鍋焼うどんの探求(31) 中村屋@本郷(菊坂)
というわけで、当ブログでも恒例となりました企画・鍋焼うどんの探求の第3季にそろそろ取りかかろうかと思います。例によって誰が読んでいるのか、書いている当人にもよく分からない企画ではありますが。
さて、海外ドラマ風にいえば 3rd season の最初は、本企画の主なフィールドである本郷周辺で、これまで巡っていなかったお店を探訪したいと思います。今回からは今まで手薄だった、本郷通りよりも西側のあたりを重点的に回っていく予定です。というわけで今回は、本郷通りから北西に分岐する菊坂通りを下ったところにある中村屋で、なべ焼うどん(1200円)をいただきます。

ちなみに菊坂通りとは、NHKの名番組『ブラタモリ』で本郷を取り上げた際、川の跡の道ということでタモリ一行が歩いたことがあった道で、確かその際にコロッケともども登場した肉屋さんがあったかと思いますが、今回のお店はだいたいその肉屋さんのはすかいあたりにあります。
このお店の存在はネットで検索して気がついたのですが、食べログで見ると結構な数の星がついています。ところがその星をつけた人の感想を読むと、これは蕎麦屋ではなく日本酒を供するお店(一般的な「飲み屋」「居酒屋」とはちょっと異なる)としての評価であることが分かります。
なるほど蕎麦屋で一杯、という習慣は江戸時代以来のものでしたし、近年も故・杉浦日向子さんなどの影響でしょうか、嗜む人も結構おられるようです。しかしこの中村屋さんの場合は、そんな「蕎麦屋で一杯」を飛び越えた、日本酒通向けの特異な境地に達しているものようです。つまり、昼は普通の街の蕎麦屋さんなのに、夜になると珍しい日本酒を何十種類も取り揃えた、日本酒通から高い評価を受けるお店に一変する、ということのようです。詳しくはお店のサイトを参照してください。
ですが、中国焼酎は命の危険も顧みず呑むくせに、日本酒はどうにも苦手な小生としては、そんなディープな夜営業はスルーして、昼間、鍋焼うどんの調査に訪問しました。
お店の外見自体はほんとうにごく普通の感じです。中に入っても、入り口の横手に「産地直送 純米酒・生酒」と書かれた大きな冷蔵庫があって、その中に一升瓶が林立しているほかは、特に変わった様子もありませんし、日本酒関係の表示やお品書きもありません。席は20席ばかりの、こぢんまりとしたお店です。
壁のお品書きを見ると(席には見当たらなかった)、これもごく普通の蕎麦屋さんのラインナップで、ここに「ビール」「日本酒」と列記してあるお店もよくありますが、それもありません。もりかけ600円にはじまり、天ぷらそば1000円(上だと1300円)、天ざる1350円といったところです。「なべ焼うどん」にも上があって1650円、これが最高値のようです。若干高めの印象もありますが、総じて普通のお品書きです。
前置きが長くなりました。本題の鍋焼うどんをいただきましょう。
早速具に何が入っているかを見てみますと、
・えび天(揚げたてで大きい)
・ゆで卵(半分に切ったのが2つ)
・かまぼこ×2(そこそこ厚い)
・鶏肉(小片)
・麩
・しいたけ(半分に切ったのを甘めに味濃く煮ている)
・長ネギ×5
・ほうれんそう(結構いっぱい)
・小口切りネギ(別添)
ラインナップ自体はおおむね一般的です。天ぷらは、待っているときに厨房から揚げる音が聞こえてきた揚げたてで、つゆにしっかり浸りつつもさくさくとした食感を保っていました。何より舌が焼けるほど熱々なのは上々です。
特徴としては、卵がゆで卵になっているというところでしょうか。これまでの探訪例でゆで卵になっていたのは、有名な本むら庵と、このお店にも近い本郷の小松庵の2例だけでした。もっともそのどちらも確か、半分に切ったゆで卵が一つ入っていたのに対し、こちらのは半分に切ったのが二つ、つまり丸々一個分のゆで卵が入っています。
麺はやや細めくらいで、煮加減は固めでした。麺はかなり長い目と思います。つゆは色も濃く味もしっかり濃いめでした。特に甘みをかなり強く感じ、今までここまで濃く甘いつゆはちょっと思い出せません。一見普通のようで、よく見ると特徴がある、そんな感じです。
食べていると、「よかったらどうぞ」とデザートがサービスされました。

というわけで、その二面性を巧みにごく普通の蕎麦屋さんの外見の中に隠していたお店でした。
最後に例によって、その外見と、お店の場所を掲げておきます。
