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『近鉄・南海の経営史研究 兼業をめぐって』(五絃舎)発行のお知らせ

『近鉄・南海の経営史研究 兼業をめぐって』(五絃舎)発行のお知らせ_f0030574_19170937.jpg
 気がついたら二月も終わりになってしまいました。用意していた記事が諸般の事情で形にする暇がなく、しかしブログの更新なしに月を終えるのも残念なところ、ちょうど告知したい件がありましたので、場末のブログですが、多少なりとも宣伝になることを期待して更新しておきます。

 というわけで、さる2月25日付で、

廣田誠・山田雄久・加藤諭・嶋理人・谷内正往 共著
『近鉄・南海の経営史研究 兼業をめぐって』五絃舎

 が発行されました。近鉄と南海の歴史について、兼業に着目して研究した論文を集めた論文集です。

 多角化してコングロマリット化した電鉄企業が、都市形成に大きな影響を与え、しかもそれが百年以上現在進行形で続いている、というのは、世界でも稀にみることで、日本の近代の特徴といっても過言ではありません。日本の電車は、技術的にも経営手法的にもアメリカの影響が濃いといえ、台車はアメリカのボールドウィン社(の国産パチモン)かブリル社製、電気機器はウェスティングハウスかGEというのが昔の日本の電車の定番で、電車の元祖たるジーメンスなんかはマイナーな存在にとどまりました(イギリスのデッカーの制御器は結構多かったけど)。ところがお手本のアメリカでは、自動車の普及が急で、1930年代に電車はほとんど滅亡してしまいます。生き残った電鉄は、日本と逆に旅客をやめて貨物専業になり、わずかに存続した都市の電車も大部分公営化されました。ヨーロッパではもとより都市の電車は公営や国営が中心です。
 しかるに日本では、民営の電鉄が百年以上も盛業中で、国営や公営の方が民営化される有様です。最近はJR北海道の経営危機などで、公共交通の公営の意義が見直される向きもなくはないですが、今なお世論の向きは「国営・公営=非効率、民営=効率」というものでしょう。これは国鉄改革の影響が大きいでしょうが、国鉄民営化にしても、民営の大手私鉄というモデルがあったために国民が受け入れた面はあるのではないでしょうか。

 このように民営の電車が活発であるのが日本の特徴なのですが、その経営が多角的で、電車から不動産や流通を中心に、最近は保育園から警備会社まで、なんでもかんでもやっているというのが、活発さの何よりの例でしょう。そしてその淵源は、やはり百年近く前に遡るものです。ですので、日本の近代、とりわけ都市について、世界の中での特徴を捉えたいと思ったならば、電鉄業の多角化を調べてみるというのは大変有効な手段といえます。
 というわけで、電鉄業の多角化の歴史についての研究自体は、これまでもかなりありました。ただ、そのおそらく過半が、日本型電鉄経営のモデルとされている、小林一三による阪急の経営に偏っているのは否めません。これに五島慶太の東急と堤康次郎の西武を足せば、研究の八割を超えるんじゃないかと思います。そして、結局は「小林一三は偉かった」という「神話」を繰り返すだけに終わってしまい、結果的に阪急の宣伝に手を貸すことになってしまいます。
 そう、阪急当局はかなり意識的に小林一三の神話を企業イメージに利用しています。だから同社はそのイメージを壊されることを警戒し、社史を作るときも外部の経済史や経営史の専門家を起用せず、社内で済ませています。近年の社史ですと、阪神・京阪・近鉄・西鉄あたりの社史は、外部の専門家が中心となって作成した立派な内容のものですが、阪急はそういうことを敢えてしないのです。経営史の大御所である宮本又郎先生は、ある学会の時にこんなことを仰ってました。

「関西には、個性的な経営者で有名で、社史をまともに作らない会社が三つある。阪急・松下・サントリーだ」

 私見では、これに日清食品も加えていいと思います。

 話を戻して、そういうわけで阪急以外の電鉄の多角化の研究というのは、それほど多くないのですが、小林一三神話の再生産ばかりしていても新しいことが分かるわけではありませんので、今回紹介する本が編まれる意味もあるわけです。
 この本は、経営的には観光業が有名なものの他はあまり知られていない近鉄と、総じて地味といってよい南海とを取り上げ、その歴史に遡って、兼業の実態を明らかにしたものです。その内容はどのようなものか、目次を以下に挙げます。

まえがき(谷内正往)

第1章 大阪鉄道の再建人 佐竹三吾(谷内正往)

第2章 近代大阪における私鉄経営の多角化と沿線開発
帝塚山学院と近鉄学園前住宅地の開発を中心として(山田雄久)

第3章 南海鉄道の兼営電灯電力供給事業 戦前期南海の最大の兼業(嶋理人)

第4章 戦前期高島屋における南海鉄道・阪神電気鉄道との協業とターミナル・デパート経営構想(加藤諭)

第5章 私鉄の流通事業参入 南海鉄道を中心として(谷内正往)

第6章 南海・近鉄とプロ野球 球団と球場の歴史的展開から見た(廣田誠)

 と、近鉄と南海について、住宅開発や電力業、デパートにプロ野球とさまざまな兼業をとりあげて論じています。さらにおまけとして、各章ごとにコラムもついています。
 全体で200ページほどで、それほど厚い本ではありませんが、内容はいろいろ多岐にわたっており、日本の都市史や経営史の研究者でなくても、鉄道趣味者や地元の歴史に関心のある沿線住民の方がたにも面白く読んでいただける内容ではないかと自負しております。
 ……え、何が自負かって? そう、実は私も、この本で一章書いています。どの章かは……このブログの過去記事を瞥見すればどこかすぐ分かりますね(笑)
 というわけで、共著の本が出たのでご紹介、という宣伝記事でした。実は、今までも書店に並ぶ本に書いたことはあったのですが、表紙と背表紙に名前が載っているのは初めてだったもので、正直なところけっこう嬉しかったもので。

 ちなみに本書は、流通事業についての章を書かれている、谷内正往先生が企画されたもので、当初の構想からは紆余曲折がだいぶありましたが、谷内先生の粘り強いご尽力のお蔭で、めでたく形になりました。本来なら、著者名の筆頭に、一回りでかい活字で谷内先生の名前を印刷して然るべきなのですが(一人だけ二章書いてるし)、最後にご自分の名前を載せたところに先生の奥ゆかしさがあります。
 出版元の五絃舎は、以前にも谷内先生の本を出されており、今回もその縁で、とのことでした。本書87ページの地図は、私がトレーシングペーパーに手書きで描いた原図を、綺麗にトレスしてくれており、編集者の方にも感謝に堪えません。


 五絃舎から以前に出された谷内正往先生のご著書
『戦前大阪の鉄道駅小売事業』(2017)と『戦後大阪の鉄道とターミナル小売事業』(2020)

 本記事トップの写真は、献本が届いたので喜びのあまり撮った画像です。
 ……いや、本来ならば出版社なりネット書店なりのサイトの画像を使う方がいいと思うのですが、今日時点でもまだネット上に情報が全然出ていないようで、検索しても見つかりません。少部数の専門的な本とはいえ、少しでも多くの方に読んで欲しいので、非力ながらまずはこのブログで宣伝の口火を切っておく次第です。サイト上で購入できるようになりましたら、また改めてツイッターなりで告知しますので、どうぞよろしくお願いします。

# by bokukoui | 2021-02-28 22:15 | 鉄道(歴史方面) | Comments(0)

2020年 印象に残った本のコネクション

 あけましておめでとうございます。
 ……というには時間が経ってしまいましたが、本年もご愛顧のほどお願い申し上げます。
 どうにも年頭から調子が悪く、何も手につかないままで、ようやく今頃になって今年が始まったような感じです。

 で、今更ですが新春特別企画として、年越しに際してツイッターで書いた、2020年に読んで印象を受けた本の回顧をここに加筆修正して再録しておきます。まあ、再録するだけの価値もなくもなかろうかと。
 
 まず振り返ると、私が昨年、e-hon と日本の古本屋で買い込んだ本は、全部で165冊あり、金額の合計は329,020円だったようです。他にも店頭で見かけて買ったものや、ヤフオクで買った本などもあるので、冊数・金額とももう少し増えますが、200冊・40万円には届かなさそうです。なお、そのうちどれだけをちゃんと読んだかというと、えー……
 ……まあこういう本もあるそうだし(帯が引っ掛かりますが……)、積んでおくだけでも意味がないわけじゃない、ということにしておきましょう。

 では、昨年に読んだ本でとりわけ印象に残ったものを、関連する書籍にも触れつつご紹介していきましょう(「読んだ」なので、昨年出版の本とは限りませんし、また昨年読んだ本以外も名前を出しているものがあります)。


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# by bokukoui | 2021-01-22 23:37 | 書物 | Comments(0)

伊藤隆太「『なぜ日本は真珠湾攻撃を避けられなかったのか』そこにある不都合な真実」への疑問

 日本学術会議の問題についての記事も書き上げていないのですが、ネットで目に付いたとある記事に強い疑問を感じ、どうしても一筆せざるを得ない感を受けたので、ここにまとめておきます。

 その記事とは、プレジデント・オンラインに掲載された、以下のものです。

 論者の伊藤隆太氏は、慶應大学の法学部で博士の学位を取っておられるそうです(審査報告はこちら)。しかるべき学問的業績を持っている、ということの証左のはずなのですが、正直なところこのプレジデントの文章には、歴史を学ぶものとしていろいろと疑問点が湧いてきました。順に論点を立てて述べていきましょう。

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# by bokukoui | 2020-12-12 23:59 | 歴史雑談 | Comments(0)

日本学術会議の会員任命拒否問題についての個人的備忘(2)


 上掲記事に引き続き、日本学術会議の新会員任命拒否問題について、私が見て記憶に残ったものをまとめていきます。まずは時系列で報じられたことをいくつか。

※順次作成中


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# by bokukoui | 2020-12-06 19:00 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(0)

日本学術会議の会員任命拒否問題についての個人的備忘(1)

 11月は半ばから新型コロナウイルスの流行が激しくなり、明確に第三波の襲来となって、メディアもそれにかかりきりなのは、まずは致し方ないでしょう。とはいえ、2カ月前からの日本学術会議の新会員任命拒否問題は、ぽろぽろと政権側の無定見な碌でもなさをうかがわせる情報が出てくるものの、具体的な進展はなく、このままコロナでうやむやにしてしまおうというところでしょうか。飽きやすく冷めやすいと評される日本の「国民性」からしても、コロナ第三波以降もこの問題をしつこく批判していると、ただ批判しているというだけ、「今更なんだ!」と叩かれそうです。
 しかし、この問題は決して一過性のものではなく、学問の自由にとどまらない、表現の自由や、政治権力と国民の関係であるとか、政治における手続きの大切さなど、さまざまな問題を孕んでいることは、本問題に関して私が作成した書き起こしでも、明らかであろうと思います。

 本問題に触発されて、私もいろいろと考えをめぐらせているのですが、それを形にする前に、ここまで私が本問題について知った報道の主なものや、本問題を論じた記事で私が読み、多かれ少なかれ影響を受けたであろうものをまとめておこうと思います。


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# by bokukoui | 2020-12-01 19:22 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(0)

菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求める署名の記者会見書き起こし(談話篇)

 先月に突発した(しかし実は数年前から少しづつ進んでいた)日本学術会議の新会員任命拒否問題ですが、これに抗議して問題発覚後にこのような署名活動が立ち上げられました。

 この署名はすでに終了していますが、10日たらずで14万以上の署名を集め、それは13日に内閣府へ提出されました。その模様はマスメディアでも報道されています。
 この署名活動を呼びかけられたのが、日本大学の古川隆久先生と、東京大学の鈴木淳先生です。お二人は、任命拒否された加藤陽子先生の大学・大学院での2年下の後輩で、鈴木先生は加藤先生の現在の東大での同僚でもあります。
 そしてこの署名活動の結果と意味、学術会議任命拒否問題の見方について、さる10月26日に日本記者クラブで記者会見が行われました。会見に臨まれたのは呼びかけ人のお二人と、リモート参加の瀬畑源先生(龍谷大学)です。この会見は30分程度の三方の談話というか解説と、その後の質疑応答(30分の予定が20分近く伸びる)からなっていて、ネット上に動画が公開されています。


 この動画の内容はたいへん学びになるもので、この任命拒否問題の核心がどこにあり、どのような問題に広がる懸念があるか、歴史的経緯や政治と科学の関係、公文書の扱いから見る前政権と現政権の問題、その問題が及ぶ影響、人文社会学の意義など、この問題に関する諸論点を網羅して、無体な攻撃を論駁するものとなっています。先にまとめた石川健治先生の憲法論(「学問の自由」とこの問題の関係)と合わせ読めば、ほとんどの論点が論じつくされていると思います。
 それだけの内容のある動画だけに、現時点で1万4千以上の再生回数があり、かなりの数だと思います。とはいえ署名した数の十分の一で、まだまだ広く知られていない憾みがあるのではと思います。この一因は、やはり1時間を超える動画で、気軽に見にくいことにあるのかもしれません。それに、この豊富な内容を後から参照するのに、動画ではやや不便です。そこで、勝手ながら私がこの会見を書き起こし、以下にまとめておきました。すると約2.3万字(!)の長さになってしまいましたが、決して間延びのない緊密な内容であることは保証します。

 それでは、以下に書き起こしを掲載します。長さの関係から、本記事では前半の古川・鈴木・瀬畑各先生の談話の部分までを載せます。なお少しでも手短で読みやすくするため、敬体だった談話を常態に直し、敬語や間投詞を省略、一部の語順を入れ替えたり言葉を補足、参考のリンクを加筆するなど、書き起こしはそのままの文字起こしではないことをご諒承ください。もちろん、内容の趣旨が変わるようなことはないように気を付けております。石川講義書き起こし同様、現首相の名前は前々々首相との混同を避けるため、カタカナで表記しています。


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# by bokukoui | 2020-11-02 13:14 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(7)

石川健治「学問の自由とは何か」書き起こし(日本学術会議の新規会員任命拒否問題についての資料)


 周知のように、今月1日に火がついた、日本学術会議への新規会員任命に際し、うち6名の研究者を政府が任命せず、しかもその明確な理由を今に至るまで頑として明らかにしていないという重大な問題が、未解決のまま炎上し続けています。しかしいくら炎上しても、政府は木で鼻を括った答弁ばかりで真面目に答えません。世論も、もちろんこれはおかしいという人も多いのですが、同じくらい多くの人(しかも研究者を含む)が、「いつまで騒いでるんだ」「反日の中国の手先の連中を排除しただけ」「学者どもが利権を守ろうと騒いでやがる」「学術会議に入らなくたって研究できるだろう」「そもそも日本学術会議自体が無駄」などと、政府が自己の行為の根拠を明確にしないという基本の点から論点をずらし、とにかくお上に楯突くなんて怪しからん、と無体な「叩き」に走る事大主義を露わにしており、政府の姿勢に加えて今の社会そのものへの深刻な懸念を抱かざるを得ない状況と、私には感じられてなりません。
 本来は、もっと早くにこのブログで本件への抗議と、政府や「叩く」連中の無体さの批判をすべきと思っていたのですが、日々この件の進展が明後日の方向に、予想を悪い方向に上回って広がっていくので、ただ唖然としているばかりでした。そしてちっとも考えがまとまらず、しかし私のストレスは確実に高まって、今月は何と四半世紀ぶりにアトピー性皮膚炎と診断される事態にまで至っています。

 私がここまで本件を深刻に受け止めたのには、多分に個人的事情もありまして、今回政府が任命拒否した研究者の一人・加藤(野島)陽子先生は、私がゼミでお世話になり、博士論文の副査もしていただいた縁があったからです。さらに言えば、私が日本史の道に進むきっかけや、配偶者を得た出会いのおこりなども、先生と深く関係があり、公私ともに夫婦で恩師なのです。
 ですので私は、加藤先生の学問や人柄について、世の人よりも良く知っているのですが、その人にネットで(時にはメディア上でも)投げつけられた、あまりに無理無体で無礼で無恥な数々の発言には、怒髪天を突く思いでした。お前ら、そんな阿呆なことを言ってるどの口で、学術会議や学問のあり方に口を差し挟めると思ってるのか!?

 しかし怒ってばかりでも事態は良くなるわけではありません(怒りによる抗議の心なくしては事態がマシにならないのも確かですが)。そこで、この件――何が問題なのかは比較的分かりやすいはずなのに、政府やそれにお追従を述べる連中によって論点がずらされまくっている状況に対し、原点をしっかり踏まえて整理することで、立ち向かう姿勢を打ち立てるべきと思います。そこで友人に教えてもらったのが、冒頭の動画でした。
 これは、東大法学部の石川健治先生が、憲法の定めた「学問の自由」の意味を解説し、今回の件の何がどう問題なのかを詳細に、しかし明確に解説した、たいへんためになる講義です。また折々にジャーナリストの望月衣塑子さんが、状況の開設などを加えてくれています。しかしかなり時間も長いので、再生回数は4万回あまりにとどまっています(内容を考えればこれはむしろ、多いというべきかもしれませんが……)。
 そこで、より手短に情報を得られ、また参照がしやすいように、この講義を文字に起こしてまとめてみました(私自身の勉強の目的も込めて)。1時間半の動画を全部通して見る余裕のない方でも、本記事でしたら手短に、10分程度で目を通していただけると思います(それでも1万字以上ありますが)。どうか本件への正確な理解のため、そしてメディアやネットで繰り広げられている「叩き」が、いかに根拠のない誤ったものであるかを知るため、ぜひご一読ください。
 


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# by bokukoui | 2020-10-30 11:50 | [特設]日本学術会議会員任命拒否問題 | Comments(0)

イタリアの国会議員定数削減国民投票に関して多少思ったこと

 先日のこちらのニュースに関連して思ったことを備忘としてまとめておきます。
 ニュースとは、イタリアで国会議員の定数を大幅に削減する国民投票が行われ、賛成多数で可決されたというものです。主要な箇所を抜粋してみましょう。
 イタリアで国会議員の定数削減の是非を問う国民投票が20~21日に行われ、開票の結果、賛成票が約7割となった。上下院あわせて945議席が、600議席に削減される。
 イタリア内務省によると賛成は70・0%、反対が30・0%。投票率は51・1%だった。今後、下院は630議席から400議席に、上院は315議席から200議席に削減される。
 議員定数の削減は、18年の総選挙で既得権益の打破を訴えて躍進し、同年に発足したコンテ政権で連立与党の一角となった市民政党「五つ星運動」が求めていた。主要紙レプブリカによると、今回の定数削減で、上下院合わせて年間約8200万ユーロ(約101億円)の経費削減になるという。一方、議員1人あたりの有権者数が増え、「地方の声が届きにくくなる」といった反対意見があり、少数政党も「議会の多様性が失われる」と反対していた。
 私はイタリアの政治情勢や財政状況については全く疎いので、イタリア特有の事情については措きます。しかし、「五つ星運動」とはポピュリズム政党と聞きますので、大衆に安易に受ける乱暴な政策を展開したという感は受けます。もっともポピュリズムといっても、日本の代表的なポピュリズム政党である維新の会が新自由主義一直線なのと比べると、「五つ星運動」は環境保護やスローライフも唱えているそうで、そこは興味深くはあります。

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# by bokukoui | 2020-09-30 23:59 | 時事漫言 | Comments(0)

安倍内閣退陣に際し改めて考えなければならないこと


 なんとか8月中には一度更新しておきたいと思って、一つ記事の準備をしていたのですが、それが吹っ飛ぶようなニュースが入ってきました。
 「金曜日に首相が会見」というニュースがしつこく流れるのを週明けから聞いて、もしかして辞めるのか? いや期待してダメだったら凹むし……と私の心は揺れていたのですが、買い物に出かけてリアルタイムでテレビもネットも見られない状況だった28日の17時過ぎ、どうにも気になって落ち着かず、ガラケーで無理してネットを見たのですが……

 まず最初に断っておけば、私は安倍晋三という政治家を全く評価しません、というか最低の政治家だと思っています。それは、まず何より彼が歴史修正主義に極めて近く、また日本で歴史修正主義を振りかざす人びとが彼を担ぐに熱心であるからです。歴史的な世界の成り立ちを尊重する立場の者として、これは全く容認できません。
 これと通じることですが、安倍政権は公文書を隠匿し、改竄し、破棄してきました。過去の歴史に向き合わないどころか、自分の現状を記録することにも不誠実であり、未来への責任(一文字にあらず)を持つという観念がまるでありません。ただ今の自分さえよければいい、という極めて無責任で幼稚な政権であり、これもまた私が安倍政権を批判する大きな要因です。
 そして安倍晋三とその政権のおそらく最大の問題は、今の自分(たち)さえよければそれでよく、その自分たちの間でしか通じない、身内の言葉で何でも押し切ったということにあるのではないか、私はそのように感じます。記録に残し、あとの時代の(時には別の地域の)人になしたことを伝えようという、いわば普遍の精神をまったく欠いていたのです(歴史修正主義というのも、史料の言葉を自分勝手に、身内でしか通じない読み取りをして歪曲する、という点で同類といえます)。より広く、普遍性のある観念で説明するのではなく、自分たちにとって都合がいいからいいんだ、と押し切ったのです。いいかえれば、他者への想像力を欠き、しかもそれを開き直ったのです。


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# by bokukoui | 2020-08-31 23:59 | 時事漫言 | Comments(2)