鍋焼うどんの探求(16) 藪蔦@本郷(6丁目)
というわけで、ここ2回は本郷通りを北上してみましたが、その続きです。もっとも前回のお店よりは、少し南にありますが、本郷弥生交差点を少し西片の方に折れたところにあるお店・藪蔦にて、「鍋焼うどん」(1200円)をいただきます。

正直、しもた屋かと一瞬思ってしまったお店の外見でしたが、入ってみるとテーブルは3つだけと少ないものの、向かって左手がかなり広い座敷になっていました。
鍋焼うどんを注文すると、まず最初に蕎麦湯が出てきました。そばつゆも少量添えられています。以前、神田の「まつや」では、鍋焼うどんでも食後に湯桶が出てきましたが、それとは異なるパターンです。他のお客さんを見ていると、どうも温かい蕎麦の場合には、このように先に蕎麦湯を供する方式のようでした。

先にまず蕎麦湯をいただいてみると、なかなか乙です。猪口のそばつゆが上品で、結構でした。今度はざるでも食べに来ましょうか。
ちなみにお品書きを見ると、鍋焼うどんはこの店の麺ものでは一番高いようで(全品の中では天重の1300円が最高値)、もりかけ550円、天ぷら1000円、天ざる1100円といったところです。
それでは、鍋焼うどんの具がどんな構成か、見ていきましょう。
・えび天(煮込まないで衣がぱりぱり)
・卵(黄身がとろとろの目玉焼き)
・かまぼこ(飾り切りしたのが2枚)
・なると
・麩
・筍(2枚)
・三つ葉
・薬味の太ネギ(別添)
なんと言ってもこのお店の特徴は、卵の提供方法です。一見普通の、だしに卵を落として煮たもののように見えますが、実はこれが目玉焼きになっているのです。焼き加減は黄身がとろとろなくらいで、裏面(フライパン? に接触していた面)はごく僅かに色が付いているような、微妙な加減です。もしかすると、目玉焼きとしてはほんのちょっとだけ焼いて、あとはだしと一緒に煮込んで白身を固めているのかも知れません。
鍋焼うどんの卵についてはこれまで、だしに落として煮ている以外に、生のを別に付けてくるとか、卵焼きにして載せているとか、ラーメンみたいにゆで卵にして載せているとか、その複合とか、様々なパターンがありましたが、目玉焼きという更なる新案が登場しました。これにはびっくり。
こちらの鍋焼うどんの感想は、一言でいえば「上品」ということになろうかと思います。蕎麦湯の時に感じたように、まずだしの味自体があっさり上品な仕様になっているところに、ネギではなく三つ葉を載せていて、さらに吸い口に柚子が添えられているので(写真の下方に黄色い柚子の皮が見えるでしょうか)、ますますその印象を強めます。麺はやや細めで長い感じ、コシはあまりないですが、煮込んで柔らかくなった感じでもありません。
上品さで、この企画で今まで食べてきた鍋焼うどんの中でも、その個性が印象に残っている一杯でしたが、個々のだし・麺・具が上品にしつらえられていて、それらが入り交じった「一体感」がやや乏しく、その点は小生の考える「鍋焼うどんらしさ」が少ない気もしました。卵の黄身を崩すとその点は多少改善されましたが、ふと思うに、このお店は「一体感」よりも個々の具の自立性を重視しているので、わざわざ一手間かけて目玉焼きにして、だしと卵が混ざりすぎないようにしたのではないでしょうか。それは小生の好みと方向はやや異なりますが、しかしお店のポリシーははっきりしているわけで、その点印象に残った一杯でした。
最後に、通例通りお店の外見と場所を掲げておきます。
