講演会「極東の一次大戦 青島戦を中心として」無事終了
イベントの模様を簡単にご紹介します。本来は講演会翌日にも書くつもりだったのですが、諸事多忙なはずなのに心身ともに低調を極めて何事も進まず、今日までずれ込んでしまいました。
それはともかく、以下に多少の写真を取り混ぜて講演の雰囲気をお伝えできればと思います。
当日は残念ながら風雨が激しく、イベントには向かない天気でした。雨で困ったのは、前日にあっちこっちに張り出したビラ(ポスターと同デザイン)のうち、外に張りだしたものがほとんど剥がれてしまっていたことでした。この日の会場はそれまでと違ってやや分かりにくい離れた建物で行われており、同じ建物で行われている企画も少なかったことから、何かのついでに見に来てくれる人があまり期待できず、なるべくビラで宣伝したかったのですが、なかなか思い通りにいきません。
そんなあいにくの悪天候でしたが、当初の人出こそ鈍かったものの、最後には70席ある教室の大部分が埋まりました。
と、上の写真のようにかなりの入りでした。有り難いことです。
講演内容はまた何らかの機会に文書化されればと思いますが、とりあえずほんのさわりだけ、手元のレジュメと記憶を頼りにご紹介します。
まず最初に、開始の挨拶と青島そのものと大戦の簡単な経緯について、戦史研の張博然氏が概説を行いました。
第1講演の藤田昌雄さん「青島の陸軍航空戦~陸軍航空隊の初陣~」は、日本軍にとって初の航空戦となった青島での戦いについて、その前後の経緯(気球部隊など)にも触れつつ解説。レジュメが詳細で、パワーポイントで映した機体や各種兵器の写真も多く、大変分かりやすい発表で良かったと思います。時に小ネタを交えつつ、快調に語って下さいました。
小ネタ1:こら、そこの兵! 煙草吸いながらガソリン給油すんな!(当時の日本には自動車も少なく、兵隊にはガソリンの危険性から教えねばならなかった)
小ネタ2:徳川大尉殿、飛行機搭乗の際乗馬靴は止めて下さい! 拍車で羽布に穴が空いてしまいます!(当時の飛行機は木骨に布張りなので)
第2講演は小高正稔さんの「日本陸軍の舟艇開発~一次大戦の戦訓とその成果~」で、日本軍の上陸作戦の歴史を語って下さいます。日清・日露の頃の上陸作戦というのはある意味のどかで、通信も交通もあまり発達していないので、適当に敵のいなさそうなところへ、輸送船から伝馬船などに乗り換えて上陸していたそうで、青島戦はそのようないわば「旧世代形上陸作戦」の最後の例と位置づけられるそうです。それが二次大戦には大発はじめ上陸用舟艇というのが出来、敵が待ち構えているところに強襲上陸するようになるのですが、そういった機材を使ういわば「新世代形上陸作戦」の発祥は、第1次大戦でのトルコのガリポリ上陸作戦にあるというお話でした。舟艇などの貴重な写真も多く、興味深い発表でした。
第3講演は服部浩洋さんの「帝国陸軍にとっての一次大戦~青島攻略戦に見る受容と対応~」で、レジュメには「坂之上に立った帝国陸軍」という副題が付されています。つまり、日露戦争に勝利していわば「坂の上の雲」に追いついた、ように見えた日本陸軍が何を得て何を目指し、青島戦をどのように戦い、その後どうなっていったかという、大変野心的な講演でした。もっとも野心的すぎてややレジュメが分かりにくく、内容も野心的であるが故にある程度以上の前提知識がないと分かりにくかったのではないかと思いますが、分かる者にはたまらない内容です。粗っぽく言えば、日本軍は旅順攻略戦で鮫島中将によって近代要塞攻略法を編み出していたのですが、多大な流血を払って得た戦訓だったのでその内容は徹底的に秘匿され、対ソ戦用にその後進められた攻城機材についても謎が多い、分からない中でその秘密に迫った講演でした。
以上3講演を無理矢理を承知でくくれば、日本陸軍が新しいテクノロジーをどのように受容し、そこからどのような作戦を構想しどう発展させていったか、ということになります。そして日本陸軍は第1次大戦を介してそのようなテクノロジーの重要性を(巷間想像されがちな風潮とは異なって)相当程度理解し取り入れようとしていたものの、国力の制約があった上に、第2次大戦が日本陸軍の構想と異なる戦争になってしまったため、日本陸軍が目指していたものがいわば「不発」のまま、戦争に負けて軍隊もなくなってしまい、今となっては見失われてしまった、そこにもう一度脚光を浴びせた、そのようなつながりと言えるでしょうか。
お三方とも、そして金剛会の他の皆様も、まだまだ語る内容はおありのようですので、今後とも研究の進展と一般への公開を期待したいと思います。
講演の締めは、金剛会の幹事であるHN:じゃむ猫さんが挨拶をされました。今回のみならず前回・前々回の講演の仕切り役として、金鵄勲章ものの活躍(今回は特に、人前で話をすることが殆どなかった服部さんを引っ張り出したことで)をしてこられましたが、ご自身の講演もそろそろ・・・?
また講演終了後、打ち上げを近隣の中華料理店(こちらの記事に登場した、震災後閉店していた店。無事再開されていた模様。今ならオーダーバイキング&飲み放題2980円)で行いましたが、当日参加を希望された飛び入りの方も多く、どえらい盛況になりました。それだけ本公演に関心を持っていただいた方が多かったということで、まずは成功裏に終わることが出来たかと思います。開催に尽力された講演者・戦史研・金剛会の方々、そしてポスターをデザインして下さった板倉さんに厚く御礼申し上げる次第です。
おまけ。最初に掲げた会場入り口の写真に写った、受付の机を拡大。
第一次世界大戦のお話を聞く機会はめったにありませんから・・・
遠隔の地で残念ですが、機会がありましたら是非とも。前回講演して下さったいぎしさんは関西の方で、今回特にお運び下さいましたが、打ち上げで「次は関西でやろう」という提案があったり・・・?
ただ、こういった講演会で残念に思うのは感動になかなか出会えないことです。田母神元空将の歴史認識のように、多くの日本人に誇りと感動を与える、そんな講演会作りをよろしくお願いいたします。
機会がありましたら是非お運び下さい。
今回、講演会は十分聴衆に「感動」(その定義が難しいことは確かですが)を与えることが出来たと小生は考えております。
なお田母神氏の「歴史認識」については、当ブログの過去記事
http://bokukoui.exblog.jp/10388920/
http://bokukoui.exblog.jp/10496626/
http://bokukoui.exblog.jp/12834556/
等をご参照いただければ幸いです。