近況と放出本について・つづき 或いは、歴史は毒にも薬にもなるということ
講義は一般教養的な日本史をやっているのですが、最初くらいは「歴史学とは何か」という話をしておきたいと無い知恵を絞り、直接生活や仕事の役に立たなさそうな歴史について知ることの意義をわかりやすく伝えるために、一晩徹夜して表題の「歴史は毒にも薬にもなる」というフレーズを捻り出しました。歴史を学ぶことで直接日常生活の役に立つわけではないから、歴史はいわば「主食」ではないけれど、日常の経験と常識の範囲を越えて何かを考えるときには、歴史は有用な「薬」であるということ、しかし有用であるがために、扱い方を誤ると「毒」になってしまう、というつもりです。うまく「薬」となれば、視野を広げて想像力を養い、ひいては冷静に物事を見る手助けとなるけれど、「毒」にしてしまうと陰謀論や善悪二元論を振りかざして、無辜の人を傷つけてしまうかもしれない、まあそんな話をしました。
で、その際に、具体例を出したほうがわかりやすいだろうと、整理された蔵書の中で発掘された、こんな本を持っていきました。
上中下の三巻本で、すべて日本語で書かれている
歴史をプロパガンダとして扱ったわかりやすい例、と思いついたときは好例だと思ったのですが、講義を終えて冷静になった今にして思うと、しょっぱなから学生諸君をドン引きさせてしまったのではないかと反省しきりです。そして、講師業のはじめが共和国ネタというのも、我ながらなんだかなあというか、ある意味らしいというか・・・。
反省しつつ、前回の記事「近況報告・放出本のご案内」について若干の補足をしておきます。
前回の記事で放出本として名を上げたもののうち、『鉄道博物館展示車両図録 新幹線の誕生 ”夢の超特急”0系新幹線』(2010年)、『百合姉妹』 VOL.1・VOL.2(2003)、池口英司・石丸かずみ『鉄道時計ものがたり』交通新聞社新書、『アリスの城 vol.5』(1996)、『マシュマロくらぶ vol.1』(1996)などは引き取り手として名乗りを上げられた方がおられました。ですのでこれらはその方面へ差し上げた / 差し上げるので、これ以降はご要望には応えられません(やはりいらない、と戻ってくれば別ですが)。
なお引き取り手を待っている、重複した書物としましては、
・東大経済学部図書館編『東京大学経済学部所蔵 特別資料 小運送関係『鉄道省文書』目録』(2007)
・『鉄道ピクトリアル』誌より
京阪特集(553号、1991年)、近鉄特集(569号、1992年)、「信号と運転の基礎」特集(655号、1998年)
・『コマンドマガジン日本版』21号(1998) 「鷲たちの黄昏」(第一次大戦の東部戦線特集)
・猪瀬直樹『土地の神話』新潮文庫版
・ソルジェニーツィン『ガン病棟(上)』新潮文庫版 ※上巻のみ
・笹本駿二『第二次大戦下のヨーロッパ』岩波新書
・オパーリン『生命の起源と生化学』岩波新書
・栗田勇午『少女は犬の夢を見る』三和出版 ※成年コミック
てなところでしょうか。もらいものの『ぱにぽに』の3巻ぐらいまでとか、コミカライズの『スピードグラファー』と『セイントオクトーバー』の1巻だけ(つまり、アニメは面白かったけど、コミカライズは・・・)とか、他にも放出するか燃えるごみか資源ごみか、検討しているものもありますので、ご関心のある方はそのうち拙宅に様子を伺いに来てください。『鉄娘な三姉妹』1巻とかも、ご要望の方がおられましたら放出したいと思いますので(苦笑)
他にまっとうなものとしては、ちくま文庫版の内田百閒『阿房列車』は放出してもかまいません。『阿房列車』シリーズはその後、旺文社文庫版で揃えたので。さらに整理が進めば、同人誌や鉄道模型雑誌なども放出を検討するかもしれません。ついでに、在庫が十数冊発掘された、現在休眠中のサークル・MaIDERiA出版局の同人誌『不完全メイドさんマニュアル』も、もらって下さる方がおられましたら、大いに歓迎いたします(笑) 改訂版を作ったのでお蔵入りになっていた、『英国絵入諷刺雑誌『パンチ』メイドさん的画像コレクション 1891~1900』の最初のオフセット印刷版も、数冊出てきたような(出てきてまたすぐ行方不明とはこれいかに)。
さて、先の記事「近況報告・放出本のご案内」に関して、以下のようなご感想をネット上でいただきました。
(広義の)同業の方の蔵書整理が気になる性質で、こういう記事はありがたい。やはりここにあるような分野別配架が主流なのだろうか? 分類法に悩むことが予想され、どうもこの方式には躊躇してしまうのだが...。 / “近況報告・放出本のご案…” http://t.co/CfKRKWr1nq
— hhasegawa (@hhasegawa) October 5, 2013
当初、小生が最初考えたのは、本をまず大きさで分類し、ついで分野別に分ける、ということでした。ですので、ハードカバーの単行本、ソフトカバーの選書、そして文庫・新書にまず分けて、しかるのちに内容で分けようとしたのです。雑誌やマンガはそれほど大きさの種類がないので、それぞれの分野でまあ適当に並べましたが。
これは何より、個人の住居の狭いスペースを有効活用するのにもっとも有効だろうと思われたからです。ところがこれは、類書があっちこっちに分散してはなはだ面倒なことになりました。たとえば石毛直道氏の本などは、ハードカバー・選書・新書・文庫の全種類の大きさが網羅されていたので、同じ著者で内容も相通じた本が3カ所に分散する事態となり、これはいかんと思うようになりました。また、選書にちょうどいいと思われた本棚があったので、そこに選書を集めるつもりだったのですが、今度はその中の配置が他の分類とは同様にやりづらく、どうも大きさ別の分類はユーザーフレンドリーではありませんでした。
で、やっぱり内容で近いものを近くに集めよう、と思い返して多少やり直し、部屋のこの辺のエリアは鉄道関係、ここらへんは参考文献に使う学術書、この辺は戦史関係、小説はこのへん、資料のファイルはこの棚にと、内容と大きさとを折衷したような配架順に、現状はなっています。
先にツイートを寄せてくださった長谷川さんは、分野別の配架方法について「分類法に悩むことが予想され、どうもこの方式には躊躇してしまう」と指摘されています。それは確かにそうなのですが、分類以上に小生が悩んだのは、先に部屋へ押し込んでしまった本棚と、収めようと思っている本の大きさとのミスマッチでした。
小生が現在本を収納している部屋は、八畳足らずの広さに14基の本棚をぎっしり配列しています(両面から本を収納できるものは2基と数えています)。といっても、これまで長年に渡って買い揃えたり貰ったりしてきた書架で、形も大きさも材質もバラバラです。本を収納している延べの長さとして(仮に全部の本棚を一列に並べたとして)数え直すと、総延長10メートルと30センチくらいにはなるでしょうか(パソコンやプリンタの収容スペースにしているところもあり、全部が本の収納場所ではないですが)。高さはうち9メートル分くらいが天井まで(220センチ程度)、残りが180センチというところです。
これだけの本棚を8畳間に並べるとなると、その配置方法は将来的な分野別の見通しまで考える余地もあまりなく、とにかく部屋の形と窓やコンセント、エアコンなどと如何に干渉せず収めるか、ということが最優先されます。するとあるエリアは文庫向けスペースが過剰な一方で単行本の場所が不足し、また別なエリアは単行本と文庫・新書のスペースがあっても中間の選書向けの場所がなく・・・てな感じです。ある程度は妥協し、文庫向けスペースに少しはみ出させて選書を置くなどしています。
文庫・新書用のつもりだったスペースに後から選書類を押し込んだので、背が少し飛び出ている(青枠)
この本棚は本来単行本用のものを、一部を両面から使えるように細工して、文庫スペースにしたもの
とまあ、書籍の分野別の分類で悩むこともかなりありますが、小生が一番整理の際に悩んだのは、本の大きさと本棚の関係でした。最初から統一的な書架を導入できるわけではないし、かといって単行本も文庫本も内容で等しく分類するとスペースがもったいないし、その辺の兼ね合いですね。分類については、結局その本をどこに注目して手に入れたのか、ということを考えて決めています。また、鉄道と軍事についての本なら鉄道を優先する、というように、分野ごとの優先順位を決めるのも、図書館ではない個人の蔵書ならかまいませんよね。自分が分かればいいのですから。
というわけで、先日拙宅を訪れた旧友のたんび氏は、小生が菅野彰・立花実枝子『あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します』をマンガやエッセイではなく「食文化関係」の一角に配架していたことに、驚かれていたようでした(笑)
分類と大きさが一致していて悩まずに済むのは、やはり成年コミックですね。ほぼみんな同じA5サイズなので、これは一部の専門店や古書店がやっているように、このジャンル内で著者五十音順に並べました。ひとつ問題は、あとからしまい忘れていたのを見つけて入れようとすると、玉突き式に多数のマンガも動かさねばならないことですが。
本を片付けてもなお片付かぬことばかりですが、来週は鉄道の日ですし、今月は鉄道史中心にもうちょっと発信していければと考えています。今月は休日の並びから、14日の鉄道記念日が休日という、鉄道イベントにもってこいな年ですし。・・・ハッピーマンデーで月曜日が続々潰れるせいで、非常勤講師業は休日を無視して来週月曜日もあるのですが(苦笑)