリコンマンガを描かせた時の話に。何故ロリコンマンガかといえば、

 毛を描いてはいけない
 →毛を描かないで裸を描いたらなんか変
 →ではもともと生えてない幼女にすれば


 という理由だったそうです。ヘアヌード撮ると捕まるから少女の写真集を作ったという、そっちの世界と同じ話ですね。

 中田・金子両氏のトークについてのメモはここまでです。どうもこの辺の話の面白さというか、猛烈な勢いをうまく伝えることができず、申し訳ない限りです。
 で、さすがに一つの記事としては長いし、時間的にもちょうど中間点まで来ましたので、ここで一端切ります。続きはしばしお待ちを。

追記:本記事の続篇はこちら→「永山薫・昼間たかし『マンガ論争勃発2』発売記念イベント概略(2)」
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by bokukoui | 2009-05-20 23:58 | 漫画

折々の小ネタ 及びアサミ・マート『木造迷宮』2巻略感 

 なんかこういろいろと所用に追いまくられているのですが、気がつけばもう3月も下旬です。

 先日大学生協の書籍部に足を運んだところ、東大出身のオタク系評論家(でいいのかな?)である有村悠氏のブログで、氏の近業として紹介されていた『現代視覚文化研究3』(三才ムック)が雑誌コーナーに並んでいるのを見つけ、思わず手に取りました。しかし間抜けなことに、有村氏がどこを執筆されたのか失念しておりましたので、ただあてもなくぱらぱらとページを繰っておりましたところ、ちゆ12歳「教科書には載らないエロライトノベル史」なる記事が目に付き、思わず立ち読みしてしまいました。相当詳細で興味深い記事でしたが、ただ途中フランス書院のナポレオン文庫の紹介箇所中、「ナポレオン文庫はロリコンの人には不評だった」的なことが指摘され、その証拠として白夜書房が出していたロリコン雑誌『Alice Club』(正確にはその別冊)の記事をコピーして貼り付けていたところはちょっとどうかと思いまして、といいますのも、小生も以前某研究室所蔵『Alice Club』をネタにしてブログの記事「『ロリコン』の人は何歳が好きなのか、『ショタ』も好きなのか」を書いたことがありましたが、その調査の際目に付いた同誌の記事として、斉田石也先生が連載していた小説紹介コーナー中、ナポレオン文庫から出ていた雑破業『トキメキ☆レッスン』(註:辰巳出版版とは微妙に表題が異なる)が大変好意的に評されていた(1995年9月号)ということがありまして、まあこれも一点だけですけど、ちゆ12歳氏だって論拠は一点しか出してないんだから、逆の結論だって出せるぞ(こっちの方が増刊でなく本誌であるだけ資料としての価値は上にならないかな?)とか思ったのですが、皆様如何お過ごしでしょうか。


 以上の枕には何の関係もなく、今月の当ブログのアクセス解析を見たところ、「木造迷宮」「アサミ・マート」という検索ワードが上位に来ておりまして(「三峯徹」には及ばない、というところが何ですが)、以前1巻の感想を書いたためのようですが、そういえばアサミ・マート『木造迷宮』2巻が出ていたなというわけで、仕事が一つ終わった区切りに手に入れました。雑誌自体買っていたので(ここ数ヶ月、多忙と「なずなのねいろ」休載とで感想書いてませんが・・・)、どうしようかと思ったのですが、書き下ろしあとがき漫画があるようなので結局求めました。ひとむかし前を舞台に、三十代の売れない小説家のダンナさんと、一つ屋根の下で暮らす女中のヤイさんとの、ほのぼのした日常を描いた作品です。
 で、個別の感想は過去の記事でも触れていたりしますが、この巻では裏表紙にダンナさんの従姉妹のサエコさん、ダンナさんの小説の愛読者である文学少女・セッコちゃんが大きく描かれていて、肝心のダンナさんは霞んでしまっています(笑)。女性のサブキャラクターの重みが増えたわけですが、「萌え」漫画にありがちなハーレム的ドタバタ展開にならず、絵柄と相俟ってしっとりとした雰囲気が保たれているのは安心です。

 ところで、これだけ「木造迷宮」「アサミ・マート」で検索する人が増えたようなのは、本作が第12回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選ばれたことも一つの理由なのかも知れません。帯にも書いてあったし。正直、小生はこの賞がどのような性質のものでどの程度権威があるのかよく分かりませんが、一緒に推薦された作品審査員の顔ぶれからすると、相当のもののようです。『犬夜叉』や『美味しんぼ』や『のだめ』や『もやしもん』などと並んでいるとは。
 で、この賞では以前、メイド漫画の極北である森薫『エマ』を受賞させており、審査員のどなたかの(文化庁の?)趣味ではないかとも一瞬思わされますが、そして『木造迷宮』2巻の帯にはでかでかと

メイド萌えの新ジャンル 女中さん萌え♪

と謳っていたりしますが、しかしやや考えるに、フリルやレースに象徴されるごてごて感たっぷりなヴィクトリア朝的雰囲気を堪能することに重きを置いた『エマ』と、割烹着のけなげな女中さんと木造の一軒家でちゃぶ台を囲む『木造迷宮』とでは、かなり重点が違っているよなあ、と考え直しました。『エマ』の中で、ウィリアムとエマの恋愛自体は実は結構ぞんざいな扱いだったんじゃないかという気は今でもしていますが、『木造迷宮』の力点はやはりヤイさんとダンナさんとの関係にあるようなので。
 むしろ『エマ』と『木造迷宮』の共通点は、「家事に極めて堪能な女性が主人公」という所にあって、そういう女性像に憧れる、という読者の読みが共通していることはありそうです。男性の場合はそんな女性に尽くして欲しい、女性の場合はそんな優れた技能者になりたい、というところで。女性の場合はもしかすると、更に「そして"王子さま"に尽くしたい」という感情が続く場合もありそうです。そこまでジェンダー規範を内面化しなくたっていいのに、とつい思ってしまうのは、文学部で教育を受けた(うえちづ先生にはちゃんと単位貰いました)故の癖なのか、はたまた「日本を破壊するジェンダーフリーの陰謀」とやらに洗脳されているのか。

 もっとも、「割烹着」「ご奉仕」と来ると、日本近代史専攻の小生はやはり国防婦人会を連想せずにはおられません。タスキをしたヤイさんが日の丸の小旗を振っている姿が心眼で見えてしまいます。もう今では、そう連想する人も少ないのかな? でも、今でも戦時中を舞台にしたドラマや映画を作ると、出征するシーンでは必ずといっていいほど、国防婦人会が日の丸の小旗を打ち振る絵が出てくるように思われます。
 それだけ強烈にイメージとして刷り込まれていると思うのですが、審査員の先生方は連想しなかったのかな。まあ最年長のちばてつや先生でも、物心ついた頃には、国防婦人会は大日本婦人会に統合されていたでしょうけど(もっとも、国婦と大日本婦人会や愛国婦人会との区別は、当時の人の間でも結構曖昧だったようです)。

 例によって話がとっちらかっておりますが、言い訳すればそれだけ「女中さん」のイメージがまだステロタイプとしても確立していない(「メイドさん」と違って)ということでもあるのではないかと思ったりもしますが、そこでふと思い出したのがこの本です。

清水美知子
 女中という存在を通じて見た、日本近代の生活史についての学術書です。帯の文句を引用すると、「〈下婢〉〈下女〉から〈女中〉、そして〈お手伝いさん〉へ ― 〈女中〉をめぐる言説の分析を通してイメージの変遷とその背景を考察する。〈女中〉というプリズムから近・現代日本の家庭生活、とくに主婦を中心とした家庭文化を浮き彫りにする。」というわけで、やはり「女中萌え」などと語る前に本書は読まねばなりますまい。
 ・・・と偉そうなことを書いてからハタとあることに気がついて愕然となったのですが、小生自身5年近く前に本書を購入して以来、積んだままで読んでいないのでした。著者の方が女中についての論文を発表されているということは前から知っていましたので、一冊にまとまったと聞いて早速買ったはずなのですが、何故だろう?
 当時やっていたこととあんまり関係がないから後回しにしたのかな? 家庭生活というのは、それも女中を雇える中産階級のそれは、今の研究にはまんざら縁がない題材でもないので、近日中にちゃんと読まないと。

 ところで、以前『木造迷宮』1巻の感想を書いた時、目次のページに載っている、ダンナさんとヤイさんが暮らす家の間取り図が、どう考えてもあり得ない構造になっている、ということを指摘しましたが、本巻でも全く同じ間取り図が目次のページに載っておりました。この点が全く改められていないのははなはだ遺憾であり、『COMICリュウ』編集部に投書してやろうかと思いましたが、単に抗議するだけでは芸がないので、これならありそうという間取り図を自分で引いてみようと以前から考えていました。ですが、時間がないので、そんな暢気な企画は残念ながら当分先送りです(←こういう企画は、まあ実現しませんね・苦笑)。
 で、自分で図面を引くのは棚上げにしても、『木造迷宮』の二人が暮らす木造家屋は、おそらく作品の雰囲気からして戦前(昭和初期)から戦後間もなくの間に建てられたのではないかと思われます。ので、ちょうどその時代の、かなり売れたらしい一般向けの家の建て方マニュアル本というのを先年古本屋で入手しましたので、一つそれをご紹介したいのですが、もういい加減話がとっちらかってるし、記事自体が「略感」の長さでなくなっているので、ここらで切って次回に回します。

※追記:家の建て方マニュアル本(戦前版)の紹介記事はこちらへどうぞ

※更に追記:『木造迷宮』4巻と別館の感想を書きました→こちら
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by bokukoui | 2009-03-20 23:30 | 漫画