「中国海軍の美人通信兵」とD51形蒸気機関車46号機
数日前、ツイッター経由で上掲画像の存在を知りました。
で、記事の内容はともかくとして、一瞥していただければ明らかな通り、何故か「中国海軍の美人通信兵」のバックが、どう見ても日本国鉄の蒸気機関車・D51にしか見えません(笑) D51の初期型、「なめくじ」と俗称される特徴あるスタイルの車輌ですが、全然中国じゃないですね。もっとも、煙突から蒸気溜め・砂箱などを一体化した長いドームで覆うこのスタイルは、旧ソ連の蒸機によく見られ、確か中国でもあったような気はしますが。
何でこの写真を「中国海軍の美人通信兵」のバックに使ったんでしょう? 軍隊とも中国とも海ともあんまりなさそうで・・・。無論、とっくの昔に引退している車輌な訳ですし、9600形とかなら戦争で改軌されて中国へ渡った車輌もありましたが、D51にはそんな例は無いはずで(台湾やサハリン向けの車輌はありましたが)。どこから引っ張り出してきたのでしょう。
というわけで、この写真の正体が気になったのでちょっとぐぐってみたところ、九州にいた缶のようでしたが、さすがにこの写真と同じものは見つかりません。で、ちょっとこの写真についてツイッターで触れたら、もっと詳しく調べて下さった方がおられましたので、以下にそれを感謝の念を込めてご紹介申し上げたいと思います。
まず、本件を小生が知るに至った一連のツイートを以下に挙げます。
みづせゆう @miduse
japanese.china.org.cn/life/txt/2012-11/05/content_27006491.htm … 中国海軍の美人通信兵を取材_中国網_日本語 なんとなく「パンツじゃないから恥ずかしくないもんっ」的なノリを感じる(^_^)
2012年11月5日 - 22:26
Хаями Расэндзин@東京練馬 @RASENJIN
なんで背景がデゴイチ……? RT @miduse: http://bit.ly/VtD0co 中国海軍の美人通信兵を取材_中国網_日本語 なんとなく「パンツじゃないから恥ずかしくないもんっ」的なノリを感じる(^_^)
2012年11月5日 - 22:32
Хаями Расэндзин@東京練馬 @RASENJINてなやりとりを見つけてしまいますと、一応人よりは鉄道に詳しいと自称する小生としましても、些か気になってぐぐってみたら、このD51 46号機はどうやら、鳥栖の機関区に長くいたらしいということが分かりました。写真をよく見ると、ヘッドライトの下に白い横長の長方形のものが見えますが、これはおそらく「架線注意」と書かれた札でしょう。戦後の蒸気機関車にはよく見られた表示です。
.@miduse 鉄道詳しくないですけど、この背景日本ですよね。ぐぐったらD51 46は戦後普通に日本で使われてますし。まあテケトーな写真を使うのはよくあることだと思いますが。ロシアの看板でなぜか0系新幹線が使われてるの見ましたし。
2012年11月5日 - 22:39
ということは、九州で鳥栖を通る鹿児島本線が電化された1961年(これが、関門トンネルの出口を除いて、九州の国鉄最初の電化でもありました)よりは後の写真だろうと見当はつきますが、それ以上は蒸機の時代に色灯式の信号がある(腕木でない)ところからして、まあ多分自動閉塞化された幹線なんだろう、と推測する以上のことはできませんでした(通票閉塞でも色灯式の信号の場合はありますが、蒸機が現役の頃はあまりない事例だろうと思います)。
なんてことをツイートしたら、ありがたいことに調べて下さった方がおられました。そのご指摘を、以下に引用させていただきます。
若林 宣 @t_wak
D51 46は長く鳥栖にいたカマのようですが、60年代終わり頃には早岐区にいて、おそらく鳥栖長崎(佐世保線、大村線)間で貨物列車を牽引(一部旅客列車のスジもあったらしい)、1972年だと南延岡配置で日豊本線の大分宮崎間。こちらのスジは全部貨物列車。
2012年11月10日 - 1:42
若林 宣 @t_wak
こっちでも背景のカマを気にしている人が。コメント欄に注目→[转帖] 中国海军美丽女通讯兵(组图) http://club.kdnet.net/dispbbs.asp?page=1&boardid=1&id=8752024 …
2012年11月10日 - 2:41
若林 宣 @t_wakここまで絞り込んでいただけて、まことにありがたい限りです。厚く御礼申し上げます。
おそらく1968~71年の佐世保線、もしかしたら早岐駅ではないでしょうか。 RT @bokukoui: (略)鹿児島本線電化の1961年以降の写真で、場所は色灯信号があるから当時としては幹線? 詳細分かる方お願いします。 http://japanese.china.org.cn/life/txt/2012-11/05/content_27006491.htm …
2012年11月10日 - 2:57
確かにこの写真をよく見ると、色灯式の入換信号機や誘導信号機らしいものも見えますので、列車の分割併合をよくやるような拠点駅、というのは確かそうです。となると早岐が最有力候補で浮かび上がってきますね。次点は肥前山口でしょうか。
機関車が勢いよく煙を噴き上げ、下からはドレインコックを開けて蒸気が噴き出している様子からすると、おそらく発車直後の情景だろうと思われます。背景の情報に乏しい画像ですが、佐世保線の駅周辺で撮影された写真を見ていれば、同じようなのがきっと見つかることでしょう。
なお、上に引用したツイートで紹介されているページには、同じ背景を使った別バージョンの写真があります。
・・・で、それは大体分かったのですが、なんで日本の蒸気機関車の写真が、「中国海軍の美人通信兵」のバックになったのか・・・?
末筆ではありますが、以上の指摘を下さった若林宣さんに感謝し、ご著書を紹介してしめくくりに代えさせていただきます。
若林宣『戦う広告 雑誌広告に見るアジア太平洋戦争』小学館
存在は知っていたのですが、懐具合もあって手を出してはいませんでした。これも縁なので、探してみようと思います。