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筆不精者の雑彙

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池袋で犬を食いそびれて餅を食った話

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池袋「知音食堂」の魚の揚げもの 旨い

 すっかり寒さでやられて、まあそれだけでもないのですが、何事も滞っている次第です。ブログの方も絶賛停滞中ですが、書くと約束した記事がそのままだったり、返事を書かないまま長期に時間が経っているようなこともあって、申し訳ない限りです。年内には一応の決着を、とか書いている時点で既に敗戦モードな気もしますが・・・。

 とまれ、先月のことですが、「池袋で犬を食い白酒を呑んだ話・つづき 白酒飲み比べ談」で予定を発表した、「鳩の切り売り・量り売り」の、とびさんとの犬食会が実現しました。といっても、まあこのブログを書いている人間の交友関係からすればまことに然りという所ですが、あいにくの雨天もあって参加者はとびさんと小生の2名のみでした。しかし思い返せば、心置きなく話が出来たという点では、それの方が良かったとも思われました。
 なにより、この日は大宝で犬がなかったという(過去に一度あったとはいえ)肝腎の本題が空振りで、企画者としてはまことに冷や汗ものの不始末でした。それにもかかわらず、とびさんにはいろいろとご配慮をいただき、もったいないことでした。

 で、この日の談話でどういった話題が出たかということについてですが、小生が引き籠もっているうちに、とびさんが精力的にブログに記事をアップされております。直接当日の談話にかかわるものは、

 犬がないならパンを食べればいいじゃない?(その1) / (その2) / (その3)

 の一連の記事にまとめられています。それぞれ、食したものの話、キリスト教と日本人・オタクについて、その他(オタク論やインフラと「大衆感情」について)といった内容です。どれもそれぞれの分野についてご関心のある方でしたら、一読の価値はあろうと思います。小生としては、何だか随分過大評価されているようで、紹介するのが面映ゆい気もしますが、これだけのことをとびさんが書くきっかけになったくらいの功績はあるだろうと思い、ご紹介する次第です。
 そして、そもそもとびさんと小生のご縁が出来たきっかけのナヲコ先生の作品についても、

 プライベートレッスン / マリみてを知らない僕らだから

 の、二つの記事がものされています。ピアノの教養を踏まえた感想は、なかなか重要なものと思います。また後段の記事では、いわゆる「百合」という言葉についての違和感が語られているのが注目で、このことについては小生も一度書いてみたいとかんがえたまま果たせずにいます。
 この他、これらの記事と同時に多くの記事をとびさんはアップされていますが、そのまとめとして「おまけのメロンパン」という記事もありますので、ご関心を持たれた方はそちらもご参照下さい。

 さて、筋としてこれらもテーマについて小生も自身の見解を述べるべきかと思うのですが、思うに任せぬ諸状況につき、ひとまず池袋での中華の感想のみ述べておきます。




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相変わらず瓶ビール一本280円のセールを続けている知音食堂@池袋
(でもセール対象は燕京ビールだけ)

 本題の犬は無念にも果たせなかったのですが、もう一つのテーマであった燕京ビール試飲は、相変わらず知音食堂が一瓶280円のセールを続けていてくれ、爆発することもなく安全に呑むことが出来ました。
 当ブログの過去記事を探りましたところ、この「燕京ビール280円セール」は昨年の夏に「夏の祭り」と称して始められていたものが、1年以上経ってもなお継続しているもののようでした。以前の記事でも書きましたが、青島ビールは380円(これでも安いけど)に対し280円と燕京を安売りしているので、最初はてっきり大量仕入れした燕京が売れなくて始末に困っているのかと思っていましたが、ここまで継続的となると、やはり燕京の有力な輸入ルートを持っているということなのでしょうか。もっともネット上を渉猟しますと、2007年の知音探訪記に、燕京を注文したら品切れだったという記事もあるので、前から燕京の輸入に熱心だったようでもないようですが・・・。
 余談ですが、この訪問記によると、2007年当時の知音食堂では、高級白酒の五糧液が、なんと4200円! で売られていたそうです。今だと10500円もするんですよ・・・昨年には既にこの値段だったと記憶しておりますので、わずか3年で何があったのか。安売りするなら燕京もいいけど、やはり元が高い五糧液の方が価値は大きいと思います。

 で、その燕京ビールがこちら。
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 以前の記事にはオレンジ色の瓶と書きましたが、最近知音で供される燕京は、青島同様の緑の瓶になっています。味の方はまあ相変わらずの程よい薄さですが、段々とそれが自分の中で標準になって行ってしまっている気がします。この日は青島も呑みましたが、その感想は「燕京よりは濃いめ」とまず感じたもので。

 さて、普通なら何度も店に来ているほうが注文する料理を考えるのが礼儀というものかもしれませんが、今回はすっかりとびさんにお任せしました。自分で注文するとついいつも同じものになってしまいますし、またとびさんのご感想の記事では知音の料理について「聞きしに勝る辛さである」とあるような好みの差を考えると、それで良かったと思います(小生はメニューに唐辛子印のある料理から注文する手合いです)。そのおかげで、冒頭に掲げた魚料理のような、今まで注文したことのなかった料理の旨さを知る機会にも恵まれたのでした。
 もう一つは、とびさんも詳述しておられる花巻です。
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知音食堂の花巻(蒸しパン) でかい

 花巻は餡のない中華まんと思ってもらえれば大体そんなもんですが、おかずが進む結構な品でした。げんこつくらいあって食べでもあったし(ありすぎた)。考えてみれば当たり前ですが、小麦文化圏の中国北半分では、これが主食なわけですね。ですので、中華料理が大概、ご飯にかければ中華丼風料理として旨く食えるように(中国人は実際、そういう食べ方をすることが多いらしい)、この花巻も、フランス料理でメインディッシュのソースをパンにつけて味わうように、上の魚料理の油をちょいとつけて食したりするとなかなか乙で、多いなと思った花巻もすっかり腹に入ってしまいました。
 そういえば、以前もネタ本にした石毛直道『鉄の胃袋中国漫遊』に、「中国は粥も炒飯も旨いのに、ただの白いご飯はうまくない。ご飯には大概おかずをかけて食うので、日本人のような『美味しいご飯』へのこだわりが乏しいようだ」という趣旨の記事がありましたが、その点この花巻は、おかずと合わせてもよく単体でもほのかな甘みがあって結構いけます。
 知音はいろいろな料理があるのですが、最後にシメとするご飯もの・麺類にはあまり特徴がありません。犬を食いそびれた大宝にしても、やはり同様の傾向があります。今後はこの花巻の類を以て、シメに宛てると良さそうです。考えてみれば、池袋の中華料理は、燕京を置いているように華北や東北地方の影響が強いのだから、それが一番妥当なのかも。

 さらに余談ですが、この「花巻」はなんだか筋模様がついています。で、とびさんご紹介のサイト「家庭で出来る本格家庭中華料理」の「花巻の作り方」によると、平らにのばした生地をぐるぐると巻物のように丸め、それを小口から切って、更にひねると、筋のついた花巻が出来るようです。なるほど。
 で、これを見てふと思ったのですが、巻物状にした生地を小口切りにした、その状態でひねらずに押して伸ばし、蒸さないで焼くと、これも華北では定番らしい「焼餅」ができるのでは、ということでした。これは『檀流クッキング』に作り方が書いてあったもので、檀一雄が北京で作り方を見覚えたものだと読んだ覚えがあります。
 この「焼餅」は、ぐるぐる巻きにした生地を焼くので、渦巻状の筋が入ることになります。で、そこでさらに思い出したのは、中華の食文化についての古典である青木正児『華国風味』(岩波文庫)の「愛餅の説」に出てきた「ロウ・スル・ヂュアン」という、青木博士が北京に留学していた際によく食べていた、しかし字でどう書くのか聞きそびれたという食べ物と同じじゃないかな、ということです。今部屋の片づけ中で同書が見つからないので引用できませんが、確か独楽に巻きつけた紐みたいにぐるぐる巻きになっていた、とかなんとか書かれていたように思いますので、『檀流クッキング』のレシピと符合しているように思われます。
 中国語で「餅」は、小麦製品全般を指すんだったと思いますが、蒸しパンの花巻でも焼いた焼餅でも、途中までの延ばしてぐるぐる巻いて切る、という加工手段は同じなのが面白く思われます。日本では麺類を作る際、うどんでも蕎麦でも、打ち粉をふるって折りたたんで切る方法ばかりで、油を塗ってぐるぐる巻きという方法はあまり聞きません。中央アジアなんかの麺造りでは逆に、たたむより巻いて切る方が多いらしいですが(『文化麺類学ことはじめ』に確かその例があった)。巻き寿司や伊達巻きなど、日本人だって巻いて切ることをしない訳じゃないですが、粉ものの加工については文化の違いがあるようです。

 余談にばかり流れましたが、とにかく飛びさんのお陰で楽しく満腹できた一夜でした。知音と大宝を梯子したのち、とびさんが池袋で勤められていた頃に行かれたというバーで、食後酒に甘いポートワインなぞ飲み、更に食についての見聞を広げることが出来ました。マデイラの類をなめながら、「大航海時代にアジアやアフリカに植民地を築いたポルトガルも、18世紀にはイギリスの経済的支配下に置かれたのだなあ」などと思うと味もひとしおです。とはいえやはり、痛切な教訓として、「中華料理を楽しむのに二人は少ない」(多分二人とも世間並みよりはよく食う人間のはずですが)ということも確かでした。
 で、話された内容についての記事は、なかなか広く深かったので難しいですが、幾つか書ければと思っておりますので、気長にお待ち下さい。
 改めてとびさんに御礼申し上げ、犬の欠品をお詫びします。缶詰やレトルトでも今後探索して・・・。
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by bokukoui | 2011-12-09 23:59 | 食物 | Comments(0)