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『西尾幹二のブログ論壇』をご恵贈いただく~ぜんざいの塩

 率直なところそれほど気の進む記事ではありませんが、来年に持ち越すのも何なので年内に何とか書いておきます。

 それは少し前の記事でちょっと触れましたが、当ブログの過去の西尾幹二氏に関する記事の一部が、西尾氏がブログなどをまとめた本『西尾幹二のブログ論壇』(総和社)に掲載され、そのため発売日直前に同書を一部ご恵贈いただいた、というものです。

 まずは何より、ご恵贈いただいたことに感謝申し上げます。小生は、以下に再度述べますように、西尾氏とその取り巻き連のご意見には全く賛同できませんし、そのことをブログでも明記しておきましたが、そのような意見についてもブログを本にする際に収録し、そのネット上の文章の執筆者にもご恵贈下さるというご丁寧な姿勢は、まことにご立派なことです。
 ただし、本書巻末の「執筆者一覧」の「編集部からお知らせ」には、連絡の付かなかったブログ筆者に宛てて「献本と薄謝を差し上げたい」からご連絡乞う、とあり、当初小生が編集部からいただいたメールにも同様の旨記述がありましたが、編集部から送っていただいた封筒には本と手紙しか入っておりませんでしたが・・・まあ、かえって気まずいので、これでいいのでしょう。

※追記:その後、「薄謝」は送っていただきました。

 なお、本書にご収録いただいた拙ブログの記事は、以下の一連の記事の一部です。

 『諸君!』秦郁彦・西尾幹二「『田母神俊雄=真贋論争』を決着する」
 ・秦郁彦・西尾幹二「『田母神俊雄=真贋論争』を決着する」評 続き」
 ・『田母神俊雄=真贋論争』を決着する」評 蛇足的まとめ
 ・『諸君!』秦郁彦・西尾幹二対談評への西尾氏のコメントについて


 また、以下の記事も関連する内容を含んでおりますので、ご参照いただけましたら幸いです。

 ・アパグループ『謀略に!翻弄された近現代 誇れる国、日本。』瞥見
 ・「建国記念の日」に思う 「条件付き愛情」的な「愛国心」

 さて、小生の、西尾氏の歴史に対する見方については、上掲記事に既述してあり、大きく付け加えることはありません。西尾氏の本書も、基本的には西尾氏のブログの文章を、トピックごとに引用部も含め再録したものですので、これも付け加えることはあまりありません。
 ですのでこれでご紹介を終わってしまっても構わないですし、率直に言えば小生の考えとは氷炭相容れぬ書物について喋々するのは読む方も書く方も楽しいとも思えませんが、しかし多少胸に閊えているものもあり、一筆しておきます。

(胸のもやもやを愚痴っているだけなのでお暇で物好きな方のみどうぞ)
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by bokukoui | 2010-12-30 22:06 | 歴史雑談

「なずなのねいろ」連載終了を記念して『COMICリュウ』2月号感想

 『月刊COMICリュウ』の感想を書く当ブログの記事の企画も長らく中断しておりましたが、それというのも万事不調でそんな余裕がなかったからでして、というか記事を書く以前に、買った漫画や本をを読む気力すらない有様で、更にいえば本を買う以前で既に気力が尽きて買いもしていないような、そんな状況が続いていたためでした。

  その状況が大して良くなったわけでもないのですが、それでも今回何とか久しぶりに『リュウ』の感想を書かねばと思い立ったのは、それは小生が同誌を読むきっかけとなったナヲコ先生の連載作品「なずなのねいろ」が、12月発売号で最終回を迎えることとなったためです。ちなみに如上の状況だった小生は11月発売号を積んだままにしていたので、ナヲコ先生のブログを読んで最終回のことを知り、それ以降ますます沈滞していたのはブログ更新が途絶えていたことからもお察しいただけようかと思います(もちろんそれだけが理由じゃないんですが)。

 ところで、「なずなのねいろ」連載が終わってしまったら、今後『リュウ』の購読を続けるか、正直迷っているのですが・・・最近は如上の事情で斜め読みしかしていなかったので、今月発売号を読んで考えてみます。そんなわけで久しぶりのこの企画として、『月刊COMICリュウ』2010年2月号の感想をなるべく簡潔に(長々書く気力もまだ回復してなさそうなので)、以下述べていきたいと思います。

・ナヲコ「なずなのねいろ」
 というわけで、三味線を弾く少女・なずなと、彼女の音に惹かれて三味線部を立ち上げようとする高校生・伊賀君と、彼らを取り巻く人々の物語も、連載32回目にして完結となりました。
 最終回は、三味線部がいよいよ文化祭でお披露目! ちょっと最後が駆け足だったともいえなくはないですが、開かれた場で演奏することの出来なかったなずなのねいろが聞く人々を得ると同時に、なずなの周りの人々のつながりもまた回復されていくという、しみじみとした終わりでした。『voiceful』と通じるものもありますね。連載お疲れ様でした。
 単行本は来年2月発売だそうで、全体をまた読み直してその時に感想が書ければ・・・と思います。「なずな」は後半、一回のページ数が少なくて、ちょっと話のつながりが分かりにくいような気がしたので、単行本で読み直すことを楽しみに、2月を待つことにします。今更ではありますが、毎月12頁よりも、隔月24頁で掲載する方が良かったのかも知れません(『リュウ』にはそういう形で載っている漫画が幾つもあります)。ナヲコ先生もブログやツイッターで述べられているように、原稿が「白い」のが最終回の玉に瑕・・・ですが、それだけまとめるのが大変だったのでしょうね。これも単行本に期待です(ついでに加筆があるともっと嬉しいですが・・・)。
 ところで、しかしこの最終回にはちゃんとトーンの張ってある頁が1頁だけありまして、今や学園を舞台とした漫画ではお約束ではありますが、文化祭の模擬店で「メイド喫茶」やってるのでなずなが「メイド服」
 今号の『リュウ』、なずなは「メイド服」だし「木造迷宮」のヤイさんは巫女さんだったりで、個人的にはもうこれで今号は「元取った」気分です。

・アサミ・マート「木造迷宮」
 上で書いてしまいましたが、今回は年末に出た号ということで? 本来、三文小説家のダンナさんと一つ屋根の下で暮らす健気な女中さんのヤイさんの物語・・・のはずが、今月はヤイさんが巫女さんです。人手の足りない神社のために、サエコさんがヤイさんを引っ張っていくのですが・・・あとサエコさんもですね、まあその。取り残されたダンナさんの鼻水顔が哀れにも可笑しいですね。
 『木造迷宮』には1巻にヤイさん「メイド服」着用があって、4巻ではセーラー服着用のお話もありましたが、この分で行くと来年は・・・ヤイさんナース服? 流石にキャビンアテンダント(スッチー)はないとしても、時代設定的にはバス車掌なんていかがでしょうか。

・蒼崎直「官能小説家 烏賊川遙のかなしみ」
 祝単行本化。この道20年以上のベテラン官能小説家・烏賊川遙先生と、「エロ」を巡って先生と出会う人々の織りなすコメディ(時にほろり)の快作です。
 単行本が出てからも、先月号・今月号と順調に連載されており、2巻もやがて出ることでしょう。今号は「単行本化記念」として、普段と体裁を変えて4コマ(風)になっています。今回のでは、「その時、歴史が呻いた」が特にお気に入りですが、どれも軽妙で面白いです。「超合金の処女(おとめ)」こと御所瓦清美(37)さん(超堅物の編集者、でも編集してるのは官能小説の雑誌・・・)も再登場して喜ばしい限り。
 ちなみに先月号(単行本未収録)は、デブ専に生涯を捧げてしまった作家の話でしたが、一言で要約すれば「その嗜好はわからんけど、情熱のすごさには感動した」という、大変よいお話であると同時に、ノリが良くて楽しいお話でした。両頁見開き一面の夜景を背景に、「この世界で / 本当の自分を貫けずに / 苦しんでいるのは / お前だけじゃないんだぜ・・・!」と絶叫するという、『リュウ』買った人がたまたまこの頁を開いたら「XENON」と間違えそうな展開でした。

 余談ですが、本作も単行本が出たのでネット上に感想が幾つも上がっておりますが、小生がざっと目を通した範囲では、ほとんどの方が本作について、烏賊川先生とその挿絵を担当することになった新人イラストレーターこと「萌え」エロ同人の人気作家・MOMOZIくんとの凸凹コンビの面白さを挙げておられます。もちろんこの、エロを描いていながら世代も分野も違う二人のギャップは、本作の面白さの大きなところですが、それだけじゃないんです。例えば単行本にも載っている、烏賊川先生とそのお母さんとの切ない話など、エロと人のドタバタを、上から下から斜めから、様々に描いているところが楽しいのです。その幅の広さは、声を大にして宣伝しておきたいと思います。

・速水螺旋人「靴ずれ戦記 ―魔女ワーシェンカの戦争―
 これまでのイラストコラム「螺子の囁き」(当ブログの過去記事でも蒸機ネタを中心に度々紹介してきました)の発展的解消として? 連載の始まった速水螺旋人先生の漫画。本来、この連載開始ということも小生的には大ニュースで、当ブログで記事を立てるべき話題だったのですが、ここ数ヶ月の不調でご覧の有様でした。
 そんなうちにも連載は順調に進んで早3話。大祖国戦争中のロシアを舞台に、なぜか赤軍所属の魔女ワーシェンカ(メドヴェージェワ軍曹)と、政治委員(かな?)のめがねっこナージャ(ノルシュテイナ中尉)の冒険? を描く、舞台といい設定といい速水先生でなくては出来ない一篇です。
 今回は12月発売号というわけでサンタクロース・・・ではなくて、ジェド・マロースの登場。正直なところ、神話とかに疎い小生は、ロシアにおけるサンタクロース的存在のジェド・マロースを初めて知りました。で、武装SSの捕虜になったジェド・マロースを救出すべくワーシェンカ大活躍だの雪娘スネグーラチカだのプロペラ推進そりだの対戦車銃だのてんこもりで、可愛くてかっこよくて可笑しくてスタハノフに面白いです。微妙に読者を選ぶかも知れませんが。
 第1話はともかく、第2話・第3話と結局最後はウオトカ呑めて万歳、というロシア的結末を迎えているのもいい感じです。ズブロッカ呑みたい(最近の内臓の調子ではやめておいた方が良いか・・・)。

 ちなみに今号、夢乃むえ「さえもえな日常」シリーズの最新作「チハたん走る!」(毎回タイトルが変わっている)はなぜか女子高生が97式戦車を走らせるお話で、この話の続きに「靴ずれ戦線」が続けて掲載されているため、頁の左右でチハ車とドイツ兵が並んでいるというシュールな展開になっております。狙った訳じゃないでしょうが。
 どっちも女の子と兵器の出てくる漫画ですが、どちらも所謂戦闘美少女モノ的というかイロモノ架空戦記的というか『MCあくしず』的というか、そういう臭味を感じさせない作品なのは全く素晴らしいことと思います。いやほんと。

・田邊剛「ゲニウス・ロキ 異形建築家阿修羅帖控
 今年の9月号(7月発売)に掲載され、面白かったのでまた載ればいいなと思っていた一作。小生同様に感じた人も多かったのか、めでたく2回目が載りました。これは明治~昭和初期の建築家・伊東忠太を主人公とした怪奇ものです。近代史に題材を取った伝奇もの、というのは、しばらく前に一区切りついた「三つ目の夢二」など『リュウ』には結構よく載っている印象がありますね。小生は日本近代史やっているくせに、伊東忠太といえば築地本願寺や今は亡き阪急梅田駅コンコースを作った人、という位の印象しかなかったのですが、何でも実際に妖怪が好きだったのだとか。
 本作はなんといっても絵が素晴らしく、作品の世界とぴったり波長が合っています。相当高密度に描き込んでいながら、全くくどくなく、読みやすい――という言い方は何だか安っぽくなってしまいますが、作品世界に入り込みやすい、こってりしていながらもたれない料理という印象です。
 伊東忠太が妖術使い? として建築物にまつわる悪霊鎮圧に活躍する、荒唐無稽と言えばそれまでの話ですが、しかし素晴らしい絵の語り口に飲み込まれてそんなことは言わせない迫力があります。是非、単行本が出るまで続けてほしい作品です。

 あ、悪い癖でまた文章が長くなってきましたね・・・長くなるから完成しないという悪循環でもあるので、なるべく短く。
 というわけで箇条書きをやめて以下列記していけば、神楽坂淳/伊藤伸平「大正野球娘。」は数ヶ月前からいよいよ野球娘たちと朝香中学野球部との試合が始まりました。いよいよクライマックスで、駆け引きとドタバタとが絶妙に組み合わさって面白いのですが、反面終わりが近づいてきているとも思えばちょっと寂しくもあります。前号でピッチャーのお嬢・小笠原晶子をわざと疲れさせるために出塁させた朝香中学に対し、桜花会側はピッチャー交代! というところで次回へ続く。続きが楽しみ。
 安彦良和「麗島夢譚」も快調に連載中。松浦党水軍の伊織とイギリス人で隠密なミカ・アンジェロが、台湾の支配を巡るスペインとオランダの激しい角逐に巻き込まれたところで、いよいよ17世紀初頭の台湾といえば、の鄭芝龍が登場。今回は激しい戦闘シーンとその残虐さに絶望する天草四郎と、見所がたくさんありましたが、鄭芝龍の登場でこれも続きが気になります。
 そして本誌最大の目玉連載? 安永航一郎「青空にとおく酒浸り」も、MM(マイクロマシン)をお香の力で退治する新キャラクター(ってもう数ヶ月前に登場してましたが)尻神楽さんの話が盛り上がって絶賛連載中。しかし単行本4巻は、というか多分6巻ぐらいまでは出せると思うのですが・・・。ちなみに小ネタも激しい安永作品ですが、今月は背景に以下のようなのが・・・
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「ぐはははは 灰皿にっ テキーラ!!」「死ぬよう」

・・・市川海老蔵の事件は11月25日だったのですが、詳細が報じられたのはもうちょっと後だったと思いますし、よく12月19日発売号に間に合ったなあと。なるほどこう時事ネタを盛り込むような、そんなその時の「気分」で描いているから、安永先生は単行本化に消極的なのでしょうか。

 ベテラン連載陣の話ばかりもなんですので、今回発表のあった『リュウ』の新人賞「龍神賞」入選作品の話も一つ。
 「龍神賞」は金・銀・銅の三段階ありますが、今回銀龍賞に輝いたのが村山慶「セントールの悩み」。翼人やら半獣人やらがいる世界(でも電車で通勤通学してる)で、ケンタウロスの少女が主人公。そのお悩みは「性」に関するもので・・・、と、一歩間違えばただの下ネタになってしまいそうなお話を、絵柄も相俟って可愛らしくまとめています。これはなかなか。「烏賊川遙」もそうでしたが、性についていろんなアプローチの作品があるのは『リュウ』の特徴かも知れず、さてこそこれとかこれのような企画もあったのでしょう。絵も可愛く、しかしありがちな「萌え」絵ではない味わいがあり、選評の吾妻ひでお先生が「かわいい女の子が描ければ この世界食っていけるよ チョロイよ!」と描いておられるのもむべなるかな(『リュウ』の漫画にはそうでないのが結構ある気もしますが・笑)。
 もっとも、個人的感慨を付け加えさせてもらえれば、半人半馬のケンタウロス少女を可愛く描ける人でも、電車をバランスよく描くのは難しいんだなあ・・・ということは痛感しました(今号、星里もちる「ちゃんと描いてますからっ!」に京王線電車が登場しましたが、これは電車をおおむね「ちゃんと描いて」ました。この辺がベテランと新人の差か?)。あと、受賞者コメントがネタなのかマジなのか判断に迷います。

 連載終了といえば、小生がこれも毎号読んではううん、と唸っていた大塚英志/菅野博之「大塚教授の漫画講座」も今回で終了でした。上の「龍神賞」で編集部が、この賞の受賞者は多くが単行本出すまで漕ぎ着けています、と強調している一方、巻末で大塚教授が「持ち込みや投稿をして新人賞をとって担当付いてアシスタントやりつつ連載、コミックス、アニメ化・・・(中略)みたいな「紙の雑誌」を想定したまんが家のサクセスストーリーがこの後は多分、成立しにくくなります」と述べている、その混沌が誌風なのでしょうか。また新たな形で、大塚氏の記事は載せていただければと思います。

 さて、他にもコメントしたい作品は幾つもあるのですが、そして最近、「なずな」のみならず終了作品と新連載とが交錯していて書くべきこのと多い『リュウ』ではあるのですが、流石に現在の調子ではここまで書くのがやっとです。
 というわけで今号の感想はここまでとさせていただきますが、こうして読んでみれば、やはり『リュウ』は小生と波長が合う雑誌のようです。安永先生の単行本は出るか分からないし、速水先生もページ数少なめだからこれまたいつになるか分からないし、それに一応ナヲコ先生も「次回作もお楽しみに!!」ということを信じて(打ち合わせしてるらしいし)、当面は読み続けようかなと思います。
 あ、でも、波長が合いそうといっても、流石に今号附録の「コスプレ&イラスト はやぶさカレンダー」は意味不明でした。もちろんブルートレインでも新幹線でも戦闘機でもない方の「はやぶさ」ですが、イラストはいいとして「コスプレ」って・・・?

(以下備忘の資料)
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by bokukoui | 2010-12-21 23:58 | 漫画

アサミ・マート『木造迷宮』4巻・別館 略感


←アサミ・マート


 1巻(正確には巻数表記がありませんが)そして2巻と当ブログで過去に感想を書いて(おそらくは他の誰もが考えないような茶々を入れつつ)参りました、一軒家で「三文作家」の独り者のおっさん(ダンナさん)と割烹着姿の女中さん(ヤイさん)とが暮らす日常を描いた、アサミ・マート『木造迷宮』シリーズですが、順調に読者を増やしていったのか、4巻に加えて別巻ならぬ「別館」まで発売になりました。・・・ん、そういえば3巻は今年の3月に出ていたんですね。小生も買ってはいたけれど、秋葉原で統一協会に出くわした一件とかにブログの内容が取られていたりして、感想を書くのを逸したと思われます。
 もっとも感想を書かなかったのは、3巻はヤイさんの過去篇という大きな山はありましたが、シリーズとしては順調に前からのコースを進んでいる感でした(決してマンネリって意味ではなく、読んでほっと出来るということです)ので、新たに何か書こうと強く思わなかったからかもしれません。その点、今回は2冊出ているし、傾向としてもイレギュラーなところがあるので、簡単に一筆しておきたいと思います。

 今回2冊同時発売になったうち、4巻の大部分は『月刊COMICリュウ』連載分ですが、4巻には『木造迷宮』のプロトタイプになったという掌編「ネコとコロッケ」が収録されています。2000年の作品だそうで、絵のタッチが今と結構違っていますが、ダンナさんとヤイさんの基本的な設定は本編と共通しているようです。で、プロトタイプとしてもっとも大きな本編との違いは、ヤイさんの大きな「訳あり」設定です。
 それが何かは本書をお読みいただくとして、僅か8ページの短編ですからその「訳あり」については何も説明はなく、しかしそれがじっくり余韻をもたらす、なかなかの一篇です。でもアサミ・マート氏は、この「訳あり」設定を当初本編に盛り込もうとされていたそうで・・・結果的にはそうでなくて良かったといえそうですが、当初アサミ・マート氏が考えていたことと、『リュウ』で『木造迷宮』を読んだ読者の求めていた世界との間に、微妙な差があったところが面白くもあります。

 『別館』ですが、こっちはアサミ・マート氏が同人誌で発表していた方の『木造迷宮』です。同人まで手を出すことが滅多にない小生も、アサミ・マート氏の同人誌は数点入手していましたが、さすがに全部集めるのはいろいろ大変なので、このような形でまとめられたことは大変嬉しく思います。
 で、こっちの主人公の女中さん・百目さんは、表紙の絵の通りヤイさんとはいろいろ対照的です。家事の手腕に独り者のダンナさん(こっちはロボット研究所の所長らしい)こそ共通していても、見た目の違いに加えて、ダンナさんをダンナさんとも思わぬ尻への敷っぷり(そして嬉々として敷かれまくっているダンナさん)、一升瓶を抱え込む酒豪(ダンナさんは飲めません)、街の流通の七割を支配する闇の勢力?も震え上がる戦闘力などなど。でもいつも無愛想なようでいて、時折見せる異なった表情が可愛らしいのです。あ、でも、激怒した時の表情は怖いですね、歯がサメみたいになってます(笑)。
 日常のほんわかした情景を描く「ヤイさん」の方と比べると、こっちは結構ドタバタコメディ色もあって、本編とはまた違った楽しさがあります。そして『リュウ』に掲載された、百目さんとヤイさんの夢の(二重の意味で)共演の一話も『別館』に収録されています。両者の対照的なところと共通したところとが同時に味わえる一篇ですが、今後もこういうお話は描かれるのかな?

 まとめて考えると、「訳あり」ヤイさんとか百目さんのような割と変化球なキャラクターではなく、ど直球というべき(本編の)ヤイさんで『木造迷宮』が『リュウ』誌上に掲載されはじめたことは、読者を広げる上でやはり良かったのではないかと思います。ま、女中はともかく「メイド」方面じゃあらゆる意味で「変化球」が「本流」ということになっておりますが(笑)、女中さんの世界は本作のお陰でそうならなかったことは慶賀の至り・・・といっていいのか、まあ個人的感興ではそう思います。
 で、今回4巻では、ページのざっと三分の一が、ヤイさんが学校に迷い込んで(?)セーラー服姿で大活躍(ブルマもあるよ! ちょうちんだけど)、という、ダンナさんがろくすっぽ登場しない、いわば「色物」に割かれていますが、今まで直球で積み重ねてきたものがあるからこそ、ありがちな「萌え」でない味わいがあるのだと思います。そうなると、むしろここで百目さんが登場したりプロトタイプが公開されることは、作品の世界をより豊かにしても、しっちゃかめっちゃかにする心配はないわけですね。
 4巻と別館の巻末を見ると、気の早いことに5巻が「来春発売」などと告知されてますが、この調子で本道を着々、でも時々道草しながら、今後もお話が続くことを期待します。アニメ化もあるかも?

 と、ここまでアサミ・マート氏と『リュウ』編集部が展開してきた作品群を賞賛して参りましたが、それだけで終わる当ブログではありません。スッポンのように執念深く、例の疑問点をも追求し続けます。
 その疑問点とは何か。
 それは当ブログの1巻(当時は巻数表記はなかったんですが)の感想記事「アサミ・マート『木造迷宮』~建築学的にこれってあるの???」の中で述べた、ダンナさんとヤイさんが暮らす家の間取り図の矛盾です。1階と2階で通し柱が立てられそうにもない謎の構造、あり得ないほど広い廊下や階段。大体漫画本編とも矛盾してるんじゃないかと。
 そのことを小生、当ブログ上で1巻発売時に指摘しましたが、2巻になってもなお改善は見られませんでした。ところがそれが、多少の変化が見られたのです。
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『木造迷宮』4巻目次ページの間取り図

 1巻の間取り図とご比較下さい。共にスキャナを使っていないのでお見苦しい点はご容赦を。
 で、どこが変わったかといいますと、図に赤で示した箇所ですが、まず2階の無駄な廊下が廃止され、その分部屋が広くなりました(この廊下については該記事コメント欄でも「やたら不自然に見える」との声がありましたが、さすがに編集部も同様に思ったようです)。ヤイさんが日曜大工で広げたのか(百目さんならやりそう)、不動産屋のサエコさんが業者を入れたのか?
 もう一つは1階の玄関周りで、「ゲタ箱」だった箇所が多少仕切り幅を変化させて「納戸」になっています。確かにあんな奥行きの深い(畳の大きさから見て1.5mはある)下駄箱はなさそうですね。

 しかし、しかし。肝腎の1階と2階の柱の位置がずれているとか、縁側が家の中にあるとか、廊下・階段の幅などの点は今なお変わっておりません。これは5巻発売までに、あるべき間取り図を作成して編集部に送りつけるしかないのか。
 なお一つ補足しておくと、この2点の変化は、実は3巻の時に既に起こっています。3巻の間取り図と4巻の間取り図は基本的に同じですが、4巻の間取り図では階段の途中に小さな字で(上の図では潰れて読めません。すみません)「家事百景」とありますが、意味はよく分かりません。おまけイラストの「家事百景」とも特に関係なさそうだし・・・?
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by bokukoui | 2010-10-14 23:59 | 漫画

百合アンソロジー『つぼみ vol.8』 感想(祝隔月刊化)


 当ブログは昨晩(というか本日未明)に交通博物館解体工事や跡地に見る万世橋駅跡の写真記事をアップしたばかりですが、これまで vol.6vol.7 と感想を書いてきた百合アンソロジー『つぼみ』の vol.8 が発売になり、今回から隔月刊行になったことを記念して、発売日に買って読んでみました(これまでは発売日の前日に店頭に出回っていたのですが、今回は三連休明けが発売日だったせいか、前日の店頭では見かけませんでした)。
 それではなるべく簡潔に(これは毎回の課題ですがうまくいきませんね)、以下に感想を述べてみます。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-10-12 19:15 | 漫画

『COMICリュウ』附録『リュウH』雑感及び性的表現に関し思いつき

※本記事は7月末日掲載予定で書き始められたものが、7月後半よりの心身ともの不調で延引し、それでも何とか8月末の時点(こちらの記事を完成させた直後)でほぼ完成するところまで書き進められておりましたのが、あと少しというところでまたダウンしてしまい、その後さらに一月以上を経て多少の加筆修正を施し、漸くアップするに至りました。しかし8月末現在として書いた部分を直すのも面倒ですし、そもそも時事的な流れにはすっかり取り残されてしまっている記事を今更10月の日付で掲載するのも何なので、この日付の記事ということにしてあります。この間の経緯はこちら及びこちらの記事にあるとおりです。何卒ご諒承下さい。


 とうとう予定の半分も片付かぬまま、8月も終わろうとしております。暑さもあって何もかも億劫になっていた我が身の不徳の致すところではありますが。
 で、ブログの方も予定している記事は幾つもあるのですが、大幅に積み残しております。そのような不良債権的記事中でも最も問題だったのが、先月20日のロフトプラスワンのイベント月刊『創』主催の「マンガの性表現規制問題徹底討論」のレポでした(苦笑)。前篇はともかく、後篇「続レポ・『マンガの性表現規制問題徹底討論』および雑感」はイベント3日後に途中まで書いてアップしたまではまあいいとして、その後1ヶ月以上放置しておりました。
 が、やっとこさ数日前に、今更ですが、完成させておきましたので、奇特な方はどうかご参照下さい。該記事の末尾に書きましたように、動画中継やツイッターなどのある昨今にまとめでもあるまいかと思って途中で書く気力を喪失していたのが直接の理由でしたが(反響もなかったし)、少し時間をおいて考え直すことにも多少の価値はなからんかと思い、レポを纏めておいた次第です。しかし、例によって例の如くというか、時間が経って考え直せば考えは拡散して纏まるはずもなく、結局レポまとめの落ち穂拾いとして本記事を書いておくこととしました。

f0030574_2535158.jpg で、それはそれとして、これまたブログに書くのを積み残して翌月の号まで発売されてしまいましたが、『月刊COMICリュウ』2010年9月号(7月発売)の附録冊子『リュウH』について一筆をば。左の表紙画像の画質がいまいちなのはスキャナがないものでご寛恕ください。公式サイトとかにも表紙が掲載されてないんで・・・

 この附録冊子は、『リュウ』本誌連載作品の中から4作品を選んで、「エッチ度200%アップ」な番外編としたものだそうです。以前に「『リュウ』編集部はえっちな漫画を出してみたかったんじゃないか」だとか『裏・COMICリュウ』とでも題して、今の連載陣でエロマンガ雑誌を出したらどうかなどと半分冗談で書いておりましたが、本当になって嬉しいというか正直びっくりしました(笑)。
 で、連載陣の中から『リュウH』に選ばれた栄えある? 作品は以下の通り(掲載順)。

 ・いけ「ねこむすめ道草日記」
 ・ナヲコ「なずなのねいろ」
 ・天蓬元帥「ちょいあ!」
 ・アサミ・マート「木造迷宮」


 それにしても、今にして後悔しているのは、上に挙げた「マンガの性表現規制問題徹底討論」のイベントの前に、これを読んでいかなかったことです。買ってはいたんですけど、例の如く読んだのは月も改まってだいぶ経ってのことでした。読んでいれば、大野修一『リュウ』編集長にいろいろ問い質したんだけどなあ(笑)。このイベントの日、(あんな質問をしておいて)終了後大野編集長に『非実在青少年読本』にサインして貰いました。そのついでに多少お話をさせて貰ったのですが、『リュウH』を読んでいれば作家のセレクションの理由とか、『リュウ』の今後のH方面の展開構想とか聞けば良かったのに、と後悔している次第です。
 その際のことは、一月以上経っているので、細かいことはあやふやになってしまっていますが、安永航一郎『青空にとおく酒浸り』の単行本がなかなか出ず、今でも3巻までしか出ていない(5巻は出せるはず)のは、安永先生にその気がないから(たまたまそうでもなかった時期に、単行本企画を進めたそうです)であって、雑誌を買わせようという編集部の陰謀ではないそうです。安永先生のさる旧作が最終巻が出ないまま数年経っているのは編集部となにやらあったためらしいですが、『リュウ』編集部はそんなことは現状ないようなので、読者は瀬戸内海の西の方に「単行本だせ~」と電波を送りながら気長に待つとしましょう。
 なお、『非実在青少年読本』について大野編集長がインタビューを受けている記事(の転載)を発見しましたので、以下にご紹介しておきます。
 大野編集長からは、短い時間のお話でしたがいろいろな企画を立てて『リュウ』を盛り上げていこうという熱意が感じられ(押井監督の本は売れたので続篇を出すとか、プラモ関係の企画とか)、最近は長期連載作品がいくつか完結を迎えたりもしていますが、今後ともいろいろ展開していくようです。『リュウH』も、『非実在青少年読本』にとどまらず、実際にマンガで非実在青少年の「H」なものを実践しようという試みなのかも知れません(そういえば、『非実在青少年読本』のアンケートに答えているマンガ家や作家には『リュウ』関係者が十数名もいるのですが、『リュウH』の執筆者とは一人も重なっていないんですよね)。
 あ、そうそう、ナヲコ先生の担当編集者は大野編集長ご自身だそうで、・・・ということは『なずなのねいろ』1巻や『からだのきもち』巻末あとがきマンガに出てくる編集者って、大野編集長だったんですね。ナヲコ先生の描いた大野編集長像を、『とりから往復書簡』での大野編集長の描かれ方と比べると、なかなか楽しめます(笑)

 というわけで話を戻しまして、『リュウH』の掲載作選びの基準は不明ですが、ナヲコ先生の登板はまずもって順当ですね。他の方の作歴はよく存じませんが、商業誌で成年コミック描いていたのはナヲコ先生だけ・・・でいいよね?
 で、高校生青春三味線マンガがどう「H」になるのか? 三味線とエロといえば小生がまず思いつくのは、中島らも「寝ずの番III」です。「寝ずの番」は映画化されてまして、予告編はネット上で見ることが出来ます(リンク先はいきなり音声が出るので注意)が、この中で堺正章や中井貴一などが演っている、こんなのを三味線部のみんなで歌うってのは・・・違いますかそれ。確かに津軽三味線と今里新地の芸者の三味線はそりゃ違・・・以前の問題ですね、はい。
 閑話休題、「なずなのねいろ」の『リュウH』版とは、花梨さんと眞さんの二人のお話でした。本編で既にただならぬ関係であったことがそれとなく描かれていた二人の関係が、過去に遡って描かれます。親族関係としては姪と叔父が、三味線の弟子としては先輩(兄弟子ならぬ姉弟子?)と後輩、という捻れた関係だった二人が、眞さんが三味線を捨ててギターに持ち替えたことをきっかけに、一線を越えていくのですが・・・花梨さんの表情が素晴らしいですね。
 そして、本作は12ページの短編ですが(最近は「なずな」の連載は毎月12ページなんですが)、この後ろにあと4ページ「然るべき」続きを描き足せば、その昔の『COMICアリス倶楽部』なんかの掲載作同様に・・・と前世紀以来の読者である小生はつい思ってしまいましたが、それだけ誌面に直接描かれていなくても、余白に感じさせるものがあるわけで、それこそはナヲコ先生の特長であると思います。

 他の作品について簡単に触れておくと、いけ「ねこむすめ道草日記」はスケベな河童が盗撮を試みる話ですが、むしろいつもの「道草日記」と同じく楽しいのどかなお話であっても、そんな「H」ってわけでもないと思います。天蓬元帥「ちょいあ!」は・・・こういう即物的なハダカの描写は中学生が好きなんじゃないでしょうか、こういうのは。アサミ・マート「木造迷宮」は4ページの掌編で、ヤイさんが行水中わんこにじゃれつかれてどうこう、というたわいない話ですが、ヤイさんのおみあしの描写に力があり、特に足の裏がなかなか。大谷崎を彷彿・・・ってのは流石に褒めすぎか(この号の『リュウ』本誌の4コマに谷崎が登場してたなあ)。
 というわけで、「H」といっても4作品は異なっていて、そこらへんが大野編集長の狙いでもあったのかなあと思います。とはいえこの4作品を比較すると、ナヲコ先生の作品の「H」さはかなり性格が異なっているように感じられます。先にも書きましたが、直接的に脱いでるとかはだけてるとか、そういう描写は「なずな」にはないんですけど、読者の心の中に想起されるものが圧倒的に「H」だってことです。
 もっともそれだけに、一見してはその意味がわからず、ネット上では『リュウH』のレビューで「なずな」を「エッチじゃない」などと書いている輩もいたりするわけですが・・・まあ本編の文脈にも多少依存している以上、そういう感想が出るのもしょうがない、かな・・・しかし即物的な描写ばかりに目を奪われるのも、ちょっと寂しい気もします。
 で、そんなナヲコ先生の特長(もちろん直接的描写もその気になればすごいことは、『Sweet Sweet Sister』読者ならご存じでしょうが)を発揮した本作について、作者ご自身がツイッターでご感想を述懐しておられましたので、以下に引用紹介しておきます。

つくづくおきらくHが描けないらしい…。←リュウHを見ながら
3:30 PM Jul 20th webから

 決してそうではないと思いますが、そうと仮定したところで、それは作者の個性として特長と捉えればよいものと愚考します。

 さて、以上マンガと「H」、つまり性的描写の話をして参りまして、またこれまでにも東京都条例案の「非実在青少年」問題に関連するなどして、この種の話題を当ブログでいくつも扱ってきましたが、それについて今まで書き漏らしたようなことを少し補足しておきたいと思います(大まかには今まで書いたことと重なっていると思いますが)。この問題に即していえば、ナヲコ先生の作品は、直接的描写は一見おとなしくても、含むものが別個あるところに、性を描写することの面白さや奥深さ、表面的な規制では掴みきれない何かが存在していることを示唆するようにも思います。
 それはともかく、以下は纏まらぬ思いつきの雑彙なのでお暇な方だけどうぞ。

(纏まらぬ思いつきの雑彙なのでお暇な方だけどうぞ)
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by bokukoui | 2010-08-31 23:59 | 漫画

百合アンソロジー『つぼみ vol.7』略感~百合のつぼみを召し上がれ

 しばらく間が空いておりましたが、その事情説明や言い訳はとりあえず後回しにして、旬の話題で更新しておきます。

 というわけで、以前当ブログでも vol.6 の感想を書いた、百合アンソロジー『つぼみ』の最新刊の感想を簡単に。同誌はこれまで季刊だったのが、これからは隔月刊化するそうです。前回書いた予想が当たりましたね。
 なお、小生のマンガ読みに際しての師匠の一人であるたんび氏が、小生のお貸し申し上げた『つぼみ』の vol.3 と vol.5 の感想を書かれておりますので、同誌にご関心のある方は是非ご一読を。貸した当人は感想を書くことがあるのかというと、まあその・・・。


 で、初手から話が逸れますが、今回の記事の表題に何か気色悪い副題が付いているのは、先日(といっても結構前のことですが)「百合のつぼみ」を食べる機会に遭遇したからであります。
f0030574_23175712.jpg
 その時カメラを持っておらず、携帯電話附属のカメラでの撮影なので、画質が悪いのはご寛恕ください。
 これは渋谷の台湾料理の有名店・麗郷で某日食事をしておりましたところ、メニューに「百合の花炒め 鮮炒金針花」とあった料理です。メニューには百合の花とありましたが、これは見ての通りつぼみですね。味はアスパラガスの穂先に似ていますがより上品で、歯触りはアスパラの穂先よりもシャキシャキと心地よく、花のつぼみだけあって爽やかな香りも微かにする、なかなかの品でした。お値段も結構でしたが(1500円)。
 ところで「金針花」という文字に何か見覚えがあった気がしたので、いつぞやも猫を食う話でネタ本にした石毛直道『鉄の胃袋中国漫遊』のページを繰ってみたところ、この食材が出ていました。四川省の重慶で屋台の火鍋屋の具材として登場していましたが、四半世紀前と比べて日本でも火鍋はメジャーになったなあという感慨はさておき、そこでは「金針菜」とありましたが、写真で見る限りは同じもののようです。何でもこれは、ユリ科のカンゾウ(萱草)という花のつぼみなんだそうで、なるほど「百合の花」ではあります。カンゾウは和名を「忘れ草」ともいい、これを食すと憂いを忘れるとの言い伝えがあるそうです。
 『つぼみ』編集部が作家さんを招いて「隔月刊化記念パーティー」とかやる場合は、是非中華料理店で開催し、このメニューをメインに据えていただきたいものです。

 余談はさておき、今回から隔月刊という発展を遂げた本誌、公式サイトも出来たそうです。11日発売となっておりますが、今日の内に手に入れて読んでしまいました。隔月刊化でも「お値段・ページ数はそのまま」らしいですが、その割には高いな・・・と思ったら、今回は何やらイラスト集の小冊子が付いてきたためのようです。
 それでは、以下に収録作品の一覧を上げておきます(小冊子を除く)。
西E田 カバーイラスト
ヤスダスズヒト カラーイラスト

吉富昭仁「しまいずむ」その11・その12
水谷フーカ「ロンリーウルフ・ロンリーシープ」第1話
かずといずみ「めとらば」前編
コダマナオコ「レンアイマンガ」第2話
カサハラテツロー「タンデムLOVER」#3
かがみふみを「なかよしにっき」
大朋めがね「Green.」episode:2
三谷知子「ニックネーム・アパート」
杉浦次郎「わんらぶ」わんこ2
きぎたつみ「ロンサム・エコー」中編
藤が丘ユミチ「エンドレスルーム」vol.2
磯本つよし「ガールズライド」#3
縞野やえ「ダーリン・ダーリン」後編
由多ちゆ「わたしの花」
ナヲコ「プライベートレッスン」#4
玄鉄絢「星川銀座四丁目」(話数表記なし)
玄鉄絢「caterpillar & butterfly」
 これまで「読み切りいっぱい」を標榜していた同誌でしたが、前号から既にそのきらいはあったとはいえ、隔月刊化によって収録作品の三分の二あまりが続き物になってますね。これには賛否両論ありそうで、一つの作品世界がじっくり掘り下げて読めるのは有り難いことですが、これまでの『つぼみ』の良いところだったと個人的に考えている、「百合」の中での多様さのようなものが損なわれないで欲しいところです。小生としては、ナヲコ先生の作品がより高頻度に読めるということで勿論大歓迎です(笑)。

 それでは例によって個別作品の感想を、思いつくままいくつか簡潔に。簡潔にとスローガンを掲げて簡潔になった試しがあんまないのですが・・・努力します。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-08-10 23:59 | 漫画

雑感 COMICリュウ編集部編『非実在青少年読本』(徳間書店)


COMICリュウ編集部編
 最近話題になっている東京都青少年健全育成条例の改正問題、「非実在青少年」と称してマンガなどの表現を不当に取り締まる恐れのある条文が提案された件(本件については当ブログの過去記事でもいくつか紹介しました)に関して、先日当ブログでも報じましたが、左のような書物が徳間書店の『月刊COMICリュウ』編集部によって編まれました。小生は以前より『リュウ』誌を愛読しており、また青少年健全育成条例などの問題にも多少の関心を持っている者としては、やはり本書は手元に置かねばと思い、先月31日の発売日に入手しました。
 で、同書を一読しましたので、以下に簡単な感想を述べておきます。なお、今検索した時点では、他に同書の感想はまだ上がっていないようですが、サイト「天使行路」さんが編集部に同書について問い合わせをされた記事「非実在青少年読本の版元に聞いてみました」がアップされております。参考になるところの多い記事ですので、リンクしてご関心のある方の参照を乞う次第です。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-06-02 13:50 | 書物

百合アンソロジー『つぼみ vol.6』 略感

 所謂「百合」のマンガの季刊誌『つぼみ vol.6』(芳文社)が本日発売になりました。まあ実は昨日、大学近傍の書店で売っていたので既に買い、帰途に読んでしまっていたのですが。
 で、『つぼみ』シリーズは小生も今までに何冊か読んでおり、そのたび当ブログに感想を書こう書こうと思いながら、結局書くことがないまま今日に至ってしまいました(苦笑)。今回くらいは簡単に一筆しておきたいと思います。
 収録作品は以下の通り。

カトウハルアキ カバーイラスト
かずといずみ カラーイラスト

大朋めがね「Green.」1話
玄鉄絢「星川銀座四丁目」5話
鈴木有布子「キャンディ」2話
きぎたつみ「ロンサム・エコー」上編
天野シロ「あこがレディをもみタイム」
水谷フーカ「はみだし音楽隊」
関谷あさみ「無限遠点」3話
犬上すくね「はさみとゆび」
カサハラテツロー「タンデムLOVER」2話
コダマナオコ「レンアイマンガ」1話
藤が丘ユミチ「エンドレスルーム」
縞野やえ「ダーリン・ダーリン」前編
矢直ちなみ「一緒にかえろう」
青木俊直「SWEET LIPS」
磯本つよし「ガールズライド」2話
森永みるく「ひみつのレシピ」5話
ナヲコ「プライベートレッスン」3話
吉富昭仁「しまいずむ」10話
 で、本書は帯に「読み切りいっぱい」と書かれてはいますが、収録作品一覧を見れば明らかなように、むしろ続き物(連作短編・他誌連載作品の出張を含む)がざっと三分の二を占め、これは今までと比率が逆転している位だと思います。特に今回第1話だとか前編とか上編とかになっているのが4篇もあり、続き物重視の雑誌へと方向転換を図るのでしょうか? となると、やはり次まで3ヶ月というのは長いので、季刊からより短期間への刊行をめざしているのでしょうか? vol.5と同じページ数なのに収録本数は増えているのも、そんなことを感じさせます。

 有り体に言えば、小生は本誌をナヲコ先生の作品目当てで買いだしたので(『月刊COMICリュウ』の場合と同じですね)、特に「百合」に対するこだわりは無いのですが(小生の「百合」ジャンル観についてはいつか機会を見て一筆出来ればと思います)、そのような「百合」に対し縁の薄い読者にも取っつきやすい話が多い雑誌と思います。それは本誌の諸「百合」作品が、単純に女の子同士のいちゃいちゃ度を競うのではなく、いわゆる恋愛にとどまらない多様な関係にも広がっているものがそれなりにあるからではないかと、勝手に思っています。もしかすると、そのように様々な関係を丁寧に描くには、続き物の方がより適している、ということかもしれません。

 それでは個別作品の感想を、思いつくままいくつか簡潔に。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-05-12 23:59 | 漫画

『青空にとおく酒浸り』単行本化記念で『COMICリュウ』近号雑感

 諸事に追われた反動からか一日のうち20時間を床の中で過ごしたりして、すっかり連休(とその後の数日)を無駄にしてしまった小生ですが、皆様はいかがお過ごしだったでしょうか。毎度の繰り言ばかりも能がないので、いい加減体調も回復してきたようですし、そろそろ一筆。
 で、ここんとこ、速水螺旋人先生のイラストコラム「螺子の囁き」に鉄道ネタが出た号だけ更新していた感のあるこの企画ですが、今回ばかりは様相を異にしまして、本誌の看板連載マンガ? が遂に単行本化されたことを祝して一筆。この記事も本当は先月中には執筆掲載しておく筈だったんですが(苦笑)


 てなわけで、創刊一周年の号から『COMICリュウ』を読み出した小生が、同誌を今に至るまで購入し続けている原動力として、ナヲコ先生は別格としても、速水螺旋人先生と並ぶくらいは重要な作品が、遂に単行本化されました。今ざっと検索してみても、ベテラン安永氏(そういえば小生も昔、誰かの家で『超感覚ANALマン』を読んだ記憶が・・・)の9年ぶりの単行本だとかで、地味なリュウコミックスにしては(偏見)話題になっているようです。雑誌に連載しても単行本にならないことで定評ある(?)安永氏の作品らしく、本作も『リュウ』創刊以来一度も休むことなく連載し続けること既に4年に近いというに、ちっとも単行本化されておりませんでした。で、創刊一周年とはすなわち13号から、とは「青空にとおく酒浸り」も13話から読み出した小生ですが、その素晴らしい下らなさ、細部まで行き届いた阿呆らしさにすっかり魅せられました。

(続きは以下に)
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by bokukoui | 2010-05-08 23:59 | 漫画

三木理史『都市交通の成立』紹介

 ここしばらく諸事に追われて研究が進んでいないのですが(ずっとそればっか)、それはいかんとせめて本でも読もうと、最近出された表題の書物を入手し、読了しました。新年度最初の書物紹介として相応しい一冊と思います。

三木理史『都市交通の成立』(日本経済評論社)

 当ブログでも前にご著書を紹介したことのある、三木理史先生の新刊で、2月に出たそうです。本書の目次の概要を以下に掲げます。詳細な目次は上掲リンク先にありますので、ご関心のある向きはそちらを。
序 章 「都市交通」の概念的成立 
 
第一部 都市交通と領域性
 第1章 都市交通の萌芽と領域性  
 第2章 戦間期の都市膨脹と交通調整
 第3章 交通調整の戦前・戦後と都市交通審議会 

第二部 旅客輸送の大量化
 第4章 「通い」の成立 
  補 論 「通い」の再生産構造
 第5章 「都市鉄道」の成立 
 第6章 旅客輸送の高密度化と「都市鉄道」 
 第7章 戦時体制期と「都市鉄道」の展開 
 
第三部 都市交通における物流
 第8章 都市交通と社会資本の利用分担  
 第9章 戦前期の石炭消費と都市内輸送 
 第10章 生鮮食料品輸送と中央卸売市場の成立
 
終 章 「都市交通」の成立
 小生は先日本書を入手し一読しましたが、何分にも300頁を超えるボリュームでもあり、今のところ何か書評出来るほど読めてはいません。とりあえずその内容を雑駁に紹介するのみでご勘弁のほど。

 本書は大阪をフィールドに、「都市交通」というものが如何に形成されたかを様々な角度から検討しています。「都市交通」とは、「都市内交通」と同義ではなくもっと広い概念で、都市内および都市と周辺地域との交通を総称した概念です。ですので、都市と農村とが截然と分かれていた時代には、「都市内交通」はあっても「都市交通」は未成立であって、郊外とか、都市圏というものの成立に伴って、都市交通が形成される、ということなのだと思います。
 で、その都市交通を、本書では

 (1)都市と郊外をめぐる領域性
 (2)その大量性をめぐる問題
 (3)都市における旅客と貨物の関係性

 の3つの論点から分析しています(p.2)。この3つの論点が、目次の第1部・第2部・第3部にそれぞれ対応しています。
 一読した感想を織り交ぜつつ各部を簡単に振り返ると、まず第1部は、「領域性」という言葉に馴染みがなくてちょっと戸惑いますが、本論で主に問題になっているのは、大阪市当局の領域認識ということのようです。大阪市が交通に関して、「市営モンロー主義」などと呼ばれる、市内の交通(昔なら市電、今なら地下鉄・バスなど)を市が独占的に運営すべきという発想を抱いていたことは割合知られているかと思いますが、その市営主義を運営する上で、大阪市がどのような空間認識を有していたか、とまとめられるでしょうか。大阪は数度に亘って周辺町村を合併し市域拡張を行いますが、そのため当初の領域性に基づいて組み立てられた市営主義の交通体系が、市域拡張によるその変化に伴って動揺し、やがて崩壊する過程を描いています。
 これは小生の理解ですが、大阪それ自体の成長や交通機関の発展に伴って大阪の郊外も発展し、当初は新市域としてそれを大阪市の内部に取り込めたのが、郊外が拡大しすぎて市の範囲を遙かに超えてしまい、それに伴って都市交通も大阪の市営主義では不合理になってしまったということでしょう。第3章では都市交通審議会の役割を取り上げていますが、そこで述べられている、かつての都市交通は内務省(→建設省)による都市計画の一部(大阪市のような地方自治体は内務省が監督)と捉えられてきたのが、戦後になって全国的な交通網の一つとして都市交通を捉える運輸省(←鉄道省)の見方が中心になってきたという変化もまた、都市交通が市のレベルで手に負えるものではなくなったことを反映しているわけでしょう。

 第2部は、都市交通を特徴付ける旅客輸送の大量化を扱いますが、まず第4章と補論では、旅客輸送大量化の前提となる、交通機関による通勤通学という習慣の発生を検討し、第5章では都市交通に相応しい鉄道の技術的発展を分析します。技術的発展とは即ち、当初明確に分かれていた鉄道と軌道の相違が、都市交通の発展(による大量・高速輸送の必要性)によって次第に平準化し、更に国鉄も都市部で客貨分離を行うなどして、私鉄の電鉄との間が平準化したことです。章末で三木先生は、このような平準化は戦後の新幹線にも及び、幹線の旅客輸送も大量輸送への対応から、都市交通の電鉄に近づいたことを示唆しておられますが、大変重要な指摘と小生も考えます。
 第6章では、都市交通を担う鉄道の特徴である高密度輸送(ラッシュ)の形成を軸に戦時下の電鉄を検討し、軍需工場への動員などで通勤者が激増したことは、旅客輸送の大量化という観点からすれば、戦前から戦後の高度成長期まで続くトレンドと位置づけます(本章は扱う論点が多岐に亘る分、やや纏めづらい印象があります)。第7章では、第5章の都市交通の技術的平準化と第6章の戦時期のラッシュ対策とを、技術的観点から纏め、戦時期の大量高密度輸送対策は技術の平準化を更に推し進め、戦後の高度成長への対応へつながったとしています。

 第3部は、これまでの都市交通研究で等閑視されがちな傾向にあった、都市の貨物輸送を取り上げます。第8章では都市と都市外との結節点に着目し、水運と陸運が近代以降どのように役割分担を行ってきたか(近世では陸上は旅客、水上は貨物と分かれていた)を検討します。以下の章では石炭と生鮮食料品をそれぞれ取り上げて、都市での貨物輸送の具体的様相を解明します。なかなか史料が少なくて分かりにくい分野ですが、様々な史料を巧みに組み合わせてその様相に迫っています。

 以上、要旨を紹介するだけでもなかなか大変なほど、様々な角度から都市交通を検討し、その画期を戦間期に置きつつも、戦争を挟んだ戦後への連続性を論じている一冊といえるかと思います。フィールドを大阪に絞っていますが、しかし例えば第一部の、都市が発展した結果、市では都市交通に対応できなくなる、などという指摘は、普遍性の高いものと思います。また、戦時期をただ統制に縛られ戦災を被っただけの時代ではなく、戦前と戦後とを繋ぐ役割があることを指摘したことは、大変意欲的で読者として刺激を受けます(三木先生は今までも同様の指摘をある程度されていましたが、本書は幅も厚みも広がっていると思います)。大阪に限らず(もちろん大阪の地域史としても大いに活用できますが)、都市と交通について関心を持つ方はご一読されればと思います。
 小生も一読したのみなので、それ以上のことはなかなか言えませんが、思い付きの範疇を出ないことを断った上で一二指摘をするならば、まずこれは多面的に都市交通を捉えようとされたが故のことと思いますが、部章ごとに交通を見るレベルがかなり異なっているので、総合的な「都市交通」像を思い浮かべるのが難しく感じられるということです。第一部では大阪市の手に負えないほど広がった範囲の都市交通を扱う一方、第三部の貨物輸送は比較的狭い都市内の貨物輸送の話が中心です。また、交通を見る視点が、大阪市当局だったり、郊外の住民だったり、貨物の運送業者だったり、さまざま章ごとに異なっているため、それらが大阪という一つのフィールドでどのように関係し合っていたかがなかなか想像しづらいところがあります。これは今後、研究の進展によって解決されるものだと思いますが。
 あと、個人的には第二部の戦時下の鉄道事業者の経営分析は大変興味深くも、やや手法に疑問を感じるところもないではありませんが、それをいまここで詳細に述べるのは大変だし準備もないので、今後自分でいろいろ調べてみたいと考えています。もう一つ今後に繋がる論点として思いつくのは、第一部での都市の発展により大阪市の交通は大阪市営では運営しきれなくなっていく、という大変興味深い指摘は、他のインフラにも通じるのかそうでないのか、というところで、地方分権だの道州制だの、或いは大阪市と大阪府の一体化だの東京特別区の改組だの、現在政治的なテーマとして浮上しているようなことにも繋がっていくのではないかと思います。

 勝手な思い付きばかりですが、なにがしかピンと来るところのあった方は是非どうぞ。必ずどこかで参考になる本ですので。
 はなはだ雑駁な記事にもかかわらず、毎度ながら完成が遅れ、まことにすみません。
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by bokukoui | 2010-04-21 23:59 | 鉄道(歴史方面)