復刊:中西健一『日本私有鉄道史研究 増補版』(ミネルヴァ書房)
そんな先日、久方ぶりに探している本があったので大学生協書籍部に赴きました。すると吉川弘文館とミネルヴァ書房の割引セールを来月12日までやっているとのこと。これはいいものに出くわした、と、当初予定の本が空振りだったのでいろいろ眺めていると、表題の本を発見、感動してその場で購入しました。
中西健一
本書は元々、1963年に初版が出され、1979年に増補版が出た(初版で削除された2節を足した)、日本の私設鉄道史に関する古典的研究です。本書は1906年の鉄道国有法以前の幹線系私鉄と、それ以後の電鉄を中心とする私鉄、さらに公営の路面電車なども含めた、包括的な日本の私鉄の歴史研究になっています。個別のトピックに関しては、初版以後半世紀近くに様々な研究が送り出されてきましたが、「私鉄」というテーマに関して総合的にここまで広く目配りした研究書は、今に至るまでないと言っていいと思います。
というわけで古典として交通史の分野では知られた本書、小生も修論で先行研究の代表的なもの(大規模なもの?)として取り上げたものですが、それだけに自分の手元に置いておきたく、古書店を探したこともありました。しかしこのようなものだけに、2万とか相当なお値段が付いていてあきらめていたものでした。
それがなんと、今年復刊されていたのです。7月に復刊されていたのですが、小生はまったく存じませんでした。我ながら自分のアンテナの低さに憮然としますが、更に意外だったのが「中西健一 日本私有鉄道史研究 復刊」でネット検索しても、全然これを話題にしている鉄道趣味者のブログなどが引っかからず、唯一発見できたのが「suchitooの独り言」さんの記事でした。こちらのブログの筆者の方は、中西先生にその昔学ばれた方のようです。
にしても、私鉄の歴史に関心のあるマニアなら、手元に置いて然るべきと思いますが・・・むしろ院生の場合は、古典だけに大体図書館に所蔵があるし、扱う内容が幅広いのでかえって全面的に使うことは少ないし、値も張るし、借りて済ます選択肢が現実的かも知れませんが(苦笑)。
というわけで、歴史系鉄道趣味者必携・学生は必読という類の本だけに、復刻は当然としても喜ばしいことです。
お値段は10000円+税、とやはりそれなりに張りますので、手に取る人は限られようとは思いますが、我こそはと思う方はこの機会に揃えるべきと思います。古書相場を思えば妥当ですし。
それにしても、初版・増補版・復刻と、半世紀近くも読み継がれているということには、ひたすら頭が下がります。