鍋焼うどんの探求(36) 小ざわ家@大井町 嗚呼昭和遺産
前記事で「精神的暗黒から抜け出せそうな」と書いた途端に、またしばらく深みにはまって鬱々としておりました。季節の変わり目で風邪を引いていたこともありますが、暑いときも寒いときも季節も変わり目も不調だと、結局いつも不調で・・・ってこのネタは某精神科医院マンガがやってましたな。
あんまりそんなことばかりも何なので、間が開いてしまいましたが、前記事の続きの記事を挙げておきます。
で、これも去年にたまたま出くわした一杯で、時系列的には前回の「大むら」の次の週のことだったかと思います。所用の途中で大井町を通り過ぎた際に、ふと思いついて立ち寄ったのでした。
というわけで、大井町の商店街にある、小ざわ家にて「鍋焼うどん」(800円)を食します。

大井町の駅はJR、東急、りんかい線とありますが、東急の改札が面している通りに沿って東側に進んだ、商店街の表通りに面してこのお店はあります。ちなみに表通りからちょっと中に入ると、実に狭い路地が入り組んだ、まことに昔ながらの商店街、という感じの一角になり、その中に渋谷の「喜楽」とよく似た味わいのラーメン屋があるのですが、それはそれとして、この日は敢えてそば屋を探しました。で、この小ざわ家もまた、実に「昭和」な雰囲気を濃厚に残したお店でありました。
入ってみればごく狭いお店です。20席あったかどうか。中は薄暗く、椅子は一昔前の学食みたいなビニール張りのパイプ椅子です。そういえば川崎で、ここと同じような椅子を使っていたお店がありましたが、そちらは店内が広く明るかったので古びた感じはしませんでしたが、ここの場合はややくたびれた感は否めません。よく言えばこれも「昭和の古き良き時代を偲ばせる」ともいえますが、ふっと菅野彰・立花実枝子共著のタイトルが浮かばなかったかといえば嘘になります。もっとも先客(馴染みの方のようでした)がいたので、多少は安心です。お店はおばあさんが切り盛りしていました。奥に誰かいるのかいないのか、その辺はメモにないので分かりません。
内装はともあれ、お品書きを見れば概してお手頃価格なのは良いことです。鍋焼うどんの800円というのも、これまでの中でもかなり安い部類でしょう。もりかけは400円と廉く、天ぷらそばでも650円、天丼で750円であり、鍋焼うどんがそれでも一番高いようです。天ぷらそばについては、これまでの中でも最安値かも知れません。


鍋焼うどんを注文すると、まず先に鍋を置く台座とレンゲ、小口切りのネギとが先に出てきました。そのようにしているお店自体はよくあるのですが、ここで驚いたのが、その台座が普通の鍋敷きなどではなく、鍋焼用であろう土鍋のフタそのものだったということです。本体が割れてしまったものの再利用でしょうか? 無駄がないとは言えますが、ちょっと台座としては不安定な気も。なお、最初の写真でレンゲが置かれている土鍋のフタは、この鍋焼うどん自体のフタですので、この時卓上には蓋が二つあるというややこしい状況でした。
それでは本題の、具の検討に移りましょう。
・卵とじ
・えび天
・かまぼこ×2
・なると×2
・麩
・かいわれ
・長ネギ×4
・別添のネギ
と、上に挙げた写真でもお分かりいただけるかと思いますが、このお店も卵を卵とじにしていました。前回の記事で取り上げたお店と、立て続けに卵とじ形に出会い、思ったよりこれは一般的なやり方なのか? と、驚いたことを覚えています。
前回のお店は「~とじ」類のメニューが充実しているという特徴があり、さてこそ鍋焼うどんも卵とじにしたのかと思いましたが、その点は今回の小ざわ家も同様のようです。上に挙げたお品書きにもある通り、単に「とじ」(500円)とある品に始まり、「かき玉」(600円)に、「おかめとじ」「親子とじ」「天とじ」(各700円)と、「とじ」系に関しては「おかめとじ」の分だけ前回よりも更なる充実を見せています。というか、「おかめとじ」なんて初めて見たような。多分、「おかめとじ」に「天とじ」を合成すると、この鍋焼うどんになるのでしょうね。
ちなみに具に関しては、たまたまもう一人いた馴染みらしい客と店のおばあさんの会話を小耳に挟んだところに拠ると、昔は貝割れではなくホウレン草を使っていたそうですが、近年はホウレン草が値上がりしたので貝割れにしたというような事情があったようです。
また、天ぷらは衣が大きいのを煮てあるタイプで、多分揚げおきなんだろうと思いますが、独特の油の香りがありました。食べた時から何の香りか思い出せなくて悶々としているのですが、もしかすると胡麻油の比率が高いとか、そんなところなのかも知れません。
というわけで、相次いで「卵とじ」パターンに出会ったという点で、この2軒は非常に印象深いものでした。その割には記事を1年間寝かしてしまいましたが(苦笑)。今でもこの小ざわ家のおばあさんは元気に営業していらっしゃるでしょうか。まことにいろんな意味で「昭和遺産」という言葉が思い浮かんでくるようなお店なので、そういうのが好きな人は何かの折にでもどうぞ。
ふと思いついたことですが、昭和を通して最初は高級品だったのがすっかり安くなったものとして、卵は代表的な例といえるでしょうが、もしかするとこのお店の「~とじ」系の多さは、卵が「ちょっとした贅沢」として憧れだった時代の、微かな名残であるのかも知れません。
最後に例の如く、お店の外見と場所を挙げておきます。閉店間際に入ったので、小生が店を出ると同時に暖簾が片付けられてしまいましたが、営業中はちゃんと暖簾が出ています。なお店名が分かるよう、今回はお店の写真はクリックすると拡大表示するようにしてあります。

by bokukoui | 2012-11-03 23:59 | [特設]鍋焼うどん探求 | Comments(0)