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「エロマンガ・スタディーズVol.1」@ロフトプラスワン レポ後半

 前半の続きです。

 第二部は20分ほどして再開。第二部は各人お勧めのマンガなどのネタを持ち込んでトーク。

・第二部
しばた氏「漠然と最近(2000~)の話を。04~05は面白かった。06は引き抜きが多くて再編成中という感じ。」

●長編化について
しばた氏「エロマンガの長編化がかなりあった。多かったのが『メガストア』、一番売れている雑誌だった。そのため読み応えのある作品が多かった。例としては師走の翁『シャイニング娘。』、みた森たつや『小池田さんと遊ぼう!』(恋愛と「萌え」とエロとがすべてある)、東雲太郎『Swing Out Sisters』(しばた氏の2005年ベスト)」
永山氏「長編は諸刃の剣。固定客がつかめるけれど一見さんお断りになりかねない。リスクはどうか」
しばた氏「エロマンガの長編は一話完結型が発展したものが多い。読者もそれを求めている。ここに挙げたような作品は、話が続くことでラブラブ度が上がるとエロ度も比例して上がるのがよかった」
永山氏「長編はキャラクターの奥行きが出る」
しばた氏「印象的だったのはゼロの者『わすれな』」
永山氏「短編であっても余白を感じさせてくれる、上手い人だったので長編もうまくいった」
しばた氏「マイノリティ『お嬢様と僕』、キャラクターが立ったので長編になった。絵はビザールな衣裳などくどいが話はラブラブで『萌え』系。ラブラブ度を高めつつエロ度を高める」

永山氏「やっぱみんな恋愛したいのか」
しばた氏「甘ったるい恋愛ものが増えている」
永山氏「でもセックスはがっつんがっつんにやってるでしょ」
伊藤氏(?)「キャラクターは善人か」
しばた氏「出てくるキャラクターは善人が多い」
永山氏「恋愛するのは善人なのか」
伊藤氏「そうまとめると別の所へ行ってしまう(笑)」

しばた氏「昔は雑誌の中で、抜き担当・『萌え』担当・ファッション系・ギャグ担当・ストーリー担当など役割分担があった。それを一人の作家がやるようになった」
伊藤氏「つまり16ページで入らなくなった(から長編化した)」
しばた氏「こうなったのはエロゲーの影響では。エロゲーはマルチエンディングでいろんな要素を一本で満たそうとしている。価格が高いのでユーザーもそれを求める」
永山氏「価格が高いからというのは面白い。そういうのに慣れた人がエロマンガを読むと、物足りなく感じてしまうのでは。単行本一冊の中で全部満たしたい」
しばた氏「雑誌も、『メガストア』なんかは多方面に展開している」

●雑誌の表紙について
 ネタとして、永山・しばた両氏が奇しくも共にスキャンして持ち込んだのが、『LO』2007年3月号の表紙。

 これは既にネット上でも大いに話題になっていた由。
しばた氏「この表紙のラーメンも『全部のせ』みたいですね(笑)」

永山氏「このラーメンの表紙は、エロマンガに見えないがエロマンガでしかありえない表紙。どの雑誌でも表紙には情報を沢山盛り込もうとするが、『LO』は表紙のデザインを巧みにして、表紙買いを狙っているのでは。一昔前なら村田蓮爾の表紙のために雑誌を買う人がいただろう」
しばた氏「今は『TENMA』をうるし原智志のために買う人もいるみたいで。雑誌の表紙は捨てているが、うるし原の表紙が欲しいと言われたことがあった(笑)」

●巨乳(人外)vs貧乳(ロリ)
しばた氏「2006年は再編成中のため、ベストを選ぶのが難しかった。
最近のエロマンガは巨乳と貧乳しかない。でかいのはとことんでかく、小さいのはとことん小さくなっている。巨乳にはスタンダードな巨乳とそうでないのと(「巨乳に「スタンダード」とはなんぞやという声)、スタンダードなのは『人間に見える』もの。人間に見えないというのは、HG茶川のようなの。上乃龍也の乳はつやつや、テラテラ。天太郎作品も同様。CG技術の賜物か。草津てるにょも同様。
人間に見えない巨乳のHG茶川も、最近『萌え』に目覚めてきた。茶川作品の女の子は服を着てるとマトモだが・・・」
永山氏「まともか?」
しばた氏「・・・が、脱げば脱ぐほど乳がでかくなる」
伊藤氏「いいですね」
永山氏「いいか? 胸にでかいチンコがついてるみたいな」
伊藤氏「それは褒め言葉でしょう」

しばた氏「巨乳といえばRaTe『日本巨乳党』がすごい」
『日本巨乳党』の「巨乳平面(?)説」の説明。乳を近似した球に見立てた場合、貧乳の方が球の直径が大きいから実は巨乳なのだ、という驚くべき説。会場爆笑。
伊藤氏「これもギャグですか」
しばた氏「まあ、ギャグでしょう」
永山氏「いや、RaTeだからね」

しばた氏「次は貧乳を。貧乳といえばロリですね。
ゴージャス宝田は台詞が熱い。寡作なのが玉にキズ。寡作といえばデビュー13年目にして初単行本という大山田満月の本も発行が遅れている模様。
ロリでは関谷あさみがよい。スタイリッシュで綺麗な絵柄。
また、鬼束直はすっきりした画風。
いい人もいっぱい出ているが、時節的に厳しい世界」
永山氏「いつも厳しい分野だと思う。寡作ならいいけど、ロリ系の漫画家を見なくなると、何かあったんじゃないかと思ってしまう。・・・最近、月角先生見ませんね?」
しばた氏「大山田満月が13年単行本出なかったので、『ホットミルク』が捨てられなかった」
伊藤氏「もともとエロマンガって捨てにくい」
永山氏「俺はボンボン捨てちゃう」
伊藤氏「『ボンボン』捨てるのかと思った(笑)」

●A
しばた氏「貧乳の次はおしりの話。最近はおしり(での行為)を入れるのが標準になってしまった」
伊藤氏「おしりってそっちの方の話か」
しばた氏「最近のでは紺野あずれ『思春期クレイジーズ』。しかしなぜおしりが普通になったのか」
永山氏「バリエーションの一つとして」
しばた氏「同時に何本も挿入するのが増えた。快感をより強く表すために、1本より2本、2本より3本と増えていったのか。しかし『思春期クレイジーズ』はおしり一本にこだわった作品」

●永山氏のおすすめ
しばた氏「永山さんのおすすめを伺いたい」
永山氏「しばたさんとかなりかぶってる。最近『抜き』とは別に大笑いしたのはぐら乳頭『エスケープ』。ふたなりしかいない学校というのは上連雀三平と似ているが、ぐら乳頭は頭のネジが外れてる。ここへ転入してくるのが男の子で、ふたなりの教師が彼を襲って孕ませると叫ぶ。チンチンも乳もでかい。このバカさは芸風」

●三和出版からのおみやげと変格マンガについて
 この時点で21時を回り、永山氏「あと1時間弱なので出し惜しみしないで・・・」
永山氏「仕事で行った三和出版で、今回のイベントのプレゼント用の本を色々と貰ってきた。
まずは「キモーイ」(参考1参考2)で2ちゃんによく引用されて有名な、にったじゅん『奪!童貞』。にったじゅん作品は人気があって、ロングセラーになっている。登場する女の子が皆気が強く、ハードボイルドな意味で非情。これが人気があるのは一種の童貞ドリームではないか。どんな形でもできればいい、というマゾな発想。それがおおっぴらになってきている。いいこと
にったじゅんの新作は『県立性指導センター』、はじめてにったじゅん作品の表題から『童貞』が消えた。にったじゅん=童貞、というイメージが定着したから。

三和で変態といえば栗田勇午『ノードッグ・ノーライフ』、獣との愛、いや獣は分からないけど、女の子が獣を愛する姿を描く。絵が浦沢直樹に似てる」
伊藤氏「似てるか?」
永山氏「『YAWARA!』の頃の絵に。栗田勇午という名前もスピリッツ臭が」
伊藤氏「あー。『YAWARA!』というよりキートンの娘だな」
永山氏「獣姦ものは犬と女性とどっちに読者は自分を投影しているのか」
しばた氏「やっぱ女性じゃないですか」
伊藤氏「獣に表情をつけるのが難しい」
しばた氏「トドとかオットセイとかもいいと思うんですけどね。ジュゴンとかも」
伊藤氏「ジュゴンって語感がエロいよね」
 他にプレゼントとして、古いアンソロ(詳細失念。みなすきぽぷり(現椎木冊也)が描いていて、編集伊藤剛氏)やBL作品も。
永山氏「三和出版はこういった変なものに強い。消えて欲しくない」

しばた氏「三和の話になったので、変格な人の話を。『萌え』と抜きの二元化で、町野変丸駕籠真太郎のような作家の活躍の場が少ない。しかし最近は、変なことをするにも可愛い絵でなければならない。その代表例が掘骨砕三」
永山氏「この『ひみつの犬神コココちゃん』のクライマックス、団子虫に変身した先生が30台にして初めてセックスの喜びを知るシーンなど、一般化しうる感動をちゃんと含んでいる。マンガ読みで堀骨砕三を読まないのはモグリ」
しばた氏「最近のではまた、奴隷ジャッキーの作品が凄い。変なことのできる雑誌が減ったといったが、意外と変なのが多いのが『エンジェルクラブ』。奴隷ジャッキー、HG茶川、中華なると山本よし文など。中華なるとの作品は男キャラのおやじ顔が好き
伊藤氏「これって売れてんの?」
しばた氏「さあ・・・」
しばた氏「変格エロマンガで注目なのがうさくん。『しあわせぱんつ』の初回限定版には附録で女児のパンツがついてきた。今ここに持ってきたので・・・」
 しばた氏、「ぱんつBOX」をオープンし、パンツを掲げて会場に示す。アイロンプリントの一式も同梱されている。
しばた氏「名残惜しいのですが、これを来場者の方にプレゼントと。私は初回限定版と通常版と両方持っていて、本はほとんど変らないので、もちろんパンツだけでなく本もおつけします」
 しばた氏、荷物を探してややあって、「すみません、本忘れました。プレゼントはパンツだけで」(会場笑)
しばた氏「この人のマンガは私は大好きです。今時カラーもフルアナログで作画していて、この職人技的な線が・・・」

●伊藤剛氏、手塚のエロを語る
 二つの流れを事前に考えてきていて、一つは自分はここではショタ担当かと思ったが、肝心の一押しの本を忘れてきてしまったこともあり、今までの濃い話に対抗して濃い方を。
 4月から、手塚治虫の前週に入っている作品をオンデマンドでまとめて自分だけのアンソロジーを作れるという、『手塚治虫Oマガジン』というサービスが始まる。
 手塚がエロいということは有名であるが、『ダ・ヴィンチ』誌の企画で自分もこれを作ることになって、そのために手塚を読み直すと、今まで出てきたような話を手塚は70~80年代にやっている。エロに関しては「テヅカ・イズ・アライヴ」

 ちゃんと読み直さないとはっきりとは言えないが、手塚は60年代から急速にエロくなって行き、ヤバいエロさは60年代末~70年代が山だったのではないか。例えば「グロテスクへの招待」では、少女が自分の好きなものに何でも同化して蜘蛛女や蜥蜴女になってしまう話で、「シャミ-1000」という作品ではネコ型宇宙人が登場し、ツンデレ的要素もある。
 「低俗天使」という作品はヴェトナム戦争を背景としているが、ロリっ子が出てきて、「自分も働く」といってヌードショーに出演しそうになる話がある。それを主人公が止めさせた時のヌードショー屋の言い分「その子が自分で20歳だと言ったんだ」は、昨今のエロゲーの、どうしてもそうは見えないけれど「登場人物は皆18歳以上です」を髣髴とさせる(笑)。
 この作品には「おにいちゃん」の台詞もあり、また女の子が服を着ているのか着ていないのかよく分からない描写が面白い。簡潔な線でキャラクターの存在を出す手塚らしさだが、のちに手塚は劇画の影響でそれを失っていく。
 
 この企画ではページ数の都合上入れられなかった作品に、「こじき姫ルンペネラ」という今では許されなさそうなタイトルの作品がある(『ヤングマガジン』連載、1980)。押しかけ女房的コメディで、これは当時登場したばかりであった(『うる星やつら』は1978~)。それを取り入れた手塚。
 本作は最後の方になると色々な映画のパロディを入れまくって、グダグダのメタフィクションになり、「こんなマンガ読んでると馬鹿になるぞ」と登場人物が読者に言って終わりになる。

 社会問題や環境問題のようなテーマがあった70年代までの方が、手塚は脇からエロを差し込んでいた。エロを扱いやすくなったはずの80年代になってからの方が、正面から扱うのには照れがあったのか、手塚のエロはむしろ退潮した。

●告知
 ここまでで時刻は22時50分頃となり、締めとして告知が2点。
 まず「同人誌生活文化総合研究所」の三崎尚人氏が登場、5月19日に豊島公会堂で同人誌と表現を考えるシンポジウムを行う由。警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」(これについては当ブログでも過去に触れました)の報告書に同人誌や即売会も挙げられており、児ポ法の改定も今年。さらに警察のこの問題の立役者だった竹花豊氏(「ロフトでイベントやるといつも山本夜羽音に悪口言われてる人)も警察を辞めて参院選出馬という。この状況にどう対応するか、というもの。
 もう一点はロフトプラスワンで7月11日に行われる「メガネ茶屋」。「めがねっこ萌え」向けだったメガネっ娘居酒屋の向こうを張って、「メガネ男子萌え」の腐女子向けイベントとの由。メガネの男性は桟敷に上げられて「見られる」側になるのだとか。
しばた氏「7月11日は私の誕生日です」

 最後にプレゼントのじゃんけん大会をやって、23時10分頃イベント終了となりました。

 大変面白いイベントで、知ってる名前も知らない名前もいっぱい出てきて楽しかったですね。分かればそれに越したことはありませんが、濃さがある閾値を越えると、分からなくてもそれはそれで面白くなってきます。それだけの味のあるイベントでした。「エロマンガ・スタディーズVol.1」ということは、Vol.2もあるのでしょうか?
 このイベントでの議論に関連して小生が思うところもありますが、それは次の機会にして、今日の記事(前後編になってしまいましたが)はなるべく会場のトーク内容を伝えることに狙いを置きました。よくまとまって評論もついた記事は他サイトさんでどうぞ(←最初に書いておけよ)。小生はなにさまエロマンガに関して素養が薄いため、下手に要約するとツボを外してしまいそうだったので、このような形式とした次第です。それでも漏れは多いと思いますが。

 ひとつだけ個人的な発見を書いておきますと、ひょんなことからこの会場に来ていた人に、複数名の東大生がいたということが判明しました。聞けば美術史やSF研やTMRなど、なるほどその筋の方々ではありましたが、どうも東京で妖しいオタクの来そうなイベントをすれば、先日のホワイトデー粉砕デモといい、必ず何人かは東大関係者が来るようで。やはりオタクの多い大学なんでしょうね。

 余談。
 イベントで出てきたマンガ家の作品の大部分は小生は読んだことがありませんでしたが、その中で一番沢山読んでいたのは駕籠真太郎先生でした。次点は多分もりしげ。

※エキサイト当局により当初の画像満載版が公開停止処分となったので、画像を削除した版となっております。その点ご諒承下さい。(2007.3.39.02:08再投稿)
※この記事の訂正に関する経緯を、3月28日付記事の末節に記してあります。
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by bokukoui | 2007-03-26 23:59 | 漫画

「エロマンガ・スタディーズVol.1」@ロフトプラスワン レポ前半

 昨日見に行ったものの一つが、表題にあるとおり

 永山薫プロデュース「エロマンガ・スタディーズVol.1」

 でした。今日はそのイベントのレポートを。もう一つ見に行ったものについてはまた後日。
 このイベントはどんなものか、「プロデュース」した『エロマンガ・スタディーズ』の著者・永山薫氏のブログから引用すると、
『エロマンガ・スタディーズ』出版記念イベントでは時間的に詰めきれなかった「エロ漫画の現在」を新ネタてんこ盛りでガチに語り倒す濃厚3時間。今、エロ漫画はどうなっておるのか? ナニが面白いのか? どこがスゴイのか? 何から読み始めればいいのか?
出演:しばたたかひろ(OHP)
   伊藤剛(『テヅカ・イズ・デッド』著者)
   永山薫、ほか
 というわけで、1月31日に行われたイベント(このイベントのレポートについては、こちらのブログがリンクを集めてます)に続いて、エロマンガの現状を中心に語るというイベントでした(ということだと思います)。前回のイベントには所用で行けなかったのですが、今回は幸い行くことができました。
 ちなみにこれが小生にとって初のロフトプラスワン経験でした。

 初めてでしたが、新宿コマ劇場という巨大なランドマークがあるので、ロフトプラスワンはすぐ見つかりました。歌舞伎町の一角にあるわけですが、ちょっと周囲をうろうろしてみたら、「コスプレ(メイド)」喫茶が2軒見つかりました。アニメ絵の看板のキャバクラも結構あるし。
 18時45分ごろ会場入りしましたが、既に30人くらい先客がおり、最終的には80人くらいはいたのではないかと思います。立見はほとんどいませんでしたが、座席はほぼ埋まっているという状況。男女比は9割方男か。

 予定の開始時刻よりやや早く、19時15分頃から始まりました。
 以下にその内容を、会場で取ったメモから書き連ねて行きたいと思いますが、勿論全て筆記できたわけではありませんし、各論者の発言はメモから書き起こしたもので発言そのものではありません。「何から読み始めればいいのか?」の手がかりになるように、なるべく作品名や著者名は拾っておこうと思ったのですが、何分小生自身がエロマンガに関して大した素養があるわけでもなく、漏れや誤りは一杯あると思います。その旨ご諒承下さい。あと一部敬称略。
 マンガ家の名前は、原則として初出時は太字で示してあります。単行本の表紙画像を多く取り込んでいますが、これは個人的メモと同時に、当日スクリーンに画像が映し出されていた会場の雰囲気を少しでも再現したいという意図からです。多分。
※これが原因なのか、公開停止になってしまいましたので、画像を削除して再度アップしております。
※2007.4.30.追記:画像を元通り(正確には一点追加)に加えた完全版を、MaIDERiA出版局サイトに再度掲載しました。画像と書籍情報へのリンクつき完全版はこちら

・第一部
 壇上に永山氏・しばた氏・伊藤氏登場。

永山氏「今日のイベントは前回のイベントで喋れなかったしばた氏がメイン。もっとも事前にネタを仕込んだ後しばた氏に聞いたら、しばた氏とネタがほとんどかぶっていた」
伊藤氏「『漫鬼』ことしばた氏を立てたい」
というわけで第一部は基本的にしばた氏による解説が中心。

●まず、前回のイベントで触れられなかった最近の歴史(ここ四半世紀)について

 しばた氏がエクセルにて作成した表がスクリーンに。伊藤氏「パワポじゃないんだ」しばた氏「パワポ使えないんです」
1982年 『漫画ブリッコ』創刊
1986年 『ペンギンクラブ』創刊
1990年代初頭 有害コミック問題
1995年ごろ エロ漫画バブル到来
1999年ごろ 無修正化の波
2002年 松文館事件
2004年7月 コンビニ売りエロ雑誌に封印シール
 無修正化の波とは、『夢雅』など桜桃書房系が引っ張った。その関係者はのち現在のティーアイネットに。これによって作風も変る。クライマックスシーンだけ抜き出したようなもの、過激な表現をするため線を増やした結果、劇画っぽいものが出てきた。

●以上の歴史を踏まえて、しばた氏による昨年の総括

 1.業界再編で勝ち組と負け組が明確に。
 2.一般誌による作家引き抜きが激増。
 3.その穴を埋める新人作家の登場。


●1.について
 とらのあなのエロ漫画売上ベスト50を見ると、コアマガジンが圧倒的(40%)。とらではコアに初回特典をつけたりしてることを考えても多い。2位は茜新社、ワニマガジンも比較的よい。2ちゃんでの評価はまた別で、ティーアイネットも多い(ただし母数が少ないデータ)。
 永山氏、2ちゃんのデータを見て「お、上連雀先生がベスト10にいる」(会場笑)。また「コアマガジンは元気があり、ワニも雑誌を増やしていてやはり元気がある」と指摘。

 一方、老舗が苦戦しており、司書房の『ドルフィン』が休刊。しばた氏「『ドルフィン』好きだった。寂しい」
 また三和出版で、一旦雑誌からアンソロジー形態になったものの奇蹟の復活を果たした『フラミンゴR』が結局休刊。東京三世社も。日本出版社『レモンクラブ』も。
永山氏「塩山(芳明)さんが仕事減って大変。でもちくまの文庫本(注:『出版業界最底辺日記エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』)は『エロスタ』の2倍は売れてる」
 他にはメディアックス『コミックポット』や、「新進気鋭」の幻冬舎コミックスの隔月誌(誌名失念)も14号出して休刊。

 リニューアルする雑誌も。昨年の大ニュースとしては『ペンギンクラブ』のリニューアル、一つの時代が終わった。『ペンギンクラブ』的なものは『コミックシグマ』(茜新社)へ。
 また『コミックジャンボ』もリニューアルし、編集長が変って(元『ドルフィン』)、巻頭カラーの新連載がベテランのわたなべわたる
しばた氏「俺たちのふるさとはここにしかない、という感じです」永山氏「タイムマシンだな」伊藤氏「一巡してこれもあり、か?」
 伊藤氏に拠れば『コミックジャンボ』の読者平均年齢は41歳(一昨年の時点で)の由。年齢構成が偏っているがこれはエロ以外の漫画雑誌、さらには雑誌全体の問題とのこと。
しばた氏「『ジャンボ』はなつかしい、もう抜く云々の問題ではない、昔の友達に会ったみたいな」
伊藤氏「発言が枯れてるやん」

●2.について
 引き抜きの最たるものが秋田書店。『ヤングチャンピオン烈』はコンビニ売りエロ雑誌のノリがあり、執筆陣に非エロ出身の人がほとんどいない。もりしげCuvieなど(スクリーンに同誌の目次ページが示されるが、作家が多すぎて書ききれず)。伊藤氏「2000年ごろの『零式』みたい」
 『メガストア』で描いていたけものの★は、単行本が一冊もないのに引き抜かれた(「女の子の表情のバリエーションが多くて良い」とのこと)。堀骨砕三も描いた。
伊藤氏「秋田か外注に相当(エロマンガを)好きな人がいるのではないか」

 メジャー系でエロ出身の作家を使うのは、オタク系・萌え系が中心。かつては『ヤングアニマル』くらいが限界だったが、例えば講談社の『少年シリウス』にはひぢりれいが別ペンネームが描いている。メディアファクトリー『コミックアライブ』に國津武士
永山氏「漫画の力がしっかりしている人たちなので、見る目ある編集なら何にでも使えると分かる。萌えだけの人とそこが違う」

 以下、この論点を巡って論者3人が議論。
永山氏「これまでの引き抜きは、エロマンガ界で名を売って頂点に立った人が、言葉は悪いが『上がり』でなることが多かった」
しばた氏「昔の引き抜きの場合、引き抜かれた青年誌での役割はエロ担当だった。最近はエロなしでもOKになっている。メジャーの引き抜きの代表が東雲太郎。エロ系を生かして、しかも恋愛ものとしても面白い」
永山氏「東雲太郎は乳もでかいし男の子も可愛い。もう『ふたりエッチ』の時代じゃない
口が滑った永山氏にしばた氏・伊藤氏が反論。永山氏「聞かなかったことに」

伊藤氏「直接的な性愛描写のあることの意味が薄れているのではないか」
しばた氏「『萌え』がプラスされたので、エロへのこだわりが薄れたのではないか。どっちかがあればいい。『萌え』ブームが、エロ作家を一般誌が取り込むことを可能にしたのでは」
伊藤氏「『萌え』的なものを自分の読書体験で持っている人が、編集側でも地位を得てきたのではないか」
永山氏「潜在的に大きかった『萌え』の受容が公なものになった」
しばた氏「メジャー誌が『萌え』を取り込もうとした時、自分たちで作家を育てられずにエロから引っこ抜いた。エロ系はもっと自慢していいのでは、メジャーで育てられなかったものを生んだと」
伊藤氏「実は外注で同じ人が作ってる、とか」

伊藤氏「消費者の消費行動が、エロについて重きを置かないと、エロ誌の立場は苦しい」
しばた氏「抜きや『萌え』に特化して、幅が狭くなってしまう傾向はある」
伊藤氏「女子中高生向けでハッピーエンドになるような、ティーンズラブものの読者に男がいる。無修正化で進んだ強烈なエロについていけない人もいるのではないか。郊外の書店(レンタルビデオを併設しているような)の売れ方は、都市の専門店と全く違う。こういう需要もある。『萌え』が好きな人(キャラクターが好きな人)とエロが好きな人(こういった人は実写でも良い)とがいて、エロに走った後に揺り戻しが来たのでは。キャラが好きな人はついていけない」
永山氏「そこらへんにコアマガジンの強さがあるのでは。どちらの読者も引っ張れる。『萌え』と抜きに二極化して、『萌え』が一般誌に逃げた。さらにその揺り戻しで、コアマガジンや茜新社が売れるのでは」
しばた氏「最近注目しているのがEDの作品。かわいい絵を描くが性描写はえぐい」
伊藤氏「消しは?」
しばた氏「見りゃ分かるでしょ、ないですよ」
伊藤氏「バカには見えない消しですか」
永山氏「こういうのは鬼ノ仁なんかもそうでは」
しばた氏「鬼ノ仁も一般誌に引き抜かれた。エロが濃くなったので、これで一般誌に濃すぎて出られないのではと危惧したが、うまく一般誌に溶け込んでいる。編集者もうまくコントロールしてる」
永山氏「それは基礎がしっかりしているから。引き抜きのポイントは、『萌え』やフェティシズム以外に、『きちんとマンガが描ける』ということ。この点で、まだこの業界(エロマンガ)は宝庫」

●3.について
 再びしばた氏の解説。2006年は新人の台頭が目立ち、先ほど上げたチャートの上位にも初単行本の作家が目立つ。1位の小梅けいと『花粉少女注意報!』や、2位の『初犬』など。

 ここで話が逸れてペンネームについて。
しばた氏「最近のエロ漫画家は検索しにくい名前の人が多い。EDだのDE(?)だのDP(?)だの、あと犬も」
伊藤氏「元素記号みたい。アマゾンやセブンアンドワイのネット検索で不利では」
しばた氏「わざとやってるんですかね。親に知られたくないとか」
 他に検索しにくい作家・作品としてナイロン『ナイロン100%』が挙げられる。
伊藤氏「これは80年代初頭の渋谷のクラブ(戸川純などが活躍)の名前が元ネタ、余計分かりにくい」

 話はカラーについてに移る。
 カラーの上手い人が増えた。エロゲーや、ネット上の発表が増えたことの影響や、パソコンの機材としての進化によるものか。2ちゃんのスレッドで「絵を上手く見せるテクニック」というスレがあった。
伊藤氏「ネットのお絵かき掲示板などがあるため、絵描き当人も自分の絵がどこでどう影響を受けたのか分からない、というのが学校の生徒でいた」
 塗りの上手い新人としてあげられるのが石恵鳴子ハナハル。鳴子の単行本が出ないのは理解しがたいことだが、「かみちゅ!」のマンガを描いたせいか。ただ、塗りの上手い人の作品とは、もともと巻頭カラー4ページなどというのが多く、単行本化しにくい。

 前半一番の山場となったRIKIネタに。
しばた氏「RIKIもすごい。厳密には新人といえるか微妙だが」
永山氏「みさくら語もメじゃない」
 スクリーンに映った画像が見難いため、伊藤氏の要望により永山氏がRIKI作品の台詞を熱く朗読、会場大いに沸く。
しばた氏「RIKI先生天才ですね」
永山氏「脳味噌弾けてるね」
伊藤氏「これ、いいね」
 三人とも絶賛。
 RIKIは最近4コママンガも描いているが、内容が無茶苦茶なだけでなく、4コマ中3コマをぶち抜きで一コマにしてしまったり、凄い作品と紹介。

 しばた氏がその他に挙げた作者としては、てりてりお(「みずみずしい絵を描く、きっとメジャー系に引っこ抜かれる」)、ヤスイリオスケ(「巨乳がいい」)、大和川(「ぴちぴちした絵でプロポーションが良いい。最近のエロマンガは巨乳と貧乳しかないが、大和川は大も小も中も描ける」)。

 ここで伊藤氏が、自分の門下からめでたくエロマンガデビューした人を紹介。きりりんといい、『少女天国』に描いている由。その近作「ベロニカちゃんとぼく」は、ベロニカお嬢様と、お嬢様に仕える少年の話・・・と編集者も伊藤氏も思っていたところ、よく見ると「ぼく」に「乳がある!」ということに最終段階で気付き、編集者が男に直させようとホワイトを握りしめてきりりんに迫るも、作者は女の子の方が良いのだといって譲らなかったとか。
伊藤氏「描き手の中でも、エロと一般と両方描きたいという揺らぎがある」
しばた氏「でも両者の間に線を引いていますよね」

 ここで時刻は21時となり、第一部はここまでとして一旦休憩。
 後半に続く。
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by bokukoui | 2007-03-26 23:58 | 漫画

今日の池袋界隈~「ホワイトデー爆砕デモ」見学記

 昨年のクリスマス、先月のバレンタインデーに続き、「革命的非モテ同盟」の街頭行動見学も三度目になりました。これで、「革非同」がインスパイアされた「反白色テロル大連帯」言うところの「三大白色テロル」全てで粉砕闘争が貫徹されたわけですね。
 今回は、特に前回のバレンタインデモの反響が(ネット上で)大きく、また古澤書記長の尽力もあって、雑誌『AERA』やネットニュース「イザ!」などの取材も訪れておりました。そういった報道陣に対して当ブログが何がしか個性を出せるよう、尊敬するニュースサイト・bogusnewsに倣って努力したいと思います。

 深夜来の豪雨にどうなることかと思われましたが、幸い昼には雨はあがりました。が、風は強く、風に逆らってのデモとなります。
 集合時刻の13時には、サンシャイン脇の公園に十名程度の有志が集まっていたかと思います。古澤書記長はじめ、取材のマスコミ関係者の方も既に来られておりました。
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マスコミ取材に対する顔出し対策の必要な参加者にマスクを配る書記長
準備が行き届いています

 デモ開始時刻まで、横断幕などの準備をしつつ人の集まるのを待ちます。初参加の方、お馴染みの方、そして警備に当たる警察の方々などが次第に公園に集いました。ついでに、前回の渋谷バレンタイン粉砕デモの際に小生がガーディアン・エンジェルスについて質問攻めにした、公安?か判りませんが、お馴染みの警察関係者の方も。「革非同」は当局にも重視されているようです。
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横断幕を棒に取り付けます
強風で煽られるため皆で押さえているところ

 14時近くまでに、事務局・デモ参加者・オブザーバー・取材陣など総勢20名余が集まりました。ちなみに今回は戦史研から、書記長と以前ネットで交流のあった某氏が来ています。
 時刻が近づいたところで、古澤書記長がトラメガを執って演説を行います。
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 ついで有志が数名(写真をきちんと撮れず人数不詳)、演説を一席。

 さて時刻も14時近くになり、いよいよデモ行進が始まります。サンシャインから豊島区役所前を経て池袋駅附近を通り、最後は「乙女ロード」を通ってこのサンシャイン脇の公園に戻ってくるコースです。
 では、以下にデモ中の情景を挙げていきたいと思います。
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強風にはためく「ホワイトデー爆砕」
(手前は取材のカメラマンの方)

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首都高下の道路を書記長先頭に堂々行進
周囲の撮影者、警官、驚く通行人に注目

※追記:『AERA』掲載の「革非同」の写真はこの附近で撮影したものと思われます

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沿道の女性がビラを受け取りデモを携帯電話で撮影
女性にも広がる連帯の輪(?)

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デモ隊は交差点を左折

 ここでメガホンを握る書記長が、
「左に曲がりまーす! 革非同は左にしか曲がりません!」
と、伝説の自主制作バカ映画『国防挺身隊』のパロディをかまし、玄人筋にバカウケ。
 元ネタを知りたい人はこのYouTubeでどうぞ。始まって割とすぐのシーンです。

 左に曲がって、デモ隊は人でごった返すサンシャイン通りの五差路へと向かいます。
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大群衆の中をデモ隊堂々行進 群集の度肝を抜く
(撮影者の腕がヘタレで判りにくくて済みません)

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田中康夫の乗る「新党日本」の選挙カーとすれ違う
(この写真はクリックすると拡大表示します)

 実は小生は田中康夫の姿を見ていないのですが、他の方の証言によると乗っていた由です。MarkWaterさんによると、「間違ったことを間違っていると言える姿勢は立派だ」と言われたそうです。
 もっとも革非同からすれば、「ペログリ元知事は、自己批判せよ!」というところでしょうか。

 デモ隊は大通りを離れ、狭い道に入り込んで、サンシャインの方へともどりはじめます。
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「恋愛資本主義」の牙城(?)ラブホテル街へ進軍するデモ隊
しかしいくらなんでも「「ホワイト」の由来は白濁液」は下品と査問の噂

 いよいよ、デモもクライマックス、「乙女ロード」へと向かいます。小生もここのアングルには少々苦心しましたが、なかなか面白い絵が撮れました。
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『劇場版CLANNAD-クラナド-』公開決定キャンペーンの特設バスがアニメイト前に
その横を進む革非同デモ隊

 この映画やバスについての詳細はこちらの記事をご参照下さい。秋葉原だけではなく池袋にも出没していたんですね。古澤書記長が美少女ゲーム、エロゲー方面に多大な思い入れを持っておられることは、クリスマス前から「革命的非モテ同盟」を注目していた層には自明のことでありますが、更に古澤書記長は「葉鍵っ子」という未確認情報も流れており、さてこそこの『劇場版CLANNAD』のバスに出会えた書記長の心中や如何、と思いやられるのでした。
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女性客で賑わう「乙女ロード」を堂々凱旋行進するデモ隊
(この写真はクリックすると拡大表示します)

 今日のデモの眼目の一つは女性への呼びかけにあり(ビラ参照)、まさに勝利に向けて驀進するデモ隊の雄姿を捉えた一枚、特に大きめのサイズでご提供しております。

 かくして30分に及ぶデモ行進は終了し、元の公園へと戻ってきました。
 デモの感触ですが、前回の渋谷デモに比べてかなりよかったのではないかと思います。それはまず何より場所の違い、またデモの人数がより多かったことなどが大きいと思いますが、小生としては古澤書記長がシュプレヒコールの技量を上げられた(芸が磨かれた)ことをその理由の一つに数えたいと思います。それだけ回りで聞いている人への訴求力が向上したわけですね。クリスマスの秋葉原街頭行動の際に「願わくはネタとパフォーマンスに今一段の磨きを」と記した者としては、喜ばしい方向に向かっていると総括します。

 最後に古澤書記長が締めの演説を行い、デモの主役は事務局ではなく一般の参加者であり、さらに真の主役は観衆たちであるというテーゼが示され、また今回のデモは周囲の反応も前回に比して向上しており、デモは革命的勝利を収めたと総括されました。
 デモはこれで解散になりましたが、公園を借りた時間はまだあったためしばし歓談、また巣鴨プリズン跡を記念する碑に参拝した後、およそ半数の関係者は、反省会として日のある内から一杯傾けておりました。もっともその席では、前回同様に「非モテ」より圧倒的に軍事や歴史、そしてオタクネタなどの話題が歓談されていたのでありますが。
 今まで何度も書いたことですが、こんな変なイベントに参加するような人間は、「恋愛」による抑圧だ何だといっても、それをうまくかわして表現し楽しむ術を持っている(そしてそれを可能にするだけの何らかのリソースがある)のであって、結局「非モテ」ではないということになるのだろう、というのがオチになるわけですが。
 かくてどなたかがこう仰いました。「これだけのイベントを構想・企画し、各種の手筈を整え、そしてやってのけたほどの人間が、モテないなんてことあるわけない」

 次回のイベントについてはまだ成案はないようです。小生は「ブラックデー」で日韓連帯を図ってはどうかと思いますが、具体的にどうイベントするかは考えていません(苦笑)。しかし日本のバレンタイン&ホワイトデーが韓国にまで広まっているとは・・・やっぱロッテのせいなのでしょうか。
 とまれ、以上のように今回の「ホワイトデー爆砕デモ」は成功裏に終わったのではないかと思います。書記長閣下はじめ皆様、お疲れ様でした。

 さて、「ホワイトデー爆砕デモ見学記」でしたら、ここで筆を擱いてしまうのがちょうど良いのですが、思うところがあるので若干の蛇足を書かせていただきます。
 それはこのイベントに先立って、「革命的非モテ同盟」サイトで起きた、「覚悟」氏の言論についてです(掲示板など参照)。
 この議論の中でも述べられているし、またここまでに書いたデモのレポでも読み取っていただけるかと思いたいのですが、古澤書記長の活動は「楽しむ」ことが基本としてあって、それがより多くの人の間に波となって広がっていけば望ましい展開となるでしょう。
 で、そうやって活動を発展させる以上は、基本は「来るものは拒まず」となります。しかしその場合に想定される困った事態が、こういった「楽しむ」ことよりも、何がしかの原理・価値観に凝り固まったような人がやってきて、他の参加者(「楽しむ」ために来た人)をドン引きさせることです。何となれば凝り固まった人は、自分の原理に抵触すると見做したものに対し極めて攻撃的な態度をとるので。以前、古澤書記長が「我々(非モテと喪男)は・・・共に闘っていく事が可能」と書かれていた時に、小生はいささかの懸念を感じたのですが、まさに今回の「覚悟」氏との論争はその問題が具体化したといえます。相対主義を掲げてやっているところに、絶対/原理主義者が来た時どうするのか、というわけです。

 「覚悟」氏は、あえて氏のブログにリンクは張りませんが、強烈なミソジニー(女性嫌悪)を抱き、女性(の側にあると彼が見做したもの)に対し極度に攻撃的な姿勢を取ります。その激しいミソジニーぶりゆえに、夙にネット上の一部では有名な方のようです。
 「覚悟」氏のミソジニーぶりは、古澤書記長の書かれた国際婦人デー関連記事のコメント欄を瞥見しただけでもわかるでしょうが、興味深いことに女性の労働現場への進出を批判するあまり、男性女性問わない「ワーキングプア」のような過酷な搾取を「企業が悪いからとは全然思わない」と肯定してしまっています。他者をあまりに激しく攻撃する者は自己までも攻撃してしまっている、アレルギー反応みたいですね。
 このような「覚悟」氏の言説については、そういった現場での豊富な経験を持たれる「無名」さんや、また最後のコメントの元喪中年氏が要を得た批判を行っておられるので、小生のような駄目院生が冗言を費やす必要はありませんが、敢えて言えば、社会史・女性史・労働史などのちゃんとした本を1冊、いや1章でも読んでいれば、こんな無茶苦茶なことは書けないだろう、ということです。それは「覚悟」氏が不勉強というより、自分の原理に抵触するものへの敵愾心が情報の受容を困難たらしめているのだろう、と思われます。
 このような人物にどのように古澤書記長は対応するのか、なかなか難しいところです。

 今回の事態はしかし、結果的には「革非同」側にとってよい形で決着したのではないでしょうか。「覚悟」氏が自分でキレて退出してしまったので。
 この結果をあらかじめ予想して挑発していたのであれば、古澤書記長は端倪すべからざる謀略家ということになりますが、ご本人に直接伺ったところ「結果的にそうなっただけ」とのことでした。もっともこの結果に至るには、掲示板のやり取りで明らかなように、書記長に一臂の力を貸さんとする人が何人もいて支援したことも預かっているわけで、このことが「覚悟」氏のような、世界を敵と味方で割り切って「YESかNOか」と山下奉文のごとく迫る不寛容さのもつ問題点をよく分かる形で示してくれたことは、良いことであったと思います。
 恋愛でも友情でもビジネスパートナーでも、良い関係を築いてそれを継続し、その関係からお互いに何かを得てよりよき日々を送るために大切なことは、相手を一個の独立した人格として尊重するということなのでしょう。応か否かと迫るのは、多分支配と従属の関係しか齎し得ないでしょう。

 さて、今更終わった件を取り上げてまで、こんな話を蛇足で書いたかといえば、小生がそもそも革命的非モテ同盟の「クリスマス粉砕」の秋葉原街頭行動を見に行った理由は、「覚悟」氏が来るというので氏を見たかったというのが大きかったりします。ではなぜそんなに「覚悟」氏のことに関心があったのかといえば、その説明をするためにはヴィクトリア朝に文化の話をする必要があり、それは先日の「メイドさん放談2007」について当ブログの記事に戴いたご意見に答えることと奇しくも重なります。ので、明日は一見話題をがらりと変えて、「メイドさん放談2007」へのご意見について小生の思うところを述べるつもりですが、「非モテ」に関心がある向きの方にもお読みいただければ幸いです。
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by bokukoui | 2007-03-11 23:55 | 出来事

今日の渋谷駅前~「バレンタイン粉砕闘争」見学記

 こちらのネタの続きです。
 つまり、「革命的非モテ同盟」「2.11バレンタイン粉砕デモ」を見に行ったわけで、我ながら暇人(ホントは暇ではない)とは思いましたが、所用もあったので出かけたのでした。

 宮下公園に10時40分頃に着くと、古澤氏以下前回のイヴェントで見覚えのある方々が横断幕を広げてトラメガで演説をしていました。
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 やはり秋葉原と比べると来訪者は・・・。まあそれは予想の範囲内ですが、複数の戦史研員がその場に居たのはどういうわけかと小一時間(略)。
 あと今回は公式のデモなので、参加者と同じくらいの人数の公安警察がいたことには失笑せざるを得ず。折角の三連休だというのにお疲れ様です(笑)。ちなみに古澤氏が小生のHNを呼んだため、小生は公安当局者にその由来を尋ねられました。古澤氏、革命的警戒心が足りないと思います。
 そうこうしてるうちにデモも出発のようです。出発前に記念撮影。
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 ちなみにここでは新左翼っぽくメットをかぶっていますが、実際のデモ中は警察当局の要請(命令という程ではない)でメットを脱いでいました。建国記念日だけに右翼も街宣しているのでトラブルがあったら困るという由でしたが、じゃあ何のためにあなた方(警察)はいるのか、トラブルを防止するために来ているのだろうと問うたところ、「右翼を抑えられないかも知れないから」だって。

 そんなこんなで、道行くカップルに自己批判を呼びかけつつ、デモ隊は進んでゆきます。おまわりさんとパトカーが前後に従い、歩道からはジャンパー姿の公安の皆さんがついていきます。
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 おまわりさんがいっぱい。お仕事ご苦労様です。
 沿道の人々は笑ったりあっけにとられたり色々でしたが、一つだけはっきり覚えているのは、この写真を撮った附近ですれ違った若い女性の言葉でした。妙にはっきりと耳に残る声でした。

「死ねばいいのに」

 やっぱ「はてなブロガー」かねえ?

 で、小生が何をやっていたかといえば、実は写真を撮るのもそっちのけで公安の人と話をしていました。そう、デハ5001号関連の(特に民間交番やガーディアン・エンジェルス方面の)情報が何か摑めないかと、デモそっちのけで自分のための情報収集に励んでいたのでした。交番への突撃取材は全然成果がなかったので、公安ならどうかと思ったわけで。まあ、相手もプロですからそうそうは聞き出せませんが、GAのような活動は警察からすればむしろ面倒ごとが起きるのではないか(GAには公的な権限がないので)、のように見ている面もあるらしい、という感触が得られました。
 というわけで、そんなことやってるうちにデモ隊から置いてきぼりを食ったりして、済みませんでした>古澤氏

 デモも佳境に差し掛かり、5001号の残骸が晒し者にされているハチ公前の交差点を通ります。建国記念日なので右翼もいました。最近は排ガス規制が厳しいなどの理由により、街宣車もバスではなくワゴン車改造になっているようです。以下の写真ではちょうど旗の影になって見えていないのですが。
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 山手線のガードをくぐって宮益坂の方に出ます。
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 先導のおまわりさん。長い警棒が物々しい。
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 副都心線の建設酣の明治通りを行くデモ隊。先導のパトカーの他、後方からもミニパトが一台ついてきます。
 ミニパトと聞くとかかるHNの小生としては、「ネタのデモなんだから警察も婦警さんとか出してくれないかなあ。カラーガード隊だったらすごく嬉しいなあ」などと阿呆なことを考えてしまいます。

 というわけで、無事にデモは終わりました。
 デモ終了後は近隣のファミレスで総括集会をやったのですが、実態は「非モテ」というよりも共産趣味者と軍事マニアのオフ会といった方が適切、といった状況でした。大変興味深い話題の多い席で、小生が思うには共産趣味者の実践ネタ活動、として(古澤書記長のご意向とはズレているかも知れませんが)いいイベントなのではないかと思います。正直、場の勢いもそのような感じだった印象を受けました。ただ、例の「釣り」事件の話になった時は、古澤氏は相当に怒っておられました。
 あと、これは前回も書きましたが、参加者に歴史学をやってる方が少なからずおられました。歴史学ってモテないんでしょうか?(笑) 小生の周辺を見る限りでは特にそうでもないような気がしますが・・・。

 とまれ、参加者の皆様、殊に古澤書記長、お疲れ様でした。
 小生もこれを機に、渋谷駅頭でデハ5001号の破壊を糾弾する街頭演説を企画しようかとちょっと考えています。youtubeで三井理峯女史の演説を見て練習するか。

※追記:「バレンタイン粉砕」デモについての総括はこちら。
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by bokukoui | 2007-02-11 23:57 | 出来事

今日の秋葉原駅前~「クリスマス粉砕闘争」見学記

 こちらの記事の続き。
 この中に出てくる「革命的非モテ同盟」12月24日クリスマス粉砕闘争を見てきました。
 我ながら物好きとは思いましたが、「反白色テロル大連帯」に関する記録を書いた者としては、その影響を受けた活動家が現れたとなれば状況を実見しておきたいものです。

 で、何とか時間をやりくりして、開始時間の12時ちょうどごろに秋葉原駅前に到着しました。さすがに年末の日曜日だけあって多くの人出で賑わっています。
 以下、撮影した写真を掲載します。

(続きを読む)
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by bokukoui | 2006-12-24 23:58 | 出来事

革命防衛隊マオちゃん

 「マオちゃん」は漢字で書いたらもちろん「毛ちゃん」なのだ。
 ・・・しかし、赤松健原作のお馬鹿アニメ『陸上防衛隊まおちゃん』を覚えている人ももはや少ないかもしれません。一般に評判はあまり良くなかった(かなり悪かった?)ようですが小生は結構面白く見ていました。何故面白かったかといえば、当時は同時多発テロからイラク戦争へと至る途中の時期で、海上自衛隊のインド洋派遣だなんだで世情騒がしく、その同時代のメッセージを無理やり深読みすると中々面白いアニメでした。多分今DVD借りて見ても、少しも面白くないと思います。やはり深夜アニメは一期一会。

 以上は話の枕で、本題ですがマオちゃん、もとい毛沢東関連の展示会に行ってきました。というのも、渋谷から大学に歩いていく途中にこんなポスターを見かけたのです。
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  「文化大革命時代のポスター展 あの過ぎ去った紅海洋(あか)の時代

 実に魅力的なタイトルの展示会です。
 しかし、以前に気がついてからなかなか行く機会を逸しつづけ、先日今日限りであるということを知り、本日用事の合間を縫って足早に見てきました。
 ごくごくささやかな展示会でしたが、足早に見てしまうのはもったいないくらい興味深い展示でした。文化大革命の当時の熱狂を伝えるポスターを今見直すと、人間が「正義」というものを確信した時に起きることの恐ろしさ、何かにすがりついてしまうこと(しかしもはやそれ自体が「正義」と化している)の愚かさ、その破滅的な威力、そういったものを感じずにはおられません。小生としてはこれを、「中国のことだから」「共産主義のことだから」と全く無関係に突き放すのはちと詰らんかと思います。別にわが国で文革を礼賛した知識人が過去にいたというようなことではなくて、誰の心にも文革的な何かが眠っていないとも限らない、そんな気がするからです。

 という真面目な感想とはまた別に、ポスターはそれ自体で結構楽しかったりもします。毛沢東の頭がどう表現されているか、林彪のげじげじ眉はどうなのか、江青の男装姿が一番萌えるのはどのポスターか(「江青」が変換候補にないとは、さすが米帝独占資本のIME)。
 何故か岡田真澄氏の遺影が飾られていると思ったらスターリンの肖像でした。文革当時の中国はスターリン批判以後のフルシチョフ路線を修正主義と批判していましたので、スターリンの肖像はずっと掲げられっぱなしだったとか。ニクソンとフルシチョフが同じポスターで一緒にやっつけられたりしているのも面白いところです
 その一方で、資本家とその手先以外の世界の人民には連帯を呼びかけており、そういったポスターには日本人民も登場しています。が、その日本人民の姿はハチマキ締めてメガネを掛けている・・・そのステロタイプを修正してくれるまでは連帯は留保、とか思ってしまいます。

 ポスターは黒と赤などあまり色使いの多くないものが中心で、それだけに構図の鮮やかさなどで見せていて、その抽象化ぶりが鑑賞する時の見所だと思います。一方、絵画のほうは矢鱈と色使いがあざやかで、妙に明るい顔の人民がいっぱいいて、ああそういえばエホバの証人の宣伝パンフ『ものみの塔』なんかの絵もちょっと似てるなあ、とか考えてしまいました。そういった文革時代のフルカラーの画集を会場で販売していて(値段が2000円ほどしたので購入はためらってしまいましたが)、その中に「祖国大好き」とか何とか言う題名で、実に肉付きのよい幼児がカードで言葉を覚えている絵があって、そこでは「祖国」と書かれた国土をあしらったカードを幼児が持ってにっこりしている(積んである山札の一番上には「天安門」とあったように思う)のでして、教育基本法改正について些か考えずにはおられませんでした。

 画集は手が出なかったので、代わりにポスターの複製を一枚買ってきました。マオちゃん、もとい毛沢東の顔を中心に、ハートマークの中に「忠」の字が染め抜かれ、周りを向日葵が囲んでいるという「敬祝毛主席万寿無疆」ポスターです。展示会場にあった説明文を以下に引用します。
「謹んで毛主席の長寿を祝う」
文革時の典型的なポスター。
最後の四文字「万寿無疆」は、昔は皇帝の長寿を祝う言葉で、天子以外には用いないものであった。毛沢東は自らの誕生日を祝わないと言っていたが、文革の時、皇帝の色である黄色と万寿無疆を用いることを黙認した。
ハート形の中に忠という文字をあしらい、毛沢東に対する心からの忠誠を表わし、また下方にはいくつものひまわりをおいて、人民は太陽である毛沢東にむいて、いつも敬愛していることを示している。
 このポスターの複製を買い込んだはいいものの、さて部屋のどこに張りましょうか。とりあえず試しに、大英帝国戦争博物館製キッチナーの志願兵募集ポスター(これを見て入隊した人の多くが昨日書いたみたいなことになったんだよなあ・・・)の横に張ってみました。
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 右手に帝国主義者キッチナー、左手に共産主義者毛沢東。
 まあバランスは取れているか(どこが)
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by bokukoui | 2006-07-02 23:39 | 歴史雑談

摘録

 今日は富岡製糸場見学に行くので帰宅がこれまた何時になるか分からず、そこで昨日の学会の事を早手回しに書いておいて、本日の更新をとりあえず済ませておこうと考えたのですが、見学に出かける時間を考えると7時前には(出来れば6時)起きる必要がありそうで、となると長々と書いているヒマもありません。頭の中はビールと葡萄酒と焼酎とがまだ回っているので、思いつくまま箇条書きでのみ簡潔に。
 ちなみにこの学会、技術の歴史についての学会で、今回は40人位参加者がありましたが、受付やコンピュータ操作要員に動員された院生2名を除いて全員男性ばかり・・・いつか「技術(史)とジェンダー」という題で大会を開いては如何、などと考えてしまいました。

畑野勇 『近代日本の軍産学複合体―海軍・重工業界・大学』創文社 は買って読むべき本である。今後は本書を読まずに平賀譲を語るのはもの知らずと言われよう。戦史研員は須らく買うべし。

・東大に残された平賀譲の文書4万点以上、デジタル化保存計画進行中(でも例によって資金不足)。将来的にはウェブ上で見られる?(現状では一般公開していない)

※追記:予算がついて(呉市も「大和ミュージアム」で協力したとか)、めでたくネット上に一般公開されました。

・「軍産(学)複合体」という言葉は使いどころが難しい。これに限った話ではないが、吟味しない言葉遣いは時として思考停止をもらたしかねない。

・日本の技術発展の節目は1910年代(八幡の鉄生産開始以降)で、半世紀真似てやっと独自のものへ。

・日本の跨線橋のモデルは英国にあり、資材(鋳鉄の柱とか)でも関連性があるが、英国の跨線橋には屋根がないらしい。ターミナル駅のドーム内に設けてあるものが中心だからだとか。

・「匠」という言葉で日本のものづくりを説明しようとするのは面白いけれど、エスノセントリズムの危うさをつい考えてしまう(しかし、Y氏の勤め先的には「使える」話題では?)

・Y氏、メールに返事出してなくて済みません。

 他にもいっぱいあるけど細かくなりすぎるので自粛。懇親会~飲み会での話題はもっと面白いものもあるけれど、お相手いただいた先生方に断りもなく書くのはあまり良くないかも(回っていて正確を期せないから)。それでも、紡績機械の歴史で右に出る者はいない方と小生は何故か冤罪やら死刑廃止論やらを論じたりしていたのですが、初対面でもこういった話題をある種の気兼ねをなく(ネット上では遺憾ながら不可欠であるような)論じられる空間というのは大変ありがたいものであり、その末席に連なることができただけでも大きな成果であったのだろうと思います。

 さて、出発までにどれだけ寝られるのか、そもそも寝過ごさずに済むのか・・・?

※追記:その後、平賀文書の整理を受けて、駒場キャンパスで「平賀譲とその時代展」と講演会が行われました。その模様はこちら

※更に追記:本郷キャンパスでは更にその後、自主企画として講演会「巡洋戦『金剛』 技術的視点による再考」が行われ、畑野先生も見に来て下さいました。その模様はこちら

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by bokukoui | 2006-06-25 04:47 | 歴史雑談

さようなら交通博物館

 混んでいると分かりきっているところにはまず行かないのが小生の通例の行動ですが、こと今日に限っては通例に反してあえて出かけてきました。営業最終日の交通博物館へ(関係者を集めた閉館記念式典を月曜日にする由。関係者よりの情報)。
 交通博物館は幼時に来て以来何度来たのか正確なことはわかりませんが、閉館が本決まりになってからは三度くらいは来たように思います。
 以下、眺めに行って思ったことなどを箇条書きでつらつらと。

・館を埋める来場者はやはり家族連れが多いが、万世橋駅の現役時代を知っているのではないかという感じの高齢者の方も多く見受けられた。
・見るからにその筋の趣味者と分かる連中(小生の同類)もまた少なくなかったが、案外カップルも見受けられた。男が女に一生懸命説明をしているのも微笑ましき情景(まさに「愛するとは許すこと」ですね)。
・鉄道趣味者は所持する撮影機材に凝る者が少なくなく、閉館を取材に来た報道陣と咄嗟には区別が付かない。
・1階の鉄道コーナーは芋を洗うが如き大混雑であったが、2階・3階の船・自動車・航空機の展示コーナーはそこまでは混んでいなかった。人気の差か。
・しかし本物の「誉」エンジンは、いろんな意味で他のものに引けを取らないお宝だと思う。大宮に所沢の航空博物館に譲渡するとか?
・お子様は運転シミュレーターなどに群がるが、鉄道関連展示で一番混んでいたのは万世橋駅関連だったかもしれない。
・1階の吹き抜けの部分に展示してある蒸気機関車9856(ドイツのマッフェイ製、箱根の後押し用マレー機関車)は大宮にちゃんと持っていくのだろうか。大宮移転後の展示予定の紹介として実物車輌35両が挙げられていたが、その中になかったような・・・
・ついでに、9856と一緒に置いてあるこれまたドイツの名機01(ヘンシェル製)の動輪もちゃんと大宮に持って行くのだろうか。それにしてもマッフェイとかヘンシェルとか、ドイツの蒸気機関車屋はなぜ戦車もよく作るのだろう。
・鉄道の車輌の発達史として大型模型を集めたコーナー、JR化以後の車輌はJR東日本の車輌しかない(新幹線も東海道・山陽は無視。世界最速の500系の姿もなし)。なんという心の狭さ。昔の模型には小田急ロマンスカーや近鉄ビスタカー(新ビスタ)もちゃんとあったのに。
・なお、この模型コーナーのクロ151(パーラーカー)の塗り分け線が微妙に間違っているような気がする。
・今まであまり見に行かなかった屋外展示(行き方が分かりにくい)の弁慶・善光を今回はとくと観察。弁慶の足回りのうち弁装置関連部分は赤く塗られており(教材用?)、お蔭でアメリカ形スティーブンソン式の意味がやっと分かった。
・食堂もお土産品も当然のことながら大混雑で売り切れ御礼状態であったが、軽食用の万世のカツサンド(近所のよしみで売りに来たのか)が大好評。小生も一つ食するも、次から次へ売れてゆくため回転がよいのであろう、出来立てで温かく実に旨い。肉の万世が今日一日で幾つのカツサンドを売ったのか気になるが、それ以上に、小生は今後万世のカツサンドを売っているのを見るたびに今日のことを思い出すだろう。

 交通博物館は敷地が狭く、この手の博物館の目玉となるべき実物展示の点で不満があるのは確かです。カットモデルや模型に頼る場面が多いので、大宮移転で鉄道の実物車輌が数倍に増えるのは、基本的には歓迎すべきことと考えます。建物の構造も分かりにくく、エレベーターなどもないですしね。
 ただ、曲がりなりにも「交通」博物館と称し、船や飛行機、自動車を含めた総合的な展示であったのを鉄道に絞ってしまうのは、やはり残念です。結構なお宝も所蔵しているだけに、お蔵入りせずに有効な活用方法を考えて欲しいところです。常設展でなくてもなんとか。
 そして、「鉄道」博物館として充実するならいいと思うのですが、どうも「JR東日本鉄道」博物館になってしまうんじゃないかという点が懸念されます。JR化以降の鉄道車輌模型の展示が、東日本のそれに限られていたということがそれを示唆するように思われるのですが、これは今後再開時も日本を代表する鉄道博物館となるであろう展示施設の運営方針としては余りに視野が狭いものといわざるを得ません。民鉄も含めた(自前で博物館持ってる会社もあるけど)総合的な日本の鉄道の特質を示すよう、心がけていただきたいものです。
 最後に、史料の問題ですが・・・あの余りといえば余りな閲覧体制は改善されるんでしょうね。マイクロフィルムを見るのに何で付き添いがいるのかと小一時間(以下略)。国立公文書館みたいなシステムにして欲しいなあ(公文書館のマイクロは扱いやすく見やすい。国会図書館の憲政資料室のマイクロは旧式で扱いにくく見にくい)。短期的な商売にはなるはずもないけど、このような文化事業は、長期的には宣伝として相当に高い合理性を持つように思うのです。

※追記:鉄道博物館を開館前に見学に行った記事はこちら
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by bokukoui | 2006-05-14 23:57 | [特設]さよなら交通博物館

「マリア・テレジアとマリー・アントワネット展」に行く

 タダ券を貰ったので、表題の「マリア・テレジアとマリー・アントワネット展」を見に行ってきました。
 この展示会、展示物は質量ともにマリア・テレジアのそれの方が見応えがあり、マリー・アントワネットの方はつけたしに近い感じだったのですが、やはり日本ではハプスブルク家の知名度が低いのか、マリア・テレジア一人で展示会を開くのが困難と判断してこのような企画になったのでしょうか。

 会場は横浜そごう内部の美術館でしたが、結構な賑わいでした。やはり中年以上の女性が中心のように思われましたが、時期と会場のせいか家族連れも多く見受けられました。小生のようなマニアはあまりいなかったような気がします(笑)。
 展示物はマリア・テレジア陛下ご愛用の品々、所蔵のお宝、肖像画類、娘宛の書簡(のコピー)、などなどでしたが、小生にとって嬉しかったのは、マリア・テレジアの事跡として、軍事面での改革にそれなりに力点が置かれて紹介されていたことでした。複製ながらオーストリアの軍服であるとか、息子のヨーゼフ2世の「士官用ステッキ」だとか、1752年に開設されたという「テレジア軍事アカデミー」関連の展示など、なかなか興味深いものでした。中でも小生が感心してその前にしばらくへばりついていたのが、「1742年9月27日の戦闘計画」という史料で、イシュルという町の民家で発見されたものだそうです。(もっともけしからんことに、この「イシュル」がどこか説明がないのでどこか分かりません。ザルツブルクの近傍に「バートイシュル」という有名な温泉地があるそうですが、そこなんでしょうか。バイエルンに近いので、オーストリア継承戦争中という状況からすればなくもなさそうですが)
 小生はこの史料(図)が載っていたので、2000円出して図録『マリア・テレジアとマリー・アントワネット』を買ってしまいました。この図をこの図録の50ページから引用します。(この図録、引用に関する規定がどこにも載っていないのですが・・・一応、踏み外してはいない積もり)
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 画像はクリックすると拡大しますが、テジカメ撮影のため(スキャナーがない)お見苦しいのはご容赦を。
 小生は英語が多少読める(と称している)程度で、ドイツ語やらラテン語(当時のハンガリーの公用語)やらはさっぱりですが、辛うじて軍事用語を推測してみると、この図の上段と中段の表で一番大きな幅を取っている欄について、左側に英語の Regiment(連隊)と類似した語が書いてあることから、多分連隊の名前なのだろうと思われます。
 連隊の名前らしき下に数字一文字を入れた欄が二つありますが、この欄のうち上のものは左の凡例に Bataillon(大隊)みたいな単語(ここは自信がない←まあ全部ないけど)と squadron(騎兵中隊、今では空軍の航空隊などに使う)みたいな単語が書かれていることから、おそらく各連隊所属の大隊数(歩兵の場合)か中隊数(騎兵の場合)が記載されているものと見られます。基本的に各歩兵連隊は2個大隊、各騎兵連隊は6個中隊で構成されているということのようです。
 下の数字の欄は、凡例に Grenadier(擲弾兵)と Carabiniers(騎銃兵)とあるようです。
 擲弾兵は本来手榴弾を投げる兵士のことですが、この時代の手榴弾は黒色火薬に導火線をつけて投げる(『ボンバーマン』の爆弾みたいな感じ)もので、それを投げるだけの力の強いガタイのよい兵士のことです。しかしこの手榴弾はあまり効果がないので廃れてしまいましたが、兵士の種別としては残り、優秀な兵士として連隊の切り札として中隊に編成され、しばしば各連隊から引き抜かれて総予備みたいに運用されたそうです。
 騎銃兵は、こちらのサイトによると、フランスではカービン銃(騎兵銃)とサーベルを両方装備した騎兵のことだそうです。オーストリアでは多少違うのかもしれませんが、やはり騎兵の中の比較的特殊な兵科だったのでしょう(普通の騎兵は槍を装備していたのかな? ハンガリーも統治下なことだし)。今じゃ憲兵のことみたいですが(ガンスリに出てたっけ)。
 で、この欄はこれら特殊な部隊が各連隊ごとにいくつあるのか、表示しているものと思われます。

 これ以上は筆者の手に余るので、詳しい方のご教示をお待ちします。ご入用なら図録持参しますので。もっとも図録の写真もちと読みにくく、やはり展示の現物を見に行くのがよいようです>大名死亡様

 マニアックな話(「軍事マニア」でも関心のある人は少なそう)が続いたのでちとインターバル。
 この展示会に来た人はおばさんや家族連れが目立った、と書きましたが、セーラー服の女子高生二人連れ両方ともめがねっこ、という珍しい組み合わせの来訪者もいました。特徴ある襟の切り返しや袖のライン、地理的状況から見て、横浜共立学園の生徒であることは間違いないでしょう。進学校としても著名です。同校はミッション校なので、セーラー服の彼女たちは、敬虔なカトリック信者であったマリア・テレジアの遺徳を慕って来た・・・って共立はプロテスタントか。うむむ。
 実はこの展示会、『ベルばら』の池田理代子先生が関っているので、ことによると彼女たちはそれで見に来たんじゃないかな・・・同校に公認の漫研はないみたいですけど、イラスト部とか美術部とか文学部とか、可能性を感じさせる組織は存在しているようです。
 セーラー服の女子高生がオーストリア軍の制服を眺めている情景はちょっと微笑ましいものでした。あ、ウィーン少年合唱団もセーラーでしたっけ。

 閑話休題。
 さっきの表に戻りますが、小生の当て推量が当たっていれば、あの表は第一線と第二線、予備に分けて部隊配置を書いたもののようにも思われるのですが(もっともそれにしては兵力が多すぎる)、そうすると、表を見れば連隊を二つごとにまとめ、さらにそれを二つまとめる、という部隊編成が一部で行われていたように読み取れます。これは連隊―旅団―師団編成のさきがけに当たるのでしょうか。1740年代にフランス辺りでは師団編成の萌芽が現れていたとかいう話なのですが・・・

 以上の戦史関連ヨタ話の参考文献は、主にオスプレイの『オーストリア軍の歩兵1740‐1780―マリア・テレジアの軍隊』と、そして何より戦史研の大御所である久保田正志氏が著された『ハプスブルク家かく戦えり―ヨーロッパ軍事史の一断面』であります。
 後者の本は、ルイ14世の敵役とか、プロイセンの餌食とか、ナポレオンのやられ役とかでしか登場してこず、専ら文化的な話題が多かった(この展示会もそうですが)ハプスブルク家について、軍事面での経緯を中世から第一次大戦まで600年余に渡って網羅した大著です。西欧軍事史に関心のある方には絶好の一冊です。
 追記:戦史関連ヨタ話は当ブログのこの記事も参照。

 この展示会の会場には、百貨店だけに充実したお土産コーナーがあり、図録ほかアンティークやアクセサリなどのみやげ物(この展示会の狙いの客層がどこかを如実に反映しています)の他、関連書籍を数多く置いていました。池田理代子先生はもちろん、菊池良生や江村洋、鹿島茂などから、澁澤龍彦まであるという賑やかさでしたが、それだけに本書が置かれなかったことが残念でなりません。
 余談ですが、この展示会と本書の関連で一つ気になったのが、同書278頁の図18と、展示会の会場に展示され図録125頁に掲載された地図が妙に似ていることです。どっちも同じ地図をネタにしたんでしょうかね。でもこの地図、初心者にはちと分かりにくい箇所があるので、本書はともかく展示会には不適当だったかも。
 正直観覧者が歴史に関する知識をどれだけ持っているのか怪しいのは致し方ないところで、例えばマリア・テレジアとフランツ1世の結婚契約書(複製)が展示されていたのですが、それに赤い蝋で印を捺してあったのを「血だ」とか騒いでいる女の子がいたので、思わず「それは蝋です」と突っ込んでしまいました。どこから見てもイタいマニアです。ありがとうございました。

 長々書いてきましたが、この展示会はなかなか面白かったので、関心のある向きは是非どうぞ。会期は・・・あ、明日までだ。
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by bokukoui | 2006-05-06 23:57 | 歴史雑談