鍋焼うどんの探求番外 東日本大震災と鍋焼うどん

 前回記事「鍋焼うどんの探求(30) 蕎麦切 森の@本郷 至高のきしめん」でひとまず今シーズンの探訪を打ち止めにした本シリーズですが、もう一つ、番外篇を書いておきます。
 どう番外篇かというと、鍋焼うどんを注文したのに断られたことがあったからですが、その理由が大変興味深かったので特に書いておこうと。




 今年四月の某日、小生は本郷三丁目の駅から見て南の、角萬というお店を訪れました。同じ名前のお店が幾つもあっちこっちにあるようで、冷やし肉南蛮が名物らしいです。小生が訪れた時は、中途半端な時間だったからか、確か他にお客さんはおらず、テレビのNHKニュースが静けさを破っていました。

 で、席に着いた小生は当然、店のおばさん(おばあさん)に鍋焼うどんを注文しました。すると一旦厨房に入ったおばさん、何やら中で話していたかと思うと、また戻ってきて「鍋焼うどんは出せない」と云うのです。当然小生はその理由を問い質しました。
 おばさんはちょうど震災のニュースを放送していたテレビを指し、「ほら、三陸がこんなでしょ、それでかまぼこが入らなくなっちゃって、鍋焼とおかめとあんかけはできないのよ」
 なるほど、かまぼこの品不足で鍋焼ができないというのです。

 おばさんは更に言葉を継いで、「うちは鍋焼にはね、普通のこんなの(と、一般的にスーパーで売っているかまぼこを半月形に切ったくらいの大きさを親指と人差し指で示す)じゃなくて、これぐらい大きな(と、さっきの倍ぐらいの大きさを指で示す)のを使ってて、それがないの」
「そうですか、それは残念。いつ頃再入荷しますかね」
「さあ、いつになるかねえ?」

 という次第で小生は角萬の鍋焼うどんを食いそびれたのですが、この一件から大きく二つの知識を得ることが出来ました。
 一つは日本の水産業に占めている三陸地方の大きさです。石巻や気仙沼などで水産加工の工場が被災したということは聞いていましたが、その具体的な影響がこんな所に現れていたわけです。原料の魚やすり身は輸入品であったりしても、加工はやはり国産でなければならないのでしょうか。

 もう一つ、そして本企画の趣旨からいえばより大事なことは、「かまぼこがなければ鍋焼は出せない」というほど、かまぼこは鍋焼うどんにとって大事な具だということです。確かに今まで食べ回った店で、かまぼこが入っていなかった例は思い当たりません。なるとや伊達巻きを入れる場合も、かまぼこはかまぼこで入っているのが普通です。小生は自宅で作る場合、かまぼこは入れないことが多かったので(足が早いから店と違って在庫しているわけではない)、ついつい軽視しがちでしたが、やはりそれは間違いのようです。
 で、他にもおかめとあんかけが出せないということでしたが、あんかけはともかくおかめは具だくさんのそばのメニューとして江戸時代以来の代表格で、それもかまぼこが肝心要というわけです。歴史的経緯から考えても、そばやうどんの具に於けるかまぼこは、やはり主役だったということですね。
 ちなみに今までの鍋焼うどんの中でかまぼこといえば、本むら庵の旨さが印象に残っています。

 というわけで、今シーズンは鍋焼を食べ損ねたことからも一定の知見を得ることが出来ました。次のシーズンには、或いはその前にも、復興企画として角萬の鍋焼うどんを試してみたいと思います。

※追記:本郷の「角萬」の鍋焼うどんを2年越しにしてようやく食することができました。
[PR]

by bokukoui | 2011-06-19 23:59 | [特設]鍋焼うどん探求 | Trackback | Comments(0)

トラックバックURL : https://bokukoui.exblog.jp/tb/16154474
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
名前
URL
削除用パスワード