[資料メモ]広告と少女
が、ネタがなかなか乏しいので、またぞろ先週と同じ本からの引用で済ませておこうという次第。いや、それだけ面白い本なんですけどね。というわけで、W.ハーミッシュ・フレーザー著(徳島達朗・友松憲彦・原田政美訳)『イギリス大衆消費市場の到来 1850-1914年』からの引用。しかも今回は家事使用人と関係すら碌にない、でもなかなか興味深い一節です。大衆消費市場の到来とともに、ヴィクトリア朝終わりの英国では広告が大いに発達したのですが、その実態や如何に。
1880年代末と1890年代初頭における、宣伝広告の普及は中流階級の反発を招いた。反発の中にあった諸要素は、ピュリタニズム、唯美主義、それに本質的に貴族的価値観のもつ上品さをできるかぎり侵さないようにして産業革命の成果を享受することを良しとするイギリス人の伝統的信念、が結合したものであった。1890年までには、かわいい少女と製品を結びつけることが価値あることを示すという心理が十分理解された。ジョン・プレーヤー&サンは、1890年の広告において、タバコを手にした(口にではない)少女たちを扱った。同じ年にロンドン「水族館」は、「あらゆる広告掲示板の一か所に、多くの人に下品とみなされる空中飛行を描いた」女軽業師のポスターによる宣伝をおこなった。全国自警団協会は水族館の営業許可の更新に反対し、新聞のキャンペーンが展開された。(中略)大衆の反対の声はビラ貼り人協会自らが、望ましくないあるいは下品なポスターが、大衆に影響を及ぼすのを阻止するために、検閲委員会を設立するよう促した。それにもかかわらず、乱用と抗議はつづいた。(p.166)広告と町の美観がどうこう、みたいな話はこの頃から始まってたんですね。そして広告に女性が矢鱈と使われるようになるのも。写真や印刷の技術発達が背後にありそうです。
あとどうでもいいですが、タバコ会社が『苺ましまろ』の伸恵姉で広告をしたら面白いかもしれません。三島塔子で日本酒CMもまたよし。