在来産業と宗教労働者に関する議論
で、表題の「在来産業」に関する本を読んでいたわけです。
在来産業というのは、明治になって西欧から新技術を導入して生まれた近代産業に対し、近世以来の産業を指します(広義には農業を含むが、普通はそれ以外の産業を指す)。実は明治になっても日本人の大部分はやっぱり在来産業に従事していたわけで、近代産業にばかり目を取られていると産業の全体像が見えてこない、という発想から生まれた(と思う)もので、この概念は中村隆英先生によって広まり定着し、近年様々な研究成果が蓄積されております。
さて、ここで問題になるのが、何が在来産業で何が近代産業化という区分ですね。織物を作るにしても、欧米から機械を輸入して工場で生産していれば近代、農家が農閑期に手織りで作っていれば在来、と規模や経営形態、技術で分ける場合もありますが、基本的には産業分野別に分けるようです。ただ、このあたりは論者によって色々と幅があり、注意すべきところです。
分かりやすいところもあります。筆者の専門の鉄道業はどう見たって近代産業です。同様に、公務員は近代産業に属するとされています。
ここまでは前振り。
さる論文を読んでいると、就業者を男女別に割り振って分野別に人数を記した表が載っていました。小生、そこに妙な一項(本文に特に説明なし)を見つけました。
「在来産業 公務 男子 15(単位千人)」
あれ? 公務って近代産業じゃなかった? そもそも在来産業の公務って何やってるの?
以下議論の概要。
小生「在来産業でありながら公務、となると、これって神社の神主とか?」
某さん(女性)「えー、でも女性の在来産業・公務はゼロですよ。神主より巫女さんの方が人数多そうじゃないですか」
小生「巫女さんのいない神社だっていっぱいあるのでは」
某さん「うちの近所の神社にはいたけどなあ」
なんで近代経済史の読書会が巫女の話になるのだ。
先生「神主が在来産業だとしたら、キリスト教の牧師さんなら近代産業になるの?」
このナイス突っ込みで阿呆な議論は収束しましたが(先生の説では道路掃除とかじゃない? というご意見でしたが)、しかしこの公務の在来産業一万五千人の正体、どなたかご存じないでしょうか。
そしてこの突っ込みに一旦は納得したものの、考え直してみると、神社神道なんて明治になってからでっち上げられた天理教より新しい新興宗教なんだから、やっぱ巫女さんは近代産業なのではないか、と思ってみたりする今日この頃なのでした。