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筆不精者の雑彙

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天ぷら革命いまだ成らず~神保町「天ぷら革命 ふじ好」の終焉(前篇)

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2012年10月の「天ぷら革命 ふじ好」の天丼(500円)
天ぷらはえび・いか・豚の角煮・かぼちゃ・なす

 当ブログにはしばらく前から、「記事ランキング」という機能をつけていまして、前日にどの記事がもっともよく閲覧されたかというデータを示しています。で、ほぼ一貫してこのランキングのトップを占めているのが、「神保町の「神田天丼家」(旧「天丼いもや」)移転 および天丼の雑談」なのです。時々、ツイッターやら2ちゃんねるやらで当サイトの記事が紹介されたりすると、一時的にトップが変わることはありますが、そんな特段の事情がない時は、まずこの神保町の天丼関係の記事がトップであるといっても過言ではありません。秋葉原で通り魔の加藤某に追いかけられた件よりも、「保守論壇」の西尾幹二先生やアパホテル一党に喧嘩を売った顛末よりも、「DQNネーム」「キラキラネーム」の歴史を追った記事よりも、神保町の天丼がコンスタントに注目を集め続けているのです。
 これは率直なところ、記事を書いた当人にとってもきわめて意外でした。該記事は天丼の歴史的展開?について思いつきを述べたりもしていますが、基本的には東京のローカルな話題ですから、限定的な関心しか惹かないだろうと思っていたのです。しかし、アクセス解析などを見ても、「天丼 いもや」などという検索ワードで当ブログを訪れる方は、必ず毎日数人程度はおられるようで、いもやの根強い人気にはただ感心するよりありません。
 で、その記事では、移転した「神田天丼家」のすぐ隣に、同じく天ぷらを扱う店があることを簡単に紹介しておきました。それが今回の記事のお題である、「天ぷら革命 ふじ好」であります。



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2011年11月に撮影した「天ぷら革命 ふじ好」の外観(再掲)
すぐ右手の路地を入ったところに「神田天丼家」が所在

 先の記事では、「ふじ好」についてはごく簡単にしか紹介しませんでしたが、お店の存在自体は、小生も神保町に立ち寄るようになってから結構長いものですから、当初から気がついてはいました。この店がある場所は、以前は神田天丼家の前身である「いもや」グループの一軒で、天ぷらを扱うお店が入っていましたが、3年前の2010年12月から「ふじ好」になっていました。その「革命」というどぎつい文言、真っ赤でド派手な外装、歩道上に目立つ看板と、たいへん地味だった「いもや」時代との違いは嫌でも目に付きました。最初は、「天丼いもや」が神田天丼家に衣替えしたように、ここの「いもや」も屋号を変えたのか、それにしたって変わり過ぎだろうと思ったのですが、そうではなくて居抜きで別な経営者が入ったものだったのです。
 とはいえ、小生が「ふじ好」に注目を払うようになったのは、今から2年あまり前、先に挙げた神保町の「神田天丼家」移転云々の記事を書いた以降のことです。天丼家が移転した結果、ふじ好と天丼家という似たような業種(方や旧「いもや」の居抜き、方や旧「いもや」の改称移転)がほとんど並んでしまったのですが、そもそも「ふじ好」が面している靖国通りを渡った反対側には、天丼チェーンとして著名な「てんや」の専大前店が前からあったのです。つまり、わずか100メートルにも満たない範囲に、天丼を主力とする店が3軒並んでいるというわけで、日本で一番(ということはたぶん世界一)天丼屋が密集しているエリアになってしまったというおかしさが、まずはその動機でした。牛丼屋ならありそうですが、天丼ではまあないでしょうね。
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靖国通りをはさんで向かい合う「天ぷら革命 ふじ好」(赤丸印)と「てんや」(青矢印)

 で、そんな「ふじ好」について、小生はネットで調べてみたのですが、すると微妙な情報が次から次へと引っかかってきます。驚くべきことに、2ちゃんねるのB級グルメ板には「ふじ好」をヲチするスレッドが立っており、それも開店から3年間で現在27スレッド目に突入しているという活況ぶり(一月半で1スレ消費し続けている計算に・・・)です。近年できた小さな店にしては不思議です。すなわち、この店には神保町を知る2ちゃんねらーを引きつける要素があったのです。それは主として経営者のパーソナリティーに由来するものでした。

 この「天ぷら革命 ふじ好」という店を構えたのは、藤本孝博という人です。藤本氏は大学卒業後、外食産業界の雄・日本マクドナルドに20年あまり勤めて相当に出世された方だそうで、マクドナルドでの経験を生かしてフードビジネス界での雄飛を志し、マクドナルドを辞めて会社を興したのでした。「革命」という大仰なキャッチフレーズも、好意的に見れば自信と意欲の表れといえるでしょう。
 なんですが、事業の最初は手堅く?ということなのか、藤本氏の会社はまず最初の出店を、神保町にあった「天ぷらいもや」が閉店した店舗を居抜きで借りて、業態も引き続き天ぷらを扱う、そんな出店をしました。そんなわけで、「革命」の割には、小生も最初誤解したように、「いもや」が店名を変えたのかと思われるような始め方をしたのです。
 で、神保町と言えば、「いもや」の他にも、キッチン南海だのまんてんだの徳萬殿だの、安くて盛りが良くて結構うまい、そんなB級グルメの有名店が数多くある街です。定食評論家の今柊二氏は神保町を「定食の桃源郷」とまで讃えているくらいで。そんなわけで、2ちゃんねるのB級グルメ板にも神保町に特化したスレッドがあったのですが、そこで当然この「ふじ好」は注目されました。「いもや」の跡に何の店ができるのだろう、というわけですね。しかもどうやら同じ天ぷら屋らしく、地味な「いもや」と比べて妙に派手派手しい、となれば、さらに注目を惹くでしょうし、神保町では有名な「いもや」の跡だけに、前と比較されることも避けられません。そして、有体に言えば、マクドナルドの経歴をウリにして、「革命」などと大仰に構えて神保町に乗り込んだ藤本氏のやり方は、スレッド住民の反感を買うに十分なものでした。これは、小生も神保町が好きなものですので、心情的には大いに理解できることです。
 で、スレッドでいろいろ「ふじ好」批判が出ていたのですが、そこで開店直後の2010年12月下旬にどうも、藤本氏自身がスレッドに降臨してしまったらしいのです。問題のスレッドが「ログ速」に保存されているので、以下に紹介しておきます。ログ速なのでアダルト系の広告が鬱陶しいのですが、その辺はご諒解ください。

 ・【参拾伍代目】神保町の飯屋を征せ!★大盛禁止★ (ログ速)

 疑惑の発言は、221224225228234303307あたりです。IDからして、221・224・225・228・234 と 303・307 はそれぞれ同一人物の書き込みで間違いなさそうです。これがただちに藤本氏の書き込みか、断定することはもちろんできません。しかし、特に前者は自作自演で「ふじ好」の評判を上げようとしていることは間違いなく、さらに氏のブログなどの書き込みと内容は一致し、文体も酷似しています。
 2010年12月22日未明の5つの書き込みについては、氏のブログツイッターをリアルタイムで確認し続け、更新を確認次第ただちに2ちゃんねるへ書き込めば、他人が成りすますことも不可能ではないでしょう。しかし、そこまでタイミングよく、かつ迅速に氏のこれまで書いた記事の内容と表現を取り込んで、2ちゃんねるに書きこめるでしょうか。しかも、夜中の4つの書き込みのあと、藤本氏のブログが更新されている魚拓)ことからすると、氏がこの間起きていてネットを監視していた可能性が考えられ、そして朝になってだめを押して234の自画自賛?書き込みをしてしまった・・・という疑問は感じられてしまいます。
 で、これらの書き込みの文言、特に「私の人間力を味わいに来ると思えば付加価値大ですよ!!1500円の値打ちは十分にあります! 」「神保町って煮詰まった街やないですか だから革命なんですだから皆さん気になるんです!!」といったあたりがスレ住民の心に火をつけてしまったため、以後三年にわたり専用スレで2ちゃんねらーが監視体制を敷き続けるという事態になってしまったのでした。これがもし煽りであれば、本人がいかにも書きそうな内容を短時間で把握し、本家のブログとツイッターのアップと連動させて、きわめて迅速にスレッドを盛り上げて継続させた、恐ろしい手腕ということになります。
 これらの書き込みがもし成りすましだった場合、ネタ元にされたのは藤本氏のブログの例えば、開店直前の2010年12月2日の記事「天ぷら革命 ふじ好」魚拓)あたりかと思われます。「カウンター15席 約13坪の未来常識店舗です 未来常識ということは 現状否定とも言えるかも知れません」だとか二年以内に我々は日本一の天ぷらビジネス企業になります! 期限は二年以内 必ず達成します」だとか、「我々は日本一を獲得したと自分たちで判断ができた時点で海外に打って出ます 日本一の天ぷらを リアルジャパンを アジアで展開します 日本中の天ぷら屋さんとは志が違います 目指しているところが全く違います 日本中の天ぷらと勝負するのではなく 日本中にあるフードビジネスと勝負したいと思います」などと吹きまくっているのですが、読めば読むほどやっぱりあの書き込みは当人なんじゃ・・・という気もしてしまいます。

 で、このような自己啓発的なポジティブ・シンキングは、外食産業ではまま見られるものです。世間では「ワタミ」グループの渡邊美樹氏が有名(「悪名高い」が適切か)ですが、当ブログでも過去に、「牛角」を経営していたレックスホールディングスのMBO騒動に際して、いくつか記事を書きました。

 ・レックスHDの話続き・愉快なDVDからギャルゲーのアイディアを得る
 ・「感動」はどこへ行ったのか~レックスグループMBO雑考
 ・王の蹉跌~レックスグループMBO雑考続き

 レックスHDの「パートナーズフォーラム」(アルバイト日本一決定戦)のDVDを見て、労働力どころか精神まで搾取し尽くそうとするそのシステムに、正直どうにもならないほどのやるせなさと不快さを覚えたのは、上掲記事の一番上ので述べた通りです。そして率直なところ、「ふじ好」の藤本氏のメンタリティも、レックスHD(その創業者たる西山知義氏)と類似したものであろうと思われます。
 その傍証として、藤本氏のブログの開店直前の記事「出来立てほやほや1ページ!」魚拓)を挙げることができます。ここに、「当日は我が友 我がライバル! てっぺんの大嶋啓介も来てくれる予定です」という文言があります。「てっぺん」とは大嶋啓介という人が経営する居酒屋および経営コンサルタントのようです。「本気の朝礼」というのがウリだそうですが、その辺でもう十分、レックス西山氏の「感動創造」と同じメンタリティを感じ取ることができます。そして大嶋氏は、「居酒屋甲子園」なるイベントも立ち上げたもののようで、これはレックスHDの「パートナーズフォーラム」を、一企業にとどまらず全国展開させたもの、といえそうです。つまり、レックス西山≒てっぺん大嶋≒天ぷら革命藤本、という類似性を指摘できようかと。
 藤本氏のブログを精査すれば、同様の事例はいろいろ他にもあるでしょうが、とりあえず他に、氏が開店前のもっとも高揚していた精神状況であったろう時期の記事「株式会社TFJ 天ぷら革命 ふじ好 志高き人材集まれ」魚拓)を挙げておきます。

 ここまでの話の流れからすれば、小生が「天ぷら革命 ふじ好」やその経営理念に好感を抱かないことは明らかでしょう。そのことは自覚していますので、なるべく押さえて書くように務めますが、その旨ご諒解ください。ああでも、食事でも酒を呑む時でも、一人穏やかに、あるいは気の合う相手と、自分たちのペースで臨みたい、店にはそれをサポートして邪魔しないこと以上は望まない――そんな小生のような者は、それほど珍しくもないんじゃないかと思うんですけど・・・いちいち注文した際に「喜んで!」とか云わんで宜しい、静かにしてくれ!
 で、2ちゃんねるB級グルメ板の神保町スレッドに集まっていた人たちも、一人静かなライフスタイルを好む人が多そうですから、同様の心情だったろうと思うのです。
 そんなわけで、2ちゃんねるで監視対象とされてしまった「ふじ好」のスレッドは、開店から現在まで27スレを数えるに至りました。以下にログ速のデータを掲げておきます。

 ・ふじ好ネタはここでやれ
 ・【ドヤBOSS】天ぷら革命 ふじ好【一口50円】
 ・【かまない丼】天ぷら革命 ふじ好3【最後尾カード】
 ・【入口全開】ふじ好 フェーズ4【口半開き】
 ・【宇宙2号店】ふじ好 フェーズ5【新宿御苑侵略】
 ・【お酒250円】ふじ好フェーズ6【味噌汁150円】
 ・【入口目隠し】ふじ好フェーズ7【違反立看板】
 ・【年中無休】ふじ好フェーズ8【日曜休業】
 ・【前門のてんや】ふじ好フェーズ9【後門の天丼家】
 ・【前門のてんや】ふじ好フェーズ10【後門の天丼家】
 ・【広辞苑】ふじ好フェーズ11【広辞林】
 ・【塩辛撤退】ふじ好フェーズ12【客は粕!】
 ・【売上高8000万】ふじ好フェーズ13【客は粕!】
 ・【大感謝際】天ぷら革命ふじ好フェーズ14【たこ焼き】
 ・【たこ焼き】天ぷら革命ふじ好フェーズ15【ブース】
 ・【新宿御苑】天ぷら革命ふじ好フェーズ16【撤退?】
 ・【新宿御苑】天ぷら革命ふじ好フェーズ17【撤退】
 ・【御苑タヒ】天ぷら革命ふじ好フェーズ18【神保町も?】
 ・【店員不在】天ぷら革命ふじ好フェーズ19【客不在】
 ・【夜逃げ】天ぷら革命ふじ好フェーズ19【ど~ん】(実質20)
 ・【期限は】天ぷら革命ふじ好フェーズ20【二年】(実質21)
 ・【食い散らかし】天ぷら革命ふじ好フェーズ22【講演】
 ・【借家契約】天ぷら革命ふじ好フェーズ23【あと半年】
 ・【マヨネーズ】天ぷら革命ふじ好フェーズ24【醤油】
 ・【革命は】天ぷら革命ふじ好フェーズ25【続くの?】
 ・【躁】天ぷら革命ふじ好フェーズ26【鬱】
 ・【革命】天ぷら革命ふじ好フェーズ27【失敗】
 ・「ふじ好」関係のサイトの魚拓をまとめたレス(「【躁】天ぷら革命ふじ好フェーズ26【鬱】」953)

 なるほど匿名掲示板らしい、悪意の現れたスレッドのタイトルも少なくないですし、実際スレの本文にはしょっちゅう誹謗中傷罵詈雑言が書き込まれ、時にはヘイトスピーチに至っているものすらあるのはネットの通弊です。しかし同時に、スレタイを見ているだけで、「ふじ好」開店以来3年間の経営状況の、見事な要約になっていることも事実です。
 鳴り物入りで藤本氏が開店させた「ふじ好」は、行列店になるものと思い込んで?コミケの壁サークルばりに「最後尾札」まで用意していましたが(魚拓)、新宿御苑に2号店を出店したのも束の間、思うように客が入らず、年中無休のはずが日曜は閉まっていることが多くなります。そうこうしているうちに、なんとすぐ横に神田天丼家がやってきて、ますますふじ好は苦境に立たされます(どうも、神田天丼家を経営している方々は現在地をもともと所有していたようで、以前の場所が何らかの事情で立ち退くことになって、自前の土地に戻ってきたようです)。当初やっていた、塩辛食べ放題サービスをやめ、新宿御苑店ではたこ焼きのブースをこしらえてみたりと迷走が目立つようになり、挙句2号店は閉店してしまいます。その後、残った神保町店も低空飛行が続き、開店当初のメンバーも櫛の歯が欠けるように離れ、そしてスレ住民の予想通り、開店から3年のさる11月25日で閉店してしまったのでした。
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2013年11月25日限りでの閉店を告げる「天ぷら革命 ふじ好」の張り紙

 「スレ住民の予想通り」というのは、彼らの中の誰かがネットの不動産情報を調べて、「ふじ好」の家賃と契約期間を明らかにしたところ、期間が3年間の契約だったので、この期限まではやるのではないか、と予測されていたのです。見事としか言いようがありません。なお、同様の手法で、新宿御苑店の閉店も公式発表前にスレでは確実視されていたようです。
 確かに匿名掲示板はゴミ溜めのようなところですが、2ちゃんねるも広い世界で、板やスレによってはかなり有用な情報も得られます。ゴミであることより、むしろ有用な情報を篩にかける方が、藤本氏のブログのタイトルの通り「ポジティブ」なのではないか、とは思えます。小生も「ふじ好」関係スレッドを全部読んだわけではないですが、そもそもの神保町スレッドで「ふじ好」の問題点は指摘されており、そこで予想された展開は、おおむね当たっていたと言えそうです。神保町の飲食店に詳しいスレ住民の意見には、汲むべきものも少なくなかったでしょう。
 B級グルメ板神保町スレ住民が藤本氏を嫌ったように、藤本氏もまた2ちゃんねるを嫌っていたことは、「ふじ好」開店前の2010年7月に「私は2ちゃんねるが大嫌い!あの最低な展開を何とか出来ないのでしょうか?」魚拓)とブログに書いていることから明らかです。両者の煽り合いは必然ではありましたが、それは藤本氏により多く不幸であったように思われます。

 さて、まだ話は続くのですが、やたらとリンクを張ったりしてタグで字数を消費したせいか、ブログの一つの記事の長さの上限に達してしまいました。なのでひとまずこの辺で切って、後篇に回します。


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by bokukoui | 2013-11-29 23:58 | 食物 | Comments(0)