鍋焼うどんの探求(9) 冨多葉@猿楽町(神保町)
で、(3)~(8)とひたすら本郷界隈のお店を巡ってきまして、特に(4)~(8)は本郷通りを東大の正門前から順番に南下してきたわけですが、今回は場所を変え、小生が研究と趣味と用事を兼ねて折々うろつく神保町周辺のお店を取り上げます。といっても、住所としては猿楽町になるようで、書店街からぶらぶらと北へ、日大の方へ歩いて行って見つけたお店、冨多葉「なべ焼うどん」(1500円)です。ちなみに壁に貼ってあるメニューでは、「なべ焼」の「な」の字が変体仮名になってました。

この店は中が何だか面白い構造になっていて、普通にテーブル席が並んでいる奥が一段高い座敷になっているので、最初はそこも客席なのかと思いきや、座敷には炬燵とテレビが据えてあって、ついでに猫なんぞまで鎮座していて、どう見ても家族団欒のスペースにしか見えません(笑)。居間と店が直結しているみたいなお店です。
それでは、具の調査と参りましょう。
・えび天
・ししとう天
・鶏肉(かなりいっぱい)
・かまぼこ(2枚)
・なると
・しいたけ(別に煮てある)
・麩
・ほうれんそう
・長ネギ
・薬味の白ネギ(別添)
天ぷらが二種類入っているのは初めての例だったかと。麺は中細くらいでしょうか、まず普通の太さと思います。だしはもちろん関東風ですが、天ぷらの衣から出た油と、かなりたくさん入っている鶏肉から出た脂とのおかげか、結構まろやかで良い感じでした。鶏肉は細かく切ってあるのが形態上の特徴ですが、どういう煮方をしているのか、食感がジューシーで旨かったですよ。こういう鶏肉は、うっかりすると味があんまりなくてすかすかだったりしますが、ここのは対極で味もしっかりしてました。これは結構。
しかし、お値段もこの店は結構ですね。1500円はこれまでの最高記録です。ではこの店が気取った高い店かというとそうではなく、居間と店が繋がっている雰囲気に相応しい庶民派なのです。というのも、メニューを見るともり・かけが400円。千代田区猿楽町という場所からすると、えらい安いです。ちなみに天ぷらそばは600円! で、ちゃんとこの鍋焼うどんと同じ、えび天とししとう天が入ってます。は、もしやあの旨いと思った鶏肉は鴨だったのか? とメニューの鴨なんばんの値段を確かめれば、これも600円とお手頃設定。当然、載っているのは同じ鶏肉で、名前に若干問題がありますが、値段相応にはちゃんと旨いので文句はありません(鴨でないとちゃんと確かめました)。
というわけで、価格設定が謎です。小生実は、値段を見た瞬間、鍋焼うどんの注文をためらいましたが(苦笑)、この日は神保町の古書店でたまたま、当ブログの過去記事「高橋竹山『津軽三味線ひとり旅』を読んで余計なことばかり考える」と「アメリカ本土にシャクティ・パット~野依秀市雑彙」で使った、谷川健一・鶴見俊輔・村上一郎責任編集『ドキュメント日本人9 虚人列伝』(学芸書林1969)の箱入り帯付き月報入りがわずか千円で手に入り、頗る上機嫌だったために勢いで注文してしまいました。
鍋焼うどんの値段以外は、安くてそれなりにいいお店だと思います。むしろ他のメニューがもっと高ければ、1500円でも「ちょっと高いかな」くらいで大して気にしなかったかもしれません(苦笑)
お店の外見と場所は以下の通り。
